ぐざい

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『春』

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『春』
何度目の春だろうか。
ルデルタが眠って、ネモゼラはひとり、毎日ルデルタのために花を摘んできた。花のない季節には、香を焚く。
ルデルタはずっと眠っていた。綺麗なまま。胸はいつも上下している。
ネモゼラはルデルタのそばで眠った。ルデルタのそばで眠り、ルデルタのそばで目を覚ます。目の前に愛する人がいて、ネモゼラは毎朝、愛していると囁いた。

その夜はとても静かだった。満月の夜だった。
ネモゼラは夢を見ていた。ルデルタの声がする。夢の中でルデルタがネモゼラに手を振っている。ああ、なんて温かいのだろうとネモゼラは思った。ネモゼラの頬に柔らかい風がふれる。

ネモゼラははっと目を覚ました。ルデルタが眠っている寝床に突っ伏して寝ていた。
「ネモゼラ」
耳がぱっと動く。なんだって?
「ネモゼラ…」
ネモゼラは顔をあげる。ルデルタがいる。目をうたがった。夢かもしれない。ルデルタがネモゼラの頬に手を伸ばす。
「ネモゼラ…」
ネモゼラはルデルタの手を取る。ルデルタ?目の前にいるのは俺の大切な、ルデルタ?

ネモゼラの目から涙があふれ出す。涙で視界がぼやける。ルデルタの指がネモゼラの涙を拭ってくれる。
「毎朝、俺に言ってくれた言葉を聞かせて」
「愛してる」
「うん」
「愛…てる…」
「うん」
ルデルタはネモゼラの唇に小さく口づけする。ネモゼラも唇でルデルタの唇にふれる。唇を小さく重ねながら、ネモゼラは何度も愛していると言った。ルデルタはその度にうんと答える。ネモゼラはルデルタを強く抱きしめた。涙が止まらない。ルデルタも強く抱きしめ返す。ルデルタの匂いをネモゼラは感じた。ネモゼラの味をルデルタは感じた。間違いない。この体温は、愛する人のもの。

ふたりの時間がまた動き出す。
音を立て、匂いで満たして。
また動き出す。
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