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『訪ね人』
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「すみません…」
ドアの外から声がする。
小さな声が聞こえる。
フフは身構えた。しばらく待ってみる。
気配が消えない。
仕方ない。
フフはドアを開けることにした。
ベッドから出る。
長い脚をベッドから出し、寝巻の上からガウンを纏う。
できるだけ身体を隠すようにそれを身体に巻いて
ゆっくり玄関のドアへ向かう。
ドアのカギをまわした。
ごとっと音がする。
扉を小さく開けると、自分より小さな男がそこに立っていた。
俯いている。
一気に外の空気が、ドアを通して中に入ってくる。
男の匂いが一緒に、フフの鼻と頬を撫でた。
花のような匂いがする。
一瞬、花の匂いに心が揺れるが
フフはすぐに険しい表情になった。
そこに立っていたのは、人間だった。
「すみません…」
小さい声が下から聞こえる。
フフは黙っている。
「すみません…一晩でいいので…泊めていただけませんか」
人間の男が言う。
フフに眉間に皺が寄る。
フフは嫌だった。
人間を家の中に入れるなんて、絶対に嫌だった。
男は顔をあげた。
さきほど感じた、花のような匂いが
フフの鼻にまた香る。
「服を濡らしてしまって、困っているんです。一晩だけ、お願いします」
男の服は確かに濡れていた。
雨は降っていないはずだ。
男の服はひどくびしょ濡れで、足元に水たまりができている。
黒い髪の間から、まつ毛の長い目がこちらを見上げている。
緑色の目が、まっすぐフフを見ている。
フフは答えた。
「悪いけど、入れられない」
フフはドアノブに手をかける。
ばたんと音を立ててドアが閉まる。
鍵を閉めると、フフは踵を返した。
背後で、がたんと音がする。
はっとしてフフは振り帰った。
何の音だ。大きな音だった。
耳をすます。
フフは恐る恐る、鍵をまわし、そっとドアを開けた。
先ほどの男が、ドアの前で倒れている。
フフはそれを見降ろした。
自分の足元で
見ず知らずの人間が倒れている。
大嫌いな人間が。
放っておいても良かった。
死んでから森に運べばいい。
土にくらいは還してやる。
この男がフフになにかをしたわけではないのだ。
そのくらいはしてやってもいい。
フフはしばらく考えた。
朝、目が覚めて、ドアの前に知らない男が死んでいるところを想像した。
不愉快だった。
フフは小さくため息をついた。
フフは屈んで、男を抱え上げる。身体が冷たい。
男の身体は軽かった。
男の呼吸は心なしか早く、苦しそうだった。
人間の匂いがする。
顔をしかめる。
フフは男を部屋に運んだ。
ドアの外から声がする。
小さな声が聞こえる。
フフは身構えた。しばらく待ってみる。
気配が消えない。
仕方ない。
フフはドアを開けることにした。
ベッドから出る。
長い脚をベッドから出し、寝巻の上からガウンを纏う。
できるだけ身体を隠すようにそれを身体に巻いて
ゆっくり玄関のドアへ向かう。
ドアのカギをまわした。
ごとっと音がする。
扉を小さく開けると、自分より小さな男がそこに立っていた。
俯いている。
一気に外の空気が、ドアを通して中に入ってくる。
男の匂いが一緒に、フフの鼻と頬を撫でた。
花のような匂いがする。
一瞬、花の匂いに心が揺れるが
フフはすぐに険しい表情になった。
そこに立っていたのは、人間だった。
「すみません…」
小さい声が下から聞こえる。
フフは黙っている。
「すみません…一晩でいいので…泊めていただけませんか」
人間の男が言う。
フフに眉間に皺が寄る。
フフは嫌だった。
人間を家の中に入れるなんて、絶対に嫌だった。
男は顔をあげた。
さきほど感じた、花のような匂いが
フフの鼻にまた香る。
「服を濡らしてしまって、困っているんです。一晩だけ、お願いします」
男の服は確かに濡れていた。
雨は降っていないはずだ。
男の服はひどくびしょ濡れで、足元に水たまりができている。
黒い髪の間から、まつ毛の長い目がこちらを見上げている。
緑色の目が、まっすぐフフを見ている。
フフは答えた。
「悪いけど、入れられない」
フフはドアノブに手をかける。
ばたんと音を立ててドアが閉まる。
鍵を閉めると、フフは踵を返した。
背後で、がたんと音がする。
はっとしてフフは振り帰った。
何の音だ。大きな音だった。
耳をすます。
フフは恐る恐る、鍵をまわし、そっとドアを開けた。
先ほどの男が、ドアの前で倒れている。
フフはそれを見降ろした。
自分の足元で
見ず知らずの人間が倒れている。
大嫌いな人間が。
放っておいても良かった。
死んでから森に運べばいい。
土にくらいは還してやる。
この男がフフになにかをしたわけではないのだ。
そのくらいはしてやってもいい。
フフはしばらく考えた。
朝、目が覚めて、ドアの前に知らない男が死んでいるところを想像した。
不愉快だった。
フフは小さくため息をついた。
フフは屈んで、男を抱え上げる。身体が冷たい。
男の身体は軽かった。
男の呼吸は心なしか早く、苦しそうだった。
人間の匂いがする。
顔をしかめる。
フフは男を部屋に運んだ。
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