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第3話 竜胆さんしか勝たん。

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 散々な結果反省文が確定となったホームルームを終え、帰り支度を完了した直後の事である。
 私はまるで戦場に行くかのような覚悟を持って突撃の準備を整えていた。いや、まさにこれからおもむくのは戦場と言えるだろう。だって、いとしの竜胆さんに話しかけに行くのだから…!
そこは私にとって、恋の戦場である。まぁ、もう既に竜胆さんには心臓ハートを撃ち抜かれてしまっているのだが。負け確である。いや、まじ竜胆さん最強。竜胆さんしか勝たん。
  さて、躊躇っていてもしょうがない。幸い、竜胆さんは現在一人なので突撃してしまおう。心臓が私の内なる恋心に耐えられるか不安だが、大丈夫!心臓の換えは用意した…!

「こんにちは、初めまして竜胆さん。私は小森 華奈って言います。よろしくね!」

 うむ、我ながらとても無難な挨拶である。
ドキドキしながらお返事を待っていると、竜胆さんは顔をこちらへ向けた。そして、その可愛らしい口から挨拶を返してくれた。

「えぇ、よろしく、小森さん。」

 ふむ、竜胆さんはやはり、とても可愛らしい。どれくらい可愛いかと言うと、面と向かって顔を合した瞬間にいつもは邪悪な事を考えている私の脳が浄化され、頭の中が幸福感で満たされるくらいには可愛い。目の保養どころではない。脳の浄化である。魔法並みの効果だ。ここから導かれる答えはただ一つ、竜胆さんは魔法少女だったのだ。納得である。

「それで、何か用かしら?もう帰るところなのだけれど。」

「いや、一緒に帰りたいなって!」

 そう、私は帰りのお誘いをしに話しかけたのだ。こういうのは早く決めておかないと、誰かに先を越されてしまうかもしれないからね。
悪いが竜胆さんとの下校デート権は私だけのものなのだ。

「私と一緒に…?そう、それはとても良い提案ね。」

「ということは…?」

「ええ、一緒に帰りましょう。
…と言いたいところだけれど、貴方には反省文を書くという仕事がまだ残っているでしょう?」

「…っ!!?」

 完全に忘れていた。そうだ、私には反省文を書く労役という残業が課せられていたのだった。
…残業代はちゃんと出るのだろうか。
 よくよく考えれば、これはきっと、お前には竜胆さんを渡さないという神様がおこなった妨害工作なのだろう。なるほどね、よし、その勝負受けて立とうでは無いか。私の竜胆さんは例え神であっても譲らないぞ。

「そうね…。」

「ん?どうしたの、竜胆さん。」

  もしかして、天使である竜胆さんは私の神反逆計画を悟ってめようとしているのだろうか。

折角せっかくだし、私も貴方が反省文を書き終えるまで待たせてもらうことにするわ。」

「……?」

 私の思考はこの時、確かに停止した。
次に、ほんの少しの困惑が生まれた。
そして今、私は喜びに浸っている。ありとあらゆる全私が雄叫びの声を上げ、踊り狂い、己の全てを持って喜びを表現している。

「ほ、本当にいいの!?私、こういうの遠慮しないよ?全然待たせちゃうタイプだよ?大丈夫?」

「気にする事は無いわ。私が一緒に帰りたいだけだもの。」

 一体全体、私はどうしてこんなにも幸福なのか。あれかな?いつも笑顔(※とても可愛い)でいる私に福が舞い降りたのかな?
それとも私と竜胆さんは運命の赤い糸で結ばれているのだろうか?なにそれ、素敵な未来が確定してるじゃん(勝利の微笑み)

「何でにやにやとしているの?」

 おっと、私のポーカーフェイスはどうやらお散歩に行っているらしい。おーい、戻ってこーい!(元から無いなんて事は考慮しないものとする)

 それはともかく、竜胆さんと一緒に帰れるのであれば私にれる選択肢は一つしかないのである。

「じゃあ、ちょっと待っててね!なるはやで適当に終わらせちゃうから!五分ごふんで終わらすから!!」

五分ごふんで書き終えるのは流石に難しいと思うのだけれど…。」

 中学生時代に大量に反省文を書かされていた、反省文マスターの私は結構本気で言ったのだが、そんな事を知るよしもない竜胆さんは苦笑いを浮かべている。…苦笑いする竜胆さんもやっぱり可愛い。

 さて、とっとと竜胆さんとの下校フェイズに移りたい私はカバンから、こんな事もあろうかと用意していたマイ原稿用紙を取り出し、思ってもいない謝罪の言葉を書き連ねていった。
そんな私を、竜胆さんは横からじっと見つめている。
少し気になり、ちらっとそちらを見ると、目が合い、そして微笑んでくれた。


 うん…。結局、竜胆さんしか勝たんのよ。
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