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第7話 新米教師と個性的な生徒【五十嵐 優香 視点】
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『反省文』
一年A組 小森 華奈
ごめんなさい。要約するとその一言になりますが、これだけでは謝罪文となってしまいます。
従って、言い訳のようになってしまうかもしれませんが、原因を考察していきたいと思います。
まず明らかとしたいのは、本当に私が悪かったのか、ということです。
私には悪気があった訳ではありません。先生の話を聞いていなかったのは故意ではなく過失なのです。
私は人間なので、完全に不注意を無くすことは出来ません。どれだけ気を入れても、最終的に起こるかどうかは確率論です。私にはその確率をゼロにする事は出来ません。もちろん起こる確率は減らせますが、決してゼロにはならないのです。
そのゼロにならなかった確率がたまたま今回作用してしまっただけなのです。そこに私の意思など皆無です。
私は悪くないと思いませんか?私は思います。
よって、これ以上反省文を書くことが出来ません。
改める過ちなど無いんですから。
だって私、悪くないですし。 結論、全部偶然!
以上
━━━━━━━━━━━━━━━
「はぁ…。」
私は職員室で、さっき提出された反省文を読んだ。
そして直ぐに理解した。これ、反省してないやつだ。
思わずため息をついてしまった。
なんでこんなに開き直っているのだろうか。こんな理論が許されるならば、何か起こっても全て偶然で済ませられてしまう。私は頭を抱えた。彼女には常識が備わっていないようだ。
読んでいた反省文(?)を机に置き、マグカップに入れて置いたコーヒーを飲んで一息つく。
そうして落ち着いてから、この反省文を書いた少女、小森 華奈の事について考えてみる。
彼女は新入生の中でも目立っていたので、強く印象に残っている。それくらい外見が際立って良いのだ。
目鼻立ちがはっきりしていて、超小顔なのである。
髪型は、肩甲骨くらいまでの髪を軽く巻き、ハーフアップのツインお団子ヘアーをしている。まさに今どきの女子高生モデルといった感じで非常に可愛らしい。仮に小森さんが雑誌の表紙を飾ったとすれば、売り切れ間違いないだろう。少なくとも私は最低3冊は買う。読む用・鑑賞用・保存用だ。
それに加えて、彼女は頭も良いのだ。うちの高校は結構な進学校なので偏差値が高い。通っているだけで頭が良いといえる。
彼女に欠点は無いのだろうか?
…まぁ、今日を振り返ると少し阿呆っぽいとは思うけど。しかし、それも彼女の魅力なのだろう。
私は新米教師。担任を持つことは初めてだ。失敗も多いし、知識も全然無い。やること、覚えることは山ほどある。
でも、先ずはこうやって生徒たちの魅力をたくさん見つけていきたい。生徒一人一人に向き合える先生が私の理想だから。
取り敢えず彼女のことは問題児認定しておこう。
うん。これも向き合った結果である。
◆ ◇ ◆
翌日、朝の職員会議が終わり、職員室から教室へ向かう途中の廊下で、学校中がざわついていることに気づいた。
(新入生歓迎会があるから浮ついてるのかな?)
そう思ったが、どうやら違うらしい。何故か全員が校門の方を向いて
「可愛い!」
「モデルさん!!?」
「誰??!」
とか言って盛り上がっている。
(芸能人…?)
もし芸能人が来ているとしたら、おそらく新入生歓迎会に呼んだのだろう。しかし、教師である私もそんな話は聞いていない。
疑問に思ったので私も確認してみた。
小森さんがいた。
(小森さん!?なんで!!?)
何故こんなに騒がれているのだろう。確かにモデルやアイドル並に容姿が整っているが、昨日はここまで騒がれていなかった。どうして騒がれているのか知るために、もっとよく観察してみる。
そして気づいた。小森さんの横には、同じく私のクラスの竜胆さんもいたのだ。小森さんが可愛い系なら、竜胆さんは美人系の顔をしている。
(…なるほど。)
そこで私は全てを察した。この世には『可愛いは二乗される』という定理が存在するらしい。
つまり、昨日は一人ずつだった彼女らはまだ目立っていただけで騒がれてはいなかった。それが行動を共にしたことで、可愛い(注目度)が二乗。さらに視線を集めるようになった結果、こんなに騒がれているのだ。
(まぁこれは誰も悪くないか…。)
私は小森さんがまた何かやらかしたのかと思ってしまった。申し訳ない…。
それにしても、昨日の今日でもう一緒に登校するくらい仲良くなったのか。と、そんな事を考えながら教室へと向かう。
今日、私は予感がした。これからも小森さん達は話題の中心となるだろう、と。
そんな兆しが垣間見えた。
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