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第8話 二人きりの登校
しおりを挟む入学式の翌日。その朝…。
私は竜胆さんに教えてもらった番号の部屋の前にいた。…ここが女神の住まう楽園か。
この扉、実は天界に繋がっているとかありそうだ。
果たして、私なんかが近づいて良いのだろうか。
恐れ多すぎて指が震えるが、慎重に狙いを定めてインターホンを鳴らす。すると、「小森さんね。すぐに行くわ」と返事があったので、扉の前で待つ。
(竜胆さんと一緒に登校…。緊張する。学校の皆に噂されてしまったらどうしよう。あの二人、同じマンションから出てくるの見たよ?みたいな。)
…あれ、これって既成事実ってやつでは?
そんな馬鹿なことを考えていると竜胆さんがドアを開けて現れた。
「おはよう、小森さん。お待たせ」
「おはよ~!全然待ってないから大丈夫だよ!」
顔良し声良しスタイル良し。
うん。今日も竜胆さんは最強である。
「それなら良かったわ。では、行きましょうか」
「はーい!」
私と竜胆さんはマンションを出て、昨日の帰り道と同様に桜が舞い散る道を通って登校する。
「今日は学力調査テストだったかしら?」
「そうだね。あと午後からは新入生歓迎会がある感じ!」
「あぁ、明春フェスね。」
そう。うちの学校の新入生歓迎会は気合が入っていて、フェスのように盛り上がることから、明春フェスとも呼ばれるらしい。学生バンドやダンスユニット、生歌披露などがあり、テンションマックスで騒ぎまくるのだとか。気合入りすぎだろ、いいぞもっとやれ。
「小森さん、お昼は学食?」
「そう、今日は学食だよ~。お母さんがお弁当作ってくれるって言ってたけど、学食で食べてみたくて!」
学食の名物は、彩り野菜カレー。人参・じゃが芋・玉ねぎの他に、ナス、かぼちゃ、パプリカが入っていてるので、とってもヘルシーだ。そのため、女子校のうちでは不動の人気を誇っている。クチコミでは、
「これを食べてお肌の調子が良くなりました!」
「これ食べたら痩せました!」
「宝くじに当たりました!」とか言われている。
おい最後のやつ名乗り出ろ!!友達にならないか?
「竜胆さんは?」
「私も今日は学食で食べるわ」
「じゃあ一緒に食べようね!」
「えぇ、もちろん」
ふっ。私たちは強い絆で結ばれているのだ。
今からお昼が楽しみである。
そんな事を話していると、学校に着いた。やはり、家から学校まで近いと良いね。すごく楽だ。
しかし、先程からチラチラと視線を感じている。
それに心做しか周囲がざわついている。
…ふむ。私たち、目立ち過ぎ説あるな。
でもしょうがない。私と竜胆さん可愛いもんな。
並んだら相乗効果で可愛いが天元突破してしまうのだ。可愛すぎてごめん。
まぁ、注目の的というのも悪くないものだ。むしろ良い気分である。まるで自分が有名人かのように思えるからね。宛ら今の私はレッドカーペットを歩く女優の気分である。
ん?年収?百億円くらいかな。
結婚しよう?ごめん。私にはフィアンセがいるんだ。
そんな妄想をしながら、下駄箱で上靴に履き替えて教室へと進む。
「竜胆さんはテストどんな感じ?」
「順当に行けば問題ないと思うわ」
「おぉ、凄いなぁ。私もそのくらい自信持って言えるように勉強もっと頑張らなきゃ!」
ちなみに、勉強を頑張る!という決意はテストがある度に毎回している。だが私の決意は雑魚なのだ。一週間ほどしかモチベーションが続かない。
勉強を頑張る前に心を強くするべきかもしれない。山に篭って修行しようかな?滝行とかも良いかも。
…いや、心が強くなる頃には勉強の仕方を忘れそうだ。やめておこう。
さて、ついに教室に着いてしまった。席の離れている私たちはここで一旦お別れだ。悲しい。
席に着いたらテスト前の復習作業をしよう。そう思いながら教室へと入る。
その瞬間、教室内は静寂に包まれた。
私、嫌われてる?と思ったが違う(え?違うよね?)
おそらく、このクラスの女神と天使が一緒に登校してきたことに驚いたのだろう。
やっぱり結構目立ってるんだなぁ。
はいはい、可愛すぎてごめんね(適当)
まぁ、気にしてもどうしようも無いので無視をする。
正直こういう事には慣れているのでね(達観した笑み)
「とりまテスト頑張ろ!」
「そうね。ではまた、お昼にね」
「はーい!」
そう言って私たちは別れ、それぞれの席に向かった。自分の席に座った私は、テスト範囲のお浚いをする。…こんなんやった記憶がねぇわ。
危機感を覚え真面目に勉強しながらも、頭の片隅では竜胆さんのことを考えてしまう。それどころか頻りに無意識で彼女に視線が向いている。
恋ってまじで病。
そんな事を思いながらも勉強の手は止めない。
テストという名の決戦は、中途半端な準備で挑むと致命傷を負うのだ。
装備をしっかり整えてボス戦に臨むのが勇者の役割なのだ。
私、この戦いが終わったら竜胆さんと一緒にお昼を食べる約束をしているんだ…。(死亡フラグ)
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