初恋は一期一会 ~彼女が可愛すぎるので、私の心臓は多忙な日常を送っています~

羽海

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第9話 初めての学食

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 ここが…そうなのか。
私はとある場所に来ていた。その空間は広く、数多くの机や椅子が規則的に並べられている。美味しそうな匂いが漂い、私はまるで花に吸い寄せられる蝶のようにフラフラと中までいざなわれた。
 しかし、その歩みは途中で止まる。後ろから肩を掴まれ、停止させられたのだ。
一体いったい、私の邪魔をするのは誰なのだろう。肩を掴んできた奴の顔をおがむため、後ろを向く。
目に映ったのは女神竜胆さんであった。

「フラフラしていると危ないわよ?」

「あ、うん。そうだね。ありがとう」

 お陰様かげさまで正気に戻れました。もう少しで食欲に飢える獣とすところだった。そうなってたら淑女失格となっていただろう。いや、獣と化すのならその前に人間失格まであるわ。ケモミミ華奈ちゃんになるところだった。…あれ?それはそれで需要ありそうだ。
まぁ、それはともかく気を取り直して竜胆さんと一緒に食券機へと向かう。混む前に注文したいからね!


━━━━━━━━━━━━━━━


 という訳でテストが終わった私たちは現在、食堂にいた。頭を使ったからお腹ぺこぺこである。

「竜胆さんは何にするの?」

「私は彩り野菜カレーにするわ」

「一緒じゃん!美味しそうだよね!!」

 流石、人気ナンバーワンメニュー。竜胆さんにも選ばれるなんて中々やるではないか(謎目線)
 食券を買ってカウンターに出すと、どうやら直ぐに用意出来るようなので横にずれて待つ。すると、を空けずに提供してくれた。そのスピード、まさにファストフード店が如し。学食はファストフード店だった…?

 さて、カレーが乗るトレイを受け取った私たちは、いている席へと移動する。テストが終わってすぐに来たので、まだ全然人は座っていない。どの席とするか選び放題である。

「どこ座る?」

「そうね、窓際とかで良いんじゃないかしら。」

「じゃあ、あそこにしよ!」

 そう言って学食の端っこにある二人席に座った。端ならあんまり目立たないだろうしね。朝より頻度は下がったが、未だに視線を感じることがあるのだ。食事くらい気ままに取らせてくれ…。

「このカレーめちゃ美味しそう…!」

「野菜が山ほど入っているわね」

 家で食べるカレーと全然違う。どんな味がするのだろう。

「早速食べよっか!」

「えぇ、そうしましょう」

 竜胆さんをうながした私は、軽く手を動かしてカレーとお米を一緒にスプーンですくう。それから、ゆっくりと口に入れた。

(…こ、これは!!?)

 口に入れた瞬間、スパイスのこうばしさと野菜の甘みが一気に広がって口内を蹂躙じゅうりんした。あまりの衝撃に私は叫んだ。

「美味しい!美味し過ぎる…!!」

 こんなに美味しいカレーが存在したのか。野菜の水分だけで作っているかのような凝縮された風味と、多種多様な香辛料とが生み出す革命的な美味しさである。野菜の風味が多く存在するために、スパイスが通常よりも際立っているのだ。香りは通常のカレーよりも、クミンのスパイシーな匂いが強い気がする。この匂いにより食欲が増進され、無限に食べれるかのように感じる。また、様々な野菜が入っているため途中で味に飽きがこない。結論として、星五つ。私の知るカレーの中で最も美味しいと思う(早口)

「凄く美味しいわ。本格的なレストランで出てくるような完成度ね」

 その後、私たちは感想を言い合うのも程々に、お互い夢中で食べ続けた。こんなの止めらんねぇよ…。

 最後のひとくちを食べ、無事に完食した私は、心地よい満腹感に浸っていた。これが幸せか。

「これまじで美味しかったね!これが学食で食べられるなんてやばくない?」

「値段も手軽だし、毎日食べてしまうかも」

 彩り野菜カレー、なんと税込五百円…!このボリュームでワンコインは安すぎる。これは人気ナンバーワンになりますわ。

「気持ち分かる!カロリーも少ないしね」

 彩り野菜カレー無敵説ある。

「でも、私的には少し量が多かったわ。食べれない程では無いのだけれど、午後に眠くなってしまいそう」

「あぁ、確かに。結構な量あったもんね」

 私は少食系なのだ。外食する時は、主食を頼むとお腹いっぱいになるのでデザートが食べれないタイプである。おそらく、竜胆さんも同じ感じなのだろう。

「それなら次からシェアして半分ずつ食べる?」

「良いの?」

「私も量ちょっと多いなって思ってたし!逆に助かるくらいだよ」

「そうね…。では、お願いしようかしら」

「うん!任された!!」

 お昼シェアとかまじ親友じゃん。最高かよ。

「そろそろ教室に戻りましょうか。新入生歓迎会があるし、早めに集まっておきましょう」

「そうだね、行こっか!」

 そうして私たちはお皿などをカウンター横の返却口に片して、教室へと向かう。その途中で、担任の五十嵐いがらし先生と遭遇した。

「あ、小森さんと竜胆さん!ちょうど良かった。ちょっと頼みたいことがあるんだけど」

「なんですか~?」

「黒板に、各自で体育館に集合するように指示を書いておいてくれない?この後、少し呼ばれていて教室に寄れる時間無さそうなの」

「分かりました、大丈夫ですよ!」

「ありがとう!よろしくね」

「はーい!」

 五十嵐先生は早足で去っていった。あ、何も無いところでつまずいて転びかけた。恥ずかしそうにしている。
ドジっ子かよ、可愛いじゃん。

 改めて教室へと向かう。一年生の教室は四階にあるので、一階の食堂から少し離れている。階段を登るのが地味に大変だ。その苦行を乗り越えて、やっと教室に着いた。

「じゃあ私、黒板に指示を書いちゃうね!書き終わったら体育館に移動しよ?」

「そうね、賛成よ」

「ちょっと待っててね!」

 先生に言われた通り、各自で体育館へ移動するむねの指示を黒板に書く。…これで良し!

「お待たせ!じゃあ行こ!!」

 竜胆さんと一緒に、今度は二階にある体育館へと向かう。いよいよ明春フェスか…。

私は、期待に胸を膨らませながら廊下を進んだ。
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