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The Eraser of Constellation
軌跡(ほし)を辿る-10
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「ねぇひとつ気になったんだけどさ、華那千代って魔法使いの国なはずなのにドラゴンの襲撃に備えられる人って少ないんだね。」
「聖ちゃん…それは言っちゃいけないお約束…」
「そもそも華那千代の人たちって普段どんなことに魔法を使っているのかもよくわかってないんだよね。動力源とか?」
「うーん、人によってまちまちだけど基本生活に役立つような魔法を使う人が多いね。街中で攻撃魔法を使うと最悪逮捕されるし。」
「やっぱここでは魔法がテクノロジーかぁ。」
「宮間くんや中峰くんみたいに魔法の才能がある人以外は魔法で戦う、みたいなのとは縁がないかな。僕も戦闘はからっきし。」
「ふーん。優秀な魔法使いが軍人か学者になるってことか。まあどこも似たようなものなんだね。」
「そうだねぇ。」
「ああ、そうだそんな話している場合じゃなかった。長畑くんに聞きたいことがあったんだった。」
「えっ、なになに?なんでも答えてあげちゃう!」
「中峰くんを見かけなかった?」
「中峰くん?見たには見たけど…」
「…?」
どうにも歯切れの悪い返事だ。彼らしくない。確か中峰は誰か親しい人を介さないと会話ができないほどの人見知りだったはずだ。ここで一人で行動するのは愚策…いや、こんな時まで外に出たがらないのだろうか。
「…口で説明するより実際に見た方が早いと思うけど、中峰くんは今ある場所から動けない状態なんだ。」
「動けない?何日も?」
「うん。でも不思議なことに全然変化がないんだ。たぶん彼のまわりにある不思議な空間の力だと思うけど…」
「不思議な空間?」
「彼に対して何らかの魔法が発動しているっぽいんだ。触れようにもその力に弾かれるし僕にはどうしようもない。」
時間の流れが異なる謎の空間…結界みたいなものだろうか。中峰が事件の元凶だと知った何者かが魔法で彼を閉じ込めたのだろうか、それとも中峰が自分で…?
「たぶん俺がなんとかできるものでもないと思うなぁ…。うーん、白城くんが戻ってきたら様子だけでも見に行こうか。」
「うん、そうだね。」
案の定剣崎はすぐに戻ってきた。意地を張って出ていった手前、特に行くところもなかったのだろう。
「おう、おかえり。」
「…なんかむかつく迎え方だな。そんなに俺が滑稽だったか。」
「ああ、なかなか面白いものを見させてもらったな。」
「てめぇっ…!」
「Stop、stop!!2人とも周り見て、ここ病院だから!」
「…。」
「ほら、ユウ!俺だったらこんなに元気だから!」
宮間は宮間で騒がしいし、こいつが元気であることをアピールするほど剣崎のプライドはへし折られる気もするが…
「はあ…とりあえず宮間は問題なく動けるようだしそろそろ移動したいんだが…。これ以上聖から目を離すのも気が気でない。」
「確かヒジリはトモを探してくれてるんだっけ?彼は今どこにいるんだい?」
「たぶん中心街にある学校だと思う。勝手にいなくなったりしないだろうし。」
「中心街のSchool…ああ、俺が通ってたところだね!遠征に行ったきり足を運んでなかったから懐かしいなぁ」
「ってことは宮間お前、倉持さんのことも知ってんのか?」
「倉持先生のこと?知ってるよ!むしろユウの知り合いってことに驚きだよ!」
「倉持と言い、岩村と言い、予想外の面々がここに揃っているな。」
しかも宮間が知っている彼らと俺たちが知っている彼らの姿にはかなり違いがあるのが面白い。知り合いが一方的に歳をとる様を観察するのは不老不死ならではの体験だが、今まで不条理さは感じたものの面白さは感じたことがなかった。
「…ん?そういえば宮間はなんで俺が不老不死であることを知っているんだ?病院で確かにそんなことを言っていたよな?」
「ああ、それは俺が教えたから!」
「剣崎、お前ってやつは…!以前理研特区に行った時もやったよな!?」
「なんで怒るんだよ~!いいじゃん、不老不死!俺なら自慢して歩く!」
「お前は知らないからっ…!」
「知らない?何を?」
「いや、なんでもない…」
他国だろうと油断はできない。俺を目の敵にしている輩は自分のテリトリー外については興味がないので心配することは無いが、不老不死者という特異な存在を迫害したり捕獲して分析したりと考える者はどこの国にだっているものだ。剣崎は人の悪意を知らない訳でもないだろうに…
「ほ、ほら、ユウは不老不死になりたてだから!カズは長い間生きてて色々あったんだよ!」
「色々…まあ確かに出会った頃のこいつは今以上に無愛想で目が死んでたしな。それについても将来的には『剣崎雄の世界論』に記録したいもんだぜ。」
「世界について記録している書物じゃなかったのか?俺のことなんて書いてどうすんだ…」
一生ここで償うべきか、元の世界に帰るべきか…まだ僕の気持ちは揺らいだままである。時間は無限にあるのだから魔法学研究所も学園の訓練施設も無事なこの空間で修行を積めばいつかはあのドラゴンを倒す力を身につけることはできるだろう。だがここでドラゴンを倒したからと言って華那千代の街が崩壊前の姿に戻るとは限らない。ここが過去そのものなのか過去を模した別世界なのかわからない以上元の時間に帰れても街が平和な時の姿に戻る保証はない。
「タイキ…トモ…僕はどうすればいい?」
もちろんこの問いかけに彼らが答えてくれることはない。まるで昔新井師匠が遊ばせてくれたゲーム機という玩具の中に登場する登場人物たちのように、この世界の住人たちは決められた動きしかしない。
ふとシャツの袖を捲って自分の腕を見る。この空間では時間を遡っても僕自身についてはリセットさせるところとされないところがあるらしく、腕につけた傷跡はそのまま残っている。これはやり直した回数…と言ってもスペースが無くなりそうだったから左右合わせて30本くらいで止まっている。これ、ここから出たら治るよね…?
「…そしたら今度は時間遡行を上手く使って犠牲になった人の数だけ…いやどうなんだろう、ここに来る前街を見渡したけどそこまで人が死んだ形跡はなかった気が…」
いや、きっと気のせいだ。自分の責任を軽くしようと僕自身が無意識に記憶を改ざんしているに違いない。
「聖ちゃん…それは言っちゃいけないお約束…」
「そもそも華那千代の人たちって普段どんなことに魔法を使っているのかもよくわかってないんだよね。動力源とか?」
「うーん、人によってまちまちだけど基本生活に役立つような魔法を使う人が多いね。街中で攻撃魔法を使うと最悪逮捕されるし。」
「やっぱここでは魔法がテクノロジーかぁ。」
「宮間くんや中峰くんみたいに魔法の才能がある人以外は魔法で戦う、みたいなのとは縁がないかな。僕も戦闘はからっきし。」
「ふーん。優秀な魔法使いが軍人か学者になるってことか。まあどこも似たようなものなんだね。」
「そうだねぇ。」
「ああ、そうだそんな話している場合じゃなかった。長畑くんに聞きたいことがあったんだった。」
「えっ、なになに?なんでも答えてあげちゃう!」
「中峰くんを見かけなかった?」
「中峰くん?見たには見たけど…」
「…?」
どうにも歯切れの悪い返事だ。彼らしくない。確か中峰は誰か親しい人を介さないと会話ができないほどの人見知りだったはずだ。ここで一人で行動するのは愚策…いや、こんな時まで外に出たがらないのだろうか。
「…口で説明するより実際に見た方が早いと思うけど、中峰くんは今ある場所から動けない状態なんだ。」
「動けない?何日も?」
「うん。でも不思議なことに全然変化がないんだ。たぶん彼のまわりにある不思議な空間の力だと思うけど…」
「不思議な空間?」
「彼に対して何らかの魔法が発動しているっぽいんだ。触れようにもその力に弾かれるし僕にはどうしようもない。」
時間の流れが異なる謎の空間…結界みたいなものだろうか。中峰が事件の元凶だと知った何者かが魔法で彼を閉じ込めたのだろうか、それとも中峰が自分で…?
「たぶん俺がなんとかできるものでもないと思うなぁ…。うーん、白城くんが戻ってきたら様子だけでも見に行こうか。」
「うん、そうだね。」
案の定剣崎はすぐに戻ってきた。意地を張って出ていった手前、特に行くところもなかったのだろう。
「おう、おかえり。」
「…なんかむかつく迎え方だな。そんなに俺が滑稽だったか。」
「ああ、なかなか面白いものを見させてもらったな。」
「てめぇっ…!」
「Stop、stop!!2人とも周り見て、ここ病院だから!」
「…。」
「ほら、ユウ!俺だったらこんなに元気だから!」
宮間は宮間で騒がしいし、こいつが元気であることをアピールするほど剣崎のプライドはへし折られる気もするが…
「はあ…とりあえず宮間は問題なく動けるようだしそろそろ移動したいんだが…。これ以上聖から目を離すのも気が気でない。」
「確かヒジリはトモを探してくれてるんだっけ?彼は今どこにいるんだい?」
「たぶん中心街にある学校だと思う。勝手にいなくなったりしないだろうし。」
「中心街のSchool…ああ、俺が通ってたところだね!遠征に行ったきり足を運んでなかったから懐かしいなぁ」
「ってことは宮間お前、倉持さんのことも知ってんのか?」
「倉持先生のこと?知ってるよ!むしろユウの知り合いってことに驚きだよ!」
「倉持と言い、岩村と言い、予想外の面々がここに揃っているな。」
しかも宮間が知っている彼らと俺たちが知っている彼らの姿にはかなり違いがあるのが面白い。知り合いが一方的に歳をとる様を観察するのは不老不死ならではの体験だが、今まで不条理さは感じたものの面白さは感じたことがなかった。
「…ん?そういえば宮間はなんで俺が不老不死であることを知っているんだ?病院で確かにそんなことを言っていたよな?」
「ああ、それは俺が教えたから!」
「剣崎、お前ってやつは…!以前理研特区に行った時もやったよな!?」
「なんで怒るんだよ~!いいじゃん、不老不死!俺なら自慢して歩く!」
「お前は知らないからっ…!」
「知らない?何を?」
「いや、なんでもない…」
他国だろうと油断はできない。俺を目の敵にしている輩は自分のテリトリー外については興味がないので心配することは無いが、不老不死者という特異な存在を迫害したり捕獲して分析したりと考える者はどこの国にだっているものだ。剣崎は人の悪意を知らない訳でもないだろうに…
「ほ、ほら、ユウは不老不死になりたてだから!カズは長い間生きてて色々あったんだよ!」
「色々…まあ確かに出会った頃のこいつは今以上に無愛想で目が死んでたしな。それについても将来的には『剣崎雄の世界論』に記録したいもんだぜ。」
「世界について記録している書物じゃなかったのか?俺のことなんて書いてどうすんだ…」
一生ここで償うべきか、元の世界に帰るべきか…まだ僕の気持ちは揺らいだままである。時間は無限にあるのだから魔法学研究所も学園の訓練施設も無事なこの空間で修行を積めばいつかはあのドラゴンを倒す力を身につけることはできるだろう。だがここでドラゴンを倒したからと言って華那千代の街が崩壊前の姿に戻るとは限らない。ここが過去そのものなのか過去を模した別世界なのかわからない以上元の時間に帰れても街が平和な時の姿に戻る保証はない。
「タイキ…トモ…僕はどうすればいい?」
もちろんこの問いかけに彼らが答えてくれることはない。まるで昔新井師匠が遊ばせてくれたゲーム機という玩具の中に登場する登場人物たちのように、この世界の住人たちは決められた動きしかしない。
ふとシャツの袖を捲って自分の腕を見る。この空間では時間を遡っても僕自身についてはリセットさせるところとされないところがあるらしく、腕につけた傷跡はそのまま残っている。これはやり直した回数…と言ってもスペースが無くなりそうだったから左右合わせて30本くらいで止まっている。これ、ここから出たら治るよね…?
「…そしたら今度は時間遡行を上手く使って犠牲になった人の数だけ…いやどうなんだろう、ここに来る前街を見渡したけどそこまで人が死んだ形跡はなかった気が…」
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