Prisoners(千年放浪記-本編4)

しらき

文字の大きさ
1 / 23
Indulgentia

1

しおりを挟む
 「あら、エリックさん。探しましたわよ。手が空いているならお手伝いして欲しいのですが…」
「ああ、わかった。それにしても最近やたら人が来るね。」
「それはそうでしょう。わが国のホルニッセ第一王子が行方不明なんてみなさん不安になるに決まっています。私だって…」
「そういえばそんなことがあったな。いや、俺はあまり俗のことには興味がなくてさ。」
「まあ。」
俺とこの女、シスター・カトリーは町はずれの教会で“迷える子羊”たちの話を聞くのが仕事だ。カトリーの言う通り最近この国、ヴァッフェル王国の王族が行方不明になるという事件が起きてから教会に訪れる人の数が一気に増えた。奴らの話を聞くのが仕事だとは言ったが相談や説法は無償で行っているため実質タダ働き。一応訪れる人が増えれば教会で販売しているパンやワインの売り上げも伸びるが、それでも雀の涙。だがこれ以上物販を拡大すれば真面目な信徒たちの反感を買うに違いない。
「あんたは一体誰が王子サマを誘拐したと思う?」
「あら、エリックさんはその噂が本当だと思っていらっしゃるのね。私もよくその話を聞きますわ。」
「その言い方だとシスターは誘拐じゃないと思っているようだな。」
「ホルニッセ様はとても好戦的な方だとお聞きしましたわ。なんでも軍隊の先頭に立って戦われるとか…」
「なんだ、随分とひどいことを考えるんだね。そりゃあお国に対する侮辱じゃないのか?」
「まさか私も本当にそうだとは思っていません…!しかし誘拐と考える方が非現実的ではなくて?」
「確かにあの坊ちゃんはかなり腕がいいらしいからな。だがそれに対する驕りか知らないけどほとんど護衛をつけず城下町をうろうろしていることがしょっちゅうあるらしいからな。」
「エリックさん…俗のことに興味がなかったのでは?」
「興味はないさ。だが職業柄嫌でもそういう話が飛び込んでくるから。」
「ふふ、それもそうですわね。」
「まあ、とにかくああ見えてあの王子はスキだらけだ。王族に恨みがある奴、金が欲しい奴、単に目立ちたい奴…そんな奴らが狙いをつけていても不思議ではない。」
「そんな…。」
「まあ真相はわからないがな。」
真っ白すぎて吐き気がする女を置いて教会へ戻った。“ホルニッセ王子はこの国の光だ。そんなお方が行方をくらますなどこの国は終わりだ…!”、そんなことはない。この国の政治は現国王が行っており、第一王子の役割はせいぜい国軍の指揮。彼には優秀な弟がおり後継者としてはむしろそちらの方が望まれている。“こんな状態じゃしばらく祭りもできやしない!”、王族とはなんて可哀想な存在なんだ、自分自身が愛する国民を苦しめていることも知らずにどこかでのうのうと生きて…あるいは野垂れ死んでいるのか。実にその皮肉は面白い。その身1つで世の中の経済を動かす男、Hornisse=Zacharias。俺が形式上崇めている神というやつもそうだ。偶像の影響力、経済効果は計り知れない。ああ、一歩遅かった。王子を誘拐した何者かのせいで俺も指をくわえて見ている側になってしまったではないか。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

はじめまして、私の知らない婚約者様

有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。 見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。 けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。 ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。 けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。 この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。 悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに? ※他サイトにも掲載しています。

【完結】あなたに知られたくなかった

ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。 5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。 そんなセレナに起きた奇跡とは?

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。 だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。 しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。 王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。 そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。 地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。 ⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。

処理中です...