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Marionnette
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「見て、千!ロン結構人気みたいだよ!」
「それはわかったが、何故お前は俺に付きまとうんだ。」
「ホルニもロンもいないから。」
「お前そんなんで王子を探す気あんのかよ…」
マルコのせいで優雅な一人旅ではなくなってしまったが、そもそも情勢的に一人旅を楽しめるような状況でもなかったのでそれはいい。しかしあれだけ外食や路上でのショーを自粛していた市民たちがロンこと獅子堂倫音のライブ配信には興味を持つというのは不思議である。恐らくそのへんはあの烏丸とか言う男が不謹慎な娯楽に見えないように上手く売り出しているのだろう。それにしてもたかが王子の失踪程度であれだけお通夜ムードになるあたりヴァッフェル王家は国民に支持されるどころか信仰されているのではなかろうか。それともあらゆる娯楽や観光産業を停止させるだけの権力を国が持っているのか…。
ところで意外なのは魔法や錬金術が主流のヴァッフェル王国でスマートフォンなどの電子機器が普及していることだ。俺の故郷である若市は1世紀前に鉄道が出来たり科学技術が流入したが、以降あまりそれらは発展することなく魔力や妖力に頼った生活は未だに続いている。若市の近くにある華那千代という小国も魔法こそがテクノロジーであり100年前に訪れた際には電子機器の気配すらなかった。逆に理研特区は科学が発展しているものの魔法のような非科学的なものは全く見られない。その点ヴァッフェル王国は科学と非科学の融合が上手く、そのうえ芸術や食文化は独自の伝統を守っている。こりゃ観光地にうってつけなわけだ。
「「ホルニッセ第一王子の無事を祈って、この歌を歌いたいと思います!」」
「…あー、やっぱり烏丸はそういう売り出し方をしたわけか。」
「そういう売り出し方って?」
「獅子堂倫音、アーティスト名としては”ロン”のイメージ画像は白い翼に十字架だろ。」
「うん、そうだね。人前に出たくないロンの気持ちを理解してもらえたのか顔写真は公開していないもんね。おれはシンプルでかっこいいデザインだと思うけど。」
「そう、シンプルで大衆に媚びないデザイン。それに翼や十字架って神や天使、救世主ってイメージもないか?」
「言われてみれば。そうか、烏丸さんはロンがこの状況下でも音楽活動をできるように”祈る”シンガーとして売り出したんだね。ホルニが行方不明になっている状況下で不謹慎にならない売り方をする!すごいけど、なんで誰もその抜け穴に気付かなかったんだろうね。」
「烏丸が賢かったのと、それに加えて強欲だったからだろうな。」
「強欲?」
「じゃなきゃわざわざこんな時期に抜け穴を探して新たな商売なんて始めないだろ。」
「それもそうかー。いや、それともリスクを冒してまで一攫千金のチャンスに手を伸ばさなきゃいけない事情があったのかも。」
「は?それは考え過ぎじゃないか?」
「だってなんとか…ノワールだっけ、あの人が挙げてた会社か事務所の名前、聞いたことないし。」
「…てことは援助の件も嘘かもしれないってことか?」
「わからない。ロンを手に入れたい一心で言った出まかせかもしれないけど…。でも実際今上手くいっているのは確かだし…。」
「やめとけ、ただでさえホルニッセ王子の件を抱えているのにこれ以上首を突っ込むな。」
「うん…。まあまだ何か悪いことが起きているわけでもないしね。」
アンティーク調のヴァッフェルの街並みに絶妙に釣り合っているようないないような、魔法によって作り出されたスクリーンには人だかりが出来ていた。いくら娯楽がないからと言ってそこまでぽっと出の無名歌手に人気が集まるのだろうか。いや、それが烏丸も何としてでも手に入れたいと思ったロン…獅子堂倫音の才能なのだろう。
「それはわかったが、何故お前は俺に付きまとうんだ。」
「ホルニもロンもいないから。」
「お前そんなんで王子を探す気あんのかよ…」
マルコのせいで優雅な一人旅ではなくなってしまったが、そもそも情勢的に一人旅を楽しめるような状況でもなかったのでそれはいい。しかしあれだけ外食や路上でのショーを自粛していた市民たちがロンこと獅子堂倫音のライブ配信には興味を持つというのは不思議である。恐らくそのへんはあの烏丸とか言う男が不謹慎な娯楽に見えないように上手く売り出しているのだろう。それにしてもたかが王子の失踪程度であれだけお通夜ムードになるあたりヴァッフェル王家は国民に支持されるどころか信仰されているのではなかろうか。それともあらゆる娯楽や観光産業を停止させるだけの権力を国が持っているのか…。
ところで意外なのは魔法や錬金術が主流のヴァッフェル王国でスマートフォンなどの電子機器が普及していることだ。俺の故郷である若市は1世紀前に鉄道が出来たり科学技術が流入したが、以降あまりそれらは発展することなく魔力や妖力に頼った生活は未だに続いている。若市の近くにある華那千代という小国も魔法こそがテクノロジーであり100年前に訪れた際には電子機器の気配すらなかった。逆に理研特区は科学が発展しているものの魔法のような非科学的なものは全く見られない。その点ヴァッフェル王国は科学と非科学の融合が上手く、そのうえ芸術や食文化は独自の伝統を守っている。こりゃ観光地にうってつけなわけだ。
「「ホルニッセ第一王子の無事を祈って、この歌を歌いたいと思います!」」
「…あー、やっぱり烏丸はそういう売り出し方をしたわけか。」
「そういう売り出し方って?」
「獅子堂倫音、アーティスト名としては”ロン”のイメージ画像は白い翼に十字架だろ。」
「うん、そうだね。人前に出たくないロンの気持ちを理解してもらえたのか顔写真は公開していないもんね。おれはシンプルでかっこいいデザインだと思うけど。」
「そう、シンプルで大衆に媚びないデザイン。それに翼や十字架って神や天使、救世主ってイメージもないか?」
「言われてみれば。そうか、烏丸さんはロンがこの状況下でも音楽活動をできるように”祈る”シンガーとして売り出したんだね。ホルニが行方不明になっている状況下で不謹慎にならない売り方をする!すごいけど、なんで誰もその抜け穴に気付かなかったんだろうね。」
「烏丸が賢かったのと、それに加えて強欲だったからだろうな。」
「強欲?」
「じゃなきゃわざわざこんな時期に抜け穴を探して新たな商売なんて始めないだろ。」
「それもそうかー。いや、それともリスクを冒してまで一攫千金のチャンスに手を伸ばさなきゃいけない事情があったのかも。」
「は?それは考え過ぎじゃないか?」
「だってなんとか…ノワールだっけ、あの人が挙げてた会社か事務所の名前、聞いたことないし。」
「…てことは援助の件も嘘かもしれないってことか?」
「わからない。ロンを手に入れたい一心で言った出まかせかもしれないけど…。でも実際今上手くいっているのは確かだし…。」
「やめとけ、ただでさえホルニッセ王子の件を抱えているのにこれ以上首を突っ込むな。」
「うん…。まあまだ何か悪いことが起きているわけでもないしね。」
アンティーク調のヴァッフェルの街並みに絶妙に釣り合っているようないないような、魔法によって作り出されたスクリーンには人だかりが出来ていた。いくら娯楽がないからと言ってそこまでぽっと出の無名歌手に人気が集まるのだろうか。いや、それが烏丸も何としてでも手に入れたいと思ったロン…獅子堂倫音の才能なのだろう。
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