Prisoners(千年放浪記-本編4)

しらき

文字の大きさ
4 / 23
Marionnette

2

しおりを挟む
 「見て、千!ロン結構人気みたいだよ!」
「それはわかったが、何故お前は俺に付きまとうんだ。」
「ホルニもロンもいないから。」
「お前そんなんで王子を探す気あんのかよ…」
マルコのせいで優雅な一人旅ではなくなってしまったが、そもそも情勢的に一人旅を楽しめるような状況でもなかったのでそれはいい。しかしあれだけ外食や路上でのショーを自粛していた市民たちがロンこと獅子堂倫音のライブ配信には興味を持つというのは不思議である。恐らくそのへんはあの烏丸とか言う男が不謹慎な娯楽に見えないように上手く売り出しているのだろう。それにしてもたかが王子の失踪程度であれだけお通夜ムードになるあたりヴァッフェル王家は国民に支持されるどころか信仰されているのではなかろうか。それともあらゆる娯楽や観光産業を停止させるだけの権力を国が持っているのか…。
 ところで意外なのは魔法や錬金術が主流のヴァッフェル王国でスマートフォンなどの電子機器が普及していることだ。俺の故郷である若市は1世紀前に鉄道が出来たり科学技術が流入したが、以降あまりそれらは発展することなく魔力や妖力に頼った生活は未だに続いている。若市の近くにある華那千代という小国も魔法こそがテクノロジーであり100年前に訪れた際には電子機器の気配すらなかった。逆に理研特区は科学が発展しているものの魔法のような非科学的なものは全く見られない。その点ヴァッフェル王国は科学と非科学の融合が上手く、そのうえ芸術や食文化は独自の伝統を守っている。こりゃ観光地にうってつけなわけだ。
 「「ホルニッセ第一王子の無事を祈って、この歌を歌いたいと思います!」」
「…あー、やっぱり烏丸はそういう売り出し方をしたわけか。」
「そういう売り出し方って?」
「獅子堂倫音、アーティスト名としては”ロン”のイメージ画像は白い翼に十字架だろ。」
「うん、そうだね。人前に出たくないロンの気持ちを理解してもらえたのか顔写真は公開していないもんね。おれはシンプルでかっこいいデザインだと思うけど。」
「そう、シンプルで大衆に媚びないデザイン。それに翼や十字架って神や天使、救世主ってイメージもないか?」
「言われてみれば。そうか、烏丸さんはロンがこの状況下でも音楽活動をできるように”祈る”シンガーとして売り出したんだね。ホルニが行方不明になっている状況下で不謹慎にならない売り方をする!すごいけど、なんで誰もその抜け穴に気付かなかったんだろうね。」
「烏丸が賢かったのと、それに加えて強欲だったからだろうな。」
「強欲?」
「じゃなきゃわざわざこんな時期に抜け穴を探して新たな商売なんて始めないだろ。」
「それもそうかー。いや、それともリスクを冒してまで一攫千金のチャンスに手を伸ばさなきゃいけない事情があったのかも。」
「は?それは考え過ぎじゃないか?」
「だってなんとか…ノワールだっけ、あの人が挙げてた会社か事務所の名前、聞いたことないし。」
「…てことは援助の件も嘘かもしれないってことか?」
「わからない。ロンを手に入れたい一心で言った出まかせかもしれないけど…。でも実際今上手くいっているのは確かだし…。」
「やめとけ、ただでさえホルニッセ王子の件を抱えているのにこれ以上首を突っ込むな。」
「うん…。まあまだ何か悪いことが起きているわけでもないしね。」
アンティーク調のヴァッフェルの街並みに絶妙に釣り合っているようないないような、魔法によって作り出されたスクリーンには人だかりが出来ていた。いくら娯楽がないからと言ってそこまでぽっと出の無名歌手に人気が集まるのだろうか。いや、それが烏丸も何としてでも手に入れたいと思ったロン…獅子堂倫音の才能なのだろう。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

はじめまして、私の知らない婚約者様

有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。 見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。 けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。 ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。 けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。 この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。 悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに? ※他サイトにも掲載しています。

【完結】あなたに知られたくなかった

ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。 5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。 そんなセレナに起きた奇跡とは?

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。 だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。 しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。 王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。 そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。 地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。 ⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。

処理中です...