Prisoners(千年放浪記-本編4)

しらき

文字の大きさ
5 / 23
Aspiration

1

しおりを挟む
 「あ~、今日もホルニは麗しかったわ!でもまだあたしのこと好きになってくれないのよね…」
「あんたの力なら奴の心を操作することくらい容易いだろ。」
「違うの!魔法の力じゃなくて本当にあたしのことを好きになってもらわなきゃ意味がないの!ほんっとハヤテは乙女心がわからないわね!」
「…わかりたくもないが。」
わがままな魔女と手を組んでからしばらく経った。こいつはホルニッセのことが大好きで、俺はあのクソ王子のことを生理的に受け付けない。我々は正反対の考えを持つが、それでも付いていこうと思ったのはこいつを手伝えばホルニッセへの嫌がらせになるだろうと思ったのと、可憐な少女に協力を迫られたからだ。蓋を開けて見れば可憐な少女ではなく横暴なババアだったわけだが、年齢のことについてはタブーらしいので触れないようにしている。万が一三十路がどうとか口にすれば雷が落ちる。…それに誰にでも明かされたくない秘密の1つや2つはあるものだ。
「あっ、そういえば魔道具が切れそうなんだった!ハヤテ、買い出し!」
「…はあ。」
 
 「…よし、これで全部か。いつも俺に丸投げしやがるが1回くらいメモの指示を無視して買ってこようか…。」
それにしてもナタリーは一体どこから魔道具を買うための資金を捻出しているのだろう。オイルや粉末なんかは天然の素材で自作することもできるが、そういった類のものさえブランド指定で購入している。彼女の書斎には魔導書も沢山あるし、薬の調合の道具だって安くはない。用心棒としての駄賃だと言って俺にくれた銀ナイフもかなり高価なものだったはず。
 高価なものの価値はそれに触れることができる世界の人間だけがわかる…。ナタリーに会う前までは追いはぎや万引きもしてなんとか食いつないでいた俺だが、それでも上流階級に生まれた事実を無かったものにすることはできない。”浜野ハヤテ”などと名乗っているが本当は浜野の姓すら捨ててしまいたいものだ。それをしなかったのは自由を求めたふりをして限界がきたら裕福な実家に戻るつもりだからだろう…、要は保険だ。
 「やけに街に人が多いな。ホルニッセの失踪で祭りは禁止されたんじゃなかったっけか…。哀れな奴だ、自分のせいで愛する国民がこんな目に遭っているなんて思ってもいないだろう。」
どうやら人が集まっているのは広場にあるスクリーン周辺のようだった。それこそ最近は国からのお知らせくらいしか流れていなかったはずなのに何があったのだろうか。
「ああ、やっぱりロンの歌は心が洗われるよ。マジで救世主なんじゃないか。」
「音楽に飢えてたってのもあるかもしれないが、本当にあの歌は素晴らしい!」
「あれまで禁止されたら俺生きていけないよ。」
ロンの歌…?それが人を集めているものなのだろうか。確か祭りだけでなく一切の音楽イベントも自粛…と言う名の禁止であったはずだが、そのアーティストは国家の圧を無視しているのか?だとしたら随分と度胸があるが…。
 …まあ俺には関係のない話だ。とにかく今は早く帰らないとわがまま女がしびれを切らしているに違いない。ごちゃごちゃと文句を言われるのは心底面倒だからな。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

はじめまして、私の知らない婚約者様

有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。 見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。 けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。 ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。 けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。 この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。 悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに? ※他サイトにも掲載しています。

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。 だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。 しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。 王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。 そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。 地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。 ⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。

【完結】あなたに知られたくなかった

ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。 5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。 そんなセレナに起きた奇跡とは?

処理中です...