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Memoire
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作戦は上手くいった。上手くいきすぎて恐ろしいほどだ。ただ当然獅子堂倫音への負担や被害は大きいはずで、それについてマルコが納得しているのかはわからない。
「いやー、思った以上の効果だね!見て、これとかなくしたものが見つかるっていう御利益があるらしいよ。」
マルコが見せびらかしているストラップのようなものは恐らくこのブームに乗じて作られたロンのモチーフを使ったグッズだ(ちなみにほとんどが非公式)。まあこの様子なら諸刃の剣的なこの作戦について文句を言われることもないだろう。
「…というかこの国ではそういうものに関する規制はないのか…?」
「そういうものって?」
「お前が持っていたやつみたいな、許可なくデザインや名前を使って販売している非公式なグッズの規制だよ。」
「あるんじゃない?普通に考えてそういうのダメでしょ。」
「わかってて買ったのかよ!」
「んにゃ、これは貰い物だよ。熱心な信者さんとかだとタダで配ってる。というか押し付けてくる。」
「な、なるほど…。ちゃんと断れよ…。」
「さて、今日も道行く人に声をかけていくぞ!おーい、そこのお姉さん!」
…こいつ、俺の話を聞いてねぇな。
「あ、はい。私ですか…ってあなたは!」
「うええ!?なに、おれのこと知ってるの?」
「いえ、初対面だと思いますわ。しかしその服装、国軍の方でしょう。お会いしたかったです…!」
「えっ?ええっ?」
マルコが戸惑うのも無理ない。今までマルコの格好を見て警戒する者や非難する者はいても”会いたかった”などと言う者はいなかったからだ。
「私、ホルニッセ王子について情報を集めていまして…。あなたなら何か御存知なのでは…!?」
「ホルニの?えっと…」
「待て、マルコ。ホルニッセ王子について探っているらしいが、あんたは何者だ?何故王子の情報が必要なんだ?」
「ちょっと、千!そんな言い方は…」
「私ったら、先走り過ぎてしまいました…!すみません、私は町はずれの教会でシスターをしております、カトリー・カメーリエと申します。」
「教会の、シスター…」
「ええ。本来ならこのような探偵まがいなことをするような立場ではないのですが、どうしても王子の安否が気になってしまいまして…。それに王子が失踪してから教会に足を運ぶ人が増えていたのですが、近ごろ急にその数が減ったことも気になって…」
随分アクティブなシスターだ…いや、俺の周りにはそれ以上にアクティブな”哲学者”がいたか。
「ホルニ…いや、ホルニッセ王子の行方はおれもわからないな。というかおれも今色んな人に話を聞いて回っているんだ。」
「そうですか…。」
「あ、でもシスターさんが心配しているようなことにはなってないと思うよ。いなくなった原因も戦じゃなくて脱走だし、仮に誘拐されたとかでもホルニだったら誘拐犯を倒すか、誘拐犯と仲良くなるかで上手く帰ってくると思うから!」
「まあ…。ところでその…あなたは…」
「マルコだよー」
「その、マルコさんは…王子と仲が良いようで…」
「うん。立場上は下だけどホルニが堅苦しいのを嫌うからね。」
「ふふ、そうですか。」
「ところで教会に人が来なくなった理由だけど、たぶんロンを祀り上げた新興宗教のせいだと思う。」
「新興宗教ですって…!?」
「うん。元々はただの人気アーティストだったロンが救世主として祀り上げられてさ。もちろん、ロン自身はそんな下手すりゃ犯罪級の行いをするような人間じゃないよ!周りが勝手に盛り上がっているだけで…」
まあ俺達もその動きが盛り上がる手伝いをしたわけだが、さすがに聖職者にそれは言えないだろうな。
「そんなことが…。世の中への不安や神への不満から1人の人を無断で宗教的に利用するなんて許されませんわ。私も主に仕える身としてそのような愚行は何としてでも止めなければ…!」
「確かにシスターさんにとって放っておけない状況だもんね。まあきっと国も黙っていないさ。」
「…そうですね。恐らく大規模な規制や処罰は国に任せた方が良いでしょう。とは言え黙って見ているのも…」
「ならさ、シスターさんはおれと協力してホルニを見つけ出そうよ!」
「ホルニッセ王子を…?」
「おれや国の捜索隊じゃなかなか見つけられなくてさ。別の視点が欲しいんだ。宗教の件とホルニの件、どっちも抱え込んじゃ倒れちゃうよ!それにホルニが見つかれば新興宗教なんて必要なくなるだろうし。」
「確かに…。私も力になれるなら喜んで協力しますわ。」
「ありがとう!じゃあ何かあった時は…」
俺の横でマルコは流れるようにシスターと同盟を組んでいた。まあ協力者が増えることはありがたいから良しとしよう。ところで、シスターにホルニッセの件と宗教の件、両方抱え込むなと言っていたが、お前が追っている兎はいつから一兎になったんだ…。
「いやー、思った以上の効果だね!見て、これとかなくしたものが見つかるっていう御利益があるらしいよ。」
マルコが見せびらかしているストラップのようなものは恐らくこのブームに乗じて作られたロンのモチーフを使ったグッズだ(ちなみにほとんどが非公式)。まあこの様子なら諸刃の剣的なこの作戦について文句を言われることもないだろう。
「…というかこの国ではそういうものに関する規制はないのか…?」
「そういうものって?」
「お前が持っていたやつみたいな、許可なくデザインや名前を使って販売している非公式なグッズの規制だよ。」
「あるんじゃない?普通に考えてそういうのダメでしょ。」
「わかってて買ったのかよ!」
「んにゃ、これは貰い物だよ。熱心な信者さんとかだとタダで配ってる。というか押し付けてくる。」
「な、なるほど…。ちゃんと断れよ…。」
「さて、今日も道行く人に声をかけていくぞ!おーい、そこのお姉さん!」
…こいつ、俺の話を聞いてねぇな。
「あ、はい。私ですか…ってあなたは!」
「うええ!?なに、おれのこと知ってるの?」
「いえ、初対面だと思いますわ。しかしその服装、国軍の方でしょう。お会いしたかったです…!」
「えっ?ええっ?」
マルコが戸惑うのも無理ない。今までマルコの格好を見て警戒する者や非難する者はいても”会いたかった”などと言う者はいなかったからだ。
「私、ホルニッセ王子について情報を集めていまして…。あなたなら何か御存知なのでは…!?」
「ホルニの?えっと…」
「待て、マルコ。ホルニッセ王子について探っているらしいが、あんたは何者だ?何故王子の情報が必要なんだ?」
「ちょっと、千!そんな言い方は…」
「私ったら、先走り過ぎてしまいました…!すみません、私は町はずれの教会でシスターをしております、カトリー・カメーリエと申します。」
「教会の、シスター…」
「ええ。本来ならこのような探偵まがいなことをするような立場ではないのですが、どうしても王子の安否が気になってしまいまして…。それに王子が失踪してから教会に足を運ぶ人が増えていたのですが、近ごろ急にその数が減ったことも気になって…」
随分アクティブなシスターだ…いや、俺の周りにはそれ以上にアクティブな”哲学者”がいたか。
「ホルニ…いや、ホルニッセ王子の行方はおれもわからないな。というかおれも今色んな人に話を聞いて回っているんだ。」
「そうですか…。」
「あ、でもシスターさんが心配しているようなことにはなってないと思うよ。いなくなった原因も戦じゃなくて脱走だし、仮に誘拐されたとかでもホルニだったら誘拐犯を倒すか、誘拐犯と仲良くなるかで上手く帰ってくると思うから!」
「まあ…。ところでその…あなたは…」
「マルコだよー」
「その、マルコさんは…王子と仲が良いようで…」
「うん。立場上は下だけどホルニが堅苦しいのを嫌うからね。」
「ふふ、そうですか。」
「ところで教会に人が来なくなった理由だけど、たぶんロンを祀り上げた新興宗教のせいだと思う。」
「新興宗教ですって…!?」
「うん。元々はただの人気アーティストだったロンが救世主として祀り上げられてさ。もちろん、ロン自身はそんな下手すりゃ犯罪級の行いをするような人間じゃないよ!周りが勝手に盛り上がっているだけで…」
まあ俺達もその動きが盛り上がる手伝いをしたわけだが、さすがに聖職者にそれは言えないだろうな。
「そんなことが…。世の中への不安や神への不満から1人の人を無断で宗教的に利用するなんて許されませんわ。私も主に仕える身としてそのような愚行は何としてでも止めなければ…!」
「確かにシスターさんにとって放っておけない状況だもんね。まあきっと国も黙っていないさ。」
「…そうですね。恐らく大規模な規制や処罰は国に任せた方が良いでしょう。とは言え黙って見ているのも…」
「ならさ、シスターさんはおれと協力してホルニを見つけ出そうよ!」
「ホルニッセ王子を…?」
「おれや国の捜索隊じゃなかなか見つけられなくてさ。別の視点が欲しいんだ。宗教の件とホルニの件、どっちも抱え込んじゃ倒れちゃうよ!それにホルニが見つかれば新興宗教なんて必要なくなるだろうし。」
「確かに…。私も力になれるなら喜んで協力しますわ。」
「ありがとう!じゃあ何かあった時は…」
俺の横でマルコは流れるようにシスターと同盟を組んでいた。まあ協力者が増えることはありがたいから良しとしよう。ところで、シスターにホルニッセの件と宗教の件、両方抱え込むなと言っていたが、お前が追っている兎はいつから一兎になったんだ…。
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