幼馴染な魔剣ちゃんと契約した聖剣ちゃんたちと行く追放ライフ~聖剣と契約できたのに、魔剣と関りが発覚して追放されたが、冒険者人生を謳歌する~

椿紅颯

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第一章

第4話『美少女たちは可愛く交渉する』

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「さっきの状況よりも逃げ出しやすいってのに、なんでそうしないんだ」
「たしかに、今の俺なら可能です」

 強引ではないにしろ縄を引かれている俺は、殺風景な廊下を進む。

 ガレルさんは、本当に優しい。
 聖騎士となり【聖剣】と契約した人間の強さは、正確差はあれど誰もが認知しているもの。
 であれば、人数を用意して包囲網を設けるべきだ。

「だったらなぜ」
「そうやって、自分がどうなるかもわからないのに気を遣ってくれる、ガレルさんのためです」
「生意気を言うようになったもんだな。【聖剣】っていうのは性格も変えるもんなのか? それとも【魔剣】を手にしたからか?」
「さあ、どうでしょう。俺は、ずっと俺のままですけどね」

 もしもこの先に死刑、という選択肢が待ち受けているとしても逃げはしない。
 それが例え育ての親に対しての恩を仇で返すことになっても、死別後に被る不幸を最小限に抑えられるのなら喜んで受け入れる。

「親の心子知らずとはよく言ったもんだ。お前の両親も大変だったんだろうな」
「そうですね、自分でも親不孝者だと思っています。どちらの親に対しても」
「ふんっ。そう思うなら少しでも長く生きろっての」

 鼻で笑ったガレルさんの気持ちは、ちゃんとわかっているつもりだ。

 話を続けながら渡り廊下から外に出て、馬車に乗る。
 移動している最中、ガレルさんや騎士団のみんなが俺を逃がそうと画策していないかヒヤヒヤした。
 俺を家族のように扱ってくれたのは、騎士団のみんなも同じだったから可能性がないわけじゃない。
 もしもそうなってしまったら逃げないとみんなの努力を無駄にしてしまうが、それでも俺は逃げないつもりだ。

「まあ安心しろ。最悪を想定しているだろうが、絶対にそうなることはない」
「まさか、俺のために――」
「想いあがるな。俺が・・そんなことをしなくても、どうにでもなるから言っているんだ」
「どういうことですか」
「説明するよりも、お前の場合は直接見た方が理解できるだろ。昔からそうだったように」

 対面に座るガレルさんは表情を変えず、ただ淡々と話を続けている。
 もしも逃走の手はずを整えていて、既に外部の協力を得ているのなら『俺が・・』と強調していたことも理解できる。
 あくまでも「自分は護送中に強襲を受け、罪人を取り逃がしてしまった」と、誰にも責めることができない結果をもたらして。

「ほら、行くぞ」

 しかし、ガレルさんの落ち着いた態度と同じぐらい何事も起きず、王城に辿り着いてしまった。
 裏門から中へ入り、再び廊下を歩き始める。

 それにしても、冷静に考えたら不可解な点が多い。

 俺が【魔剣】と親密な関係を築いていたことを、なぜ陛下が把握しているのか。
 セリナが【魔剣】ということを知ったのは今日だ。
 少なくとも、【聖剣】と契約した俺と同じ速度で移動できる人間は、同じ【聖剣】と契約を結んだ人間に限られる。
 であれば、そんな存在が近くに居たら【聖剣】同士が何かしらの反応を示してもおかしくはない。
 そんな能力があるかはわからないけど、あの村にそんな存在が居たのなら軽い騒ぎになっていたり、人が集まったりしていたはずだ。

 でも俺は、村を往復する最中に数人を助け、門番の皆さんに挨拶したぐらい。

「――今、この王都に居る聖騎士は何人ですか」
「お前だけだな」

 じゃあどうし……て……あ――なるほど、そういうことか。
 村で貸し出し用の早馬が居た。
 あの早馬を借りることができるのは、誰でもというわけではない。
 利用状況によってコネを利用したり金を積んだりすればその限りではないが、あの村に向かうためわざわざ利用する人は居ないはず。

「心の準備はいいな」
「いつでも大丈夫です」

 最後に目線を合わせてくれて、何も言葉を返してはくれなかった。
 いや違うか。
 あの目は「逃げるのなら、ここが最後だぞ」、という忠告でもあり希望だったと思う。

 扉は開き、謁見の間へ足を踏み入れる。
 今日も任命式で訪れていた場所だから新鮮味はないけど、息が詰まりそうになるぐらい静寂に包まれている場所だ。
 あのときも思ったけど、数百人は集まって会合を始めたりお披露目会にはちょうどいいほど広い。
 息が詰まりそうになるのは、ズラッと急いてるしている護衛兵の存在や、今歩いている、王座まで一直線に敷かれている赤い絨毯も起因している。

「……」

 しかし今回は、苦楽を共に過ごした騎士団の面々も列に加わって数列はできている。
 騎士団長であるガレルさんは、これを事前に把握していたから逃げやすい状況を作り出したり、逃げるよう催促してくれていたのだろう。
 加えるなら、騎士団のみんなも「なぜここまで来たんだ」という意味を込めた目線を送っている。

 本当に、俺は恵まれた環境で生活させてもらった証拠だ。
 みんなありがとう。

 王座へ続く階段前に辿り着き、顔を上げないまま片膝を床について跪く。

「面を上げよ、聖騎士アレン」

 陛下の指示通り、姿勢はそのままに顔を上げる。

「報告によれば、『【魔剣】を手にし、あろうことかその事実を隠そうとしていた』――というのは既に確認できている」

 訂正するべき個所はあるが、総じて事実はその通りだ。
 セリナが【魔剣】である事実を知りながら、報告もせず王都に連れてきてしまった。
 こうなる未来を予見しながらも、今の自分なら隠し通すことができるという驕りと共に。

「聖騎士任命当日に、本人を前に咎める事態となることは誠に遺憾である」
「返す言葉もありません。期待を裏切る行為を深く反省し、どのような処罰でも快く承らせていただきます」
「その潔さに免じて、というわけにはいかない。だが――」

 陛下含む一同は、護衛を忍ばせておく両脇の扉から響き渡るドンドンドンドンという、扉を叩くというより殴ったり蹴ったりしている音に顔を向けた。
 俺も何が起きているのかわからない。
 ガレルさんの作戦かと思って目線を移動させるも、この場に居る全員と同様に困惑している様子。

 すると。

「待ってください!」
「お待ちください!」

 2人の若い女性の声が聞こえたと思ったら、ドカドカと俺の横まで走ってきた。
 よく見なくても1人はセリナだが、もう1人の純白な髪の女性は初めて見る。

「アレン様は、わたくしの主様よ! 邪険に扱うというのなら、ここで暴れるわよ!」
「私のせいでこうなってしまっているのなら、処罰されるのは私です!」
「お、おいセリナ落ち着け。相手が誰だかわかっているのか」
「わかっているわ。でも、私が引き下がっていい理由にはならない」

 2人は俺の前に出て、頭を下げるどころか盾突くかたちで前に出てしまう。
 そして、もう1人の……少女は本当に誰なんだ。

「とりあえず落ち着くのだ」
「いいえ、わたくしの準備はいつでもできているわ」
「私もです」
「おい2人共、国王陛下に失礼だろ」
「大丈夫よ主様。わたくしは、先ほどからずっと冷静よ」

 てか護衛と騎士団は何をしているんだ。
 振り返ってみても、誰1人として動こうとしていない。
 それどころか顎をガクガクさせていたり、膝までガクガクさせている人が居る。
 不敬な態度をとっている人間が居るのだから、そりゃあ罰則が恐ろしいのはわかるけど、陛下に危害が及びそうなのにどうして動こうとしないんだ。

「王様お願いっ、わたくしたちを見逃して」
「お願いします! どうかっ」

 ん? なんだか急にかわいらしくおねだりするような感じになったね?
 俺からは背中しか見えてないけど、女性が男性にするソレと同じだ。
 あれなら何回も後や横から見ているし、ソレを向けられたことがあるから容易に想像できる。

 それに威厳ある陛下が……途轍もなく困惑した表情を浮かべておられる!?
 あ、あれは――そう、ガレルさんが娘さんからおねだりされているときのアレと一緒だ!

「王様~おねがーいっ」
「お願いしますーっ!」

 全部に共通するのは、あざくもかわいいということ。
 俺だってセリナからそんな風にお願いされたら断れる自信がないし、現に許可して【魔剣】と知りながらも連れてきてしまった。
 しかも初めて会う左の真っ白い女の子も、少ししか顔を見ることができなかったけどかわいかった。
 そんな2人からお願いされたら、男である以上、断るのは圧倒的に強靭な精神を持ち合わせていなければならないだろう。

 でも国王陛下ならば――。

「わ、わかった! わかったから!」

 え? 王様?

「絶対にそれ以上近づくでない!」

 承諾の声は聞こえても、デレデレな緩んだ笑顔はそこになく、あるのは恐怖心に染まった引きつった顔。
 片方の口角は上がっていても、笑顔とは程遠い表情をしている陛下は立ち上がった。

「これより、聖騎士アレンへの処罰を言い渡す!」
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