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第二章
第7話『とても楽しそうなご様子です』
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戦闘中の流れで倒れた木と断面を椅子替わりにして、休憩時間を設ける。
しかし、この2人は呼吸の乱れが見られず、どこかを痛めている素振りもない。
俺も特に休憩するほど疲れてもいないし、ここは交流といこう。
「俺は2人が人間の姿で居ることに慣れてしまったが、そもそも【聖剣】と【魔剣】にとっては普通のことなのか?」
「いいえ主様。わたくしは初めて人間の姿になりました」
「私も同じだよ」
「え、そうなの?」
2人は誤魔化す素振りを見せず「うんうん」と頷いた。
「今までも薄っすらとあったような気はしますが、正直憶えていません。ですが、主様が王都に入った途端、明確に意識が覚醒しました」
「私も同じかも。アレンが近くに来たって思っていたら、【魔剣】の姿から人間に変わっていたの。一緒に居たいなって、話したいなって」
「俺が起点になったわけか」
「運命の出会いだったということですね!」
「だとしたら私の方が先に運命の出会いを果たしていることになるけどね?」
「ぐぬぬ……」
なんだか少し打ち解けたのかな?
王都を出てすぐは、本気で広野が更地になる未来が見えてしまっていたが、なんとなく敵対心がないように思える。
「でも、私が守ってあげられなかった間はメノウが見守ってくれてたんだもんね」
「ええそうね。守らなくちゃって、その一心で」
「ん? もしかしてなんだけどさ――俺が聖騎士に合格できたのって、最初から決まっていたりしたの?」
「もちろんです主様。聖騎士の試験を受けることができる年齢になるのを、今か今かと待ちわびておりました」
「なんだか複雑な気持ちだな」
「ですが、全ては主様の努力した結果です! わたくしを受け入れられるだけの鍛錬と精神がなければ、そもそも契約することはできませんでした」
そう言ってもらえると嬉しいけど、それでも複雑な気持ちに変わりはない。
悪い意味ではなく、前向きなものだけど。
だってさ、王都に来た時点で【聖剣】に認められていたということだろ?
他の人が努力して試験に受けても、俺という先約があったから不合格になっていた、ということになる。
少なくとも俺が王都に来てからの話だろうけど、それでも手放しに両手を上げて喜べる話ではない。
自分が厳しい訓練などに耐え続け、必死に夢を叶えようとしていたからこそ。
「ちなみに主様、わたくしを剣の状態で扱っていただいてみませんか?」
「そういえばまだだったか」
「では――」
メノウが光ったと思えば、俺の腰に引き寄せられるように移動し、鞘に納められた剣になった。
『主様! いつでも準備できております!』
「その状態でも話せるのかよ。セリナは聞こえるか?」
「ぜんぜん聞こえなーい」
外から観たら独り言を呟いているようになるのか、注意しないとな。
『主様、わたくしだけどでしたら言葉を発せずとも意思疎通は可能です!』
なるほど、それは便利だ。
「力加減や能力がわからないから、とりあえず――っ!」
抜剣して頭上に持ち上げ、正面に敵が居ると仮定して力強く振り下ろす。
「――う、嘘だろ……」
「わーお」
光が衝撃波となり、正面の木々だけに留まらず地面までもが吹き飛んだり抉ってしまった。
しかも影響が出たのは目の前だけではなく、新しい道ができてしまったかのような範囲と距離で。
『ご命令とあらば、まだまだ力を出すことができます! 山ぐらいなら1撃で吹き飛ばすことも可能です!』
「山も吹き飛ばせるって……まるで想像できない」
「すっごいね」
てか、一振りでこれってさ……間違いなく普段使いできなくないか?
「そ、そんなぁ! 主様、ご主人様ぁ! 見捨てないでくださいぃ!」
「おい、服が汚れるから足に抱き着くなって」
「汚れた個所は、お洗濯しますから見捨てないでぇ!」
「違う、メノウの服が汚れるだろって言ってるんだよ。せっかく綺麗な服なんだからさ」
「へ?」
「ほら、まずは立って」
メノウの力が緩んだのを確認し、腕を掴んで立ち上がらせる。
こんな真っ白いドレスで地面に倒れるから、汚れてしまってるじゃないか。
俺は汚れを手で払い落すため、片膝を地面につく。
「捨てるも何も、契約しているんだから離れられるわけがないだろ」
「はい! 物理的に離れたとしても、主様の居場所は目を閉じていてもわかります!」
「それはそれで怖いな。これでよし」
乾いた土、というか砂だったから叩いただけで落とすことができた。
「この姿もご迷惑かと思いますので――主様の服装に見合う感じに――」
「おい、だからそれをここでやろうとするなって言っただろ!」
注意喚起が意味を為すことはなく、メノウの全身が光に包まれて、衣装が様変わりしていく。
目を逸らすのが遅れてしまったが、結果的に光の中から裸体を目の当たりにすることはなかったから、心配していたことにはならなかった。
そして現れた姿は、たしかに俺の隣に居ても目立たない、一般的な服装になっている。
煌びやかな装飾は一切なく、麻や布の記事でできた上下の服や靴。
村や町出身の娘、と言われても疑問に思う人はいないだろう――ただ、その真っ白い髪などを除けば。
「ふっふっふ」
「ん?」
「どう? 私は記憶に新しい服装に変えてみたよ」
「いつの間に」
「メノウに動揺している後ろで」
「な、なるほど」
振り向いて目線を逃がそうとしていた先にはセリナが居たから、どっちにしても逃げ場がなかったというわけだ。
お願いだから、そういうのは勘弁してくれ。
セリナが言っていることは、すぐに理解できた。
今日、村で顔を合わせたときの服装であり、髪を一本結いにして目立たない服装になっている。
薄手の長袖に、膝がギリギリ見えないぐらいのスカート、と言った感じに。
見慣れているということや黒髪が珍しくはないことから、セリナの方はほぼ問題ないな。
「一応確認だけさせてほしいんだが、その服装とドレスだと戦いにくいだろう――いや、そんなことはないのかもしれないけど、戦闘用もあったりするのか?」
「もちろんです主様! 主様に装備していただけるよう、朝からずっと考えていたのです!」
「ん? 朝から? ちょっと待て」
「いかがなさいました?」
「もしかしてだけど、その装備とやらを考えていたせいで忠告しなかった――ということはないよな?」
「……」
その沈黙はなんだ。
「セリナが【魔剣】であることは主様が顔を合わせる前から察知していました。ですが、敵意や悪意はなかったので……。付け加えるのなら、わたくしたちを覗き見る人を察知していましたが、あちらも同様でしたので」
「おい、教えろよ。この展開は変わらなくても、心の持ちようってものが変わっていただろ」
「ご、ごめんなさい! 捨てないでくださいぃ!」
「だから捨てようにも捨てられないだろって」
日頃から感謝の気持ちを忘れたことはなかったけど、牢屋から陛下から処罰を言い渡されるまで、ずっと死を悟っていたんだぞ。
誰にも迷惑を掛けないように、恩を仇で返すことがないようにって。
ああもう、思い出すと顔が熱くなってきたー!
「戦闘用の装備は後でいい。休憩はおしまいだ、足を進めよう」
「そうだね~」
「いつでもご要望にお応え致します!」
しかし、この2人は呼吸の乱れが見られず、どこかを痛めている素振りもない。
俺も特に休憩するほど疲れてもいないし、ここは交流といこう。
「俺は2人が人間の姿で居ることに慣れてしまったが、そもそも【聖剣】と【魔剣】にとっては普通のことなのか?」
「いいえ主様。わたくしは初めて人間の姿になりました」
「私も同じだよ」
「え、そうなの?」
2人は誤魔化す素振りを見せず「うんうん」と頷いた。
「今までも薄っすらとあったような気はしますが、正直憶えていません。ですが、主様が王都に入った途端、明確に意識が覚醒しました」
「私も同じかも。アレンが近くに来たって思っていたら、【魔剣】の姿から人間に変わっていたの。一緒に居たいなって、話したいなって」
「俺が起点になったわけか」
「運命の出会いだったということですね!」
「だとしたら私の方が先に運命の出会いを果たしていることになるけどね?」
「ぐぬぬ……」
なんだか少し打ち解けたのかな?
王都を出てすぐは、本気で広野が更地になる未来が見えてしまっていたが、なんとなく敵対心がないように思える。
「でも、私が守ってあげられなかった間はメノウが見守ってくれてたんだもんね」
「ええそうね。守らなくちゃって、その一心で」
「ん? もしかしてなんだけどさ――俺が聖騎士に合格できたのって、最初から決まっていたりしたの?」
「もちろんです主様。聖騎士の試験を受けることができる年齢になるのを、今か今かと待ちわびておりました」
「なんだか複雑な気持ちだな」
「ですが、全ては主様の努力した結果です! わたくしを受け入れられるだけの鍛錬と精神がなければ、そもそも契約することはできませんでした」
そう言ってもらえると嬉しいけど、それでも複雑な気持ちに変わりはない。
悪い意味ではなく、前向きなものだけど。
だってさ、王都に来た時点で【聖剣】に認められていたということだろ?
他の人が努力して試験に受けても、俺という先約があったから不合格になっていた、ということになる。
少なくとも俺が王都に来てからの話だろうけど、それでも手放しに両手を上げて喜べる話ではない。
自分が厳しい訓練などに耐え続け、必死に夢を叶えようとしていたからこそ。
「ちなみに主様、わたくしを剣の状態で扱っていただいてみませんか?」
「そういえばまだだったか」
「では――」
メノウが光ったと思えば、俺の腰に引き寄せられるように移動し、鞘に納められた剣になった。
『主様! いつでも準備できております!』
「その状態でも話せるのかよ。セリナは聞こえるか?」
「ぜんぜん聞こえなーい」
外から観たら独り言を呟いているようになるのか、注意しないとな。
『主様、わたくしだけどでしたら言葉を発せずとも意思疎通は可能です!』
なるほど、それは便利だ。
「力加減や能力がわからないから、とりあえず――っ!」
抜剣して頭上に持ち上げ、正面に敵が居ると仮定して力強く振り下ろす。
「――う、嘘だろ……」
「わーお」
光が衝撃波となり、正面の木々だけに留まらず地面までもが吹き飛んだり抉ってしまった。
しかも影響が出たのは目の前だけではなく、新しい道ができてしまったかのような範囲と距離で。
『ご命令とあらば、まだまだ力を出すことができます! 山ぐらいなら1撃で吹き飛ばすことも可能です!』
「山も吹き飛ばせるって……まるで想像できない」
「すっごいね」
てか、一振りでこれってさ……間違いなく普段使いできなくないか?
「そ、そんなぁ! 主様、ご主人様ぁ! 見捨てないでくださいぃ!」
「おい、服が汚れるから足に抱き着くなって」
「汚れた個所は、お洗濯しますから見捨てないでぇ!」
「違う、メノウの服が汚れるだろって言ってるんだよ。せっかく綺麗な服なんだからさ」
「へ?」
「ほら、まずは立って」
メノウの力が緩んだのを確認し、腕を掴んで立ち上がらせる。
こんな真っ白いドレスで地面に倒れるから、汚れてしまってるじゃないか。
俺は汚れを手で払い落すため、片膝を地面につく。
「捨てるも何も、契約しているんだから離れられるわけがないだろ」
「はい! 物理的に離れたとしても、主様の居場所は目を閉じていてもわかります!」
「それはそれで怖いな。これでよし」
乾いた土、というか砂だったから叩いただけで落とすことができた。
「この姿もご迷惑かと思いますので――主様の服装に見合う感じに――」
「おい、だからそれをここでやろうとするなって言っただろ!」
注意喚起が意味を為すことはなく、メノウの全身が光に包まれて、衣装が様変わりしていく。
目を逸らすのが遅れてしまったが、結果的に光の中から裸体を目の当たりにすることはなかったから、心配していたことにはならなかった。
そして現れた姿は、たしかに俺の隣に居ても目立たない、一般的な服装になっている。
煌びやかな装飾は一切なく、麻や布の記事でできた上下の服や靴。
村や町出身の娘、と言われても疑問に思う人はいないだろう――ただ、その真っ白い髪などを除けば。
「ふっふっふ」
「ん?」
「どう? 私は記憶に新しい服装に変えてみたよ」
「いつの間に」
「メノウに動揺している後ろで」
「な、なるほど」
振り向いて目線を逃がそうとしていた先にはセリナが居たから、どっちにしても逃げ場がなかったというわけだ。
お願いだから、そういうのは勘弁してくれ。
セリナが言っていることは、すぐに理解できた。
今日、村で顔を合わせたときの服装であり、髪を一本結いにして目立たない服装になっている。
薄手の長袖に、膝がギリギリ見えないぐらいのスカート、と言った感じに。
見慣れているということや黒髪が珍しくはないことから、セリナの方はほぼ問題ないな。
「一応確認だけさせてほしいんだが、その服装とドレスだと戦いにくいだろう――いや、そんなことはないのかもしれないけど、戦闘用もあったりするのか?」
「もちろんです主様! 主様に装備していただけるよう、朝からずっと考えていたのです!」
「ん? 朝から? ちょっと待て」
「いかがなさいました?」
「もしかしてだけど、その装備とやらを考えていたせいで忠告しなかった――ということはないよな?」
「……」
その沈黙はなんだ。
「セリナが【魔剣】であることは主様が顔を合わせる前から察知していました。ですが、敵意や悪意はなかったので……。付け加えるのなら、わたくしたちを覗き見る人を察知していましたが、あちらも同様でしたので」
「おい、教えろよ。この展開は変わらなくても、心の持ちようってものが変わっていただろ」
「ご、ごめんなさい! 捨てないでくださいぃ!」
「だから捨てようにも捨てられないだろって」
日頃から感謝の気持ちを忘れたことはなかったけど、牢屋から陛下から処罰を言い渡されるまで、ずっと死を悟っていたんだぞ。
誰にも迷惑を掛けないように、恩を仇で返すことがないようにって。
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