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第二章
第14話『焚火を囲み、やすらぎの時間』
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「――まさか、本当に両方の肉も食べるなんて」
「見た目を気にしなければ、意外に美味しいんだぞ? たぶん、普通の人間は食べられないだろうが」
「緊急時以外は、食べられたとしても避け続ける自信がある」
「それはそう」
食事を終えた俺たちは、焚火を囲んで食後の時間を寛いでいる。
「こんな落ち着いて休めるの、久しぶりかも」
「冒険者って、そんなに大変なの?」
「アレンにとっては大変じゃないでしょうね。2人と契約していなくても」
「そうか?」
「そうよ」
それにしても3人は、すぐに打ち解けたな。
今は肩を並べて座っている。
最初は警戒していたからどうなるかと思っていたが、これなら心配しなくてよさそうだ。
しかし、焚火を挟んでだけど正面から見たらフローラの成長っぷりを実感する。
大人びた女性の魅力というやつだろうか、王女様のような優しい雰囲気を醸し出していて、勝手に気分が落ち着いてしまう。
「この状況だと遠征のときを思い出すな」
「あったわね、たしか5年前だったかしら?」
「大人数でワイワイやっていたし、こんなに安全を確保されている状況ではなかったけどな」
「確かにそうね。でも楽しかった」
ほぼ野晒しの野営だったが、みんな笑顔で互いを尊重し合って暖かいひとときだった。
王都の外、という普段の緊張感から解放される場所でもあったのだろうし、全てが程よかった記憶がある。
険しい顔が似合っていたフローラでさえ、あのときはみんなと同じく笑っていたし。
「主様、その話とっても気になります。わたくしの目が届いていたのは王都内だけでしたので」
「私も気になる」
「……フローラ、いいか?」
「ええ。わたしの中でも心の整理はついたわ」
このやり取りに疑問を抱いている2人は、かわいらしく小首を傾げている。
「全てがいい話ではないってことだな。少なくとも、これからする話に関しては」
「そうね。そもそもの話、王国騎士団というものは王族を守護するための組織だけど、護衛兵とは違って外に出ることもあるの」
「自由が利く護衛兵って感じだな」
「あのときも、今回同様に大型モンスター討伐が目標だった。でも、騎士団長は居なかったけど大人数だったし、討伐できるだけの訓練をし続けていたから難しいものではなかった。はずだった」
「戦闘も順調に事が運んでいた。だが、報告にはなかったもう1体が乱入してきて状況は一変――多数の犠牲者を出すことになってしまった」
不意の攻撃により、反応できなかった数人が犠牲になってしまい、悲劇が始まった。
モンスター同士が連携することは珍しいが、それは小型や中型モンスターでの報告例でしかない。
大型モンスターの報告は件数事少ないが、別個体だったとしても連携する比率は多かった。
だから1体ずつ討伐する前提で作戦は練られるし、個体数が増えたときの対処法も事前に打ち合わせする。
だが、機会を窺っていたのか完全な不意打ちには反応できる人間しか対処できず、次々に命を奪われていってしまった。
「当時の副騎士団長が単独で1体と対峙してくれたおかげで、先に弱っていた方を討伐できたの」
「犠牲は出たけど、勝てたということね」
「悔やまれる事件だったのだな」
「いいえ、まだ悲劇は続くのよ」
「副騎士団長は1対1の状況でも、相手に数ヵ所の傷を負わせて善戦していた。だから俺たちも勝利を確信してたんだが――」
「副団長もまた瀕死の状態だったの。立っているのがやっとのほど」
当時の俺たちは、まだまだ弱かった。
だからこそ、あのときは勝機が見えた後すぐ地獄に叩き戻された気分に陥っていたな。
「全てが終わった頃には、辺りは地獄絵図だったわ。あの光景だけは一生忘れられないわね」
「ああ。だから俺たちは――いや、生き残った騎士団全員が悲劇を繰り返さないよう各々が強くなった」
「騎士団を去っていった人も少なくはなかったけど」
「そういえば、たった1度だけ血塗れで帰還したときがありましたね。酷く落ち込んでいたのを思い出します」
「なるほど……いたたまれない話ね」
本当に、あの事件は地獄の時間だった。
「――さて、暗い話はここまでにしましょう。アレン、あれからどうだったのよ。どうせモテモテだったのでしょ?」
「そんな話――」
「気になる」
「知っているけど知りたいです」
「特に誰とも進展なんてなかったよ。恋愛とか時間を割いていたら、聖騎士になれるわけない。ちょっとでも考えたらわかるだろ」
「それもそっか」
「たしかに」
元々の目標でもあり、さっきの一件からより一層に鍛錬を重ねてきたんだ。
そんな時間の余裕なんてあるわけがない。
「でも主様、数多くの女性から恋文を貰っていましたよね?」
「おいメノウ余計なことを言うな」
「事実は事実です!」
余計なことを言い始めるから、話題を諦めてくれていた2人の目がギロッと向けられたぞ。
「ああ、たしかに何通も直接貰ったし、騎士団員を通して何通も貰った。だが、その大半は俺のことではなく先を見据えた地位が欲しかっただけだ」
「本当に?」
「怪しい」
戦友と幼馴染から向けられる疑いの目が、グサグサと突き刺さる。
疚しいことなんて微塵もないのに、圧に就い目線を逸らしてしまう。
火に油を注いだ張本人は、口角を上げて1番楽しそうに話を聞いているのが、途轍もなく腹立たしい。
「少数派でも、ちゃんと好きになってくれた人は居たってことだよね? 誰とも付き合わなかったの?」
「顔だけじゃなくて、性格もいいんだから仕方ないわよね。小さい頃から心もかっこよかったもん」
「俺は俺にできることをやるだけだし、今までもそうやって生きてきただけだ。誰かに褒められるためやっていたわけじゃない」
いつだって誰かの助けられてきた人生だし、毎日誰かに感謝し、自分がしてもらったように誰かを助ける。
本当に、ただそれだけだ。
「そんなことよりも、これからの流れについて話さないか」
「そこは大丈夫。わたしが冒険者登録まで案内してあげるわよ」
「別れてしまった同行者たちと合流するのが先延ばしにならないか?」
「フローラがそれでいいならいいけど。なら、そろそろ寝支度を整えるか。俺は外で寝るから」
「主様、わたくしもお供します」
「私も」
「拒否する理由を探せないが、いいから中で寝たらいい」
2人と契約した俺は、小型モンスターに囲まれたとしても余裕でゆっくり起きられるだろう。
拒否できないのは昼間の件もあるし、そもそも契約している元の存在だから心配する方が時間の無駄というもの。
「こんなに広くできているのだから、みんなで寝ても大丈夫よ。じゃないと、わたしも夜風が恋しいから外で寝ようかしら」
「あーもうわかったよ」
3人で連携できるほど、いつの間に仲良くなったんだよ。
ひと時も目を離したつもりはないぞ。
「でもわたくしは主様の左で!」
「じゃあ私は右で」
「わたしが入り込めそうな隙はなさそうね」
「好きにしてくれ」
拒否権がないどころか決定権もなさそうな状況に、ため息以外出るものがない。
まあ、今夜だけだろうし大目に見るとするか。
「見た目を気にしなければ、意外に美味しいんだぞ? たぶん、普通の人間は食べられないだろうが」
「緊急時以外は、食べられたとしても避け続ける自信がある」
「それはそう」
食事を終えた俺たちは、焚火を囲んで食後の時間を寛いでいる。
「こんな落ち着いて休めるの、久しぶりかも」
「冒険者って、そんなに大変なの?」
「アレンにとっては大変じゃないでしょうね。2人と契約していなくても」
「そうか?」
「そうよ」
それにしても3人は、すぐに打ち解けたな。
今は肩を並べて座っている。
最初は警戒していたからどうなるかと思っていたが、これなら心配しなくてよさそうだ。
しかし、焚火を挟んでだけど正面から見たらフローラの成長っぷりを実感する。
大人びた女性の魅力というやつだろうか、王女様のような優しい雰囲気を醸し出していて、勝手に気分が落ち着いてしまう。
「この状況だと遠征のときを思い出すな」
「あったわね、たしか5年前だったかしら?」
「大人数でワイワイやっていたし、こんなに安全を確保されている状況ではなかったけどな」
「確かにそうね。でも楽しかった」
ほぼ野晒しの野営だったが、みんな笑顔で互いを尊重し合って暖かいひとときだった。
王都の外、という普段の緊張感から解放される場所でもあったのだろうし、全てが程よかった記憶がある。
険しい顔が似合っていたフローラでさえ、あのときはみんなと同じく笑っていたし。
「主様、その話とっても気になります。わたくしの目が届いていたのは王都内だけでしたので」
「私も気になる」
「……フローラ、いいか?」
「ええ。わたしの中でも心の整理はついたわ」
このやり取りに疑問を抱いている2人は、かわいらしく小首を傾げている。
「全てがいい話ではないってことだな。少なくとも、これからする話に関しては」
「そうね。そもそもの話、王国騎士団というものは王族を守護するための組織だけど、護衛兵とは違って外に出ることもあるの」
「自由が利く護衛兵って感じだな」
「あのときも、今回同様に大型モンスター討伐が目標だった。でも、騎士団長は居なかったけど大人数だったし、討伐できるだけの訓練をし続けていたから難しいものではなかった。はずだった」
「戦闘も順調に事が運んでいた。だが、報告にはなかったもう1体が乱入してきて状況は一変――多数の犠牲者を出すことになってしまった」
不意の攻撃により、反応できなかった数人が犠牲になってしまい、悲劇が始まった。
モンスター同士が連携することは珍しいが、それは小型や中型モンスターでの報告例でしかない。
大型モンスターの報告は件数事少ないが、別個体だったとしても連携する比率は多かった。
だから1体ずつ討伐する前提で作戦は練られるし、個体数が増えたときの対処法も事前に打ち合わせする。
だが、機会を窺っていたのか完全な不意打ちには反応できる人間しか対処できず、次々に命を奪われていってしまった。
「当時の副騎士団長が単独で1体と対峙してくれたおかげで、先に弱っていた方を討伐できたの」
「犠牲は出たけど、勝てたということね」
「悔やまれる事件だったのだな」
「いいえ、まだ悲劇は続くのよ」
「副騎士団長は1対1の状況でも、相手に数ヵ所の傷を負わせて善戦していた。だから俺たちも勝利を確信してたんだが――」
「副団長もまた瀕死の状態だったの。立っているのがやっとのほど」
当時の俺たちは、まだまだ弱かった。
だからこそ、あのときは勝機が見えた後すぐ地獄に叩き戻された気分に陥っていたな。
「全てが終わった頃には、辺りは地獄絵図だったわ。あの光景だけは一生忘れられないわね」
「ああ。だから俺たちは――いや、生き残った騎士団全員が悲劇を繰り返さないよう各々が強くなった」
「騎士団を去っていった人も少なくはなかったけど」
「そういえば、たった1度だけ血塗れで帰還したときがありましたね。酷く落ち込んでいたのを思い出します」
「なるほど……いたたまれない話ね」
本当に、あの事件は地獄の時間だった。
「――さて、暗い話はここまでにしましょう。アレン、あれからどうだったのよ。どうせモテモテだったのでしょ?」
「そんな話――」
「気になる」
「知っているけど知りたいです」
「特に誰とも進展なんてなかったよ。恋愛とか時間を割いていたら、聖騎士になれるわけない。ちょっとでも考えたらわかるだろ」
「それもそっか」
「たしかに」
元々の目標でもあり、さっきの一件からより一層に鍛錬を重ねてきたんだ。
そんな時間の余裕なんてあるわけがない。
「でも主様、数多くの女性から恋文を貰っていましたよね?」
「おいメノウ余計なことを言うな」
「事実は事実です!」
余計なことを言い始めるから、話題を諦めてくれていた2人の目がギロッと向けられたぞ。
「ああ、たしかに何通も直接貰ったし、騎士団員を通して何通も貰った。だが、その大半は俺のことではなく先を見据えた地位が欲しかっただけだ」
「本当に?」
「怪しい」
戦友と幼馴染から向けられる疑いの目が、グサグサと突き刺さる。
疚しいことなんて微塵もないのに、圧に就い目線を逸らしてしまう。
火に油を注いだ張本人は、口角を上げて1番楽しそうに話を聞いているのが、途轍もなく腹立たしい。
「少数派でも、ちゃんと好きになってくれた人は居たってことだよね? 誰とも付き合わなかったの?」
「顔だけじゃなくて、性格もいいんだから仕方ないわよね。小さい頃から心もかっこよかったもん」
「俺は俺にできることをやるだけだし、今までもそうやって生きてきただけだ。誰かに褒められるためやっていたわけじゃない」
いつだって誰かの助けられてきた人生だし、毎日誰かに感謝し、自分がしてもらったように誰かを助ける。
本当に、ただそれだけだ。
「そんなことよりも、これからの流れについて話さないか」
「そこは大丈夫。わたしが冒険者登録まで案内してあげるわよ」
「別れてしまった同行者たちと合流するのが先延ばしにならないか?」
「フローラがそれでいいならいいけど。なら、そろそろ寝支度を整えるか。俺は外で寝るから」
「主様、わたくしもお供します」
「私も」
「拒否する理由を探せないが、いいから中で寝たらいい」
2人と契約した俺は、小型モンスターに囲まれたとしても余裕でゆっくり起きられるだろう。
拒否できないのは昼間の件もあるし、そもそも契約している元の存在だから心配する方が時間の無駄というもの。
「こんなに広くできているのだから、みんなで寝ても大丈夫よ。じゃないと、わたしも夜風が恋しいから外で寝ようかしら」
「あーもうわかったよ」
3人で連携できるほど、いつの間に仲良くなったんだよ。
ひと時も目を離したつもりはないぞ。
「でもわたくしは主様の左で!」
「じゃあ私は右で」
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