幼馴染な魔剣ちゃんと契約した聖剣ちゃんたちと行く追放ライフ~聖剣と契約できたのに、魔剣と関りが発覚して追放されたが、冒険者人生を謳歌する~

椿紅颯

文字の大きさ
15 / 35
第二章

第15話『緊張感の欠片もない夜の時間』

しおりを挟む
 左にメノウ、右にセリナが抱き着いてはないにしても超至近距離でスヤスヤと寝ている。
 両手に華なのか剣なのか判断がしにくくとも、かわいらしい女の子が両隣に居る状況はまさに――。

 そうじゃねえ! こんな状況で心穏やかに寝られるかぁ!

 夜風にでも触れて気分を落ち着かせるか。
 さすがに素手のまま歩き回るのは避けた方が――。

「フローラも眠れなかった?」
「ええ、うん」

 月の光と星々の光に照らされた、焚火をしていた場所でフローラは膝を抱えて座っていた。

「あの子たち、出会って間もない……のはメノウだけだったわね、でもアレンのことが大好きみたいね」
「まあ主従関係って感じではないな」
「わたしと違って積極的だし、羨ましいぐらいにかわいいわ」
「フローラだって魅力的で綺麗な女性だろ。さっきは3人で俺を責めていたけど、フローラこそモテモテなんじゃないか?」
「正直に言うと、心当たりはある」
「もう婚約者とかいたり? こんな美人が歩いていたら、他の男も声を掛けずにはいられないだろうに」
「はぁ……あなたは、どうしてそうも直球で物事を伝えられるのかしら。憧れるけど、一緒に居たら心臓がいくつあっても足りなさそうね」

 正直に言うと、明るさが足りないから今はフローラの顔がぼやけているから、表情の変化などはわからないけど。
 対面に座っていて、他称の距離もあるからなおさら。

「寒いか? せめてマントがあったらよかったが」
「違うの。さっき、あのときの話をしたでしょ。記憶に蓋をしていたから、悲しみが溢れてきちゃって」
「みんなが生きていた時間とこれから生きていたはずの時間を考えると、俺も悲しみと悔しさが溢れてくる」

 5年前だけど、当時の俺はお世辞にも強いとは言えなかった。
 それはフローラも同じで、年齢と未熟な体ながらに頑張っていたが連携なしじゃ中型モンスターは倒せなかったほど。

「――ね、ねえ」
「ん?」
「丸太がそっちの方が大きいし、と、と隣に行ってもいいかしら」
「ああ――なんか近くない?」
「ちちち近くないわよ。いつもこうしていたでしょ」
「まあたしかに?」

 互いに年齢を重ねたのだし、幼少期を掛け合いに出されても――さすがに肩と肩が触れ合う距離は近すぎると思うが。
 暗くてよく見えないし、距離感の話で言ったら近すぎるということにはならないけどさ。

「だが、たしかにこうしていると小さい頃を思い出すな」
「そうね。何をするにしても、考え方が未熟だったわ」
「訓練後のご飯とかそうだったよな。俺たちがいくら食べようが残りはまだまだあるのに、他の人に食べられるって勢いよく食べてた」
「そうね、ご飯を食べるときでさえ勝負だと思ってたわ。あれ、間違いなくみんなから笑われていたわね」
「だな。『お、若いのが食ってる食ってる』って半笑いで」

 逆に疲れ果てた晩飯では、目の前に用意された食べ物の山へ顔を突っ込んだ記憶もある。
 あまりにも眠すぎて、両手に食べ物を持ちながら頭を振り続けた結果だったな。
 今思うと、本当に恥ずかしすぎる。

「てかさ、いろいろと大丈夫なわけ?」
「何よ。わたしなりにいろいろと頑張ってるわよ」
「こうして立派に成長しているから、そこは心配していない。なんというかさ、ほら。親元を離れて不安じゃないのかなって」
「……最初は、誰も知らない場所で生活することに不安だらけだったわ。しかも、最後にお父様とお母様の優しさに触れた後だったということもあってね」
「本当に凄いお方々だよな。他の国だったら、絶対にありえないだろ」
「でしょうね。わたしも驚きの連続だったもの」

 チラっと目線を向けると、そこには不安気な表情はなく、でも物寂しいような雰囲気は感じ取れた。
 俺が言えた立場じゃないのはわかっているが、15歳で親元を離れる人は少数派だ。
 そして、その年齢から独立するなんて過酷としか言いようがなく、不安が募っていくのは当然。
 自身が国の姫である事実を誰にも打ち明けられず、逃げ出したくても踏み止まり続けるしかなかったはずだ。

「フローラはよく頑張ったよ。そして、今の頑張ってるし立派だ」
「……ありがとう。本当に、あなたは優しいわね」
「俺の優しさが染みちゃった?」
「もう……どうして、そういうところは治ってないのかしらね」

 目元を手で拭っているような動きを感じられたから、俺なりに場を和ませようとしただけなんだけどな。

「冒険者生活は慣れた?」
「いえ全然。毎日生活するのでやっと。何年経ったら慣れるのかしら」
「でも依頼を達成したから報酬が入るんじゃ?」
「どうかしらね。本来なら体の一部を持ち帰って討伐を証明するから」
「あー……ごめん」
「アレンが強すぎて塵も残ってないからね」
「俺も初めてだったから力加減ができなかったんだよ」
「ふふっ、わかってるわよ」

 体の内がグイッと持ち上がって込み上がる罪悪感を抱き、逃げ場のない感情を逃がすように顔を上げる。
 本当に綺麗な夜空が広がっていて、これからはこの景色が日常になるんだな。

 あっけなく終わってしまった聖騎士としての人生。
 正しくは終わってないけど、胸を張って役割を果たせないことには変わりない。

「――あ、そうだ」
「どうしたの?」
「俺さ、王都を追放されちゃって聖騎士と公言しちゃいけないけど、活動自体はしていいってことだと解釈しているんだけど」
「何を言おうとしているかはわかるわよ」
「心の中を読める能力でも持っているのか?」
「そんなものないわよ。どうせ、冒険者になっても人のために力を使おうって話でしょ」
「な、なんだと……これが読唇術ならぬ読心術というものか……」
「違うって」

 本当にそう思っていたし、実行しようとしている。

「でも、どうかしらね。冒険者になることは難しくないけど、実力が知れ渡ったら瞬く間に有名人の仲間入りすると思うけど。あの子たちも居るし」
「ひ、否定できない」
「有名になりすぎて、お父様に怒られないといいわね」
「ま、まあ……聖騎士を隠しながらだったら、大目に見てくれることを祈るしかない」

 話の流れ的に、冒険者登録しても街に滞在し続けるのは避けた方がよさそうか。

「そうだ、もしフローラさえよかったら一緒に旅をしないか?」
「……」
「でも一緒に移動することになったら、王都に還ることが困難になっちゃうけど。もし猶予が欲しいって――ん?」
「……」
「なんだ、寝ちゃったか。今日1日、いろいろあっただろうし――お疲れ様、フローラ」

 俺の方に頭を預けて眠るフローラは、未だ幼さが残っていて以前と変わらない。
 そういや、こうして2人で寝るのも初めてはなかったな。

 大型モンスター相手に囮を引き受ける無茶をし、【聖剣】と【魔剣】に驚きっぱなしだった。
 そして何よりも、俺と再会したせいで過去の記憶を呼び起こしてしまったんだ。
 気が動転して、それに留まらず追い打ちで二転三転――からの食料の件もあったな。

 まあ、俺もほとんど同じ経験をしているんだけど。
 だから同じく、今に来てやっと眠気に抗えなくなってきた。
 明日もいろいろあるだろうし、このまま寝てしまおう――。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

宍戸亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

S級スキル『剣聖』を授かった俺はスキルを奪われてから人生が一変しました

白崎なまず
ファンタジー
この世界の人間の多くは生まれてきたときにスキルを持っている。スキルの力は強大で、強力なスキルを持つ者が貧弱なスキルしか持たない者を支配する。 そんな世界に生まれた主人公アレスは大昔の英雄が所持していたとされるSランク『剣聖』を持っていたことが明らかになり一気に成り上がっていく。 王族になり、裕福な暮らしをし、将来は王女との結婚も約束され盤石な人生を歩むアレス。 しかし物事がうまくいっている時こそ人生の落とし穴には気付けないものだ。 突如現れた謎の老人に剣聖のスキルを奪われてしまったアレス。 スキルのおかげで手に入れた立場は当然スキルがなければ維持することが出来ない。 王族から下民へと落ちたアレスはこの世に絶望し、生きる気力を失いかけてしまう。 そんなアレスに手を差し伸べたのはとある教会のシスターだった。 Sランクスキルを失い、この世はスキルが全てじゃないと知ったアレス。 スキルがない自分でも前向きに生きていこうと冒険者の道へ進むことになったアレスだったのだが―― なんと、そんなアレスの元に剣聖のスキルが舞い戻ってきたのだ。 スキルを奪われたと王族から追放されたアレスが剣聖のスキルが戻ったことを隠しながら冒険者になるために学園に通う。 スキルの優劣がものを言う世界でのアレスと仲間たちの学園ファンタジー物語。 この作品は小説家になろうに投稿されている作品の重複投稿になります

《レベル∞》の万物創造スキルで追放された俺、辺境を開拓してたら気づけば神々の箱庭になっていた

夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティーの雑用係だったカイは、魔王討伐後「無能」の烙印を押され追放される。全てを失い、死を覚悟して流れ着いた「忘れられた辺境」。そこで彼のハズレスキルは真の姿《万物創造》へと覚醒した。 無から有を生み、世界の理すら書き換える神の如き力。カイはまず、生きるために快適な家を、豊かな畑を、そして清らかな川を創造する。荒れ果てた土地は、みるみるうちに楽園へと姿を変えていった。 やがて、彼の元には行き場を失った獣人の少女やエルフの賢者、ドワーフの鍛冶師など、心優しき仲間たちが集い始める。これは、追放された一人の青年が、大切な仲間たちと共に理想郷を築き、やがてその地が「神々の箱庭」と呼ばれるまでの物語。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。

タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。 しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。 ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。 激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。

ダンジョンで有名モデルを助けたら公式配信に映っていたようでバズってしまいました。

夜兎ましろ
ファンタジー
 高校を卒業したばかりの少年――夜見ユウは今まで鍛えてきた自分がダンジョンでも通用するのかを知るために、はじめてのダンジョンへと向かう。もし、上手くいけば冒険者にもなれるかもしれないと考えたからだ。  ダンジョンに足を踏み入れたユウはとある女性が魔物に襲われそうになっているところに遭遇し、魔法などを使って女性を助けたのだが、偶然にもその瞬間がダンジョンの公式配信に映ってしまっており、ユウはバズってしまうことになる。  バズってしまったならしょうがないと思い、ユウは配信活動をはじめることにするのだが、何故か助けた女性と共に配信を始めることになるのだった。

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

ハズレスキル【地図化(マッピング)】で追放された俺、実は未踏破ダンジョンの隠し通路やギミックを全て見通せる世界で唯一の『攻略神』でした

夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティの荷物持ちだったユキナガは、戦闘に役立たない【地図化】スキルを理由に「無能」と罵られ、追放された。 しかし、孤独の中で己のスキルと向き合った彼は、その真価に覚醒する。彼の脳内に広がるのは、モンスター、トラップ、隠し通路に至るまで、ダンジョンの全てを完璧に映し出す三次元マップだった。これは最強の『攻略神』の眼だ――。 彼はその圧倒的な情報力を武器に、同じく不遇なスキルを持つ仲間たちの才能を見出し、不可能と言われたダンジョンを次々と制覇していく。知略と分析で全てを先読みし、完璧な指示で仲間を導く『指揮官』の成り上がり譚。 一方、彼を失った勇者パーティは迷走を始める……。爽快なダンジョン攻略とカタルシス溢れる英雄譚が、今、始まる!

処理中です...