【悲報】人気ゲーム配信者、身に覚えのない大炎上で引退。~新たに探索者となり、ダンジョン配信して最速で成り上がります~

椿紅颯

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第1部・第一章

第1話『その人気ゲーム実況者、大炎上してしまう』

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「よっしゃぁーっ!」

 一人暮らし、マンション一室。和昌かずあきは、自身が保有する動画投稿サイトのアカウント登録者数が3万人を突破したことに喜びを露わにしていた。

「本当だよな、夢じゃないのよな」

 ホーム画面で何度も更新をし、登録者人数が30002となっている数字を確認する。何度も何度も更新ボタンを押しすぎているが、若干の増減はあれど3万人を突破したという事実は変わりはなかった。

「すぅー……――ふぅ……」

 ここまで来るのに8年もかかったことから、ドンチャン騒ぎをしてはっちゃけたい気持ちをなんとか落ち着かせる。
 現在の時刻は22時。一人暮らしをするような若人であればまだまだ起きているような時間であっても、このマンションに住んでいる全員がそういうわけではない。こういった場所の退去理由としてよく挙げられるのは、騒音なんかの住人同士によるトラブルなのだから、気を配るのは当然。

「――――っ――っ」

 和昌かずあきは何度もガッツポーズをとって喜びを露わにする。
 なんせ、始まりは小学6年生で今は高校を卒業したばかり。だがずっと目標を掲げて達成するため、ボイスロイドの勉強や動画編集の勉強をしてきた。
 そのせいでテストなどの結果はまあまあなものになってしまっていたが、有酸素運動や筋トレだけはほぼ毎日続けていたため、謎の自信だけを抱いて日々をポジティブに過ごしている。

 これ以上、言葉にして喜びを露わにできないことから、同じ活動名【カズマ】で登録しているSNSを開いて今の気持ちを呟く。

『うおおおおおおおおおおっ! みんなあああああやったあああああ! ついに登録者数が3万人を突破したあああああ!』

 記念すべき日になったということから、もう少し言葉を選んでわかりやすく報告した方がいい。こちらのSNSも既に1万人はフォロワーがいるため、大体の人間であればそうするであろう。
 しかし、和昌は常日頃の呟きも大体こんな感じでボイスロイドを使用したゲーム実況もこんな感じ。だから、お祝いに来るメッセージも『おめでとおおおお』『やったあああああ』『俺達の夢でもあった! おめでとう!』というものばかり。
 このままお祝いの言葉に反応したいところだが……残念ながら、明日のアルバイト最終日に備えて寝なければならない。

『みんな、ありがとな! 明日の用事もあるし、みんなのコメントを見られるのは夜になりそうだ! ごめん! そんじゃ、おやすみ!』

 と、投稿してブラウザを閉じてパソコンをシャットダウン。
 そのまま風呂などを済ませてベッドイン。電気を消した暗い部屋でスマホのロックを解除。

 寝るとは言ったものの、再びSNSを開いて増え続ける通知欄を眺めてニヤニヤと悦に浸る。

(急ではあったけど、でもタイミング的にもちょうどよかったからな。だけど、明日からはもっといろいろ頑張らなきゃ)

 そう、明日から動画投稿だけでお金を稼いでいく決心をし、眠りについた。



「よぉーし、よし」

 アルバイトから帰宅し、いろいろと済ませてドライヤーで髪を乾かしながら期待を胸に気分が高揚し続ける。
 なんせ、これからSNSを開いたら沢山のお祝いメッセージが寄せられているのだから。そして、SNSだけでもやりとりをしていた人にはメッセージを返す。最後にもう一度だけ歓喜する心境を発信する予定。
 夢ではない、ちゃんとした現実で容易に想像できる未来を思い浮かべながら鼻息を荒くする。

「あ、そうだ。どうせなら、芹那せりなにも報告してあげるか。唯一、俺がゲーム実況者として活動をしているのを知ってるんだしな」

 そこまで友人が多くない和昌は、高校1年生の時に知り合った芹那せりなを思い浮かべる。
 彼女は和昌が動画投稿者という事実を知った時に驚きはしたが、「でも私はそういうのを見ない。まあ、目標が高すぎると挫折するわよ」なんて言葉を浴びせてきた人物だ。その言葉に悪意は感じられなかったことから、付き合い自体は絶っていないがずっと心に残っていた。
 だからこそ、見返してやろうという反骨精神と、『あの時は忠告をしてくれてありがとう』という感謝の気持ちを込めて報告をしようと決める。

 しかし高校3年生だけ別のクラスになってしまい、なんだかんだ今の今までまともな連絡をせずにいたことから、どうやって話題を切り出そうか悩んでしまう。

「さて、どうしたものか……」

 髪を乾かし終え、暗い画面のスマホを手に唸る。

「久しぶりだから、ちょっと硬めな文章からスタートする? もしくは、あの時みたいに軽めなものにする? うーん……まあいいか――え」

 スマホの電源をつけた時だった。
 これから連絡をしようとしていた相手から、メッセージが届いていたのだ。

 しかし、ポップアップしてあるメッセージは再会を喜ぶようなものではない。

「……」

 文頭から『ねえ今なにをやっているの!』という、よく見たら既に10件も来ているメッセージを開く。
 すると、未読だった最初から不穏そのものだった。

『なんだかヤバくない? 変なのが回ってきたんだけど』
『これ、早めに対処しないとやばいんじゃない?』
『寝てるの? 起きたら早めにSNSを確認しなよ』

 急用ということが一目でわかるぐらいの内容ばかりで、その全てに共通していることがSNSということ。
 このタイミングでSNSといったら、登録者が3万人を突破した記念でお祝いメッセージが送られてきていることぐらいしか思い浮かばず、それ以外だとすればイラストや有名人にフォローされたぐらいしか想像がつかない。

 芹那へ連絡を返す前に、期待に胸を膨らませながら送られてきた内容に従ってSNSを開く。
 すると、

「な、なんだこれ……」

 通知の数が、これ以上カウントできない"99+"となっているのが驚異的ではあるものの、言葉を失ってしまったのはほかに理由がある。
 昨晩、喜びを露わにした内容に想像もしていなかった言葉が並んでいたのだ。

『マジかよ、今までファンだったのに失望した』『どんだけ暇なんだよ。マジでありえねえわ』『裏であんなことを呟いてたなんて、正直ガッカリだ。もう二度と動画とかみねえわ。てか、みたくねえわ』『他人を蹴落として達成できた目標って……クズやんけ』などといったもの。
 なんのことか見当もつかない内容に、理解できずにただ口をポカンと開けて数えきれないメッセージの数々に目を通す。
 中には、10時間前などに送ったであろうお祝いメッセージが残されているものの、ほとんどが誹謗や批判だった。

 一連の流れで察する、『"炎上"』の二文字。
 人生で初めて味わった身に覚えのない経験を前に、事態をいち早く知らせてくれた芹那へメッセージを送ることに。

『今SNSをみた。まったく意味が分からないんだが、なんでこうなったか知ってるか?』

 つい先ほどまで、どんな風に接したらいいかわからないと悩んでたのが噓だったかのようにすぐ送信。
 すると、すぐに返信が。

『私も全部知っているわけじゃないけど、和昌が裏垢で呟いていたことが晒されたのが事の発端らしいよ』
「はい? んな馬鹿な。俺は裏アカなんて持ってないぞ――って、ここで言っても意味がないな」
『なんのことかサッパリだ。そもそも俺は裏アカなんて持ってない』
『真相はどうかわからないけど、実際にそうなってるのよ』

 さっきのは何かのドッキリであってくれ、という願いを込めて再びアプリを起動するも批判などのメッセージが次々と寄せられている。
 このままでは、せっかく達成できた目標も意味をなくしてしまう。

 すぐに動画投稿サイトの登録者数を確認すると――23102。
 約1日でここまで登録者数が減ってしまい、一瞬にして血の気が引いてしまう。

「ど、どうすればいいんだ……」

 不安とアルバイトが終わってしまい、これからの生活に絶望感を抱く。

 なにか弁明を呟こうと再びSNSを開くと、ある内容が目に入る。
『こいつ、どうせなら通報しまくってやろうぜ』『こいつの動画なんてもう誰も観ないんだし、通報しまくってアカBANさせてやろうぜw』『もう二度と活動できないようにしてやろう』――なんてものが。

 動揺のあまり、スマホを床に落とす。

「な、なんだってんだよ。俺がなにをしたっていうんだ。裏アカ? そんなもん、1つたりともありはしない。なんかの愚痴? そんな馬鹿なことがあるか」

 毎日、勉強。毎日、練習。
 目標を達成するため、好きなことで生きていくために日々努力し、誰かの悪口や日常生活の愚痴なんかも呟いてこなかった。
 まさに健全。それ以外の言葉が当てはまらないぐらい真っ当な生活を送っていたのは事実。

「はぁ……はぁ……」

 呼吸が浅く早くなっていく。しかし、このまま現状を放置し続けるのはまずい。
 そう判断した和昌は再びスマホを手に取り、弁明をしようと分を打ち始めようとした時だった。

 ――問題が発生しました。やり直してください。

「え……」

 その文面が画面中央に表示された。
 和昌はその意味を理解している。

「お、俺のアカウントが削除された……も、もしかして」

 動画投稿サイトを急いで開くと。

 ――現在ご利用になることはできません。

「……」

 葭谷よしたに和昌かずあきは、念願の目標を達成した次の日に炎上し、活動していた全アカウントが削除されてしまった。
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