【悲報】人気ゲーム配信者、身に覚えのない大炎上で引退。~新たに探索者となり、ダンジョン配信して最速で成り上がります~

椿紅颯

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第二章

第8話『一難去ってまた一難を跳ね除ける逆転の盾』

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 背後に落下し続ける恐怖に耐えきれず、和昌かずあきは体を反転させる。

 浮遊している時間は少し長く感じたが、地面は既に視界に入っていた。
 このままでは叩きつけられてしまう。

「このままじゃ……」

 落下する際中、剣を壁に突き刺せればなんとかなるのでは、と思うも、腕を伸ばしても剣先が届くぐらいで留まってしまう。他になにか案があるかと言えば、物語の登場人物が壁を蹴って飛び続けるぐらいだ。
 当然、そんな現実離れし過ぎている、いや人間離れしている芸当を和昌かずあきができるはずはない。まさに絶望。絶体絶命。

 そんな矢先、自身が手に装着している手袋もといガントレットシールドへ視線を移す。

「こんな時だからこそ、役に立ってくれよ――っ!」

 一途な望みを託し、空いている左手を前――真下へかざした。

 すると、まさかのまさか。
 手袋の形状からガンドレットという名に相応しい形状に様変わりしていく。朱色の宝石で造られたような素材は指先から肘を覆うまで伸びていき、人間の腕というには異様な外観となる。

 しかしそれだけには終わらず。

 指を全開に開いている先に、朱色のシールドが展開される。物理的なものというよりは、ビームシールドの様なものが。色は認識できるものの、シールドより前はハッキリと認識できる。
 向かう先は無機質な茶色い地面。後は祈るのみ。

「頼む――うわああああああああああああああああああああっ!」

 落下する勢いは抑制されるどころか、その速度を上げていく。

 地面まで残り数秒。
 和昌は目を閉じ、その時を待った。

「……」

 結果、和昌は生きている。

 落下の衝撃を【朱護の盾ヴァーミリオン・プロテクトシールド】が相殺し、反動を微塵も感じることなく、負傷をせずに着地することができたというわけだ。

 しかしダンジョンはそうもいかず。
 落下の衝撃で地面にクレーターができ、岩は砕かれ辺りへ飛び散り、土埃が天井まで噴き上がっている。
 もしも着地地点に複数のモンスターが居たのならば、間違いなく魂紅透石ソールスフィアを地面に落として消滅していた。しかし、偶然にもそんなことにはならず。

「ごほっ――ごほっ」

 漂う土埃に目を開けることはできず、正常に呼吸をすることはできない。
 咳払いをしてすぐ、上着首元を【叶化の剣エテレイン・ソード】を握っている右手で口元に寄せ覆う。

 風が吹いていないため、舞った粉塵がすぐに消えることはない。もしも粉塵爆発のようなことになったら、間違いなく命を落とす。
 和昌は実際に目の当たりにしたことのないその事象に怯えつつも、本当にそんなことが起きるものだろうか、という疑問を抱いている。
 目を閉じている今、闇雲に見知らぬ場所を歩くのは危険であることから思考だけに耽ることしかできなかった。

 だからこそ、すぐに不安が押し寄せてくる。
 人間だから身動きが取れない状況であるが、モンスターはそうではない。もしも音もなく接近されてしまったのなら、奇襲に対応することは不可能。今まで戦闘していたスライム等であるのならば問題ないが、ダンジョンを降下しているのだ。そんな生易しいモンスターはきっと居ない、と容易に想像がつく。

 そこから数分が経ち、経過観察の意味で瞼をほんの少しだけ持ち上げた。

「……」

 視界はハッキリとしていて、見事我慢比べに勝利したのだ。

「よかった……。てか、これ凄すぎんだろ」

 両目を開けた後、一応、ぐるりと一周して辺りを見渡すもモンスターはおらず。
 左手を少しだけ持ち上げ、物珍しそうに視線で舐め回す。
 まるでモンスターにでもなってしまったかと疑ってもおかしくないその外見に、若干の戸惑いを抱くも、よくよく見ると透き通った朱色に考えを改める。しかも紛れもなく、つい先ほどこの手袋もといガントレットシールド――【朱護の盾ヴァーミリオン・プロテクトシールド】に助けてもらったのだから。

 幻ではなかったことを確認したくなり、もう1度左手を前へかざす。
 すると、

「おぉ……」

 朱色のビームシールドが展開された。
 形状は六角形。棺桶、とも言える下側が長くなっている。

「ん……もしや」

 右手に握っている【叶化の剣エテレイン・ソード】を左の鞘へ納め、同じく前へかざす。
 すると、

「わお」

 左側と同様にシールドを展開できてしまった。

「じゃあさ、こういうのはできるのか?」

 つい遊び心に火が点いてしまい、盾同士を合わせることはできないのかと両手を中央へ寄せてみる。

「こりゃあすげえ――すっげえな!」

 2つの盾は合体し、巨大な盾へと変化し――たと思ったら、自身を中心に半円の結界となった。
 朱色の結界は、両手を離すとスーッと形状変化していき再び2つの盾へと戻る。

 和昌は純粋に心が躍った。
 ゲームで観たような、アニメで観たような、物語で観たような『絶対守護領域』のようなものに。暇な時に、もしも自分も使えたのならどれだけカッコいいのだろうかと妄想した、あれみたいに。
 自然と口角が持ち上がる。

 鼻を鳴らし、『今の俺、カッコよすぎ』なんてことを思いつつも、自分の置かれている現実に火肝とされてしまった。

「てか、俺は今どこにいるんだ」

 落ちてきた天井に視線を向け、上がったテンションは一気に落とされる。

 物語の主人公であれば、この穴の壁をジャンプしまくって登っていくのだろうが、そんなことを現実的にできてしまえば苦労はしない。

 しかし絶望するほどの状況でもないことは、すぐにわかる。

「落ちてきたとしても、何十階層も通過したとは思えない。それに、ここがダンジョンである限り必ず階層を移動する階段がある。だとすれば、注意深く散策しつつ、階段を探し出して登って行けば地上に出られる」

 さすがはゲーマー、といったところか。
 まず新米探索者であれば、落下した時点で命を落としているかもしれないが、もしも生き残っていたとしても混乱し、絶望感に苛まれてしばらくは移動できないだろう。だが和昌は、ゲームをしたりして様々な物語に触れていたことから、すぐに動き出した。

「よし、行こう」
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