【悲報】人気ゲーム配信者、身に覚えのない大炎上で引退。~新たに探索者となり、ダンジョン配信して最速で成り上がります~

椿紅颯

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第二章

第12話『俺は、本当にパーティを組んでもいいのか……?』

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「今日はそこそこ混んでるみたいだね」
「私達は時間的に大丈夫だけど、和昌かずあきは大丈夫?」
「同じく大丈夫」

 3人はあれから順調に進んでいき、無事に地上へ辿り着くことができた。

 覚悟を新たに決めた後、連携を意識した戦いが始まったのも束の間――肩透かしを食らってしまったかのように楽な戦闘が続てしまっていた。
 そこからは上層に向かうということから、モンスターも弱くなっていき、2人が戦って1人は休憩する、といった作戦で戦う始末。最上層付近に限っては、戦闘せず走り抜けただけ。

 その後、施設で軽い治療をして、武器を預けた後で探索者連盟支部へ足を運んでいた。

「そういえば、どうしてわざわざここに来たの?」
「言われてみれば。他のところでも、というか施設内でも報告だけならできるよね」
「そこまで深い意味はないんだけど、普段はここを使っていたから」
「まあ、慣れている場所っていうのならそこまで不思議じゃないけど」

 言い訳を考えていなかったことから、かなり雑になってしまった。

 しかし真綾まあや天乃そらのとはここまでの関係であるから、このまま変な言い訳を続けても問題ないだろうと和昌は思う。
 だからこそ早めに受付嬢の反応を2人へ見せたかったのだが、運がない。

「それにしても、ダンジョンギミックを体験しただけじゃなくって、ダンジョントラップにも引っ掛かるって幸運なのか不運なのかどっちなんだろうね」
「私達のことを含めて考えれば、総合的に幸運だったんじゃないかな」
「そ、そうなのか?」
「だって、和昌がその装備を手に入れていなかったら、私達が救われることもなかった。でしょ?」
「理屈的に捉えればそうだな。俺も、この盾がなかったら落下している時点で死んでいただろうし。そうじゃなくても、何かの豪運を引き寄せて落下から生き残ったとしても、サルイとの戦闘で死んでいたのは間違いない」

 と、和昌は納得したように言葉を並べているが、その内容は不運そのものなのではないか、とも思ってしまう。

「でもさ、やっぱりその装備ってヤバいって話でもあるんだよね」
「私達を助けてくれる前に、サルイ2体をたった1人で討伐しちゃうなんて凄すぎる。同じ人間とは思えない」
「いやいや、人間ではあるでしょ」
「訂正する。同じ新米探索者なんて信じられない」

 真綾からのツッコミに、天乃はすぐに訂正してから軽く頭を下げた。

 対する和昌も、自分のことながらに改めて実感する。
 ダンジョンの中というのもあるが、モンスターは相手が初心者であろうがそうでなかろうが関係ない。ただ目の前に立つ人間を標的と定め、危害を加えてくる対象とみなして攻撃してくるだけなのだから。
 だからこそ思う。
 偶然にも手に入れることができた剣と盾がなければ、間違いなく今はここに居ない。そして、今こうして両側に座っている少女達の命も救うことができなかった。

「だけど、俺の戦いっぷりでいろいろとわかっただろ」
「うん。だからこそ、私は決めた」
「何を?」
「私、これからは和昌とパーティを組みたい」
「はい?」
「おぉ、天乃! 私もちょうど同じことを思ってた。以心伝心ってやつだっ」
「そうかもね」

 2人は前傾になって、和昌を挟んでニカッと笑う。

 それを見て、和昌はどんな表情をすればいいのかわからなくなる。
 だがちゃんと言わなければ伝わらない。

「すまないが、俺はパーティを組むつもりはない」
「それこそどうして?」
「和昌は私達と同じ駆け出しの探索者っていうことがわかった。なら、1人でダンジョンで狩りをするよりパーティを組んだ方がいろいろと好都合。違う?」
「それはそうだけど……」

 その言葉に、決心が揺らぐ。
 死地を共に戦い、自身の弱さを曝け出した相手。それは和昌が懸念していたことが全てクリアされていることでもある。
 だとしたら、勧誘を断る理由はそこまでない。
 あるとすれば、これから待ち受けているであろうことぐらいだ。

「あ、空いた」

 先ほどまで用のある受付嬢を占領していたパーティが居なくなった。

(誘ってくれたこと自体は嬉しいが、どうせこれからのことを見聞きしたら嫌がられるんだ)

 話の続きではあったが、和昌は立ち上がってカウンターの方へ歩き出す。

 真綾と天乃はその唐突な動きを疑問視するも、後を追う。

「ど、どうも」
「げっ」

 わかりきっていた、あからさまな態度を示される。
 何度見ても、利用者に対していい表情でも言葉でもない。普通であればクレームを受けているだろうが、たぶんこの状況下では和昌の方にクレームが入るだろう。

「そ、それで――今回のご用件はいかがなさいましたか」
「あのあの。どうしてそんなに嫌な顔をしているんですか? 和昌が何かしたんですか?」
「え、ああ。葭谷よしたに様、もしかしてあのことを伝えておられないのですか?」
「一部を除いて話はしましたが、その態度を待っていたんです」
「はい?」

 受付嬢は「この人はなにを言っているんだ」と、少しだけ頭の調子を疑う。
 いよいよ、100億円の剣を持ち歩いてることに気をおかしくしたのか、と。

「俺の口から伝えるより、受付嬢の方から直接言ってもらった方がいいかと思いまして」
「え? あー、ちょっと訳ありって感じですか」
「まあ、そんな感じです」

 そういうことに関しては勘が鋭いのか、と和昌は無言でツッコミを入れる。

「さっきからどういうことですか? まるで和昌が隠しごとをしているみたいじゃないですか」
「少なくとも私は、どんなことがあったとしてもパーティを組むと決めています」
「ふむ……そちらの女性は決心が硬そうですね。では、直球で言ってしまいますが、葭谷よしたに様が携えていらっしゃる剣についてです。そちらの剣は、目が飛び出るほどの価値があります」
「……」
「……」
「ですので、我々から葭谷様にはこの探索者連盟支部には足を運ばないようお願いしてあったのですが……」

 同業者――他カウンターの受付嬢達や従業員達は、表情を動かさないよう必死に顔に力を入れる。
 その光景を、和昌は偶然にも視界に入ってしまったが「まあそうですよね」と納得していた。

「……ですが、だからどうしたっていうんですか。私は和昌にダンジョンで命を救われました。そんな恩人に対して、仇を返すということは絶対にありえません」
「ははぁ~。天乃、言うねえ。ちなみに私も同意見ですので」
「えぇ…………こんなことを私が言うのは間違っていると思うのですが、これから先、パーティを組んだとしたらトラブルに巻き込まれてしまうかもしれないですよ。ダンジョンだけでなく、地上でも」
「そんなの、関係ありません」
「おっなじーく」

 一体どうして、受付嬢がたった1人の探索者とパーティを組まないように説得しているのか。どう考えてもおかしい構図ではあるが、高価なアイテムや装備を持っている人間は、それを狙った外部の人間だけではなく、内部の人間からも命を狙われかねない。

 大袈裟かもしれないが、どんなゲームや物語であってもそれは定番中の定番。金持ちキャラは大体が暗殺される結末を辿るものだ。
 ゲーマーであり、様々な物語に触れてきたからこそ和昌は理解している。だが……。

「……と、おっしゃっておりますが。いかがなさいますか」

 受付嬢は、動じない2人を諦めて和昌へと視線を移す。

「俺は危険性を理解しているからこそ、2人とはパーティを組めないと思っていた」
「なるほど。だから、『ここに通っていた』って言ってたんだ」
「え、そんなこと言ってたっけ?」
「間違いなく言ってた。なんで過去形なんだろうって思ってたけど、やっと理解できた」
「まあ、そういうことだ。そして、説明してもらった通りで、もしかしたら命を狙われるかもしれない。それに2人を巻き込みたくない――」
「だから、パーティを組もうと思わないでほしいって? むりむり。天乃はもーっと無理」
「当然」

 和昌は詰まっていた息を吐き出す。

「知らないぞ、どうなっても」
「まあまあ。みんないい感じに初心者なんだし、お互いに迷惑を掛け合うってことで」
「真綾、たまにはいいこと言うじゃん」
「なにそれ、ひっどーいっ」
「まったく。こっちの心配なんて無意味だったじゃないか。不貞腐れて損した気分だ」
「え? 不貞腐れてたの? 全然そうは見えなかったけど」
「私は気づいてた。ちょっとだけ暗めだったよ」
「なにそれ、絶対に今思いついただけでしょ」
「違う」
「うそうそ」

 和昌は受付嬢に向かって「こういう感じになりました」と、諦めの視線を送る。
 それに対して、受付嬢も諦めたようにため息を零し、カウンター下に用意されている書類を取り出した。

「それでは皆さん。こちらの方にサインをお願いします」

 カウンター上に差し出されたのは、パーティ申請用紙。
 これに記入をしてしまえば、本当のパーティメンバーとなる。

「じゃあリーダーは和昌でっ」
「賛成。てか、それ以外ありえない」
「おい、俺の意見は反映されないのか」
「多数決ということで」
「この国は民主主義」
「あー、最初から話を聞いてもらえないパターンってやつですか。はいはいそうですかわかりましたよ」

 和昌は首の後ろに手を回し、諦めの長いため息を零す。

 手続きは簡単なもので、全員の氏名を記入し、最後に指で押印するだけ。

「はい、これにて手続きは以上になります。皆さま、よき探索者ライフをお過ごしくださいませ」

 互いに頭を下げ合い、カウンターを後にする。
 最後、目線を合わせた受付嬢は「どうなっても知りませんよ」と、強く訴えかけていた。

 しかし全てが終わった後で、どうすることもできない和昌は「わかってますよ、その時になったら考えます」と、目線を送り返す。当然、半ば諦めた様子で。

「じゃあ早速、これから打ち上げにでもいこーっ」

 真綾まあやが、ウキウキで拳を突き上げる。

「それ、ありよりのあり」

 と、天乃そらのも。

「言っておくけど、俺は金がないからな」
「え、そうなの?」
「だとしても大丈夫。私と真綾で払うから」
「いいのか?」
「贅沢をしない前提なら」
「……じゃあ、お願いしちゃおうかな」
「よーっし、レッツラーゴーッ!」

 探索者連盟支部を後にした3人は、道行く人々の雑踏の中へ姿を消して行った。
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