【悲報】人気ゲーム配信者、身に覚えのない大炎上で引退。~新たに探索者となり、ダンジョン配信して最速で成り上がります~

椿紅颯

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第三章

第17話『チュートリアル兼レクチャーは通り越して』

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 カズアキにとって、初めて・・・の配信が始まる。

「まずはここら辺でやってみよーう」

 スライム地帯を抜け、フラワー地帯も通り越した先――【バット】地帯でマアヤは足を止める。

 2つの配信は既に開始してあり、マアヤとソラノペアには視聴者がちらほらと集まってくる。対するカズアキとセリナペアの方は0人。
 初めての活動であれば、数分間も視聴者が増えないとガッカリするだろうが、カズアキは動揺しない。

「いろいろと慣れるためにここら辺で調整をしよー」
「チュートリアルみたい」
「おぉ、それそれっ」

 セリナはカズアキへ視線を向けるも、初心者のような相槌を打っているのを確認し合わせることに。

「私達は先輩達の動きを参考にするってことね」
「その通りっ」
「たしか、カズアキこいつらと戦うのは初めてだったよね」
「ああ」

 視線の先に2体、宙を羽ばたいている。
 全長は30センチに対し、横幅が1メートル。外皮は灰色で、口よりはみ出ている2本の牙。平らな顔から足と羽が生え、小動物のそれと同じ目の小ささとなっている。
 一言でまとめてしまえば、灰色の蝙蝠。

「じゃあソラノ、そっちをお願い」
「任せて」

 マアヤは右、ソラノは左。それぞれを標的に走り出す。

 あのひ弱さは、剣が1薙ぎでも命中すれば消滅するのが一目瞭然。
 逆に言えば、飛行していることを活かして上空へ行かれると手が出せない。

(単なる蝙蝠の種類であれば、超音波を飛ばして位置把握をして敵をいち早く察知するはず。あの勢いで行って大丈夫なんだろうか)

 と、ゲームで得た知識を巡らせるも、結果はすぐに出た。

「はぁっ」
「はっ」

 ハルナは上段からの斬り下ろし――ソラノは右から左への一線を描いて攻撃。反撃や回避などの行動は観ることなく、バッドは魂紅透石ソールスフィアを地面に落とし灰となり消滅した。

(スライムといいフラワーといい、バッドといい。もしかしたら、最上層に出現するモンスターは深く考えなくていいってことなのか)

 強敵であったサルイとの戦闘と比較し、考察のために力んでいた目を緩める。

「と、いう感じに倒せるよ」
「基本的に先手をとれば、初手で討伐できる」
「なるほど。それだったらいい感じに戦えるかも」
「じゃあ次は私達の番ね」

 脳内で情報を整理しているカズアキに対し、どうしてかセリナはやる気に満ちた目をしている。

 マアヤとソラノは、カズアキとセリナの後ろへ駆け戻る。

(これ、配信している画面を確認していないから映りがどうなっているかわからんな)

 と、初心者では絶対に辿り着かないことを考えながら、配布の剣を抜刀。

 一連の流れで、タイミングよく2体のバットが出現する。

「じゃあ俺は右」
「私は左。お先」
「え」

 カズアキは意気込みでも軽く宣言でもしようかと思っていたのに、セリナは我先にとバットへと駆け出して行ってしまった。
 セリナの行動はあまりにも唐突な出来事だったため、自分のやるべきことを忘れて視線を奪われてしまう。

 今更になって、カズアキはセリナの実力について質問することを忘れいてたことを思い出す。
 しかし今回もまた、あれやこれやと考える時間などはなく結果はすぐに出た。

「はっ」
「――わお」

 一瞬の迷いもなく、セリナの剣によって貫かれるバット。

「カズアキもごーごーっ」
「お、おう」

 背後に待機しているマアヤから声援に我に返ったカズアキは、自身の標的へ視線を戻し、駆ける。

(迷わず、先手を取る。それで、勝ちだ!)
「おらぁあっ」

 助言通り、索敵される前に先手をとれた。ならば、とカズアキは助走からのジャンプ。そこから勢いを乗せた1撃を振り落とした。

 結果、3人がやってみせたように1撃で討伐。

「戻って戻って」

 再び全員が1ヵ所に集合する。

「今の感じでいいんだけど、さすがに弱すぎちゃったね」
「いや。知識をつけながら戦えるっていうのは、後から役に立つから凄く助かるよ」
「ならよかった。でもさすがに次の場所にいこっか」
(様々なゲームで攻略していたダンジョンは、序盤に出てきたモンスターの上位種が必ず出てきていた。しかも延長線上でボスにもなって。だからこそ、こういう些細な経験が絶対に後から生きてくる)

 ゲーマーの特性を前面に出してしまいそうになるのを必死に堪え、自身の中だけでなんとか完結させる。

「次のモンスターはちょっと癖があるかも」
「亀、だよ」
「亀って、あの亀?」
「そう。のっそりのっそり歩く、甲羅を背負っている亀」
「ほほお」

 まさか、そんな説明通りのモンスターが居るわけなんか――とカズアキは独りでに思っていると、納得する他ない光景が視界に飛び込んでくる。

「えぇ……」
「ね、そのまんまでしょ。ちなみに名前は【タルトール】」
「そ、そうだな」
「じゃあ今度は、経験ってことでお先にどうぞ」

 ソラノは大袈裟に、両手を【タルトール】側に出し始めた。

「カズアキ、さっきは先に行っちゃったから、いいよ」
「お、おう。活躍なんて期待しないでくれよ」
「大丈夫。たぶん、それとは違う期待をされているだろうから」
「なんだよそれ」
「いいの。ほら」

 カズアキは、この妙な展開に首を傾げる。

 しかし断る理由もなく、剣を握る手に力を込め、警戒心を忘れずに走り出した。

(今度は勢いは二の次で、反撃の可能性を考えて攻撃だ。もしかしたら、スッポンみたいに首を伸ばしてくるかもしれない)

 助走を緩めに、しかしすぐにタルトールの元へ辿り着き睨み合う。
 警戒心を尖らせているが、悲しいことにただの睨み合いが続く。

(さっき出した結論の通りで、こいつもほとんど攻撃してこないか、見た目通りに全てが遅いってわけなのか……? なら、待っているだけじゃただの我慢比べになるだけだ)

 カズアキは1撃で終わらせる気持ちで剣を振り下ろすと――カンッと音と共に剣が弾かれて体が仰け反ってしまう。

「えっ」
「おー」
「これは見事に」
「ふふっ」

 驚愕を露にするカズアキに対し、後方の3人はそれぞれの反応を示す。
 マアヤは感心し、ソラノは腕を組み、セリナは口元を隠している。

 突発的な状況に対し、呆気に取られてしまっていたカズアキは倒れる前に左足で踏ん張った。

「硬すぎんだろ」

 自身の攻撃に対して微動だにしていない、そして欠けることもしていない甲羅に素直な感想をぶつける。
 次に自分の剣を確認すると、一安心。もしかしたら折れているかもしれない、という心配は杞憂に終わった。

「――なら、っ」

 本当の初心者ならば、もう1度ぐらいは甲羅へ斬りかかっていただろうが、少しだけゲーマーとしての誇りに火が点いてしまう。
 すぐさま弱点を探り、呑気に甲羅から伸びでている首と頭へ的を絞って剣で突き刺した。

『――』
「おーっ!」
「やるね」
「えー」

 マアヤは両手を突き上げ、ソラノは両手を組んだまま目を組んで納得し、セリナは両肩を落してガッカリする。

「じゃあ私の番かー――っと」
「ふむぅ」
「なかなか動ける」
「こっちも終わったよー」
「はや」

 再び全員が1ヵ所に集合。

「今の感じでわかったと思うんだけど、こういうこともあるよって話だね」
「バットのように1撃で倒せるモンスターもいれば、タルトールみたいな硬いモンスターもいる。当然、動きが速いモンスターも」
「だからこそ、あの時戦ったあいつは総合的に強かったってことだね」
「なるほどな」
(ここまでくると、本当にゲームそのままだな。序盤から中盤は総合的に強いモンスターが強敵認定されるが、先に進むと尖ったモンスターが強敵となってくる、みたいな)

 捗る考察を終え、カズアキは3人のなにやら怪しかった最初の行動についても思考を巡らせる。

(待てよ。今のがチュートリアル的なレクチャーだったとしたら、さっきの俺って見世物だったってことじゃないのか? 感覚的にも視覚的にもわかりやすい……そう、配信に映すにはもってこいな)
「なあちょっと訊いていいか」
「なになに?」
「さっきのって、意図的なのか?」
「あ、気づいちゃった?」
「おい、俺を配信のネタにするのをやめろよ」
「カズアキ、いい動きだったよ。コメント欄も盛り上がってた」
「……」

 どれぐらいの人数に観られていたのかはわからないが、カズアキは羞恥心が込み上がってきて耳が熱くある。

「ああいいだろう。俺だってやれるところをみせてやる」

 配布剣を納刀し、左腰に携える【叶化の剣エテレイン・ソード】を抜刀。
 魂紅透石ソールスフィアと瓜二つの薄紅く淡い光を放つ剣は、天井から降り注ぐ蒼い光によって幻想的な雰囲気を醸し出す。

「ちなみに今日の予定はどこまで進むんだ?」
「えーっと……第1階層でいろんなモンスターと戦って、今日の配信を終わる&解散って感じかなって」
「ははーん。じゃあ予定変更だ。第2階層まで行くぞ」

 カズアキは、傷つけられた心を修復すべく半ばやけくそになっている。
 下げた株を戻すには、もはや活躍している姿をみせる他ない。

「よーし、今日の配信は楽しいことになりそうだなぁ」
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