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第六章
第39話『願いを込めた、最強の一撃を』
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声がした場所に辿り着くまで、たったの10秒程度だった。
「――っ!」
まるで人気のない、どの建物の裏口もない影に包まれた広場。
そのほぼ中心に立っているのは、真綾と……。
「支部長……」
最悪の中の最悪が的中してしまったのだ。
犯人であってほしくなかった支部長と、声の主であってほしくなかった真綾。
しかも、真綾は左腕を後ろに回され、刃渡り20㎝のナイフを首に突き付けられている。
「ああやっぱり、やっぱりそうじゃないか」
「支部長、真綾を放してください」
「それは無理な相談だね」
ストレッチジーンズに黒色のパーカーを着ていて、一見ではまず支部長だと判断がつかない。
しかし和昌は、普通の探索者であればほとんど顔を合わせることがないところを、例外的に顔を合わせていた。それだけではない。つい数時間前に話題が出て、つい数分前までその顔を浮かべていたからこそ、和昌はほぼ一瞬で判断がついたのだ。
「いろいろ行動してきたけど、キミを誘き寄せるためにはこうするのが一番手っ取り早かったんだ」
「どうして俺の装備を狙っているんですか」
「ふむ。やはりそこまで行き着いているんだね。やれやれ、彼女の頭は回り過ぎるから困るんだ」
「否定はしないんですね」
「最初は言い訳を考えてたさ。でもね、キミと彼女が俺の知らない場所で密談をし始めたから、ああもういいやってなったんだ」
(まさか、自分が知らないところで犯人の枷を外してしまっていたなんて、まるで想像もしていなかった。そのせいで真綾も巻き込んでしまった……)
もしも何かあったのなら、一生忘れることができない傷として残ってしまうだろう。
「じゃあ、俺の装備を渡したらその子を放してくれるんですか」
「まあそれでもいいよ……とはならないでしょ。犯人が俺だってバレてるんだし」
「それはそうですよね」
「他の2人には手を出さないって誓うよ。絶対に。だけど、装備を渡そうと俺が奪おうと、残念ながらこの子とキミには死んでもらわないといけないけどね」
和昌は、ゲームでも似たようなセリフと展開を思い出してしまう。
「お決まりの展開って感じですね。それはつまり、『目撃者は生かしておけない』ってやつですよね」
「ああそうさ。話が速くて助かるよ」
「別に、そこに対しての疑問はありませんよ。誰だってそう考えますから」
「まあそうだろうね。で、どうするんだい?」
カズアキは、迷いなく配信をスタートさせる。
「支部長、何やら俺の事はとても詳しそうですね。でも、知らない事もあるんじゃないんですか?」
「この期に及んでハッタリかね。キミは4人パーティで、2つのレア装備を所有している豪運の持ち主。つい数日前に探索者として活動開始したばかりだというのに、まるでその気配を感じさせない」
「ちょっとやめてくださいよ、こんなシリアスなシーンで俺を褒めないでください」
「ははっ、でも悔しいが事実だからね」
マアヤは、拘束されている腕が痛み顔を歪めているも、事の流れを察した。
「カズくんは凄いんですよ。装備に頼らなくても戦えるんです。怖くたって、強くなろうって」
「それは素晴らしいね。高みを目指して奮闘する姿、是非とも見てみたかったものだ。いやはや、ここで命を落としてしまうなんて実に惜しいものだ」
[なんだなんだ]
[え、何この状況]
[もしかしてこれ、ヤバいやつ?]
「お、そろそろ良い感じになってきましたね」
配信スタートしてすぐだが、早めの昼休憩に入っている人達が配信開始の通知を受け取り、視聴開始し始めている。
「探索者連盟の支部長ともあろう人が、どうして俺の装備を狙っているんですか?」
「なんだね。犯人である俺を突き止めたというのに、犯行理由まではわからなかったのかね」
「お恥ずかしながら。俺ではまだまだだったみたいです」
「まあいいだろう、簡単な事さ。レア装備を手に入れ、売り払おうとしてたのさ」
「なるほど、そういうことでしたか。確かにレア装備はお金になりそうですもんね」
「ああそうさ。俺はその装備の価値を把握しているからね」
「そうですよね、施設で一番偉いんですもんね。でも、能力については把握していないんですか?」
「それが、彼女のせいで把握できていないんだよ。なんだか、地下で能力テストをしたんだってね。その報告書の提出がたぶん意図的だろうけど、遅れてまだ目を通せてなかったんだ」
「その方は、凄く優秀というわけですね」
「はははっ、部下に手を噛まれた気分だよ」
カズアキは、わざと支部長に話を合わせつつ、事細かい情報をその口から出させる。
「まあそろそろ、大丈夫ですかね」
「さっきから変な事を言うじゃないか。誰かに連絡でもしているのかね?」
「いいえ、ちょうどさっきから配信を開始していまして」
「は、配信?」
「実はそうなんですよ。俺は、【朱の探索者】というチャンネル名で、【カズアキ】って名前で活動してるんです」
「なん……だと」
[こんな時に宣伝してるのウケる]
[なるほどそういうことか]
[俺達が証人ってわけね理解]
「だ、だが、始めたての配信者に視聴者がいるわけないだろう。ハッタリはよしたまえ」
「いやぁ~、ありがたいことに今現在の視聴者数は100人なんですよね」
「ひ、ひゃく?!」
「もしよかったら、確認してみますか?」
「くっ……! ええい、こうなったら2人とも殺した後に装備を売り払って逃走してやる」
「……」
穏便に事を済ませる、最終手段がたった今潰えてしまった。
ここからは受付嬢が言っていた「覚悟を決めておいてください」という意味が現実となる。
「カズくん、私の事は気にしないで……って無理だと思うけど、思い出して。私の命は、カズくんが来てくれなかったらあの時に終わってた。だから、良いの。足手まといになるぐらいだったら――」
「な、何をするつもりだ! こっちが能力を知らないからって、変な真似をしたら容赦しないぞ!」
「……」
「私の事はいいから! このままじゃカズくんまで危なくなっちゃうから!」
「どうせレア装備の力で2人ともやっちまうって話なんだろ。ははっ、そんなのできるはずがねえ。ただのガキに人を殺せるわけがねえだろ」
「……」
残酷な選択を強いられる。
自らの命を護るため、他人を犠牲にするのか。
それとも、仲間を護るために2人して命を失うのか。
(こんな覚悟、あってたまるかよ)
カズアキは叶化の剣を抜刀する。
「おいおいおい、どっちなんだそれ。装備を受け渡すのか? だよな? ま、まさか――」
「俺、そこまで頭が良いわけでもないんで良い考えが思い浮かびません」
「そ、そうか。なら、装備を渡して賢い選択をしよう、な? な?」
「勉強はちょっとやってきましたけど、毎日ゲームゲームゲームばっかりだったんです」
「いいんじゃないか、それも。趣味も大事だしな」
「ありがとうございます。そう言ってくれた人、支部長で2人目なんです」
「おおそうかそうか。大変な思いをしてきたんだな」
「いろいろあったんですけど、俺、支部長の背中に憧れを抱いていたんです」
「それはありがとう。だったら、な? その剣を一旦下ろして、落ち着こう」
カズアキは両手で柄を握り、上段へ持ち上げる。
[え、まさかやるの? マジ?]
[大丈夫なの? マズくない?]
[間違った選択だけはしないでくれ……]
「お、おい。あの剣はどんな能力があるんだ!」
「そうですね、超ヤバいですよ。強いモンスターも1撃です」
「じゃあ今すぐに止めろよ! お前だって死ぬんだぞ!」
「救ってもらった命ですからね。文句はないですよ」
「な――おい! 仲間もろともって普通じゃねえぞ!」
「そうですね。でも、支部長だって私利私欲のために非人道的な事をしてきたじゃないですか。お互い様ですよ」
和昌は今も「ここまで来たのなら、どうか武器も捨てて逃げ出してくれ」という願いを抱く。
しかし、もはやパニック状態にある支部長は動くことができなくなっていた。
「……」
そして、剣が紅から蒼へと変わっていく。
「な、なんなんだよそれは!?」
蒼い光を放ち始め、次第に剣を覆っていく。
「なんとか言えよ!」
(このままじゃマアヤを救えない)
思い出す、あの時の恐怖を。
思い出す、あの時の鼓動を。
思い出す、あの時の渇望を。
そして、心に剣が応え、光が徐々に溜まっていく。
(俺の願いを叶えてくれ)
時は満ちた。
「マアヤ! 俺を信じてくれ!」
「うんっ!」
「なななななななななな!!!!」
「はぁああああああああああああああああああああっ!」
「うわああああああああああああああああああああ」
カズアキは剣を振り下ろし、蒼い光が放たれる。
光はすぐに支部長とマアヤの元へ到達し、そのまま通過して消滅した。
「へ?」
支部長は両腕で顔を覆っていたが、何事もなかったから情けない声を漏らし、恐る恐る腕を顔から離した。
しかし、
「支部長、さっきは痛かったですよっ」
「がっ!」
「――と。ダメですよ、女の子は優しく扱わなくちゃ」
どの口が言うのか、とカズアキはツッコミを入れそうになった。
なんせ、拘束から解放されたと途端に支部長の顔面へ右拳ストレートをぶち込んでいたのだから。
「まあやっぱり、探索者と正面からやり合うってのは避けた方がよさそうですよ、支部長」
と、マアヤの元へ駆け寄ったカズアキは倒れて気絶している支部長へ伝える。
「それでは皆さん、こんな時間に凄いものをお見せして申し訳ございませんでした。証拠は十分にありますが、もしかしたら皆さんのお力添えをお願いするかもしれません」
[全然おk]
[その時は力になりますよー!]
[お任せあれ!]
「皆さん、本当にありがとうございます。これから事後処理もありますので、配信はここで終わりにします」
「私は全然元気でーすっ! ありがとうございました!」
[ははは、また次の配信を楽しみに待ってるね!]
[無理せずにね~お疲れ様でした]
[お疲れ様でした!]
和昌は配信を閉じる。
「じゃあとりあえず、通報するか」
「よっろしく~」
「――っ!」
まるで人気のない、どの建物の裏口もない影に包まれた広場。
そのほぼ中心に立っているのは、真綾と……。
「支部長……」
最悪の中の最悪が的中してしまったのだ。
犯人であってほしくなかった支部長と、声の主であってほしくなかった真綾。
しかも、真綾は左腕を後ろに回され、刃渡り20㎝のナイフを首に突き付けられている。
「ああやっぱり、やっぱりそうじゃないか」
「支部長、真綾を放してください」
「それは無理な相談だね」
ストレッチジーンズに黒色のパーカーを着ていて、一見ではまず支部長だと判断がつかない。
しかし和昌は、普通の探索者であればほとんど顔を合わせることがないところを、例外的に顔を合わせていた。それだけではない。つい数時間前に話題が出て、つい数分前までその顔を浮かべていたからこそ、和昌はほぼ一瞬で判断がついたのだ。
「いろいろ行動してきたけど、キミを誘き寄せるためにはこうするのが一番手っ取り早かったんだ」
「どうして俺の装備を狙っているんですか」
「ふむ。やはりそこまで行き着いているんだね。やれやれ、彼女の頭は回り過ぎるから困るんだ」
「否定はしないんですね」
「最初は言い訳を考えてたさ。でもね、キミと彼女が俺の知らない場所で密談をし始めたから、ああもういいやってなったんだ」
(まさか、自分が知らないところで犯人の枷を外してしまっていたなんて、まるで想像もしていなかった。そのせいで真綾も巻き込んでしまった……)
もしも何かあったのなら、一生忘れることができない傷として残ってしまうだろう。
「じゃあ、俺の装備を渡したらその子を放してくれるんですか」
「まあそれでもいいよ……とはならないでしょ。犯人が俺だってバレてるんだし」
「それはそうですよね」
「他の2人には手を出さないって誓うよ。絶対に。だけど、装備を渡そうと俺が奪おうと、残念ながらこの子とキミには死んでもらわないといけないけどね」
和昌は、ゲームでも似たようなセリフと展開を思い出してしまう。
「お決まりの展開って感じですね。それはつまり、『目撃者は生かしておけない』ってやつですよね」
「ああそうさ。話が速くて助かるよ」
「別に、そこに対しての疑問はありませんよ。誰だってそう考えますから」
「まあそうだろうね。で、どうするんだい?」
カズアキは、迷いなく配信をスタートさせる。
「支部長、何やら俺の事はとても詳しそうですね。でも、知らない事もあるんじゃないんですか?」
「この期に及んでハッタリかね。キミは4人パーティで、2つのレア装備を所有している豪運の持ち主。つい数日前に探索者として活動開始したばかりだというのに、まるでその気配を感じさせない」
「ちょっとやめてくださいよ、こんなシリアスなシーンで俺を褒めないでください」
「ははっ、でも悔しいが事実だからね」
マアヤは、拘束されている腕が痛み顔を歪めているも、事の流れを察した。
「カズくんは凄いんですよ。装備に頼らなくても戦えるんです。怖くたって、強くなろうって」
「それは素晴らしいね。高みを目指して奮闘する姿、是非とも見てみたかったものだ。いやはや、ここで命を落としてしまうなんて実に惜しいものだ」
[なんだなんだ]
[え、何この状況]
[もしかしてこれ、ヤバいやつ?]
「お、そろそろ良い感じになってきましたね」
配信スタートしてすぐだが、早めの昼休憩に入っている人達が配信開始の通知を受け取り、視聴開始し始めている。
「探索者連盟の支部長ともあろう人が、どうして俺の装備を狙っているんですか?」
「なんだね。犯人である俺を突き止めたというのに、犯行理由まではわからなかったのかね」
「お恥ずかしながら。俺ではまだまだだったみたいです」
「まあいいだろう、簡単な事さ。レア装備を手に入れ、売り払おうとしてたのさ」
「なるほど、そういうことでしたか。確かにレア装備はお金になりそうですもんね」
「ああそうさ。俺はその装備の価値を把握しているからね」
「そうですよね、施設で一番偉いんですもんね。でも、能力については把握していないんですか?」
「それが、彼女のせいで把握できていないんだよ。なんだか、地下で能力テストをしたんだってね。その報告書の提出がたぶん意図的だろうけど、遅れてまだ目を通せてなかったんだ」
「その方は、凄く優秀というわけですね」
「はははっ、部下に手を噛まれた気分だよ」
カズアキは、わざと支部長に話を合わせつつ、事細かい情報をその口から出させる。
「まあそろそろ、大丈夫ですかね」
「さっきから変な事を言うじゃないか。誰かに連絡でもしているのかね?」
「いいえ、ちょうどさっきから配信を開始していまして」
「は、配信?」
「実はそうなんですよ。俺は、【朱の探索者】というチャンネル名で、【カズアキ】って名前で活動してるんです」
「なん……だと」
[こんな時に宣伝してるのウケる]
[なるほどそういうことか]
[俺達が証人ってわけね理解]
「だ、だが、始めたての配信者に視聴者がいるわけないだろう。ハッタリはよしたまえ」
「いやぁ~、ありがたいことに今現在の視聴者数は100人なんですよね」
「ひ、ひゃく?!」
「もしよかったら、確認してみますか?」
「くっ……! ええい、こうなったら2人とも殺した後に装備を売り払って逃走してやる」
「……」
穏便に事を済ませる、最終手段がたった今潰えてしまった。
ここからは受付嬢が言っていた「覚悟を決めておいてください」という意味が現実となる。
「カズくん、私の事は気にしないで……って無理だと思うけど、思い出して。私の命は、カズくんが来てくれなかったらあの時に終わってた。だから、良いの。足手まといになるぐらいだったら――」
「な、何をするつもりだ! こっちが能力を知らないからって、変な真似をしたら容赦しないぞ!」
「……」
「私の事はいいから! このままじゃカズくんまで危なくなっちゃうから!」
「どうせレア装備の力で2人ともやっちまうって話なんだろ。ははっ、そんなのできるはずがねえ。ただのガキに人を殺せるわけがねえだろ」
「……」
残酷な選択を強いられる。
自らの命を護るため、他人を犠牲にするのか。
それとも、仲間を護るために2人して命を失うのか。
(こんな覚悟、あってたまるかよ)
カズアキは叶化の剣を抜刀する。
「おいおいおい、どっちなんだそれ。装備を受け渡すのか? だよな? ま、まさか――」
「俺、そこまで頭が良いわけでもないんで良い考えが思い浮かびません」
「そ、そうか。なら、装備を渡して賢い選択をしよう、な? な?」
「勉強はちょっとやってきましたけど、毎日ゲームゲームゲームばっかりだったんです」
「いいんじゃないか、それも。趣味も大事だしな」
「ありがとうございます。そう言ってくれた人、支部長で2人目なんです」
「おおそうかそうか。大変な思いをしてきたんだな」
「いろいろあったんですけど、俺、支部長の背中に憧れを抱いていたんです」
「それはありがとう。だったら、な? その剣を一旦下ろして、落ち着こう」
カズアキは両手で柄を握り、上段へ持ち上げる。
[え、まさかやるの? マジ?]
[大丈夫なの? マズくない?]
[間違った選択だけはしないでくれ……]
「お、おい。あの剣はどんな能力があるんだ!」
「そうですね、超ヤバいですよ。強いモンスターも1撃です」
「じゃあ今すぐに止めろよ! お前だって死ぬんだぞ!」
「救ってもらった命ですからね。文句はないですよ」
「な――おい! 仲間もろともって普通じゃねえぞ!」
「そうですね。でも、支部長だって私利私欲のために非人道的な事をしてきたじゃないですか。お互い様ですよ」
和昌は今も「ここまで来たのなら、どうか武器も捨てて逃げ出してくれ」という願いを抱く。
しかし、もはやパニック状態にある支部長は動くことができなくなっていた。
「……」
そして、剣が紅から蒼へと変わっていく。
「な、なんなんだよそれは!?」
蒼い光を放ち始め、次第に剣を覆っていく。
「なんとか言えよ!」
(このままじゃマアヤを救えない)
思い出す、あの時の恐怖を。
思い出す、あの時の鼓動を。
思い出す、あの時の渇望を。
そして、心に剣が応え、光が徐々に溜まっていく。
(俺の願いを叶えてくれ)
時は満ちた。
「マアヤ! 俺を信じてくれ!」
「うんっ!」
「なななななななななな!!!!」
「はぁああああああああああああああああああああっ!」
「うわああああああああああああああああああああ」
カズアキは剣を振り下ろし、蒼い光が放たれる。
光はすぐに支部長とマアヤの元へ到達し、そのまま通過して消滅した。
「へ?」
支部長は両腕で顔を覆っていたが、何事もなかったから情けない声を漏らし、恐る恐る腕を顔から離した。
しかし、
「支部長、さっきは痛かったですよっ」
「がっ!」
「――と。ダメですよ、女の子は優しく扱わなくちゃ」
どの口が言うのか、とカズアキはツッコミを入れそうになった。
なんせ、拘束から解放されたと途端に支部長の顔面へ右拳ストレートをぶち込んでいたのだから。
「まあやっぱり、探索者と正面からやり合うってのは避けた方がよさそうですよ、支部長」
と、マアヤの元へ駆け寄ったカズアキは倒れて気絶している支部長へ伝える。
「それでは皆さん、こんな時間に凄いものをお見せして申し訳ございませんでした。証拠は十分にありますが、もしかしたら皆さんのお力添えをお願いするかもしれません」
[全然おk]
[その時は力になりますよー!]
[お任せあれ!]
「皆さん、本当にありがとうございます。これから事後処理もありますので、配信はここで終わりにします」
「私は全然元気でーすっ! ありがとうございました!」
[ははは、また次の配信を楽しみに待ってるね!]
[無理せずにね~お疲れ様でした]
[お疲れ様でした!]
和昌は配信を閉じる。
「じゃあとりあえず、通報するか」
「よっろしく~」
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