【悲報】人気ゲーム配信者、身に覚えのない大炎上で引退。~新たに探索者となり、ダンジョン配信して最速で成り上がります~

椿紅颯

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第六章

第38話『嫌な予感のその先に』

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「お待たせ」

 和昌は待ち合わせ時間ちょうどに、公園に辿り着いた。

「それで、今日はどんな感じに行動するの?」

 待ち合わせ場所に居たのは、真綾まあや天乃そらの芹那せりな
 予定では本日も狩りへ行くはずだったが、朝の内に『今日は予定変更して買い物に行きたい』という内容が届いていた。『どうして急にそんな事を』とも思い、天乃と芹那が了承するとは思えなかったものの、あさっさりとこのようになっている。

 和昌はこのスムーズさに、『前もって打ち合わせをしていたのだろう』と結論付けた。

「じ・つ・は!」

 真綾が左手を腰に当て、右の人差し指で空中をチョンチョンチョンッとスライドしながら叩く。

 それを見た瞬間、和昌は察知した。
『あ、これは絶対にヤバいやつだ』という、嫌な予感を。

「これからみんなで街中を散策してみようと思いますっ」
「……」

 もはや答えが出てしまっている状況ではあるが、一縷いちるの望みに賭けて和昌は質問を投げかける。

「あれだよね。街中を散策して、美味しい飲食店を探したら、好みに合いそうな服の店を探すって意味だよね?」
「いや?」
(――終わった)
「私達はこれから、SNSで噂になっている事件の真相を探ってみようと思いますっ!」

 両手を腰に当てて胸を張り、自信満々に鼻から息をふすーっと吐き出す真綾。

「でもさ、それって噂なんでしょ? もしも本当にそんな事件が起きてたら、ニュースになってると思うし――」
「いーや、天乃が言ってたもん。『ゲームだと、こういう時は何か大きなものが絡んでいてメディアは情報を出し渋る可能性もある』って」
(おーい、天乃さーん。余計な事を言うんじゃありませーん)

 和昌は、心の中で天乃に対してツッコミを入れる。
 しかもあながち間違っていないというのが痛いところ。あまりにも受付嬢から耳にしていた情報と酷似していることから、咄嗟に反論する内容が思い浮かばない。

(じゃあその流れだとしたら、芹那も便乗したんだろうな……)
「まあさ、たまにはこんな日があってもいいんじゃないかなって」

 全員を労わっているように喋る芹那の顔は、ウキウキである。

 もはやこの止められない流れに「つい最近、3連休という休暇がしっかりとありましたよね?」という、喉から飛び出そうになるツッコミをなんとか抑えた。

「概要はわかったけど、もし本当だったら危ないんだしバラバラで散策はしないよな?」
「最初はそう思ったんだけど、バラバラで行動した方が効率が良いと思うんだよね」
「そうね。本当に誰かが襲われてるかもしれないけど、探索者を襲うような人は居ないでしょ」
「いやいや、普通に私服だし、パッと見ただけじゃ探索者か一般人かはわからないって。最低でも2人とかじゃないと」
「それはそうなんだけど、少なくとも戦闘は避けるつもりだよ。後、こっちから警告すれば大丈夫だよ」
「そうだよカズ。それに噂の情報をまとめると、襲撃されているのは男性探索者だから。逆に言えば、危険なのはカズだけど……まあ、その装備で危ないってことの方が少ないと思うけど」

 3人は和昌の腰と手に視線を向ける。

「それはそうだけど……」

 脳内でも覗かれているのか、と錯覚してしまうほどに情報が的確過ぎてぐうの音も出ない和昌。

「まあでも、さすがに長時間は散策せずに集合時間を決めましょ」
「芹那の言う通り。噂は気になるけど、それだけで1日を無駄にはしたくないから」
「えっ!? 2人とも、あんなに最初は乗り気だったのに!」

 天乃と芹那は「それはそうでしょ」と口を揃え、肩を落してやれやれと軽くため息を零す。

「じゃあ今から20分でどうだ?」

 流れを止められないのであれば、と短めに時間設定をして先手を打つ和昌。

「まあ、それぐらいが妥当じゃない?」
「賛成」
「ぐぬぬ……わかった」

 悔しい表情で了承する真綾。

「じゃあ、散策し終わったらご飯を食べに行こう」
「おーっ! 賛成っ!」

 和昌の提案に、表情が一瞬にして変わる真綾。

「みんなも散策中に食べに行きたい場所を考えておいてねっ。よーし、気合を入れてれっつらごーっ!」

 真綾の号令を出し、それぞれが散策範囲が被らないようバラバラに広がって歩き出した。

(お願いだから、このまま何も起きないでくれ)

 残り20分、ただ祈り続けることしかできない。

 最初の数分は大通りを歩く。
 午前中ということもあり、人通りはそこまで多くはない。
 常に警戒心を緩めることなく歩き続けるが、飲食店が開店準備を整えてくる頃合いという事もあり、土や草木の匂いが漂う空気から、次第に空腹を誘う匂いが至る所から漂い始めている。

 残り10分、さすがに襲撃者の姿は愚か気配や視線すら感じられない。

 であればと、パトロールの一環という事もあり薄暗い影が広がる路地裏へと足を進める。

(さすがに考えなしに歩きすぎたかな。こんな感じで歩いていたら、誰かと鉢合わせたりするかもな)

 薄っすらと探偵の真似事をしながら歩いている真綾と会いそうだ、と思いながら歩き進む。

 残り5分、野良猫達が陽が射す場所で集まってのんびりとしている以外、たった1人すら姿が見えない。

(まあ、実際はこんなもんだよな。最初は緊張してたけど、何事もなく――)

 と、完全に安心しきっていたその時。

「きゃーっ!」

 和昌は咄嗟の事で体が跳ね上がり、呑気に寝転がっていた猫達も一目散に走り去っていった。

 しかし和昌は、すぐに声の方へ走り出した。
 他人の空似かもしれないが、直前で頭に思い浮かべていた真綾の顔が過ってしまったから。
 そして、その声がどこか真綾に似ていた気がするから。
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