【悲報】人気ゲーム配信者、身に覚えのない大炎上で引退。~新たに探索者となり、ダンジョン配信して最速で成り上がります~

椿紅颯

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第二章

第6話『彩華の紅務店』

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 受付嬢からの案内があった通り、和昌かずあきはさっそく【彩華さいか紅務店こうむてん】へ足を運んでいた。

(普段は来ないような場所だから、さすがに緊張するな)

 デパートやスーパーなどからはかなり離れている場所で、例の事件があったような薄暗い路地裏に店舗がある。
 ビルの一角というわけでも、コンクリートに囲まれている場所ではなく、木造建築で一見しただけでも老舗感が漂っている。入り口上部に設置してある看板も、年代を感じる樹の味が良い雰囲気を醸し出していた。店内もまた同じく。

「いらっしゃいませ~」

 出入り口戸の開閉に伴い鳴るベルの音――その後すぐに、姿が見えない店員からの声だけが店内に響き渡った。
 他の客の姿はなく、和昌かずあきは元々わからないことを店員に相談しようとしていたが、とりあえず店内を見回る事にする。

(今は作業をしているかもしれないし、とりあえず歩き回ってみよう)

 店内には棚・通路・棚・通路という感じで標品が棚に飾られている。
 わかりやすいよう、天井から【防具】・【武器】・【アクセサリー】などが記されている小さな看板が吊るされていた。

(お目当ての武器コーナーは店員さんの話を聴きながら見回りたいから、別のところから行こう)

 まずは、右奥へ足を進める。
 ここは防具コーナー。実に様々な装備が並んでいるけど、基本的に探索者はこれら防具を身に着けたりはしない。
 中には、軽装で肘あてや軽チョットなどを装備している人も居るが、機動性を重視した服装になってしまう。現に、和昌達のパーティも誰1人としてそのような装備は身につけていない。
 無謀だ、という意見もあるが、ダンジョン序層などではこれが一般的だ。

(んー。でも、籠手とかだったらありなのかもなぁ。手袋と被らないし。じゃあ足とか……いや、体が重くなっちゃうだけか)

 和昌はゲームの中で動き回っている登場人物達の姿を思い浮かべる。

(モンスターが強力になってきたら装備は必要そうだよなぁ。物語上の登場人物達って、みんなすげえんだな)

 もしもガチガチの装備を身にまとってダンジョンで狩りをするとしたら――瞬発的な行動はとれなくなるし、体力面でも心配になってしまう。

 その流れで、様々な形状をした盾もあった。
 これぐらいなら視野に入れても問題なさそうだな、とは思うも、和昌にはレア装備がある。
 棚に並んでいる盾を持ちながら走っている姿を想像し、偶然にも手に入れる事ができた手袋へ視線を落として感謝を告げた。

(本当、俺って幸運すぎるよな。ありがとうございます)

 さて次はアクセサリーコーナーへ足を進めようと思っていると、背後から声が聞こえてきた。

「いらっしゃいませ。本日はどのような商品をお探しでしょうか」

 その声に振り向くと、従業員専用と思われる黒いエプロンを着用した少女の姿が。

「あ、初めまして。つい最近、武器がポキっと折れてしまいまして……新しい武器を探しに来ました」
「そうでしたか。ご希望の武器形状はありますか?」
「できれば片手剣がいいです」
「わかりました。ではこちらへ」

 従業員の後を追い、武器コーナーへ。

「前回使用していた剣は、どのようなものでしたか?」
「えーっと……連盟から配布された剣を使っていました」
「ほほぉ。ということは、初心者から抜け出せたという事ですね」
「あーいやーそのー」

 和昌はどう伝えたものか、と悩む。というか、焦る。

 少女は、歯切れの悪い様子に不思議そうな目線と向けて首を傾げた。

「実はですね。俺はまだ探索者になってかなり・・・日が浅いんです。新米であり、駆け出しって感じで」
「あまり事情は詮索しませんが、武器を粗末に扱っていると、新しく購入してもまた同じ事になるので注意してくださいね」
「えーまあ、はい。気を付けます」

 一瞬、このままでは印象が悪くなってしまうため、言い訳を考えた。
 しかし見方を変えれば、レア装備の能力を探るために剣を犠牲にした。これを粗末に扱っていない、なんて言い訳する方がよっぽど印象が悪い。

 和昌かずあきが自責の念に駆られていると、従業員の少女は目線を下げていた。

「あれ、もしかして二刀流の方ですか?」
「い、いえ、そういうわけでは」
「この店にいらっしゃる方は、レア装備を身に着けている方もいらっしゃいますので。特に難しく考えないでください」
「な、なるほど。わかりました」

 受付嬢がこの店をオススメしてくれた際の言葉を思い出し、納得した。

「ですが……なるほど、少しだけ見えました。レア装備の相方として配布剣を使用していたのでしたら、折れてしまうのも無理はありませんね」
「ええ、まあ?」
「そうしますと、ここら辺に並んでいる武器では同じく役不足になってしまうかもしれません」
「そうなんですか?」
「はい。カウンターでお待ちください。私は少し、奥に行っていろいろと探してきます」

 それだけを言い終え、少女は小走りで行ってしまう。

 和昌は言われた通りにカウンターで待機していると、数分後に少女が戻ってきた。

「お訊きしなければならない事を忘れていました。本日、もしくはトータルでのご予算はおいくらになりますか?」
「あー……」
「新米探索者という事でしたので、金銭的な面は厳しいかもしれないという事はわかっています」
「参考までに、どれぐらいあったら良いと思いますか?」
「ん~、もしよろしければ、そちらの剣を拝見させてもらう事は可能ですか?」
「……ええ、大丈夫です」

 普通であれば、【モータル・インデックス】の事や直近での事件があるから武器を誰かへ見せる事はしない。
 しかしこの少女――いや、この店ではレア装備を所持している人はそう珍しくない、という旨の話を聴いた事もあり、和昌は素直に武器を見せる事にした。

「わ、わわわ! な、なんですかこれ!」
「あー」
「どこからどう見ても、魂紅透石ソールスフィアの剣じゃないですか! こ、ここここんなの、絶対に高いじゃないですか!」
(あっれー、おっかしいなぁ……)
「な、名前はなんていうんですか!」
「【叶化きょうかの剣】と書いて、エテレイン・ソードって読むみたいです」
「ふむふむ。名前と見た目は比例していないようですが、全く斬れそうにないですが……ほほう」

 少女は、カウンターに置いてあったメモ用紙を剣に当て、スパッと斬れない様子を興味深そうに眺めている。

「地上などの……物質などは切断できないと予想しますが、モンスターは容赦なく斬る事ができるわけですか?」
「え。そ、そうです」
「ちなみに、敵意を向けられる……例えば、対人戦を行った際に相手の武器を破損または切断する事はできますか?」
「直接的に打ち合った事はありませんが、武器を消滅・・させる事はできました」
「ほほーう、破損でもなく切断でもなく消滅ですか」
(なんだこの人、鋭すぎる)

 事件の内容に触れてしまうと思い、サラっと嘘は言わずに伝えてみたというのに、見逃される事はなく驚いてしまう。

「――ああ、ごめんなさい。この店に来る人は普通の人が少なくって、つい考察してしまいました。これ以上は失礼ですよね。ごめんなさい」
「いえいえ、お気になさらずに」
「ですが、そうなってきますといろいろと話が変わってきますね」
「と言いますと?」
「この武器に見合うだけの剣となりますと、選択肢がもはや同じレア装備ぐらいしかないのかもしれません」
「えぇ……」
「ですが、レア装備を簡単に見つけられるほどダンジョンも簡単ではありません。そこで思いつきました」

 少女は剣を鞘へ納刀し、和昌へ返す。

「レア装備は入手困難ですが、レア素材は可能性があります。ですので、必要素材をこちらへ持ち込んでいただけたら、それを加工して武器として作成いたします」
「おぉ。でも俺、最初にも言いましたけど新米探索者ですけど大丈夫なんですか?」
「正直、わかりません。この装備の実力がわかりませんし、もしかしたら非常に厳しい話かもしれません。なんせ、レア素材を手に入れるためにはダンジョンの下を目指さないといけませんから」
「……」
「ですので、勧めておいて道理が通ってませんけどやめておいた方が良いのかもしれません」
「もしもレア装備を手に入れたとして、オーダーメイドになると思うのですけど。そちらの値段はどれぐらいになるのですか?」
「そうですね……装備代は仕入れる必要がないので抜きとしまして。ザッと1000万円ぐらいになるかもしれません」
「えぇ!?」
「いままでの条件的に高額すぎるというのはわかっています。ですが、こちらも店を上げて全力で鍛え上げますので。後、ローンというのもありますので」

 今の和昌にはどうやっても支払える額ではない。

「そういうのって、信用問題だと思うんですけど大丈夫なんですか?」
「おっしゃる通りです。ですが、レア装備を所持している人は連盟がいろいろと把握していると思いますので、そこら辺は安心しております」
「たしかに」
「それになんでかわかりませんけど、どうしてか信用できる人だなって思って」
「それはお人好しすぎません?」
「いいえ、私の勘は当たるんです」
「……なんだか心が痛くなってきたので、こちらの方も」

 和昌は2歩下がり、右手を目線ほどまで上げる。

「な、なんですか?」
「俺、実は2つ持ってるんです」
「わわわぁ! 凄い! 凄い!」
「ダメですよ、絶対に触らないでください。まだ性能を完全に把握できているわけではないので。そして、配布剣がポキッと折れてしまった原因でもありますので」
「ほほー!」

 少女はカウンターの上に乗り上げ、正座の姿勢でキラキラな目線を向け続ける。

「そ、そちらの方も……」
「ごめんなさい。こっちは肌身離さず身に着けておきたいんです」
「そうでしたか、残念ではありますけど仕方がありません」
「なんかこう、強い武器に凄い防具を手に入れてもまだまだ初心者っていうか臆病っていうか。戦闘面では強くなっても、まだまだ心が弱いんですよね」
「やっぱり、私の勘は当たっていましたね」
「え?」
「パーティは組まれておりますか?」
「はい、一応。女性が3人ですけど」
「その方々が危機的状況に陥ってしまったとしたら、どうしますか?」
「絶対に、どんな手段を使っても護ります」
「ですよね、やっぱり」
「え?」
「まあ、そういうことです。じゃあ、必要な物はメモに書きますので」

 少女は新しいメモ用紙を取り出し、スラスラと記入し始める。

「物量的にはそこまでではないので、かさばることはないです」
「思ったんですけど、同じ素材があったら同じ武器が作れるって事なんですか?」
「そうと言えばそうですが、基本的にはオリジナルの1本になります。要望がありましたら、お仲間の分も作れますけど。その分、少しは安くなりますけどお値段も増しますけど」
「ですよねー。わかりました。いろいろとありがとうございました」
「いえいえ、こちらもいろいろと面白いものを見せていただきましたので、楽しかったです」
「それでは失礼します」
「無事を祈っています。またのご来店を~!」
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