ゲーマーパーティ転移―ゲーム中に異世界へ飛ばされましたが、レベルアップやステータスがあるので俺達は余裕で生き残ります―

椿紅颯

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第二章

第8話『このまま歩き続けるのは無理』

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 再び歩き出した俺達は、体に起きている異変に気付き始めた。

「やばい、足が重すぎ」
「疲れが出てきちゃったね」

 俺の呟きにアケミが補足を加える。
 初日の感覚的には予想外に動けたから、今感じている疲れというものを視野に入れていなかった。

 ケイヤに頼んで進行を止めるようお願いしに行ってもらっている。
 行ってすぐではあるが、すぐに話が通ったようで、馬車の足が止まった。

「ボクももう歩けない~」
「この旅、なかなかの苦行になりそうね」

 ケイヤも戻ってきた。

「道端ではあるけど、ちょうどここは道が広くなっているから休憩するならこのままになるって」
「わかった。ありがとう」

 前に三人、俺らが後ろって感じなら確かにいちいち陣取る必要もないし、視界も広いからもしもの時に対応がしやすい。
 俺達は全員が崩れるように地面へ腰を下ろした。

「かーっ」

 足を伸ばして両手を後ろに突く。

「もしかして、こういう基礎体力っていうのは慣れたりトレーニングをしないといけないってことなんかな」
「もしも本当にそうだとしたら辛すぎるね」
「あれ、でもケイヤは運動してるんじゃなかった?」
「それはそうなんだけど、僕がやってたのは槍術だから、激しく動き回るってわけではないし、体力トレーニングとかはあんまりなかったんだよね」
「へぇ~、でも槍術って凄いね。だからゲームの中でも槍ばっかり使ってたんだね」
「あはは。こうやって話すと恥ずかしいね」

 ケイヤは首の後ろに手を回している。
 こんな会話をしていたからか、なぜか得意気にミサヤが話題に割り込んできた。

「へっへーん。ケイヤ、そんなことで恥ずかしがることはないよ。ボクだって現実の世界では剣を振り回してたんだよ、木刀だけど」
「それは凄いね。剣道とか何かの流派的なやつだったりするの?」
「良くぞ訊いてくれた――って言いたいんだけど、誰かに教えてもらったんじゃなくて、映画とか動画を見て振り回してたんだっ」

 と、自信満々に話をし始めるものだから全員から空笑いが起き、しかし当の本人は、鼻の下を指でなぞって「えっへん」と言いなぜか得意気になっている。

「こうなってくると、全員のメイン職を選んだ理由とか気になってきたな」
「そうだね。私は、みんなほどの理由はないんだ。なんかかっこよさそうってだけ」
「逆にそれが普通だ。俺は、なんだったかな……最初は仲間なんてできるとは思っていなかったから、一人でなんでもできるのは何かって考えた結果が盾だったな」
「それ物凄く説得力があるね。あのプレイスタイルが本当に全てを物語っていたってことなんだね」
「まあそういうことだな」

 冗談抜きで、本当に最初はそう思っていた。
 だがひょんなことから、みんなと一緒にパーティを組むようになって、クランを組んで、今に至っている。

「アンナはどうなんだ? まさか、呪文詠唱を家でやってたり、自分で呪文詠唱の文を考えてたりはしないんだろ?」
「カナト何を言ってんだよー。そんなのボクでもやらないよ?」
「さすがのミサヤでもやらんかー」
「――……い」

 ん、今アンナが何かったか?

「「「「あ」」」」

 俺は、いや俺達は、今世紀最大の無意識に意思の疎通を果たした。
 アンナの徐々に赤くなっていく顔を見て。

「そうだったら悪いの!? なんでそうしていたら悪いの? なんで自分の好きなことを考えちゃいけないの? 私は小さい頃から魔法使いに憧れていて、そうなりたいって思いを抱き続けちゃいけないっていうの?! ええ、周りに私のようなことを言っている人が居ないから、ちょっと周りとは違うんじゃないかなって薄々は気づいていたわよ。でも、それの何が悪いっていうの? 私は自分の好きを好きに貫いているだけよ! なんか文句あるの!?」

 と、お顔を真っ赤に超絶早口の長文を腕をブンブンと上下に振り、興奮しながら言い終え、息をぜえぜえと荒げている。

 俺達は互いに目線を交え、無言のまま俺に「リーダーなんだから、どうにかして」と目線を送ってきた。
 それは俺も思っているし、俺も誰かにそうしてもらいたいと思っている。
 こういう時って、女子同士の……ミサヤは論外だが、アケミが担当してくれた方が穏便に済むって話じゃないのか……?

 はぁ……とため息を零したいが、今ここでそんな真似をすればアンナから袋叩きにされた挙句、当分は話を聴いてくれなくなってしまう。
 だから、一度だけ胸の内でため息を吐く。

「ごめん。そうだよな、俺達は好きなものに全力で挑んでこそだってのに、他人の好きなものを否定するってのは違うよな。誰にだって好きなものはあるんだから、この世界でも好きにやったらいい」
「ふんっ。わかればいいのよわかれば」

 口調は強めだが、最悪の事態は免れた。

「体力面か。回復薬とか何かで回復できるのか、ステを振ったりすれば変わるのか、まだまだ検証する余地ありだな」
「そうだね。このまま筋肉痛とかまであるってなると、僕も気が滅入ってしまう」
「だよなぁ」

 眠気があったということは、ケイヤが懸念している通りに筋肉痛もありそうだ。
 だが、それをこの世界の仕様だからって捉えるのもいいが、それの対応策がないのであれば今後に支障が出てくる可能性がある。
 回復のスキルによって軽減されるのか、治癒できるのか……でも、眠気までは対応できないのか?
 というか、俺達は現実世界みたいに歳をとっていくのか?

「とりあえず、そろそろ休憩が終わるだろうから歩きながらスキル振りでもやってみるか」
「ボクはもう振ったよっ」
「お、スキルは取れたか?」
「いやー全然。だってまだレベル2だしね」
「ゲームと一緒だったら、どれぐらいでスキルが取れるんだ?」
「ボクの職だとレベル3からだね。っていっても、通常攻撃に少しだけ重さが増すってやつだけど」
「なるほどな」

 こういう時、他の職をやっておけば良かったなって思ってしまう。

「でも、私はレベル10になるまでスキルは取らないわよ」

 アンナは少し不機嫌そうにそう言った。

「だって、あたしのスキルは物凄く幅が広いけれど、それだけに慎重な判断が必要なのよ。今のうちに言っておくけど、【グランドワープ】は絶対に後取りよ。悪いけど、みんなもその方がいいでしょ、火力が上がるんだし」
「ああ、スキル取りは各々の判断に任せる。みんなも勘づいている通り、ステータスやスキルのリセットができるかがわからない状況下では、各自の判断に委ねるしかない。是非みんなも慎重に選んでくれ」

 だが、俺はみんなを護るためにスキルを取得する。
 ミサヤは……責められないが、もう少しだけ慎重にポイントを振ってほしかった。
 まあ、さっき俺が各自に任せると行ってしまった手前、注意はできない……か。

「じゃあ、また歩くとするか」
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