ゲーマーパーティ転移―ゲーム中に異世界へ飛ばされましたが、レベルアップやステータスがあるので俺達は余裕で生き残ります―

椿紅颯

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第四章

第28話『こういう感じ、たまにはいいよな』

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「よし、全員揃ったな」

 両手一杯に食べ物や紙袋を持つ俺達。
 肉々しいものからスイーツや飲み物まで、全員がこの広場を堪能したのが窺える。

「礼儀はよろしくないが、歩きながら食べるとするか」

 現実世界で、食べ物を歩きながら食べるというのはあまり良い意味ではない。
 例外は祭りなどの催しの時だけぐらいだろう。

 しかし、こちらの世界では……というか、時間帯的なのか場所的なのかはわからないが、ここら辺を歩く人々は全員が歩きながら食べ物を口に運んでいる。
 郷に入っては郷に従え、というやつだ。
 誰かに注意された時は、その時に対処すれば良い。

「ちょっと惜しいが、早速試してみるか」
「私はカナトが試した後にしよ」
「アケミ、お前それはスイーツを護りたいからだろ」
「さーどーでしょー」

 そんな棒読みで言われても誤魔化せてないぞ。

「んじゃ」

 俺は左手に持つ食べ物が複数個は居る紙袋に集中し、それと同時に空中にインベントリのブロックを思い浮かべる。
 このまま袋をインベントリにドラッグするイメージで――。

「お、いけた」

 しかし本当に成功するとは思っていなかったが、列の真ん中を歩いていた良かった。
 もしも他人に袋を消す瞬間を見られていたら危なかったな。
 これは俺の不注意だから、次からは気を付けよう。

「ほぉ~。それで、どんな感じに表示されてるの?」
「袋が……一つだけだな」
「んえ、もしかしてその他の食べ物はどこかへ行っちゃったとか?」
「どうなんだろうな。袋のアイコンを見てみても、良い感じに中身が見えないんだよな」
「うわっ。やらなくて良かった」
「おい本音が漏れてるぞ」
「あ」

 そうなると、食べ物はインベントリに収納する場合、まとめてしまうと損になってしまうということか。

「出してみたら?」
「アンナもそう思うか? しかし、周りの目が気になるからなぁ」
「そんなの気にしなければ良いじゃない。別に誰も見てないわよ」
「それもそうなんだが……んじゃ、アンナがやれよ」
「嫌よ。このレモン風味のドレッシングがかかってるサラダ、結構美味しいのよ」
「ったく、どいつもこいつも」
「一瞬だけ、三列になろうか」
「おっ、さすがケイヤ。名案」

 こういうことは素直に従うのか、とツッコみたくなるが、何も気にせず一番後ろで食べ物を頬張っているミサヤはそのままに、アンナが左、アケミが右、ケイヤが前というかたちになった。

 俺はすぐに先ほどと逆の、インベントリから意識だけで食べ物が入った袋を左手にドラッグする。
 すると、

「お、マジか」
「できたみたいだね」

 その声を合図にアンナが前に戻り、再び二列になった。

「これは凄いぞ。アイコンでは確認できなかったが、中に入れていた食べ物がそのまんま出てきた」
「おぉー、これは大発見だね。これで心おきなく――」
「おいやめろ。さっき人の目を気にしてたところだろ」
「そ、そうだった」

 こんなタイミングでアケミの初めての一面を見た。
 意地汚いとまでは言わないが、食べ物……スイーツや甘い物が絡むと、知能指数でも下がる仕様にでもなってるのか?

「それに気のせいじゃなければ、熱もそのままだと思う」
「えっ、それって凄すぎじゃない? その仕様ってことは、賞味期限とか消費期限とかを気にしなくて良いことにならない?」
「確かにそうだな。おぉ、っていうことは、遠征なんかをする時に食糧を現地調達しなくて済むし、好きな時に飲み食いができるってことになるな」
「わあ! 出先でスイーツを食べられるなんて、最高じゃないっ!」
「おいテンションどうした」

 ん? これって。

「冷静に考えると、回復系のアイテムがどれくらい長い期間インベントリに収納していたとしても大丈夫、という原理に沿っているんじゃない?」
「なんでケイヤは、そういつもベストタイミングで良いことを言ってくれるんだ」
「いや、偶然だよ」
「本当にそうだな。ゲームをやっていた時は賞味期限だのってのは完全に意識外だったが、言われてみれば本当にその通りだ」
「あ」
「どうしたケイヤ」

 ケイヤが足を止めるものだから、全員が足を止める。

「でも、ゲームをやっていた時でも、期間が設けられている食糧というか食材ってあったよね」
「あー、たしかにあったな」
「ごめん、進むね」

 再び歩き出す。

 俺とかは、あんまり気にすることはなかったが、魔法や回復を使用するアンナとアケミは物凄く気にしていたことがあった。
 それは、季節限定で手に入る特殊回復アイテムがあり、スキルを使用して減ったMPを大幅に回復する回復薬を調合するのに必要としていたから、俺達前衛の分は全部二人に渡していたのを思い出す。
 見た目はたしか、ボトルみたいな容器に入っていたワインだったような気がする。

「そういうのは今後どうなっていくか、そんでもってそれをインベントリに入れた場合、カウントダウンが始まるのかってのは今後の楽しみってわけだ」
「それは楽しみだけど、調合ってどうするのかしらね。それに、あれってワインだったから、本当に飲むってなるとどうなるのかしら。本当にお酒だったら、いろいろと笑えないわ」

 と、アンナが口の中に食べ物を入れながら。

「たしかになぁ。この世界に未成年が飲酒するのはどうのこうのっていうのがあるのかわからないし、それをもしもパーティ全員が飲むってなると、それはそれで戦闘どころじゃなくってちまうしな」
「そういうこと」

 そうとわかれば、とりあえずリラーミカさんに頼まれて購入した物をインベントリへ移すか。

「ちょっとアケミ、こっちを向いてくれるか?」
「いいよ」

 アケミが体を半身向けてくれたおかげで、周りからの視線を少しだけ遮ることができたため、インベントリへ紙袋を移した。

 それじゃあ俺も心おきなく食べるとするか。


 俺はこの時、現実世界では気にしていたであろうことを完全に見落としていた。
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