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第三章
第16話『獣とは、魔獣とは、魔物とは』
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「――さあ、そろそろ次だ」
「ああ、引き続き手加減はしてくれ」
「もちろん。そちらも、引き続き攻撃を仕掛けてきてくれ」
「カウンターだけはやまてくれよ」
「それはどうかな」
ユウトは木剣を杖にして立ち上がり、正面で構える。
「戦いは常に駆け引きをし続けるもの。攻撃を仕掛けたら防御されたり、回避されたり、カウンターされたりする。どんな相手だとしても」
「それっていうのは、人間以外でもって意味で捉えてもいいんだよなっ――!」
会話の途中で、あえて飛び掛かるもスルッと回避され、脇腹に一撃もらってしまう。手加減という言葉を知らないのか、とツッコミを入れる他ないほどの威力のせいで。
「うぐっ」
「人間も獣も魔獣も魔物も――」
「ちょ、ちょっと待ってくれ」
「何か? 休憩するにはまだ早いと思うけど」
「一瞬だけ冷静に質問させてくれ」
「それぐらいなら、まあ」
「この世界って、獣以外に魔獣とか魔物も存在するって話は本当なのか?」
「ああ。それぞれ外見が違うから一概にまとめることはできなけど、その在り方が違う」
「う、嘘だろ……」
(俺が遭遇したあの獣は、明らかにヤバい存在だった。だが、あれよりもヤバい存在がまだまだ居るって……てか、もしかしてあいつは獣じゃなく、別の存在って可能性もあるのか……?)
ユウトは恐怖の対象として脳裏に焼き付いた、あの獰猛な獣を思い出す。
もう二度と遭遇したくないと懇願しているのに、同様もしくは上回る存在が居ることに冷たい汗が背中を伝う。
「獣は、そのまま獣。食べることもできる」
「な、なるほど。熊とかそういうのか」
「そうだな。魔獣は、体内に核となる魔石があり、一定のダメージを負わせるか魔石を砕くことによって討伐でき、絶命するときは砂が崩れるような感じになる」
「ほほう、なんとなく理解できる」
「一番厄介なのが、魔物だな。あいつらは、ありとあらゆる卑怯な手を使い人間を苦しめる存在だ」
「確認しておきたいんだけど、この村を覆っている結界っていうのは全部拒んでくれるんだよな?」
未だ目視できていなくとも、最後の砦の効果を確認する。
「それが難しいものなんだ。魔獣は完全に遮断できるが、獣は普通に通過できる」
「あー、それなら理解できるな。獣は言ってしまえば動物であり、熊とか獰猛な存在からリスのような可愛らしい存在も居る。でも、それら全てがひとくくりになっているってことだよな」
「その認識で間違いない」
「魔獣に関しても、納得。魔力的なものを拒む結界なのであれば、その通りでしかないからな」
様々な物語に触れていたことで、結果的に予習していたみたいになった。でもそのおかげで、マキナの話をすんなりと理解できている。
「最後に魔物。これに関しては、未だに断言できるほどの情報がない……というより、個体差が激しすぎて統一された情報が揃っていない」
「つまり、その存在が結界に触れた場合、もしかしたら最悪の展開が起きてしまう可能性がある、と」
「ああ。理屈で言ったら結界で妨害できるが、ありとあらゆる可能性から突破する手段を導き出すかもしれない」
「うっわ、なんだよそれ」
世界のバグみたいな存在に、ユウトはプレイした様々なゲームを思い出す。
システム的には完璧でも、ありとあらゆる要因が重なったとき、その完璧がすり抜けられてしまう。
そしてそれは、偶然という言葉で片付けられるが、一部の人間はそのバグを意図して利用する。
しかしそれはあくまでもゲーム内での話。
それが命の危機に直接関与してくるものである今、ユウトは内臓がギュッと持ち上げられた感覚に陥ってしまう。
「魔獣は獣から成るのが観測されているのに対し、魔物に関しては畏敬の姿をしていたり、魔獣や獣と大差ない外見でもあると書物に残されている。当然、人間の姿にも」
「怖すぎるだろ人間の姿って」
「死んだ人間に寄生してという話もあれば、契約を結んでなんて話もあったりする。だが、人間の姿をしている魔物に関しては、何かの条件を満たすと魔人となる件も報告にあった」
現実世界とは違いここは異世界。
だから、これぐらいの未知数な出来事がポンポンでてきても不思議ではない。
しかし何一つとして理解できない話が続くと、さすがに眉間に皺を寄せて顔をしかめてしまう。
「理解しきるのは大変だろう。だが、この世界には人間の他にも戦わなければならない存在が沢山居る。戦わなければ、死ぬ」
「……その状況になってないから本当の意味で実感はできてないが、間違いなくその通りなんだろうな」
「というわけだ、そろそろ再開しよう」
「ああ――うぐっ!」
「これが、お手本だ」
ユウトは話に夢中で剣を構えるのをやめており、スタート合図を待っていた。
しかしマキナは、やられたことをそのままやり返し、再び脇腹に木剣がめり込む。
「手厚いご指導、痛み入ります」
両脇に一撃ずつ攻撃を貰ったものだから、さすがに耐えきれず地面へ膝を突く。
「ちょうどいい、そのまま膝を突いた状況で攻撃を防いでみるんだ。両腕で剣を抑えて」
「さすがに鬼すぎるだろ……」
「ほら、防がないと頭へ直撃するよ」
「ひぃぃ――うっ! ――んぐっ――うぐぐぐ」
「一、二、三――まだまだ」
次は腕だけではなく、両肩が外れるのではないかと思うほど重い攻撃を何度も耐え続ける。
「まだまだこれからだ、歯を食いしばって頑張ろう」
「もう少し手加減してぇええええええええええ!」
「ああ、引き続き手加減はしてくれ」
「もちろん。そちらも、引き続き攻撃を仕掛けてきてくれ」
「カウンターだけはやまてくれよ」
「それはどうかな」
ユウトは木剣を杖にして立ち上がり、正面で構える。
「戦いは常に駆け引きをし続けるもの。攻撃を仕掛けたら防御されたり、回避されたり、カウンターされたりする。どんな相手だとしても」
「それっていうのは、人間以外でもって意味で捉えてもいいんだよなっ――!」
会話の途中で、あえて飛び掛かるもスルッと回避され、脇腹に一撃もらってしまう。手加減という言葉を知らないのか、とツッコミを入れる他ないほどの威力のせいで。
「うぐっ」
「人間も獣も魔獣も魔物も――」
「ちょ、ちょっと待ってくれ」
「何か? 休憩するにはまだ早いと思うけど」
「一瞬だけ冷静に質問させてくれ」
「それぐらいなら、まあ」
「この世界って、獣以外に魔獣とか魔物も存在するって話は本当なのか?」
「ああ。それぞれ外見が違うから一概にまとめることはできなけど、その在り方が違う」
「う、嘘だろ……」
(俺が遭遇したあの獣は、明らかにヤバい存在だった。だが、あれよりもヤバい存在がまだまだ居るって……てか、もしかしてあいつは獣じゃなく、別の存在って可能性もあるのか……?)
ユウトは恐怖の対象として脳裏に焼き付いた、あの獰猛な獣を思い出す。
もう二度と遭遇したくないと懇願しているのに、同様もしくは上回る存在が居ることに冷たい汗が背中を伝う。
「獣は、そのまま獣。食べることもできる」
「な、なるほど。熊とかそういうのか」
「そうだな。魔獣は、体内に核となる魔石があり、一定のダメージを負わせるか魔石を砕くことによって討伐でき、絶命するときは砂が崩れるような感じになる」
「ほほう、なんとなく理解できる」
「一番厄介なのが、魔物だな。あいつらは、ありとあらゆる卑怯な手を使い人間を苦しめる存在だ」
「確認しておきたいんだけど、この村を覆っている結界っていうのは全部拒んでくれるんだよな?」
未だ目視できていなくとも、最後の砦の効果を確認する。
「それが難しいものなんだ。魔獣は完全に遮断できるが、獣は普通に通過できる」
「あー、それなら理解できるな。獣は言ってしまえば動物であり、熊とか獰猛な存在からリスのような可愛らしい存在も居る。でも、それら全てがひとくくりになっているってことだよな」
「その認識で間違いない」
「魔獣に関しても、納得。魔力的なものを拒む結界なのであれば、その通りでしかないからな」
様々な物語に触れていたことで、結果的に予習していたみたいになった。でもそのおかげで、マキナの話をすんなりと理解できている。
「最後に魔物。これに関しては、未だに断言できるほどの情報がない……というより、個体差が激しすぎて統一された情報が揃っていない」
「つまり、その存在が結界に触れた場合、もしかしたら最悪の展開が起きてしまう可能性がある、と」
「ああ。理屈で言ったら結界で妨害できるが、ありとあらゆる可能性から突破する手段を導き出すかもしれない」
「うっわ、なんだよそれ」
世界のバグみたいな存在に、ユウトはプレイした様々なゲームを思い出す。
システム的には完璧でも、ありとあらゆる要因が重なったとき、その完璧がすり抜けられてしまう。
そしてそれは、偶然という言葉で片付けられるが、一部の人間はそのバグを意図して利用する。
しかしそれはあくまでもゲーム内での話。
それが命の危機に直接関与してくるものである今、ユウトは内臓がギュッと持ち上げられた感覚に陥ってしまう。
「魔獣は獣から成るのが観測されているのに対し、魔物に関しては畏敬の姿をしていたり、魔獣や獣と大差ない外見でもあると書物に残されている。当然、人間の姿にも」
「怖すぎるだろ人間の姿って」
「死んだ人間に寄生してという話もあれば、契約を結んでなんて話もあったりする。だが、人間の姿をしている魔物に関しては、何かの条件を満たすと魔人となる件も報告にあった」
現実世界とは違いここは異世界。
だから、これぐらいの未知数な出来事がポンポンでてきても不思議ではない。
しかし何一つとして理解できない話が続くと、さすがに眉間に皺を寄せて顔をしかめてしまう。
「理解しきるのは大変だろう。だが、この世界には人間の他にも戦わなければならない存在が沢山居る。戦わなければ、死ぬ」
「……その状況になってないから本当の意味で実感はできてないが、間違いなくその通りなんだろうな」
「というわけだ、そろそろ再開しよう」
「ああ――うぐっ!」
「これが、お手本だ」
ユウトは話に夢中で剣を構えるのをやめており、スタート合図を待っていた。
しかしマキナは、やられたことをそのままやり返し、再び脇腹に木剣がめり込む。
「手厚いご指導、痛み入ります」
両脇に一撃ずつ攻撃を貰ったものだから、さすがに耐えきれず地面へ膝を突く。
「ちょうどいい、そのまま膝を突いた状況で攻撃を防いでみるんだ。両腕で剣を抑えて」
「さすがに鬼すぎるだろ……」
「ほら、防がないと頭へ直撃するよ」
「ひぃぃ――うっ! ――んぐっ――うぐぐぐ」
「一、二、三――まだまだ」
次は腕だけではなく、両肩が外れるのではないかと思うほど重い攻撃を何度も耐え続ける。
「まだまだこれからだ、歯を食いしばって頑張ろう」
「もう少し手加減してぇええええええええええ!」
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