異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!

椿紅颯

文字の大きさ
25 / 35
第四章

第25話『悲劇を受け入れる覚悟』

しおりを挟む
 辺りの警戒をしながらなため、進行速度は非常にゆっくり。
 しかし耳に入ってくるのは、そよ風に揺れる草木の葉音などの至って普通の環境音。
 時たま聞こえてくる小鳥たちや小動物の声だけで、危険な要因となる全てから無縁の状況であった。

「できたら、どう警戒すればいいのか教えてもらえたりするか」

 できるだけフェリスの近くに居るものの、ユウトは、それら環境音全てに対して体をビクつかせており、気が休まらず小声でそう問いかけた。

「あ、そうだよね。私は人間よりもよく聞こえる耳があるし、嗅覚も自信があるんだ。鼻は別に凄いってじゃなく、慣れない匂いを探してるだけなんだけど」
「なるほど、獣の匂いは確かに独特だから慣れたら俺でもできそうだな」
「たぶんそこまで時間がかからないと思うよ」
「余裕はあまりないと思うが、索敵用の結界みたいなのってあったりしないのか?」
「あるにはあるけど、察してくれている通りで今は使えてもほとんど範囲を広げることができないね」
「だよなぁ。俺が優秀だったら、即戦力で役に立てたんだろうけど。時間がかかるかもだけど、なんとか使えるようになってみせる」
「ユウト、頼もしい~……――」
「ん?」

 急にフェリスが話と足を止めるものだから、ユウトは心臓がドキッと一気に高鳴り始める。
 もしかしたら危機的状況が訪れてしまったのではないか、獰猛な獣や魔獣、未知数な魔物の気配を察知してしまったのではないか、と。
 冷たい嫌な汗が背中を伝い、早くなっていく呼吸のせいで乾いた喉を潤わせるように生唾を飲む。

 が、しかし。

 フェリスは短剣を背面の腰に携えてある鞘へ納刀し、哀愁漂う悲し気な表情でユウトへ振り返る。

「ねえユウト、ちょっとだけ時間を貰っちゃってもいいかな」
「……あ、ああ」
(武器をしまったってことは、危ない状況ではないってことだよな……? それを確認したいんだけど、なんだか何も言わないほうがよさそうな気がする)

 事実はわからず察することしかできないが、ユウトはなんとなくそう感じた。

 フェリスの後追い、ただ静かな時間が流れる。
 ユウトはただフェリスを信じて歩くことしかできないわけだが、事実を確認できていないため、そよ風に揺れる草木の音や小鳥たちの可愛らしいさえずりに体をビクつかせ続けた。

(不安を払拭するためには、何かしら聴いた方がいいんだけど……)

 と、不安に駆られる気持ちと格闘していたら、リリィナが足を止める。

「……」
「ごめんね、久しぶりに来ることができたから。どうなっているのか確認したかったんだ」

 こちらの世界についての常識を知らないユウトでも、目線の先にある建てられている石碑のようなものを一見したら、ここがどういった場所なのかの予想はつく。

「重い話になっちゃうから、できるだけこういう話とかはしないようにしてたんだけど。でもたぶん、村長とかコルサさんとかから聞いちゃってるよね」
「……ああ。勝手に事情を把握しちまって、ごめん」
「ううん、いいの。遅かれ早かれってやつだから」

 ユウトは、フェリスと共に石碑――墓場となっている場所まで近づく。

「ここにはね、私とリリィナのお父さんとお母さんが眠ってるの」
「たぶん無神経な質問になる、ごめん」
「大丈夫。どうして、こんな場所にってことだよね」
「……ああ」
「理由は2つあってね。1つは、ここでお父さんとお母さんたちは魔物に襲われたんだって。私とリリィナは村で待ってたからわからないんだけど、全てを知ったのはコルサさんが全てを終わらせてくれた後だったの」
「……」
「それで、2つ目はユウトなら察したんじゃないかな。ほら、私たちって村の人たちからよく思われてないでしょ? それって、【魔法】や【霊法】を使えるからっていうのもあるんだけど、お父さんとお母さんが魔物に殺されたから、呪われてると思われてるみたい。だから、原因でもあるお父さんとお母さんたちのお墓ですら村の敷地内で建てるのはダメだって」

 世の中の理不尽と彼女たちを渦巻く悲劇を、ユウトはなんとか感情を押し殺し、事を荒げないようにしていた。
 理解も納得もできない世界の常識に対し、歯を噛み締め、拳を握り締め、喉から出かかっている感情を必死に押さえ込んで。
 別の世界から来た人間なのだから、『郷に入ったのだから郷に従え』『なんの力も有していない人間が、感情を惨めに吐露するな』と。

 だが、このときばかりは我慢の限界に達してしまった。

「なんで、なんで……かけがえのない家族を引き裂き、それまでもこれからも力を頼っておきながら、どうしてそんな酷いことができるんだ……」

 ユウトは行き場のない怒りを拳に宿し、意味はないとわかっていながらも自らの太ももへぶつける。

「今だって、こんな年端をいかない少女に危険な真似をさせておいて、結界で護ってもらっているのに、どうしてそんな発想になるんだ」
「ユウト、私たちは大丈夫だよ。みんなだって、不安なんだよ。ただ生きていくだけでも、みんな、きっと」
「それはさすがに優しすぎるんじゃないか」
「ううん、みんなもちゃんとわかってるんだよ。だって、異端の存在だとわかっていても一度だって追い出されそうになったことはないんだよ」
「だからって……現状は、疫病神みたいな扱いをされ、感謝すらされることなく村の端に追いやって……あまりにも扱いが酷すぎるだろ」

 フェリスの優しさを尊重したいと思いながらも、納得のいかない理不尽を受け入れることができないユウトは、火の点いた感情を抑えられない。

「たしかにユウトが言っていることは、その通りだよ。でも、幼い私たちが村から追い出されていたら、本当にどうなっていたかわからなかった。ここから離れることができずに、リリィナと一緒に生きることを諦めていたかもしれない。お父さんとお母さんたちの場所に行こうって」
「……」

 もしも、そうなってしまっていたのなら、は、ユウトも理解できる。
 2人の両親を襲った魔物が闊歩する森の中で、幼気な少女たちが、しかも片方は足が不自由なのだから生存確率は極めて低い。
 それに加え、自身がこの世界へと降り立ったその瞬間に遭遇した、あの獰猛な獣も森に生息しているのだから、まさに地上の地獄。

 村の中でも別の地獄を味わおうとも、生きていられるのだから、それだけでも亡くなった両親は安心してくれるはず。

「すぅー、はぁー――ごめん、ご両親の前で取り乱して。みっともない姿を見せちゃって、『こんな人が近くに居るのか』って心配させちゃったな」

 ユウトは石碑の前で両膝を突き――土下座をする。

「え、どうしたのユウト」
「フェリスのお父さんお母さん、リリィナのお父さんお母さん、ご心配いただいている通り俺はまだまだ未熟で不安要素しかない凡人です。本当にごめんなさい」

 ひたいや鼻先に砂や石がゴリゴリと擦れてもなお姿勢を崩すことなく。

「でも、これからもっと頑張って頑張ってできることを増やしていきます。そして、フェリスとリリィナを大切にします。誰がなんて言おうと、どんなことがあろうと俺だけは2人を信頼してずっと仲良くさせてもらいます!」
「ユウト……」
「こんなときに、かっこいいことも気が利いたことも言えないのも、これからなんとかします!」
「ありがとうユウト。もう大丈夫だよ、お父さんとお母さんたちは――たぶん、今までもこれからも優しく笑って見守ってくれるよ。みんな優しいんだから」

 フェリスはユウトの右腕を抱え、立ち上がる補助をする。

「ふふっ、その砂とか跡も笑ってくれるよ」
「そ、そう?」
「うんっ」

 瞳から溢れ出す涙を、笑いで誤魔化すフェリス。
 対するユウトは、覚悟を示したのにもかからわず、やっぱり締りが悪いことを恥じらいつつひたいなどに付着した小石や砂を払い落とす。

「次はお花を持ってくるね、お父さんお母さん」
「俺も!」
「今日あったことをリリィナにも教えてあげなきゃ」
「そうだな――ん、一応だけど俺の格好が悪い話も?」
「どうしよっかなー」

 フェリスはクルッと踵を返し、白銀の尻尾をゆらゆらと左右へ振る姿をユウトへ見せる。

「帰りもまだまだ集めたいし、その間にどうしようか考えようかな~」
「そ、そこをなんとかなりませんかフェリスさん。ちょこっとだけでも誇張してもらえたり」
「聞ーこーえーなーいー」
「あっ、ちょ」

 フェリスは鼻歌交じりにスキップしながら進んで行ってしまった。
 ユウトも咄嗟に追いかけようとするも、振り返り――。

「これからもよろしくお願いします」

 と、深々と一礼し、顔を上げて両手で頬を強めに一度叩き、リリィナを小走りで追いかけ始めた。
しおりを挟む
感想 18

あなたにおすすめの小説

お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~

志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」 この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。 父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。 ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。 今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。 その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。

異世界転移「スキル無!」~授かったユニークスキルは「なし」ではなく触れたモノを「無」に帰す最強スキルだったようです~

夢・風魔
ファンタジー
林間学校の最中に召喚(誘拐?)された鈴村翔は「スキルが無い役立たずはいらない」と金髪縦ロール女に言われ、その場に取り残された。 しかしそのスキル鑑定は間違っていた。スキルが無いのではなく、転移特典で授かったのは『無』というスキルだったのだ。 とにかく生き残るために行動を起こした翔は、モンスターに襲われていた双子のエルフ姉妹を助ける。 エルフの里へと案内された翔は、林間学校で用意したキャンプ用品一式を使って彼らの食生活を改革することに。 スキル『無』で時々無双。双子の美少女エルフや木に宿る幼女精霊に囲まれ、翔の異世界生活冒険譚は始まった。 *小説家になろう・カクヨムでも投稿しております(完結済み

目つきが悪いと仲間に捨てられてから、魔眼で全てを射貫くまで。

桐山じゃろ
ファンタジー
高校二年生の横伏藤太はある日突然、あまり接点のないクラスメイトと一緒に元いた世界からファンタジーな世界へ召喚された。初めのうちは同じ災難にあった者同士仲良くしていたが、横伏だけが強くならない。召喚した連中から「勇者の再来」と言われている不東に「目つきが怖い上に弱すぎる」という理由で、森で魔物にやられた後、そのまま捨てられた。……こんなところで死んでたまるか! 奮起と同時に意味不明理解不能だったスキル[魔眼]が覚醒し無双モードへ突入。その後は別の国で召喚されていた同じ学校の女の子たちに囲まれて一緒に暮らすことに。一方、捨てた連中はなんだか勝手に酷い目に遭っているようです。※小説家になろう、カクヨムにも同じものを掲載しています。

俺は善人にはなれない

気衒い
ファンタジー
とある過去を持つ青年が異世界へ。しかし、神様が転生させてくれた訳でも誰かが王城に召喚した訳でもない。気が付いたら、森の中にいたという状況だった。その後、青年は優秀なステータスと珍しい固有スキルを武器に異世界を渡り歩いていく。そして、道中で沢山の者と出会い、様々な経験をした青年の周りにはいつしか多くの仲間達が集っていた。これはそんな青年が異世界で誰も成し得なかった偉業を達成する物語。

本の知識で、らくらく異世界生活? 〜チート過ぎて、逆にヤバい……けど、とっても役に立つ!〜

あーもんど
ファンタジー
異世界でも、本を読みたい! ミレイのそんな願いにより、生まれた“あらゆる文書を閲覧出来るタブレット” ミレイとしては、『小説や漫画が読めればいい』くらいの感覚だったが、思ったよりチートみたいで? 異世界で知り合った仲間達の窮地を救うキッカケになったり、敵の情報が筒抜けになったりと大変優秀。 チートすぎるがゆえの弊害も多少あるものの、それを鑑みても一家に一台はほしい性能だ。 「────さてと、今日は何を読もうかな」 これはマイペースな主人公ミレイが、タブレット片手に異世界の暮らしを謳歌するお話。 ◆小説家になろう様でも、公開中◆ ◆恋愛要素は、ありません◆

追放された無能鑑定士、実は世界最強の万物解析スキル持ち。パーティーと国が泣きついてももう遅い。辺境で美少女とスローライフ(?)を送る

夏見ナイ
ファンタジー
貴族の三男に転生したカイトは、【鑑定】スキルしか持てず家からも勇者パーティーからも無能扱いされ、ついには追放されてしまう。全てを失い辺境に流れ着いた彼だが、そこで自身のスキルが万物の情報を読み解く最強スキル【万物解析】だと覚醒する! 隠された才能を見抜いて助けた美少女エルフや獣人と共に、カイトは辺境の村を豊かにし、古代遺跡の謎を解き明かし、強力な魔物を従え、着実に力をつけていく。一方、カイトを切り捨てた元パーティーと王国は凋落の一途を辿り、彼の築いた豊かさに気づくが……もう遅い! 不遇から成り上がる、痛快な逆転劇と辺境スローライフ(?)が今、始まる!

さんざん馬鹿にされてきた最弱精霊使いですが、剣一本で魔物を倒し続けたらパートナーが最強の『大精霊』に進化したので逆襲を始めます。

ヒツキノドカ
ファンタジー
 誰もがパートナーの精霊を持つウィスティリア王国。  そこでは精霊によって人生が決まり、また身分の高いものほど強い精霊を宿すといわれている。  しかし第二王子シグは最弱の精霊を宿して生まれたために王家を追放されてしまう。  身分を剥奪されたシグは冒険者になり、剣一本で魔物を倒して生計を立てるようになる。しかしそこでも精霊の弱さから見下された。ひどい時は他の冒険者に襲われこともあった。  そんな生活がしばらく続いたある日――今までの苦労が報われ精霊が進化。  姿は美しい白髪の少女に。  伝説の大精霊となり、『天候にまつわる全属性使用可』という規格外の能力を得たクゥは、「今まで育ててくれた恩返しがしたい!」と懐きまくってくる。  最強の相棒を手に入れたシグは、今まで自分を見下してきた人間たちを見返すことを決意するのだった。 ーーーーーー ーーー 閲覧、お気に入り登録、感想等いつもありがとうございます。とても励みになります! ※2020.6.8お陰様でHOTランキングに載ることができました。ご愛読感謝!

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

処理中です...