転校から始まる支援強化魔術師の成り上がり

椿紅颯

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第二章

第10話『対人戦を見学考察』

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「じゃあ、まずは結月と叶」
「おっけーっ」
「うん」

 僕の声を合図に、桐吾、一樹、彩夏、一華は数歩離れる。
 向かい合い武器を構える結月と叶。
 結月の顔には笑顔、叶の顔は真顔。この時点で既に性格のそれが表れている。

 姿勢を低く剣を下段に構え、初撃から突進を図ろうとしている結月。
 それ対して叶は左手に中盾、右手に剣を持ち、平然と直立している。

 誰から見ても正反対な二人の戦い。

「――始め!」

 僕の声を合図に突進を仕掛ける結月。
 下段から顔面へ一直線に伸びる剣先、当たれば間違いなく致命傷。

「あぶ――」

 横に居る美咲はハラハラしながら見ているようだ。
 予想でしかないけど、たぶん両手で視界を覆っているだろう。
 その気持ちもわかる。
 本来であればその危険な攻撃を止めるべきだろうけど、僕は賭けた。

 その期待通り、叶は剣先の軌道上に盾を添えて、軌道を外す。
 尚もその顔には変化はない。

 それを見届け、美咲は「ふぅーっ」っと一息吐いている。
 でもそれで終わりではない。

「うっ」

 苦痛の声を上げたのは叶。
 初撃を見事に捌いたのだが、防御に盾を用いたことにより左側面がガラ空きになってしまっていた。
 そこを結月は見逃すはずもなく、勢い残る右膝を脇腹にねじ込んでいる。

 攻撃を当てるとすぐに元の位置へと後退。
 叶はここで初めて苦痛に顔を歪め、跪いた。

「ああなるほどね……わかった。少し舐めてたよ」

 そう呟いては立ち上がり、片手剣を両手で持ち、まるでウォーリアの構えをとり始める。

「いいよ」
「じゃあ、行っちゃうよーんっ」

 変幻自在な結月の攻撃は、単なる防御と回避では捌くことはできない。
 次の攻撃は上段からの振り下ろしに見えるも、それ以上のことを考えていることだろう。

 今回も正面からの突進攻撃。
 僕の予想は、上段からの振り下ろしで剣を弾き、そこから剣を振り上げて盾を使わせた後に拳か脚の打ち込み。

「ふんっ、プロボーク」
「っ⁉」
「なっ……!」

 初撃は予想通りだった。
 だとすれば、次の攻撃もその手はずだっただろう。
 だけど、そうはならなかった。

 そして、予想だにしていなかった事態に衝撃を隠せず言葉が漏れる。

 スキル使用後、結月の喉に剣先が立てられ――、

「終わり‼」

 その結果に終了を告げるしかなかった。

「あいやーっ、負けちゃったぁ」
「対戦ありがとう」
「いやぁ叶凄いね。私の攻撃を見抜いたうえでスキル仕様による行動の強制停止かっ。これは負けたってしか言えないね」

 なぜかその敗北を物凄く楽しそうに受け入れてるのを見て違和感しかない。
 そこはもう少し悔しがるところじゃないのか……。

 だけど、あの一瞬で見せたあの駆け引き。
 言葉からこそ苛立ちにも似た感情は見受けられたけど、その判断力と行動力は冷静そのもの。
 普通の人であれば、感情に突き動かされるか萎縮してしまう場面だったと思う。

 一応、ウォーリアにも使用可能であるプロボーク。
 これ自体はモンスターのヘイトを自身へ向けるスキルだけど、これを対人戦でしようすると、対象の行動を一瞬だけ強制停止できる。
 基本的に対人戦でこの手段とる時は、距離をとる目的として使われることが多い。
 それを逆手にとって近距離戦闘に活かし、ましてや防御どころか攻撃の一手にした。
 そんな思い切りのいい発想は僕には間違いなくない。まさに称賛もの。

「こちらこそ対戦ありがとっ」

 見るからに互いに高め合っているようで一安心。
 敗北に終わったものの、やはり結月の変幻自在な攻撃は常識外れには変わりない。

「いやぁ、早く終わっちゃった。ごめんごめん」

 戦い終えた2人がこちらへ近づいてきた。

「ううん、物凄く参考になったよ。それに、戦闘時間こそ短かったけどお互い得られるものはあったんじゃない?」
「――そうね」
「そだねっ」

 目線を合わせて頷いている。
 戦士は剣を交えれば互いをなんたらというのは、迷信かと思っていたけど案外そうらしい。
 何はともあれ、目的は達成できた。

 では、次――。

「じゃあ2人も座って休憩していいよ。桐吾と一樹、いこうか」
「準備はいいよ」
「よしきたっ」

 離れていた2人が足を進める。

「そういえば、あの2人に関しては理屈抜きでって言ってたけど、結局変わらない感じなの?」
「そうだね。性格的に言えば、結月と叶みたいな感じではあるけど」
「ふぅーん、男の子ってわからないなぁ」
「まあ、僕もなんとなくそう思ったってだけだからね。それに、同じウォーリア同士で相乗効果になってくれればいいかなって」
「それならわかるかも。あれだね、ライバル関係ってやつだね!」

 なぜかテンションが上がり始める美咲を横目に、2人の準備が整ったようだ。

 両者剣を正面に、斧を正面に構えて視線を交わしている。

「――始め!」
「いくよ」
「よっしゃ、こい!」

 先手は桐吾。
 正面に駆けていく。
 初撃としては、一度刃先を交えて相手の力量を図るのは常套手段。

 ――と、思っていたが……。

「ふんっ!」
「っ!?」

 一樹は大振りに大斧で横一線を描いた。
 完全なる不意打ち。だが、桐吾は間一髪のところで姿勢を低く倒し回避。

「まだまだっ!」

 己の遠心力を活かし、体も一緒に回してそのままもう一撃を繰り出す。
 これに対し、桐吾はたまらず後方へ跳躍。

「無茶苦茶だね」
「へへっ、これを避ける桐吾も相当だけどな」

 2人はこの緊張感の中、笑みを零している。
 この場合、不適切なのかもしれないけど――楽しそうだ。

「同じ技は食らわないよっ!」
「そうかい!」

 あの攻防をしても尚、桐吾は正面から突進。
 桐吾のそれをハッタリだと判断したであろう一樹は、再び同じ攻撃を仕掛ける。

「おいっ、なんだよそれっ⁉」

 今度は回避ではなく、足から攻撃の下を滑り込んでみせた。
 完全に懐に入られた一樹には成す術はない。
 己の遠心力も残っているため、この時点で勝敗は決した。

 桐吾へ背中を見せたところで、一樹は制止。
 剣先を背中に押し当てられている状況で、続行は不可能。
 一樹は斧を床の落とし、両手を上げた。

「降参だ」
「お疲れ様」
「かーっ、そんなのありかよー!」

 両手で頭を抱える一樹。

「2人ともお疲れ様、休んでて良いよ」

 2人がこちら側にくる間、美咲は急に我に返ったように問いかけてくる。

「――ね、ねえねえ、あれ何。あんなに一瞬……一回の攻防だけで決着って突いちゃうものなの⁉」
「そうだね……個人的にはもう少し打ち合う展開を予想していたんだけど、流石は桐吾の分析力って感じかな」
「え、でもでも、一樹くんの斧捌きも凄かったよね。あんなの、普通だったら当たったら終わりだよね?」
「うん。たぶん、桐吾もあの攻撃を直に当たっていれば間違いなく負けていたと思う。それに、今回の戦いで何が凄かったかって、刃先を交えてないんだ」
「……たしかに」
「たぶん、一樹の攻撃は片手剣で受け止めることはできなかったんだと……思う。だから、初撃も剣で応戦ではなく回避をして距離をとった」
「そして、その攻撃の特性と弱点と分析して、次の攻撃に活かした。と……凄い」

 美咲が真に納得したようで、喉を鳴らしている。
 
 たしかに、状況判断能力が桁違いだ。
 素早い身のこなしが桐吾の武器だと思っていたけど、これは思いもよらない発見ができた。

 それに、一樹の思い切りの良さは目を見張るものがある。
 モンスター……いや、初見の相手であれば、まずあの二連撃で沈んでいた。
 自分の長所をしっかりと自覚していると同時にそれを伸ばせている。
 課題としては短所をどう克服するか。

 想像以上に発見が多い。
 これから沢山のことを考えないといけない……いや、これこそが役割だ。

 最後の彩夏と一華の戦いも目を凝らさないといけない。
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