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終幕編2〜イザベル視点〜
07(最終話)
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逆行転生はほんのわずかな時間軸の歪みを残し、何事もなかったように終わってしまった。けれど、例え殆どの精霊が逆行転生の事実を覚えていなくとも、先祖であるララベルやアルベルトとの交流はイザベルの心を強くした。
それからイザベルの生活は、途端に忙しいものとなった。時間の流れが異なる修道院での修行を終えてからも、目まぐるしく取り巻く環境は変わっていく。もちろん、下界である人間の世界もあっという間に、状況は変化していった。
ついに地上の主権を握った聖女ミーアスこと古代からの蛇、即ち悪魔。だが精霊候補生としての試練を全て乗り越えたイザベルが【ある契約】と引き換えに悪魔を倒す術を授かり、悪魔ミーアスの魂は消失した。
『聖女ミーアスが倒れたらしい……何でも本物の聖女様は、随分と前に悪魔に取り憑かれていてオレ達が崇めていたものは古代からの悪魔だったとか』
『しかし、このまま地上は駄目になるかと思っていたのによく持ち直したよ。天の精霊様達は、人間の時間を増やしてくれたのだね』
『教会の御神託によると話をつけたのはイザベル・カエラートだという。聖女ミーアスを嵌めたとされていたイザベルが、天に見出されて人から精霊になることになったそうだ』
一連の流れとイザベルやミーアスの因縁深い噂は瞬く間に、地上の人々に広まった。その理由としては、御神託という形でイザベルの魂が頻繁に地上の教会に現れるようになったことも関係している。
『僕、知ってるよ。葡萄菓子をお祈りの時に捧げると、イザベルお姉ちゃんの魂が天からやってきて、祝福をしてくれるんだ』
『そうそう! 私なんかは、礼拝堂に雨乞いのお祈りに行った時に優しく微笑むイザベルを目撃したねぇ。あんな形で断罪されそうになったのに、精霊様になったイザベルは私達地上の人間を励ましてくれるんだ。立派なことだよ』
『奇跡を認めた教会の計らいでカエラート一族は、お家そのものは無くなるがホーネット一族に養子縁組することで生き残ることが出来るそうだ』
『しかし、人間時代のイザベルに良くしてやることは出来なかったな。せめて、精霊様のところで幸せになれるようにみんなで祈ろう』
初めはカエラート一族ら家族がイザベルの魂を目撃したが、神父や礼拝に集まる人を中心に目撃者の数は増え、人々はイザベルがもたらす奇跡を認めざるを得なくなっていった。
教会に響く祈りの歌は、生きていることへの神への感謝。そして、犠牲になりながらもなお人々を見守るイザベルへの敬意の歌でもあった。
『新しい御神託が下ったそうだ。イザベルはついに精霊様の妻になり、救世主を産むそうだよ。私達の時代に救世主様が地上に降りてくるかは分からないけどね』
* * *
イザベルが人から精霊になる日に精霊ティエールと交わされた会話は、救世主の到来を約束するものでもあった。
「菩提樹の精霊ティエール様、人々を導く新たな精霊神がいないのは当たり前のことだわ。人と神の間に入り導きをする者はこれから生まれる。いえ、私とあなたの間に生まれる子供が……導き手になるの」
救世主を産むと当たり前のように発言するイザベルに、ティエールは多少の不思議を感じたという。だがそれ以上にイザベルの瞳は輝き、確信に満ちていた。まるで既に産まれてくる救世主の存在を知っているかのようだった。二人はお互いを愛する気持ちに従い、夫婦の木となり……やがて子供を授かる。
精霊になったとはいえ初産は大変なものだったがその分、喜びも大きなもの。体調が落ち着いたところで子供の名前を決めようとすると、赤子を腕に抱きながらイザベルはティエールに優しく語り始めた。
「子供の名前は初めから決めてある……ううん、決まっているの」
「へぇ……まるで、キミは運命を知っているかのようだね。それで、僕達の子供はどんな名前なんだい?」
「子供の名前はアルベルト。かつて存在し、いま再び……私のところに舞い降りてきた救世主。私の自慢のご先祖様と同じ名前よ。アルベルト、そうだわ……子守唄を聴かせてあげる」
誰かを懐かしむような仕草で、産まれて数日のアルベルトに子守唄を聴かせるイザベル。父親であるティエールも、ゆりかごのような子守唄に想いを馳せた。
『ラララ……眠れ、眠れ、愛しい赤子。生命の樹のゆりかごで……ラララ、ラララ……精霊様の導きを胸に。愛しいアルベルト』
* * *
百年の歳月が流れた。
イザベルが精霊になった記念に植樹したとされる地上の菩提樹の根元には、彼女の魂が眠ると伝えられていた。
そして木を守るように『家族三人の精霊像』が飾られており、父親である菩提樹の精霊ティエール、母親である元人間の精霊イザベル、そして息子である現在の精霊神が仲良く並んでいた。
ある日、菩提樹の木の下で一人の少年が目を覚ます。彼の名はアルベルト、精霊であり人間でもあるのちの救世主。
――彼の物語はいずれ、何処かで語られるだろう。アルベルトの英雄譚は、きっとこれから始まるのだから。
それからイザベルの生活は、途端に忙しいものとなった。時間の流れが異なる修道院での修行を終えてからも、目まぐるしく取り巻く環境は変わっていく。もちろん、下界である人間の世界もあっという間に、状況は変化していった。
ついに地上の主権を握った聖女ミーアスこと古代からの蛇、即ち悪魔。だが精霊候補生としての試練を全て乗り越えたイザベルが【ある契約】と引き換えに悪魔を倒す術を授かり、悪魔ミーアスの魂は消失した。
『聖女ミーアスが倒れたらしい……何でも本物の聖女様は、随分と前に悪魔に取り憑かれていてオレ達が崇めていたものは古代からの悪魔だったとか』
『しかし、このまま地上は駄目になるかと思っていたのによく持ち直したよ。天の精霊様達は、人間の時間を増やしてくれたのだね』
『教会の御神託によると話をつけたのはイザベル・カエラートだという。聖女ミーアスを嵌めたとされていたイザベルが、天に見出されて人から精霊になることになったそうだ』
一連の流れとイザベルやミーアスの因縁深い噂は瞬く間に、地上の人々に広まった。その理由としては、御神託という形でイザベルの魂が頻繁に地上の教会に現れるようになったことも関係している。
『僕、知ってるよ。葡萄菓子をお祈りの時に捧げると、イザベルお姉ちゃんの魂が天からやってきて、祝福をしてくれるんだ』
『そうそう! 私なんかは、礼拝堂に雨乞いのお祈りに行った時に優しく微笑むイザベルを目撃したねぇ。あんな形で断罪されそうになったのに、精霊様になったイザベルは私達地上の人間を励ましてくれるんだ。立派なことだよ』
『奇跡を認めた教会の計らいでカエラート一族は、お家そのものは無くなるがホーネット一族に養子縁組することで生き残ることが出来るそうだ』
『しかし、人間時代のイザベルに良くしてやることは出来なかったな。せめて、精霊様のところで幸せになれるようにみんなで祈ろう』
初めはカエラート一族ら家族がイザベルの魂を目撃したが、神父や礼拝に集まる人を中心に目撃者の数は増え、人々はイザベルがもたらす奇跡を認めざるを得なくなっていった。
教会に響く祈りの歌は、生きていることへの神への感謝。そして、犠牲になりながらもなお人々を見守るイザベルへの敬意の歌でもあった。
『新しい御神託が下ったそうだ。イザベルはついに精霊様の妻になり、救世主を産むそうだよ。私達の時代に救世主様が地上に降りてくるかは分からないけどね』
* * *
イザベルが人から精霊になる日に精霊ティエールと交わされた会話は、救世主の到来を約束するものでもあった。
「菩提樹の精霊ティエール様、人々を導く新たな精霊神がいないのは当たり前のことだわ。人と神の間に入り導きをする者はこれから生まれる。いえ、私とあなたの間に生まれる子供が……導き手になるの」
救世主を産むと当たり前のように発言するイザベルに、ティエールは多少の不思議を感じたという。だがそれ以上にイザベルの瞳は輝き、確信に満ちていた。まるで既に産まれてくる救世主の存在を知っているかのようだった。二人はお互いを愛する気持ちに従い、夫婦の木となり……やがて子供を授かる。
精霊になったとはいえ初産は大変なものだったがその分、喜びも大きなもの。体調が落ち着いたところで子供の名前を決めようとすると、赤子を腕に抱きながらイザベルはティエールに優しく語り始めた。
「子供の名前は初めから決めてある……ううん、決まっているの」
「へぇ……まるで、キミは運命を知っているかのようだね。それで、僕達の子供はどんな名前なんだい?」
「子供の名前はアルベルト。かつて存在し、いま再び……私のところに舞い降りてきた救世主。私の自慢のご先祖様と同じ名前よ。アルベルト、そうだわ……子守唄を聴かせてあげる」
誰かを懐かしむような仕草で、産まれて数日のアルベルトに子守唄を聴かせるイザベル。父親であるティエールも、ゆりかごのような子守唄に想いを馳せた。
『ラララ……眠れ、眠れ、愛しい赤子。生命の樹のゆりかごで……ラララ、ラララ……精霊様の導きを胸に。愛しいアルベルト』
* * *
百年の歳月が流れた。
イザベルが精霊になった記念に植樹したとされる地上の菩提樹の根元には、彼女の魂が眠ると伝えられていた。
そして木を守るように『家族三人の精霊像』が飾られており、父親である菩提樹の精霊ティエール、母親である元人間の精霊イザベル、そして息子である現在の精霊神が仲良く並んでいた。
ある日、菩提樹の木の下で一人の少年が目を覚ます。彼の名はアルベルト、精霊であり人間でもあるのちの救世主。
――彼の物語はいずれ、何処かで語られるだろう。アルベルトの英雄譚は、きっとこれから始まるのだから。
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