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紆余曲折あって、一歳年下の幼馴染みリチャード君と正式交際することになった私。気がつけば客間で婚約のプチ会議が行われて、リチャード君が持参した指輪をお父様が、婚約の証拠として預かってしまう。
「ふむ、この婚約指輪は一旦、我が家の金庫で預かろう。リチャード君とのデートの時にはきちんと、アリシアに渡すからな」
「はぁ……」
(あれっ……あの指輪、婚約指輪だったんだ。しかも私個人と言うより、家の金庫でバッチリ保管されるみたいだし。もしかして婚約の儀式が、滞りなく行われた?)
しかも最初から両親公認、俗に言う『結婚を前提としたお付き合い』のため、早ければ数ヶ月中には式を挙げて籍を入れる可能性も。
(なんだか、凄い展開になってしまったわ。このまま地味街道を邁進して、男っ気のない生活を送ると思っていたのに。一生に一度、千載一遇くらいのラブチャンスが、到来してしまったのかしら)
「嬉しいな……小さな頃から憧れの超美人なアリシアお姉ちゃんと正々堂々、大人の男としてデート出来るなんて。お姉ちゃんもちゃんと僕が成長してるって、認識してよね。では次の週末デート、楽しみにしてるから」
「えっ……うん。リチャード君、ご機嫌よう」
交際が決まったからと言って、今日からいきなり恋人! というわけでなく。一旦は時間をおいて、二人っきりでデートの行うスケジュールとなった。何処となくご機嫌な様子で立ち去るリチャード君は、後ろ姿までスラリとしていてカッコよく、思わず見惚れてしまう。
「アリシアお嬢様、おめでとうございます! お嬢様は社交界デビューしたものの、人が集まる場所やあまり派手な遊びはお好きでない様子。将来の結婚を案じる声がチラホラありましたが、実は良いご縁が昔からあったのですね」
「良いご縁というか、幼馴染みが偶然カッコよく成長していたというか」
若くて(と言っても、まだまだ若いけど)無邪気な頃の私だったら、超絶イケメンに成長したリチャード君との交際を神に感謝の祈りを捧げて大喜びしただろう。けれど、リチャード君から発せられるあまりのイケメンオーラに圧倒されてしまい、なんだか気が引けてしまっていた。
「はははっ。アリシアは子供の頃は、結構なオテンバだったが、今ではすっかり品の良いご令嬢だ。ワシとしては自慢の娘だが、消極的すぎて心配だったのも事実。夜会で婚活するよりも、気心の知れたリチャード君と友達の延長線上で交際するのが良かろう。デートは今週末か……素敵な思い出を作るんだぞ」
「デート、ですか……」
しどろもどろとした返事しかしない私に、この縁談を仕組んだらしいお父様が満足げに語り始める。私の薄い肩をポンッと叩いて、応援の気持ちを伝えたのちさっさと客間から立ち去ってしまった。
「うふふ……楽しみですわね、お嬢様。けどこれから大変ですよ。乙女の身嗜みとして、お洋服やヘアメイク、小物から下着まで全部決めなくては! せっかく美人に生まれているのですから、さらに磨いていきましょう。明日は早速、商人を邸宅に呼びデートに向けて準備いたします。頭のてっぺんから爪の先まで、全身バッチリで挑むためにっ」
「ふぇええええっ! 全身バッチリッ?」
最大の婚期を迎えた地味女子令嬢の私、いよいよ頭のてっぺんから爪の先まで女磨きが始まる。
――ついに、地味女子卒業か?
「ふむ、この婚約指輪は一旦、我が家の金庫で預かろう。リチャード君とのデートの時にはきちんと、アリシアに渡すからな」
「はぁ……」
(あれっ……あの指輪、婚約指輪だったんだ。しかも私個人と言うより、家の金庫でバッチリ保管されるみたいだし。もしかして婚約の儀式が、滞りなく行われた?)
しかも最初から両親公認、俗に言う『結婚を前提としたお付き合い』のため、早ければ数ヶ月中には式を挙げて籍を入れる可能性も。
(なんだか、凄い展開になってしまったわ。このまま地味街道を邁進して、男っ気のない生活を送ると思っていたのに。一生に一度、千載一遇くらいのラブチャンスが、到来してしまったのかしら)
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「えっ……うん。リチャード君、ご機嫌よう」
交際が決まったからと言って、今日からいきなり恋人! というわけでなく。一旦は時間をおいて、二人っきりでデートの行うスケジュールとなった。何処となくご機嫌な様子で立ち去るリチャード君は、後ろ姿までスラリとしていてカッコよく、思わず見惚れてしまう。
「アリシアお嬢様、おめでとうございます! お嬢様は社交界デビューしたものの、人が集まる場所やあまり派手な遊びはお好きでない様子。将来の結婚を案じる声がチラホラありましたが、実は良いご縁が昔からあったのですね」
「良いご縁というか、幼馴染みが偶然カッコよく成長していたというか」
若くて(と言っても、まだまだ若いけど)無邪気な頃の私だったら、超絶イケメンに成長したリチャード君との交際を神に感謝の祈りを捧げて大喜びしただろう。けれど、リチャード君から発せられるあまりのイケメンオーラに圧倒されてしまい、なんだか気が引けてしまっていた。
「はははっ。アリシアは子供の頃は、結構なオテンバだったが、今ではすっかり品の良いご令嬢だ。ワシとしては自慢の娘だが、消極的すぎて心配だったのも事実。夜会で婚活するよりも、気心の知れたリチャード君と友達の延長線上で交際するのが良かろう。デートは今週末か……素敵な思い出を作るんだぞ」
「デート、ですか……」
しどろもどろとした返事しかしない私に、この縁談を仕組んだらしいお父様が満足げに語り始める。私の薄い肩をポンッと叩いて、応援の気持ちを伝えたのちさっさと客間から立ち去ってしまった。
「うふふ……楽しみですわね、お嬢様。けどこれから大変ですよ。乙女の身嗜みとして、お洋服やヘアメイク、小物から下着まで全部決めなくては! せっかく美人に生まれているのですから、さらに磨いていきましょう。明日は早速、商人を邸宅に呼びデートに向けて準備いたします。頭のてっぺんから爪の先まで、全身バッチリで挑むためにっ」
「ふぇええええっ! 全身バッチリッ?」
最大の婚期を迎えた地味女子令嬢の私、いよいよ頭のてっぺんから爪の先まで女磨きが始まる。
――ついに、地味女子卒業か?
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