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よくよく見てみれば、切れ長の青い瞳は愛天使リチャード君と同じ色合いだし。フワッとした美しい薄茶色の髪や整った口元など、ところどころ面影がなくもない。だけど成長が凄すぎて、すぐに気付く者はほとんどいないだろう。
「ええと、お父様? この彼がリチャード君。あの私の記憶が確かなら、リチャード君はハイスクール進学までは、身長もそれほど大きくなく。華奢で女の子みたいな天使のような外見で」
目の前のイケメンは華奢ではあるが、男性特有の骨張った感じがあるし。洋服越しでもほどよく筋肉がついているのが、なんとなく感じさせられる。幼い頃の柔らかな目元と比べると、切れ長の部類に変貌しているけれど、それは身体つきが相互的に成長した証拠だろう。
「はははっ。男というものはある時突然、グッと成長するものだ。おそらく寄宿舎で暮らしているうちに、身体つきが大人になったのだろう。まぁワシも再会した時は、あまりの成長ぶりに驚いたが。それで、アリシアはどうかね……リチャード君との婚約。幼馴染みが婚約者、なかなかいいと思うが」
お父様は髭をちょっぴり手でいじって、それとなく自然の流れで私とリチャード君の婚約話を持ちかけてきた。よく考えてみれば、うちのお庭で来客がいきなり指輪片手にプロポーズなんて、お父様の許可を得ているに違いない。
さっきは見ず知らずの他人が、突然プロポーズしてきたのかと思って警戒していたけれど。幼馴染みという間柄のリチャード君なら、この急展開も納得いくというもの。
「こっ婚約者? 私とリチャード君が」
「うむ。実はアリシアがあまりにも大人しい娘に成長してしまったので、少しばかり心配していたのだよ。知人にも今時珍しい深窓のご令嬢と評判だが、それはそれで社会でやっていけるのか……と。お前はキャリアウーマンタイプではないし、大学在学中に嫁ぐのが良いと思ってな」
「えっそれって学生結婚を推奨しているってことよね、お父様。リチャード君の方はまだまだこれから大学生なのに、それで良いのかしら。それとも昔の貴族みたいに早婚主義なのか、もしくはカッコよすぎる人ほど家族が心配して早く結婚させたいのか。はぁ、驚きで何が何やら」
あまりの衝撃と早すぎる展開に酸素不足に陥った熱帯魚の如く口をパクパクさせていると、すっかり大人の色男に成長したリチャード君がひとこと。
「でも、アリシアお姉ちゃんがこんなにオレのことをカッコいいって褒めてくれるなんて。もしかして、脈ありってことなのかな?」
「う……いや、その……はい」
と、この世の美貌を全て集めたような麗しい微笑みで、こちらを見つめてきて。私はびっくりして沸騰したポットのように顔を真っ赤にしながら、うなずく以外なかった。
こうして私とリチャード君は数年振りの再会を経て、両親公認の恋人としてお付き合いすることになったのです。
「ええと、お父様? この彼がリチャード君。あの私の記憶が確かなら、リチャード君はハイスクール進学までは、身長もそれほど大きくなく。華奢で女の子みたいな天使のような外見で」
目の前のイケメンは華奢ではあるが、男性特有の骨張った感じがあるし。洋服越しでもほどよく筋肉がついているのが、なんとなく感じさせられる。幼い頃の柔らかな目元と比べると、切れ長の部類に変貌しているけれど、それは身体つきが相互的に成長した証拠だろう。
「はははっ。男というものはある時突然、グッと成長するものだ。おそらく寄宿舎で暮らしているうちに、身体つきが大人になったのだろう。まぁワシも再会した時は、あまりの成長ぶりに驚いたが。それで、アリシアはどうかね……リチャード君との婚約。幼馴染みが婚約者、なかなかいいと思うが」
お父様は髭をちょっぴり手でいじって、それとなく自然の流れで私とリチャード君の婚約話を持ちかけてきた。よく考えてみれば、うちのお庭で来客がいきなり指輪片手にプロポーズなんて、お父様の許可を得ているに違いない。
さっきは見ず知らずの他人が、突然プロポーズしてきたのかと思って警戒していたけれど。幼馴染みという間柄のリチャード君なら、この急展開も納得いくというもの。
「こっ婚約者? 私とリチャード君が」
「うむ。実はアリシアがあまりにも大人しい娘に成長してしまったので、少しばかり心配していたのだよ。知人にも今時珍しい深窓のご令嬢と評判だが、それはそれで社会でやっていけるのか……と。お前はキャリアウーマンタイプではないし、大学在学中に嫁ぐのが良いと思ってな」
「えっそれって学生結婚を推奨しているってことよね、お父様。リチャード君の方はまだまだこれから大学生なのに、それで良いのかしら。それとも昔の貴族みたいに早婚主義なのか、もしくはカッコよすぎる人ほど家族が心配して早く結婚させたいのか。はぁ、驚きで何が何やら」
あまりの衝撃と早すぎる展開に酸素不足に陥った熱帯魚の如く口をパクパクさせていると、すっかり大人の色男に成長したリチャード君がひとこと。
「でも、アリシアお姉ちゃんがこんなにオレのことをカッコいいって褒めてくれるなんて。もしかして、脈ありってことなのかな?」
「う……いや、その……はい」
と、この世の美貌を全て集めたような麗しい微笑みで、こちらを見つめてきて。私はびっくりして沸騰したポットのように顔を真っ赤にしながら、うなずく以外なかった。
こうして私とリチャード君は数年振りの再会を経て、両親公認の恋人としてお付き合いすることになったのです。
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