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正編 第二章
第11話 新しい恋の始まり
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クラスそのものがコース制でクラス替えなしのため、特に変化のない高校二年生のルクリア。ちなみに精霊のチカラを借りた氷魔法の使い手であるルクリアの所属コースは【精霊魔法専門コース】である。
その立場からすると、普通に新学期が始まっただけに過ぎないが、他の生徒はそうは思っていない様子。
「ルクリア様、いよいよ異母妹さんと過ごす波乱の学園生活が始まりますのわね。やはり、異母妹二人で生徒会に所属とかされますの?」
何故か学園内の注目は、ルクリアの異母妹カルミアに向かっていた。正確には同じ学園に通うことになるとは思われていなかったレグラス異母姉妹そのものに関心があるため、同時にルクリアも注目されてしまっていることになる。
殆どの生徒が遠巻きでヒソヒソ話をして終わらせるところを、ルクリアの友人コゼットは堂々と皆が訊きたがっていることをルクリア本人に質問してきた。
「ちょっと、コゼット。言っとくけど私、学校でまでカルミアと顔を会わせたくないわよ。それに、異母姉妹で生徒会って何。まさかあの子を生徒会に入れるつもりなの」
「えぇ。今しがた、隣のクラスの生徒会長が名簿を片手にスカウトに出掛けるのを見ましたわ。異母妹さんの合格以来、ずっと囁かれている噂ですのよ。それに異母妹さんって、聖女試験にも受かってらっしゃるんですよね。スペックだけでもスカウトが来るのでは」
コゼットの言う聖女試験というものは、いわゆる聖女の適性を数値化する試験である。
だからまだ、カルミアは本物の聖女になったわけではなく、聖女の適正が高そうだという認定を受けたに過ぎない。そもそも聖女というのは英雄の女性版みたいなもので、本来は職業として登録されているのがおかしな気もするが。
国の制度や国家を超えた西方ギルド連盟の取り決めに、文句を言っていることになるとまずい為、ルクリアはその辺の矛盾点は無視することにした。
「……聖女試験は一応合格してるんでしょうけどね。ただ品行方正な、いわゆる聖女ヒロインタイプを想像しているなら、きっと期待はずれになると思うわ。あの子、いわゆる厨二病ってやつで自分を乙女ゲームの主人公だと思い込んでいるのよ」
「まぁ、羨ましい! 私、ルクリア様の異母妹に産まれてしまったら、きっと自信喪失して自分は主人公ではなくてモブ。よくてモブ令嬢なんだと落ち込んでいますわ。少し、その神経を見習って強く生きなくては」
自らをモブと自称するコゼットはいわゆる良いところのお嬢様で、噂好きで有名な風の精霊の加護を受けている栗色セミロングヘアの美人である。
「貴女、自分を低くいうけど。キャラクター基準が乙女ゲームではなくて、男勇者が主人公のギルド所属型美少女ハーレムものだったら、ハーレム要員の一人としてコゼットも即採用されていたんじゃない。それくらいは、容姿といい魔力スペックといい備えているはずよ」
「けれど、異母妹さんが主人公ならば、所詮この学園は乙女ゲームの舞台ですわ。それっぽい女子生徒がどんなに増えたところで、あまり着目されずにモブ扱いで終わってしまうのも無理はないでしょう」
確かに乙女ゲーム基準では主人公カルミアの視点で、他のどうでもいい女子生徒はモブ扱いされやすい。
(はっ……ここでこれ以上、乙女ゲーム云々の話題をさらに続けてしまうと、異母姉妹揃ってヤバいやつらだと思われかねないわ。しばらく乙女ゲームの話題は控えて、異母妹カルミアがただの厨二病であることをアピールしておくだけにしよう。後で期待はずれだったと、各方面からクレームを入れられても困るし)
「けど、悪役令嬢的なポジションが定着するくらいなら、モブって言われてた方がきっと楽に生きられると思うけど。とにかく異母妹のカルミアは想像を絶するくらい、承認欲求っていうのが強いのよ。だから生徒会スカウトは嬉しいだろうけど、期待しているような活動は出来ないと思うの」
「いえいえ、ルクリア様。私達、一般生徒は決して品行方正な聖女ヒロインを期待しているわけではないのです。何かこう……延々と続くこの惰性に満ち溢れたつまらない学園生活に、刺激をガツンと与えてくれるような。そういう方を待っているんですの。だから、異母妹さん……いえ、カルミアさんには台風の目として期待する方も多いと思います」
この学園の大半は元から真人間の新入生を望んでいるわけではなく、波乱を呼んでくれそうな問題児を求めているらしい。だがそれは他人だからそういう人間を求めているだけで、家族枠になるとただひたすら迷惑なだけだった。
今日の朝方だってカルミアの様子はおかしくて、珍しく心の奥底からルクリアは異母妹のことを心配したのだから。
「台風の目、ね……」
窓の向こうを見ると今日は運良く晴れているが、意外と台風の目の中にいて晴れているように感じるだけなのではないか、と錯覚してしまう。今日から、カルミアが中心の学園生活なのだ……と、ルクリアはため息をついた。
「ルクリアさん、お昼の時間……空いてるかな? もし良ければ、ご一緒したいんだけど」
「ネフライト君! 大丈夫よ、全然平気。そ、それじゃあコゼット。私……ちょっとお昼に言ってくるわね」
しかし、学園の話題の中心が異母妹カルミアになったとしても、ルクリアとっては違うらしい。既に彼女の心の中には未来の夫であるネフライトの存在が確実に割合を増やしている。
高等部の教室にひょっこりと顔を出した中学二年生のネフライトは以前よりも少しだけ大人っぽくなり、可愛いという形容詞が似合う美少年から黒髪が映えるイケメンに変化しつつあった。
どんどん大人びてカッコよくなるネフライトに、顔を赤らめてあからさまに反応するルクリアは、新しい恋の始まりにいるように見えた。
「あらあら、うふふ……。今年度は、何だかマンネリ打破になりそうで嬉しいですわ」
先程はモブ令嬢を自称したコゼットだったが、その目は週刊誌の記者がスクープを発見した時の如く輝いていて、とてもではないがモブには見えない。
流石は噂好きの風の精霊シルフの加護を受けているだけあって、他人の恋愛事情に興味津々なのだ。コゼットはルクリアとネフライトのウブなやり取りを、長く温かい目でウォッチングすることに決めたのだった。
その立場からすると、普通に新学期が始まっただけに過ぎないが、他の生徒はそうは思っていない様子。
「ルクリア様、いよいよ異母妹さんと過ごす波乱の学園生活が始まりますのわね。やはり、異母妹二人で生徒会に所属とかされますの?」
何故か学園内の注目は、ルクリアの異母妹カルミアに向かっていた。正確には同じ学園に通うことになるとは思われていなかったレグラス異母姉妹そのものに関心があるため、同時にルクリアも注目されてしまっていることになる。
殆どの生徒が遠巻きでヒソヒソ話をして終わらせるところを、ルクリアの友人コゼットは堂々と皆が訊きたがっていることをルクリア本人に質問してきた。
「ちょっと、コゼット。言っとくけど私、学校でまでカルミアと顔を会わせたくないわよ。それに、異母姉妹で生徒会って何。まさかあの子を生徒会に入れるつもりなの」
「えぇ。今しがた、隣のクラスの生徒会長が名簿を片手にスカウトに出掛けるのを見ましたわ。異母妹さんの合格以来、ずっと囁かれている噂ですのよ。それに異母妹さんって、聖女試験にも受かってらっしゃるんですよね。スペックだけでもスカウトが来るのでは」
コゼットの言う聖女試験というものは、いわゆる聖女の適性を数値化する試験である。
だからまだ、カルミアは本物の聖女になったわけではなく、聖女の適正が高そうだという認定を受けたに過ぎない。そもそも聖女というのは英雄の女性版みたいなもので、本来は職業として登録されているのがおかしな気もするが。
国の制度や国家を超えた西方ギルド連盟の取り決めに、文句を言っていることになるとまずい為、ルクリアはその辺の矛盾点は無視することにした。
「……聖女試験は一応合格してるんでしょうけどね。ただ品行方正な、いわゆる聖女ヒロインタイプを想像しているなら、きっと期待はずれになると思うわ。あの子、いわゆる厨二病ってやつで自分を乙女ゲームの主人公だと思い込んでいるのよ」
「まぁ、羨ましい! 私、ルクリア様の異母妹に産まれてしまったら、きっと自信喪失して自分は主人公ではなくてモブ。よくてモブ令嬢なんだと落ち込んでいますわ。少し、その神経を見習って強く生きなくては」
自らをモブと自称するコゼットはいわゆる良いところのお嬢様で、噂好きで有名な風の精霊の加護を受けている栗色セミロングヘアの美人である。
「貴女、自分を低くいうけど。キャラクター基準が乙女ゲームではなくて、男勇者が主人公のギルド所属型美少女ハーレムものだったら、ハーレム要員の一人としてコゼットも即採用されていたんじゃない。それくらいは、容姿といい魔力スペックといい備えているはずよ」
「けれど、異母妹さんが主人公ならば、所詮この学園は乙女ゲームの舞台ですわ。それっぽい女子生徒がどんなに増えたところで、あまり着目されずにモブ扱いで終わってしまうのも無理はないでしょう」
確かに乙女ゲーム基準では主人公カルミアの視点で、他のどうでもいい女子生徒はモブ扱いされやすい。
(はっ……ここでこれ以上、乙女ゲーム云々の話題をさらに続けてしまうと、異母姉妹揃ってヤバいやつらだと思われかねないわ。しばらく乙女ゲームの話題は控えて、異母妹カルミアがただの厨二病であることをアピールしておくだけにしよう。後で期待はずれだったと、各方面からクレームを入れられても困るし)
「けど、悪役令嬢的なポジションが定着するくらいなら、モブって言われてた方がきっと楽に生きられると思うけど。とにかく異母妹のカルミアは想像を絶するくらい、承認欲求っていうのが強いのよ。だから生徒会スカウトは嬉しいだろうけど、期待しているような活動は出来ないと思うの」
「いえいえ、ルクリア様。私達、一般生徒は決して品行方正な聖女ヒロインを期待しているわけではないのです。何かこう……延々と続くこの惰性に満ち溢れたつまらない学園生活に、刺激をガツンと与えてくれるような。そういう方を待っているんですの。だから、異母妹さん……いえ、カルミアさんには台風の目として期待する方も多いと思います」
この学園の大半は元から真人間の新入生を望んでいるわけではなく、波乱を呼んでくれそうな問題児を求めているらしい。だがそれは他人だからそういう人間を求めているだけで、家族枠になるとただひたすら迷惑なだけだった。
今日の朝方だってカルミアの様子はおかしくて、珍しく心の奥底からルクリアは異母妹のことを心配したのだから。
「台風の目、ね……」
窓の向こうを見ると今日は運良く晴れているが、意外と台風の目の中にいて晴れているように感じるだけなのではないか、と錯覚してしまう。今日から、カルミアが中心の学園生活なのだ……と、ルクリアはため息をついた。
「ルクリアさん、お昼の時間……空いてるかな? もし良ければ、ご一緒したいんだけど」
「ネフライト君! 大丈夫よ、全然平気。そ、それじゃあコゼット。私……ちょっとお昼に言ってくるわね」
しかし、学園の話題の中心が異母妹カルミアになったとしても、ルクリアとっては違うらしい。既に彼女の心の中には未来の夫であるネフライトの存在が確実に割合を増やしている。
高等部の教室にひょっこりと顔を出した中学二年生のネフライトは以前よりも少しだけ大人っぽくなり、可愛いという形容詞が似合う美少年から黒髪が映えるイケメンに変化しつつあった。
どんどん大人びてカッコよくなるネフライトに、顔を赤らめてあからさまに反応するルクリアは、新しい恋の始まりにいるように見えた。
「あらあら、うふふ……。今年度は、何だかマンネリ打破になりそうで嬉しいですわ」
先程はモブ令嬢を自称したコゼットだったが、その目は週刊誌の記者がスクープを発見した時の如く輝いていて、とてもではないがモブには見えない。
流石は噂好きの風の精霊シルフの加護を受けているだけあって、他人の恋愛事情に興味津々なのだ。コゼットはルクリアとネフライトのウブなやり取りを、長く温かい目でウォッチングすることに決めたのだった。
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