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デビルトーン。
しおりを挟む「か、冠木くん? カブラギくんでしょっ」
持ち帰った仕事をアテにウイスキーを揺らしている所に訪れた3人連れの客、ひとりの女性が雪乃さんを見るなりカウンターに身を乗り出した。
……雪乃さんの知人は皆ミステリー小説や刑事ドラマをなぞるのが好きなのか? だけれど “ ヒントをやろう ” と酔に意気込んだ女性の鼻はあっさりと折られたようだ。
「高田美奈さんですよね、すぐに分かりましたよ。……でも当時の私は柏森、“ か ” だけしか合っていないじゃないですか」
そうだったと戯け跳ねる美奈という女性……年甲斐も無くというのも失礼だけれど、雪乃さんの手を握る歓喜ぶりはまるで少女のようで、僕が2人の間柄を知る頃にはウイスキーグラスの氷だけが踊っていた。
ーーどうやら小学生時代に雪乃さんと席を隣にした間柄らしい。だけれどさぞ思い出話に華が続くと思った夜は、看板も消えた深夜3時過ぎ、女性の縋るような叫びにグニャリと空気を曲げた。
「美奈さんが強い女性だと言う事は私は存じています。……以前から不可解、原因不明のケガが多かったと? そしてそれは美奈さんの再婚から……ですか」
彼女は昨年、“ 子息の自殺 ” を目の当たりにしたと言うのだ。それはどんなに冷静に思案しようとしても不可解でしかないのだと言う。母親が子の自殺を見たのだから納得出来ないのが普通だろう……だけれど、この1週間後、雪乃さんはそれを容易くひっくり返したんだ。
「……そうですね、占い師や霊媒師を巡ろうとまで詰まっているのでしたら、少し私に委ねてみませんか美奈さん」
ーー雪乃さんの学友だった高田美奈さん、彼女も上本佳奈子を知るモノだ。……そして行末、朝露が穂先の上に落ちた晩。彼女は奈落に覗く僕を掬い引く紙縒りとなった。
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