雪と月

𝓐.女装きつね

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宝くじ。

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 宝くじを買った。藪からにでもと期待愉しむのが僅かひと月の醍醐味と言うヤツだ。

 とは言え一週間の食費程度を託したのだから、願のひとつも掛けてみたくなると言うモンだと、通い慣れる部屋で一番の陽当り付近に封を置き、どうかひとつと手を擦った。

 最中、ふといつもオカルトや霊感的な事を口にするのだから何か良いマジナイでも無いのかと、亀のようにコタツにうつ伏せてカシューナッツを鳴らす雪乃さんに問い掛けた。

 待人転ばすような雪乃さんの返答はヤレヤレといつもの事なのだけれど、今回のそれは意気消沈させられた様なワケではなくて、何か “ 向き合わざるを得ない事 ” のよう、僕の膝をゆっくりと揃え直させたんだ。

「……手を合わすのは良いけれどさ、それじゃぁ “ 通りすがりの誰か ” を振り向かしてしまうかもしれないからね」


ーー雪乃さんから聞いた話だ。


「おかげで今だに違う時があるんだよ。水月みずきも言っていたでしょ? 雪乃さんは写真映りが悪いって」

 子供時代、転居に伴い転校を繰り返していた雪乃さんは何度目かの先で起きた “ とある事 ” から全校舎を敵に廻してしまったらしい……誰一人と味方の居ない世界で蓄積される鬱積うっせきは幼少とは言えど自分にらしからぬ事を招いてしまったのだと雪乃さんはコタツに顎を乗せた。

ーー独り帰る道端にね、いしぶみがあったんだよ。そりゃもう苔を被り何やらな刻もまるで読めないようなヤツがさ……今想えば “ 気付くべき ” だったんだ、苔は白く全て死んでいたのだから。

 手を合わせてしまったんだ。どうにもならなかったのだろうね、私も……そして忘れてしまっていたんだよ、本尊である “ 千手観音 ” それに私は願わなければならない事を。……そう、私は何やら分からない魍魎を寄せてしまったんだよ。
 末は散々でね、原因不明の急死や不慮の事故が次々ってヤツだったのけれどね、どうやら私が “ 美味しい ” と思われたようでさ、ヤツらったら今だにウロついているんだよ。

「今ではね、喰われる程美味しい私でないのだから一向構わないのだけれど、時折写真や鏡で私の顔が変わるのはさ、さしずめソイツら……魍魎の所業なんだよ」

ーーだものだからね、手を合わせ願う時はしかりと自分の本尊に願わないとなんだ。構わず迂闊にであれば畜生や魑魅魍魎に射止められてしまうのだから。


「ヒメノミコトにさ、財を願ってもそれはまったく仕方がないでしょ?」
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