49 / 59
死神。
しおりを挟む午前四時。
閉店わずか早いのだけれど、そこは自営の特権だと看板を落とす。まして独りなのだから誰に気を使うでもない。清々しい自己責任だ。
エレベーターを降りた繁華街は連休明けの初夜に人通りは疎らで、似つかわしく無く澄んでいた。
古今東西。得てして繁華街って場所は “ いわく付き ” は定石なのだけれど、それは私が帰路を辿るココも例と違わない。
一等地に大きな公園が有り、そこは何者も建屋を作ら……いや作れないのだろうからまぁそれなりの土地なのだろうと推測できる。
自宅までは徒歩で十分程。時折地域猫とじゃれ合っていたのだけれど、猫会議に巻き込まれてからは脚を向けていない。……だってヤツらってば私の事を “ 猫仲間 ” だと思い始めていやがったし。
ーー
さて今宵も馴染みのコンビニに寄ってタバコを、と暇そうな呼び込みを横目に交差点に差し掛かろうとした時、不意に足元がグニャリと歪む。
『いつものアリス症候群にしちゃキツいな…って』
捉えたモノが喉を掻く寸前、必死とそれを飲み込ませた。
疎らとはいえ人々が行き交う交差点のド真ん中。初夏に似つかわしくないゴスロリ女性が闇の晴天に傘を差し立ち尽くしていたのだ。
瞬時 “ 私には害は無い ” と見測るけれど、姿形、その鮮明さからすると厄介そうだと、気付かぬふりを決め込む事にした。
「お幾らになりますか?」
すれ違いざま故意に肩を重ねた時、まるで直接意識に声をねじ込まれ、酔いに判断が面倒くさいと思わず立ち止まってしまった……『くそッ、バレた』
" この空間から脱出する ”
私は眼をつむり頭を切替えた。裏の裏、摂理に反するのならこちらはその中で私の世界を作ってしまえばいい。名付けるとしたなら “ ザ・ワールド ” かしら。
歩数にしておそらく五、六百。小さな交差点が五箇所と大通りがひとつ。住処までのその区間、私は眼を深く瞑り脚を進め始めた。
次第サーモグラフィのような世界が意識に構築される。おそらく先天の全盲者が見ている世界はコレなのだろう。これほどに見えているのだから恐怖心等懐きようもないモノだと独り納得し唇を遊んだ。
ーー
それは私が構築した世界。 “ ゴスロリ少女 ” は入れない、認識及ば無いだろうとふんだ自己流身勝手な “ 心霊遊び ” だ。いや、そのハズである。
信号機の色、行き交う人々。数秒行く手を遮る地域猫をサーモで認識しながら後ろ手に空間を閉じた。
「あ、お帰りなさい。雪乃さん」
『残念ね、ゴスロリさん。私の勝……』
1
あなたにおすすめの小説
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち
ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。
クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。
それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。
そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決!
その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる