ゆるゆる王様生活〜双子の溺愛でおかしくなりそう〜

琴音

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三章 イアサント王国の王として

21.やはりというか……

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「おかえりルチアーノ!」
「ただいま!ベルンハルト!」

 大臣たちと僕ら、少しの護衛騎士とで正門の庭に降り立った。走って抱きついてくるベルンハルト、たったひと月なのに懐かしく感じる城の佇まいに少し感傷的にもなった。

 騎士たちは直接騎士寮の方に行き、側仕えは搬入門の方へ直接荷物を持っていった。手隙の者はみんな出迎えに来てくれたのか、大勢に囲まれちょっと嬉しい。

 みんな無事に帰ってきたのを本当に喜んでくれて、僕をいつも可愛がってくれているアンセルムの側仕え、レイモンドは泣いていた……

「よかった……ルチアーノ樣が……ああ……」

 両手を握りブンブンと振り回して泣き笑い。

「うん……ありがとうレイモンド」
「ええ!本当に……うっうっ……グスッ」

 そんな様子に二人は、

「俺たちはいいのか?レイモン」
「ハッ!お二人も何よりです!」
「そのさ、思い出したように付け足すのやめてくれ。悲しくなる」

 アンセルムはギロッと睨み、

「主人はどうでもいいのか?」
「うぐっ!そんな事はないです。おかえりなさいませ、アンセルム様」

 ジュスランはみんなルチアーノしか目に入ってねえのかよ!ったくようと、喜ぶみんなと城の正玄関に向かった。とりあえず僕らは報告のために一度部屋で着替えて……あれ?エミルがいない?

「ギー、エミルは?」

 ビクンッとして持っていた僕のシャツを落とした。申し訳ありませんと拾いながら、

「あ……あの……ベルンハルト樣が……その……」
「ベルンハルト?」
「あの……彼らに隙があったんだと思います。こんな下級貴族は関係ないと油断したといいますか……」

 まさか……

「食われた?」
「はい……産休に先日入ったそうです。魔力差が大きくまだ妊娠初期なのに以前のジュスラン様みたいになりまして……」

 あ~………不安的中か。他はいるのか聞いたら国土省のパトリスの次男「シリル」が用事で登城したらしく、廊下を歩いていた時にとっ捕まったり(すごくかわいらしい子なんだよ、金髪巻き毛、碧眼の人形のよう)僕の執務室の行政官「トゥール」(水色の髪の金色の目、涼しい見た目のきれいな子)、アロイス、ボドワン、クレマン他。みんな他の大臣の行政官だ……

「俺が聞いたのは以上ですが、他もいるかも知れません」
「マジかぁ……」
「貴族の階級は無視してキレイな子だけ狙ってるね……」
「ええ、城の中を楽しそうに歩いていて、お茶会も晩餐会も頻繁に開催。身分、年齢問わずだったそうです」

 そう、彼は特に何かが起きなければイアサントの仕事はない。クソッ暇を持て余して漁ってたんだな!でもうなじ噛まなくてもいいのに……ボソッと僕が呟いたら、

「あ~噛まれたのはエミルとシリルだけのようです」
「え?全部かじっていないの?」
「はい、どうも選んでいたようですね」

 カハァ!これやばいね、連れて帰る気満々だよ。そんな話をしながら着替えはすんで会議室にレオンスと向かった。部屋に入るとニコニコ楽しそうに手をヒラヒラ振ってくるベルンハルトも当然いた。

「皆揃ったようなので始めます」

 アンセルムの進行で不在の間の城の様子、ドナシアンの動向などを聞いた。ドナシアンはひと月やそこらでどうにか出来る国内ではないため特に動きなし。逃げて来た人たちの対応のみだそうだ。あ~よかった。

「避難民は多いの?」
「はい、出国以前と変わらずですかね。少しずつ減って来ているのは隣国二国の者たちです。ドナシアンの者は現在避難所に五国全てで三十人くらい収容中だそうです」
「そう……イアサントは遠いものね。手前の国にたくさん行ってるのかな?」

 そのようですと外務省副官は報告してくれた。避難民に聞くとドナシアンに生涯関わりたくない者たちだけがここまで来ているそうで、混乱が収まれば帰りたいと願う者も多いそうだ。うん、自分の国はともかく、知り合いも身内もいる所にいたいのは当たり前の感情だ。

「あのさ、そのドナシアンの人はえ~っと次どこが送っていくの?」
「エブラールの当番ですね。あちらの騎士がこちらに来ていまして明日行くそうです」
「そう、落ち着くといいね。ユーリウスはいくらでも来ていいとは行っていたけど、あんまり甘えるのもどうかと思うしね」
「そうですね。借りが増えるのも小国としては避けたいですから」

 その後も細かい報告を聞いて今度はこちらの報告に移る前に……一応城を守ってくれたベルンハルトだ。

「ベルンハルト、このひと月ありがとうございました。感謝していますが、あの……言いたい事わかる?」
「んふふっ分かるよ?君の側仕えのエミルとシリルちょうだいな」
「ああ……やっぱりか。親御さんはいいって確認した?」
「うん!愛妾として連れて行くって言ったら二人は驚いたけど嬉しいって言ってくれて、親も本人が良ければと許可くれたよ」

 ……そりゃあね。お腹に子がいて本人が行きたがれば諦めて許可は出すよねと全員の顔が言っていた。

「なら問題はないけど……でもさ、城中物色はやめて欲しかったです」
「ん?あははっ!君らのいない城は楽しくないからね。楽しみを見つけなきゃなんないだろ?夜は特にね」
「はあ……夜伽か普通に寝て下さい」

 やだなあルチアーノ、僕は下半身から生まれた男だよ?夜伽だけじゃ足りない!と大笑い。そうですか、そうですよね、あなたに任せた僕が悪い。はあ……食われたみんなにはお詫びに何かするか贈り物でも……はあ。

「では城は一旦終わりでこちらの報告を始めてもよろしいですか?ルチアーノ様」
「うん、よろしくね」

 ここからが本題のようなものでベルンハルトに関係あるものを先にして、終わり次第退席してもらった。

「では僕は明日帰ります!みんなありがとね!楽しかったよ!」

 そう言うと席を立ち僕の所に来て耳元で、

「今日の夜僕の所に来てね?君からのお礼をちょうだい……チュッ」
「はい……」

 じゃあねぇ!と楽しそうに出て行った。ジュスランは嫌そうに眉間にシワを作り僕を見た。

「ルチアーノ、あいつに頼んだ俺たちが間違っていたんだ。すごく嫌だけどごめん、お願いします……」
「うん、押し切られたと言え頼んだのは僕らだ。こんなお召が来るのは分かっていたよ」

 みんなも時間がない所に押しかけて来て、断れないような状況を作るとは卑劣なとヒソヒソ聞こえた。ルチアーノ様はベトナージュでも……なんとおいたわしい……と。

「みんなありがとね。ベトナージュではみんなも辛かったんだ。今日は帰ったら番と仲良くね。んふふっ」
「ルチアーノ……お前はなんて強くなったんだ!」

 ステファヌがぶちゅうぅ……この展開久しぶりだ。

「ごほん!匂いも抑えろステファヌ」
「だってルチアーノがかわいくて」
「ハァハァごめん、アンセルム続きをどうぞ」
「はい、では………」

 それから各大臣からの報告を城の者に伝え解散。細かい所は明日以降各省で対応をお願いした。それから夕食を食べてお風呂……エミルいないからアンリとギーになった。

「今日から組み合わせ変更でアンリと俺になりました」
「ハァハァ……んっ……分かった」
「ん?少し無理されましたか?ヒール」
「あ~、二人がね。あうっ出ちゃ…クッ……っ」

 ベトナージュでは三人とも俺たち以上に頑張ってましたからね。ルチアーノ様を抱きたい気持ちは分かりますとため息をついた。

「終わりました。俺は番がいながら他の人を抱くのがこんなにも辛いと思わなかったんです。今回始めて体験して、これを当たり前に過ごしている王族の方はどんなにかと。体質が違うとはいえ、俺たちと実はあんまり変わらないのだと聞いてしまって……」
「うん」

 こういった給仕とは全く違う……こんなに三人は愛し合ってるのに……ギーは可哀相と僕のために泣いてくれた。

「ありがとうギー。分かってくれるだけで嬉しいよ」
「はい。お力になれることは何なりとお申し付け下さい」
「うん」

 ギーは変体だけど子供がいない下級貴族の養子になってここにいるんだ。魔力が多かったから下働きからの抜擢なんだよね。能力も高く、僕の世話しながら行政官になりたくて、担当日以外の日に文官見習いもしている。側仕えが嫌とかではないけどまつりごとにも興味があるそうだ。

「ギーは頑張り屋さんだからねぇ」
「あの、僕も頑張れば行政官になれますか?」
「アンリも異動したいの?」
「はい、父はテオフィル様の行政官ですから」
「そうか、なら二人とも頑張ってね。いつか執務室で会えるといいね」
「はい!」

 二人は微笑みお風呂を出て少し寛いだ。はあ……イレールが飲み物をどうぞと淹れてくれた。

「ため息も出ますよね」
「うん。今日は二人といられると思ってたからね」
「ええ、ベルンハルト樣がこんなに早く帰るとは思いませんでした」

 ベルンハルトは国で何かの祝典があって王不在はマズいからだそう。なら来なくてもいいのにねぇとも思ったけど、五国筆頭のイアサントがほぼ上の者がいない状況はマズいだろ?と言われればその通り。

 有事の際、指示系統が戸惑ったら困るだろ?って言われ確かにそうだ。それに彼の国は他に兄弟もいて、第二王子以下が上手く立ち回れるから大丈夫なんだ。う~ん、やはり王族がたくさんいるっていい事だよね。だけど何もなかったから愛妾見つけるだけに終わった……いい事だけどむ~ん。

「ではそろそろ参りますか」
「うん」

 僕とイレール、護衛騎士と四人でベルンハルトの客間に向かった。













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