ゆるゆる王様生活〜双子の溺愛でおかしくなりそう〜

琴音

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四章 イアサント共和国 筆頭国イアサント王国

21.セレスタン叔父上の攻略

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 とりあえず紛糾して手に負えないドナシアンの領地を決める会議はアンセルムに任せて、僕らはとても大事なお願いをするために、騎獣でリンゲル方向にあるセレスタン公爵家に向っている。

「今日もお空飛ぶには良い日和だよ。風も爽やか眼下には美しい畑と山!う~ん!」

 僕の独り言にスーッと隣にジュスランが来て、

「現実逃避が甚だしいぞ、ルチアーノ」
「うぐっ!だって……僕あんまり話したことないし、見た目怖いし……二人が何とかしてくれるんでしょ?」

 あのなあと呆れた声で、

「これは俺たちだけじゃうんとは言わないからな?お前の、王の説得がないと動かないから。来る前に説明しただろ!」
「やっぱり?」
「叔父上はそういう様式みたいのは重んじる方だよ」

 そう……セレスタン公爵家の新しい領地は当然直轄地近くの良い土地を配分してある。なぜならこんな遠くの辺境に公爵領があるから。まるで王家とは付き合いたくないと言わんばかり。この地はリンゲルと隣接した農業主体の領地で城までも遠い。何としても繋がりを持ってもらわなければならない……んだけど。

「着きましたルチアーノ様!」
「うん」

 サミュエル先導で屋敷の庭に降り立つと、メイドたちがズラッと並びその間を凛とした佇まいで歩いてくるおっさん。

「ようこそ!ルチアーノ様。お待ちしておりました」
「セレスタン樣、お時間を頂きありがとう存じます」
「いいさ、まあ話しは中でな」

 不気味なほど歓迎してくれた。話しの内容は息子に託していて知っているはずなんだけど……?なんか満面の笑みが怖い。僕ら三人はセレスタン樣に付いて屋敷に入り客間に通された。さすがセレスタン様、センスのいい客間だ。壁紙から家具まで見たことない意匠の物が配置されている。

「なんかここ来るの久しぶりだ」
「そうなの?」
「ああ、流行病はやりやまいのゴタゴタが片付くと付き合いが薄くなってな」
「あれ?王国騎士団の団長は……」

 あいつは絡みは少ないんだよ。近衛の団長じゃないからなとステファヌ。

「でもコランタンは戦では大活躍だったよ?」
「あ~郊外戦で凄かったらしいな」

 彼もセレスタン樣によく似たマッチョのくせに機敏に動く脳筋。僕らとあまり歳も離れていなくて、もっと付き合いをしてもよさそうなんだけどね。

「あいつはなあ……あれは叔父上の隠し子だ。つい最近湧いて出た子供だよ」
「えっ……」

 話を聞けば病の後のゴタゴタで彼の母親がセレスタンを頼って来たらしい。若い頃に遊びに出た先の宿屋の人だったそうだ。夫が亡くなり宿屋も暇になりクビ。生計を立てる術を失ってしまってどうにもならなくなったそうだ。

 アンセルムの鑑定でも確かにセレスタンの子だと確定すると二人を保護。母親は愛妾として屋敷に置いて、息子は騎士にすべく拷問……もとい特訓。役者のように美しかったコランタンはセレスタンに瓜二つに成長した。

「どれだけいじめればああなるんだと団長就任の時に思ったね」
「それは俺も思った。優男がサミュエルばりになるんだぞ?」
「あはは……素質があったんでしょ?」
「そうだけどあいつの頑張りには頭が下がるよ」

 そんな経緯なため彼は二人にも僕にもに近づいては来なかった。

「気にしなくていいのにね。僕はもっと……」

 それはなと二人は笑った。彼はなあとジュスラン。

「サミュエルは全騎士団のトップだろ?話をしたら中身は優男のままで、人と関わる事を嫌うんだそうだ」
「へえ……」

 俺たちもセレスタンの子だと教えてもらったのも就任の時でさ。正直ほとんど関わりはない。そんな話しをしているとセレスタン様とコランタンが入って来た。おおっ親子だね!並ぶとそっくりだ。

「おまたせしました。ルチアーノ様は息子は初めましてかな?」
「いえ……話したことはありませんが、訓練などで見かけてはおりました」
「そうですか。では要件を聞きましょう」

 二人がソファに座り、お茶が給仕されて一口。ここまでの道のりの話など他愛もない話しをして本題。貴族面倒くせぇ。会議みたいに直球に要件を話してはならない。

「では叔父上にお願いがあってまいりました」

 ジュスランが話し出すと手で話を遮った。

「ジュスラン、これは国としての願いだろう?ならばルチアーノ様が願い出るのが筋であろう」
「はい……失礼いたしました」

 そう言うと、僕の方を見た。よし!説明をして何とかうんと言わすぞ!

「大変失礼をいたしました。では私から説明いたします」

 今のイアサントの現状とドナシアンの現状。それに伴い新しい王が必要である事。そして実務に長けていて、威厳も持ち合わせているセレスタンにお願いしたいことを説明した。

「ルチアーノ様が行かないのは理解はする。本国の王を出すわけにはいかんからな。なら二人のうち一人、もしくは二人が行けばよかろう?」
「ゔゔっ」

 二人はおかしな音が喉から出ていた。それはその通りなんだよ。息子たちが育つまでなんだろう、ならば余計だとセレスタンはニヤニヤ。

「叔父上、恥を晒せば俺たちはあの頃頑張って王をやってはいましたが、家臣と叔父上の助言のまま動いていました。人の動かし方から省庁の大臣の役割の範囲など知っているつもりで……」
「ふふん、私への反発は大きかったなあ」

 二人は真っ青になってあの頃は若くて勢いのみでその……

「ふむ、今は理解しているのだな?」
「はい」

 理解した上で私に請うのはなぜだ?とセレスタンは二人に問う。

「我らは叔父上の能力を知っています。我ら以上の成果を出せると考えました」
「ほほう。私をそんなに持ち上げて気持ち悪いな。本心を言うてみよ」

 何も言えず三人で真っ青になった。ダラダラと汗が額を流れ落ち、背中も汗が流れ落ちるを感じた。

「言えぬか?」
「いえ……」

 黙ったまま個人的に感情で離れたくないなどとは口に出すのがはばかられた。そんな様子にもう良い、やってやろうじゃないかと、がははと笑い出した。

「私はもう五十を超えている。其方らの子が育つのはもうすぐだし、その期間くらい任されてやるよ」
「本当ですか!」
「ああ、コランタンから聞いているよ。其方らはこの十年、子も作りベトナージュとの付き合いも復活させた。そして五国以外の他国との交流も盛んになり、共和国制まで作った。少しくらい手伝ってやる」
「ありがとう存じます!」

 僕らは見合ってよかったと微笑んだ。

「ルチアーノ様は立ち止まる事もなくここまで来たのだろう?ならばもう少し番と楽しむ時間は欲しいよな?」
「ひゃい!」

 ニヤニヤと見つめるセレスタンを見れなくて下を向いて真っ赤になった。

「子を作るのみが番との交流ではないからな。がはは!」
「叔父上……」

 三人で恐縮していると、

「其方らが城でひと目も気にせず過ごしているのは聞いている。毎日急かさられるような日々で、年長者には三人で過ごす時間が足りないようにも見えていたんだ」

 そう……そんなふうに。

「それにな、私はドナシアンの図書館や禁書庫に興味がある。それとオーブ。王族なら私も行けるだろうからな」
「それは大丈夫です」

 ならばとっとと形にして研究三昧になるかなと微笑み、大臣の選定は私に任せてくれるのだろうなと睨まれた。

「それはもうお好きに。こちらの大臣を引き抜かなければもうどうとでも」
「ふむ。コランタンは連れて行ってもいいか?」

 え?はあ………サミュエルに相談かな。僕はその問いに、

「サミュエル次第ですね」
「なら大丈夫だな」

 父上何を?とコランタンはワタワタ。

「ルチアーノ様がわがまま言うならこれくらいは認めてもらいたい。一人息子が病で亡くなって子はいないものだと思っていたんだ。それが……」

 コランタンを見つめるとみるみる目に涙が溜まりポロッと?

「父上……」
「私は……グッ」

 父を抱いて苦笑いのコランタンは説明してくれた。

「父は市井にいた私と母を簡単な説明でなんの疑いもせず迎え入れてくれました。奥様も嫌がりもせずに」

 私たちはギリギリの生活で身なりもボロボロ。物乞いのような有り様でしたが母を覚えていらしたのか、すぐに屋敷に入れてくれて手厚くもてなされて今に至ります。感謝しかありません。

「何を……こんなに私によく似て母親も私は愛していた。だが身分が違いすぎて愛妾にもするなと親に言われ……それが突然現れたのだ。どんなに嬉しかったか分かるか?」
「父上はもう……」

 ボロボロと涙を零すそれは親の愛情そのもので僕も目頭が熱くなった。

「コランタンと過ごしている時間は少ないんだ。だから……」
「はい。お連れ下さい。私がサミュエルを説得します」

 うんとセレスタンは頷くと嬉しそうだ。後は任せろと快諾してくれて、その後はコランタンの自慢話で終わった。………やはり拷問だったか。コランタン頑張ったね。

「いえいえ、私は楽しかったですよ。厳しさも父の愛を感じましたから」
「おお……お前はマゾだったのか……」

 ボソッとステファヌ。

「嫌ですよステファヌ様。ルチアーノ様と同じです。短い期間で覚えるには多少はね」
「うんうん、大変だけど父上のためならね」
「ええ、僕らは似てますね。んふふっ」

 かわいい……ごっついけどなんてかわいらしいんだ、コランタン!これから仲良くしようね!

「ええ、こんな出自なもので気後れしておりました」
「そんなこと。僕はそれだったらどうなのよモノだよ」

 二人であはは。

「僕はルチアーノ様のような魔力もありませんからね」
「それも変体するまで知らなかった芋と牛に囲まれた……あはは」

 まあまあ、お前らはすげぇ!それでいいよとジュスランは笑ってくれた。

「今日はゆっくり泊まっていけ」
「はい、ありがとう存じます」

 そんな感じでセレスタン様に了承を貰い、翌日は領内を見学させてもらった。本気でリンゲルとなんも変わらない農業主体のほんわか領地だった。彼はこんなでも優雅に生活出来るのは国からお金が出ているから。前王直系だからね。

 でもこれからはカット!ドナシアン王として働いた分が支給になる予定で引退後はまた戻る。まあ、書類上の話だけどさ。それからお昼を頂いて午後のお茶会の後、気分良く帰還した。


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