月の破片を受け取って 〜夢の続きはあなたと共に〜

琴音

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最終章 僕が来る前に戻った……のか?

13 もしや、ショックを与えれば?

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 月日は過ぎて僕は、少しずつ人に触れられても大丈夫になって来ている。子どもたちと手をつなぎ、走り回って過ごすことが出来るようになっていた。

「母様平気?お体は辛くない?」
「うん。大丈夫だよ」
「なら抱っこ」
「はーい」

 リーヌス様やルイーズ様は、気分転換に遊びにおいでって、よくお手紙をくれて、いそいそとお出かけもする。僕はみんなに支えられて少しずつ元気にはなってきたけど、未だアンジェと交わることは出来ない。

「怯えて体が硬くなって、そのうち涙が出ちゃうんだ」

 なんの少女マンガのセリフだよ。でも、現実そうで、どうにもならない。

「難しいですねぇ。アンのお話を聞いてもこれだとたぶんですが、レン様の記憶に引っ張られて切り替えられないのかなあ。文化の違いはいかんとも……うーん」

 カールもティモへの執着の切り方は、番なら解消すれば簡単。だけどこのような関係の割り切り方ねえって悩んだ。エルムントたちもなんとなく察しているらしいけど、適切なアドバイスをくれることはなかった。

「お兄様に懐くのとは違うんですよね?」
「うん。兄様とは違う」

 誰かと寝てみるか?いやいや……失敗するとゲロゲロって吐きそうだし、迷惑千万だ。なら無理矢理にでもアンジェに抱いてもらうかな。間違って吐いても怒らんでしょ。

「怒りませんが、旦那様が衝撃を受けそうですね」
「ああ、うーん……」

 昼過ぎのお茶の時間、ふたりでうーん。友達以上恋人未満の感情に近く、キスだけなら気持ちよくも感じた。たぶん僕もなにかしら「性的な愛情」を彼に持っていたのかなあ。そんなふうに考える自分が嫌いなくせに、襲われたのが怖かったくせにね。これはなんの気持ちなんだろう。現世の流行りのブロマンス……いや、ブロマンスは性的接触はないから違うし、うーん。カールはレモンムースを食べながら、

「ティモかあなたがノルンなら……幸せだったのかもしれませんねぇ」
「かもねぇ……」

 カールは優雅な手つきでお茶を飲み、人の心は難しいですねえって。ものすごく実感してますね。クルト様、グレゴールの新作レモンのムースが美味しいですよと、悩むばっかりは損ですからと、薦めてくれる。なら少しと一口、うまっ爽やかなレモンの風味で美味しい。なに作らせてもグレゴールは素晴らしいよ。この世界増粘多糖類というの?あれの甘さじゃないから本当に美味しんだ。うまっと食べていると、カールが真面目な顔して、

「私の知り合いにも、クルト様みたいに襲われた人がいます。家の都合で婚約破棄になり、相手が諦めきれなくて、ですね」
「そう」

 今その方は何もなかったように別の方のところに嫁ぎ、幸せに暮らしているそうだ。襲った方は未だ独り身。どうしても割り切れなくて、何年も切り替えられないそうで、見ている方は切ないそうだ。

「でももうすぐその人も三十になる。そろそろ親が勝手にお嫁さん連れて来るでしょうね」
「貴族は家も大切だもんね。仕方ないか」

 カールは、貴族や家の存続とか考える家庭では、避けられない部分があるのですと、眉を下げる。

「ふたりの感情のこじれ、家の都合、身分の差。いろんな原因はありますが……そうなった時、みんないつか割り切るのですよ」

 そっか……みんな強いね。僕がこの世界に来た時からずっと彼は傍にいてくれたんだ。だから思い出がグルグル。そしてなにも浮かばず夜。ベッドで腕枕されていた。

「アンジェ」
「なんだ?」
「抱いて」
「抱いてるが?」
「そうじゃなくて抱いて」
「ああ……無理だろ」

 もう考えても答えは出ない。アンジェと結婚する前からの付き合いで、「クルト」の記憶もあって、彼とはものすごく長い時間一緒にいたんだ。ならば、ショックを自分に与えてなんとか復活させたい!いくらなんでもアンジェが可哀想になって来た。

「まあいいけど。でも俺、気分が乗らないなあ」
「乗ってよ!」

 僕は上に乗ってパジャマを脱がし、動かないアンジェのズボンもパンツも拭き取った。自分も頑張って脱いだ。よし!

「お前の一生懸命さはかわいいなあ。でもな」
「なら僕がっ」

 萎えてるちんこ……こ……ちんこ!クワッと気合いを入れて、ガシッとアンジェのを握った。

「痛いクルト」
「ご、ごごめんなさい」

 手が震える。いつもなら咥えて僕はビチョビチョになるんだけど……震えながらゆっくり擦った。アンジェの気持ちよさなど考えられなくて、痛くないようにとニチニチぷにぷに。

「そんな青ざめてまでしなくていいよ」
「いや!大きくして!」
「そんな顔されたら、ならないよ」

 手の中は柔らかいまま。ふえぇ……なんか悲しくなって来た。大っきくならないし、これじゃあやってることティモと同じじゃない。

「ごめんなさい」
「ふう。ならキスからだろ?いきなり股間握ろうなんてさ」
「ごめんなさい」

 ほらまず裸で抱き合うんだよと、アンジェの胸に倒れた。

「やっぱりいいな」
「う、うん」

 アンジェは黙って僕の体を抱いていて、まず裸で触れ合うのに慣れろって。ずっとじっとしてたけど、そっといつもの気持ちいいところを、アンジェは撫で始めた。うっ……くっ…

「したいんだろ?」
「う、うん」

 アンジェは無理せず長い時間あちこち性的な触れ方ではなく、擦るように触る。その度にビクッとしてたけど、なんとか慣れたのか肩の力が抜けた。ハァハァ…体に力入れすぎたのか、疲れた。

「キスは?」
「うん」

 軽くついばむ感じでチュッチュッと。これは好き。もうずいぶんしてて慣れたから。

「クルト……いいか?」

 舌が唇を舐めた。体がビクッとしたけど、したけど……うっ…ううっ……力入って動けない。

「やめるか?」
「し、して!」

 ぷるぷる震えながら、嫌だって気持ちを耐えていた。いつもなら気持ちいいのに……ゾワゾワする。

「なら、少し楽にしてやるかな」

 ブワッとアンジェが花の香りを放出。あうっ……こんなこと出来るの?どうやって……ちんこ萎えてたのに?どこに興奮の要素が?僕は香りに酔って、頭がとろんとして来た。

「匂いには反応出来るか」
「う…ん…なんかいい」

 体に熱が……あれ?キスが気持ちいいかも。

「まずは、これは大丈夫か?」

 そう言うと乳首を摘んで軽く捏ねて…んっ…気持ちいいとは言い切れないけど、嫌ではない。

「勃つようだな」
「え?」

 自分の股間を見ると大きくなっていた。よかった。不能にはなっていなかったようだ。

「だがまだ柔らかいな。触るぞ」
「うん」

 アンジェの手が僕のを握った。手が暖かくて、うっんうっ…いいかも……先を揉むようにクニクニと。んあっ…

「匂いがあれば、かな」

 そう言うと更に強い匂いがっ咽るほどの匂いが…あぅ…お酒に酔ったみたいな……ハァハァ…あれ?

「久しぶりにいい顔を見たな」
「あっうっ……ふわふわするんだ…」
「そうだな」

 アンジェの先がお尻に触る。あんまり濡れてないのか、股間に塗りつけるようにしている。

「ゆっくり腰を落とせ」
「うん」

 先を押し込むようにぃ…熱い…うぐぅっ

「もう少し力を抜け」
「あっ…ッアッ……んうぅ」
「太いところが通れば。ほら」

 うぐぅ…腰に力入れてウーッ奥に当たった。ハァハァ……繋がれた。吐き気はないけど、初めて少し痛い。濡れてないからかも。

「入れてるのに慣れろ」
「は、はい」

 胸に頭を乗せたまま抱かれていた。アンジェがビクビクしてるのを感じる。ずっとしてなかったから、これきついよね。

「中、気持ちいいな」
「そ、そう?」

 お腹の圧迫感がすごいとかお腹に意識がいってたら……フッとアンジェが僕の耳を触った。グアッッゾワゾワっと足先から頭まで怖いって気持ちが電気のように走った。

「アンジェ耳と首はやめて!」
「ああ。ごめん」

 ティモの優しく触れる手付きを思い出し……ブルブル震えた。まだ早かったのか焦りすぎたのかと、ふわふわしてた気持ちが恐怖に支配される。

「やめるか?」
「やめない!克服するの!アンジェと愛し合いたいの!」

 ふんと鼻を鳴らして、なら耐えてみろと腰を振り出した。

「あっンッ……はうっ」
「気持ちよくなくてもいい。俺の魔力を感じろ」

 アンジェもしてなかったのかすぐにイクッて。でもいつものように奥に突き刺す感じではなく、少し引いてドクンドクン。
 あ……アンジェのが先から出でるのが分かる。あったかくてスーッと魔力が体を巡る。ああなんか…心がぽかぽかして気持ちいい。

「気持ちいいか?ここから漏れてる」

 僕のを掴んで先をヌルヌルと親指で……ングッ…ゾワッとして軽くイッた。

「ふふっイッたな。中ビクビクしてる」
「ハァハァ……なんかイキ切ってない感じだけど…イケた」
「まだするか?」

 うんと頷くとお前が下になれとアンジェ。この姿勢は怖いだろうが、目を閉じるな。俺だから、お前を抱いているのは俺だからしっかり見ろと。

「うん」

 アンジェは優しく、本当に壊れ物みたいにキスして愛撫してくれる。上半身は怖くなることもあったけど「目を閉じるな。俺を見ろ」と、その都度優しい声を掛けてくれた。

「アンジェ……お尻が…お尻……」
「ああ、もうダメだろ」

 ヒクヒクしてすごく疼いて開いた脚の、足の裏からなんか……上がってくる。上がってくるの!

「ンンッああっアーッ」
「クッ……もげそ…」

 奥から強い快感が体中に広がる。うーっううっこれキツいッ久しぶりだからじゃないと思う。あ、あぁ……んっんんっ快感が怖いんだッ

「声を抑える必要などない」
「ちが…んーッぐうッ……ッ」

 久しぶりの快感でお尻も締まるし歯も食いしばって、アンジェに指が食い込むくらい抱きついた。あっああ……ヒクヒクが止まらないんだ……んあ……

「いつものようにビチョビチョだな」
「ハァハァ……いつも通りとは言えないけど、アンジェとやっと出来た」
「うん」

 でもさ、アンジェとこうやって無理して繋がることに、意味はないのかもしれない。もう子どもが欲しい訳じゃないからね。でもね、僕はアンジェに触れていたい。愛してるよと、裸で抱き合いたいんだ。気持ちいいのは大切だけど、繋がらなくても抱き合って、アンジェを感じたかった。そうだ、だから抱かれたかったんだ。

「アンジェ僕……ウッ…寂しかったんだ。ティモがいなくなったら、アンジェに放置されてた時みたいな気分になってた。あの頃の寂しさが……ティモいないから…ティモが……僕の隙間を埋めてくれたんだ。だから片方いなくなるのがっ」

 分かってるよと、僕の体に腕が回る。

「あんなことがあっても側にいて欲しいって、お前の気持ちはな。ティモはお前の心の奥底に住み着いていた。お前の心の弱さ、寂しさを埋めてくれてたんだよな」
「うん……」

 アンジェは抜くと横に寝転んで、優しく撫でながら腕枕してくれた。うん……この寂しさの穴はどうやって塞げばいい?ねえティモ。なにで塞げば埋められるの?僕は無意識にしゃべっていたようで、アンジェが僕の頬を撫でながら、

「俺が埋めてやると言いたいが、今まで出来ていなかったんだろうな。だから、これこらお前にティモの分まで俺の愛情が伝わるよう努力するさ」
「うん、ありがと」

 ここは僕が生まれた世界じゃない。「クルト」の記憶があっても馴染んだつもりでも、蓮の意識が、魂がこの世界で生きている。前のクルトが続いてるんじゃない、それをベースに僕が生きてるんだ。あの事故の日から生を引き継いだだけで、僕は別の人なんだと実感した。僕はその不安を、ティモの優しさで埋めてもらっていた。だから信頼して頼り過ぎたんだ。
 ここで立派に自立して生きてる「つもり」でいただけ。、本当はティモが隣で励ましてくれたからなんだと、アンジェに話した。

「そうかもな。ならクルトは、これからは俺とふたりで、本当の意味でふたりで生きていかなければならない。ティモはもう戻っては来ないからな」
「うん」

 アンジェとふたりで生きていくことに納得し、成長したらティモに会いに行けばいいと言ってくれる。ひとりのクルトとして、双子の片割れのような気持ちではなくなった時、きっとティモは違って見えるはずだって。

「うん。僕はどこか大人になってなかったんだ。僕の弱い部分をアンジェとティモに助けてもらってた。それが半分なくなって、あれがきっかけで表に出ただけなんだと感じる」
「ああ、そうだな」

 僕は襲われたことばかりに目がいってたけど、そこが問題じゃなかったんだ。依存しきってた僕の心が問題だった。たぶんティモも。僕らは前に進まなくてはならない。ふたりでぬるま湯に浸かってちゃダメなんだ。

「はあ……もういい歳なのにこんな……なんて残念なんだろう僕は」
「いいじゃないか。完璧な人より魅力的だ」
「そう?」

 そうだよと、アンジェは優しい笑顔を僕に向けてくれる。

「弱い部分のないやつはいない。俺は見たことないよ」
「うん。ありがとう」

 少しスッキリした。長い間理由が分からなかったけど、自分の弱さでなにを教わっても響かなかったんだ。自分の穴は自分で埋めないといけなかったんだなあ。アンジェはそれを手伝ってくれるだけで、アンジェを穴に詰め込むのは違う。自立した自分を愛してもらうんだ。
 無理やりアンジェに抱いてもらってよかった。ショック療法は成功だね。





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