男娼からの成り上がり 〜溺愛されて流されて それでも僕は前を向く〜

琴音

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三章 自分を知ること

8.話し合いは続く

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 腕に指が食い込んで痛い。どんな握力だよ。
 僕は父上が興奮すればするほど冷静になった。あ~あ、こんな自分が本当に嫌い。こんなに愛してくれる父になんの不満もない。けど母は……ムリ。

「父上落ち着いて。僕はあなたが好きです。父と思ってますよ」
「なら!俺たちを!」

 いやいや、それとコレは違う。

「母に関しては相当時間があれば……僕が死ぬ頃に許せればいいかなってくらいには、嫌いだし憎いから許せません」
「ゔっ」

 僕が見つめ続けてると、ズルズルと腕が離れ俯いた。あー痛かった。肩をさすった。

「あの時の絶望は心の奥底に沈めたつもりでした。ですが母が許せないって気持ちに先程気が付きました。未だに引きずってるとは僕もびっくり」
「ああ…そ、そうか……」

 呆然と僕を見つめる。もう涙でぐちょぐょだよ。色男が台無しだね。僕は胸のポケットからハンカチを出して、目元を拭いてあげた。

「自分でする。ズビッ」
「はい」

 ハンカチを渡すと、目元を拭いて、ズズッて鼻をかんだ……まあいい。

「父上は僕をいい子だと思いすぎです。家を出ての五年は、ひねくれるのには充分な時間なんですよ。アセベドを父と信じて生きてもいるんです。いい子な訳ないでしょう」

 まあそうかとボソボソ。
 俺も領主だしこの古い家の者だ。そこそこはなって。
 当たり前だ。これだけの家を支えるのに清廉潔白だけじゃやれはしない。不正をしないだけ偉いよ。

「もう本当にお好きになさいませ。僕は従いますから。多少母とギクシャクしても見ないふりをして下さい」
「いやだ!いや……すまん、分かった」

 ふっかいため息。諦めたため息だね。

「お前はそれで本当にいいのか。母の言い訳は聞かないのか」

 静かな声で聞いてくる。脱力して力なくというかね。

「聞きません。聞いても僕は変わりません。過去の不幸がなくなる訳じゃないですから。それに聞かなくても想像つきます」

 母はごめんなさいって泣いて許してって。ああするしかなかったんだって。兄は後継ぎに決まってたから、あれを守らなくてはならなかったんだ。お前はモートン家の子ではないしって。ふん、そんな言葉はいらない。余計憎くなると、このまんま父上に言った。

「言いそうっていうか言ってる…な。見舞いに行くとそんなだ。お前は人をよく見てるな」

 そうだねぇ昔からだよ。

「僕子供の頃から人の笑顔が好きで、喜ばせるのが好きだったんです。僕に向ける笑顔が嬉しくて。だから喜んで欲しくて動いちゃう。お見舞いには、母の好きな桔梗を持って行ったくらいにはね」
「ふーん。そうか」

 落ち着いたのか微笑んで僕を見る。なんだよ。

「やっぱりいい子だ」
「はあ、話し聞いてます?」
「聞いてるよ。俺もそう。民の嬉しそうな顔は大好きだ。息子もね」
「そうですか」

 まあ、自分の子がいい子であって欲しいのは理解は出来る。

「もう寝ようぜ。朝までそんなに時間ない。ほらベッド行くぞ」
 
 立ち上がって僕の腕を取った。なにしてんの?

「父上はご自分の部屋に帰って下さい」
「やだよ。お前と寝る」
「いや、僕子供じゃないし」
「いいから!」

 ズルズル引きずられてベッドにぶん投げられた。なんでこんなに力あるんだよ!すると布団はいでゴソゴソと入って、僕にも布団掛けてくれた。

「いやあ、今更だけど息子と寝るとかいいな」
「はあ、楽しいですか?」
「楽しいよ。灯り消すぞ」
「マジで帰らないの?」
「ああ」

 フッと灯りが消えて、カーテンからの月明かりが漏れるだけになった。

「もう……」
「人と寝るの久しぶりだ。いいなあ」
「夜伽がいるでしょ」
「ん?いないよ」

 え……ちんこ使わないの?奥様亡くなってだいぶ経つよね。嘘だあ。

「あの、親に聞くものではないですが、下半身は暴れませんか」

 ふふっと声だけが隣からした。

「そんなもの、自分か風呂でメイドに抜いてもらえば事足りる」
「……それで済むの?」
「済む……というか慣れたんだな。ひとりにさ」

 へえ。僕の親とは思えないね。僕そんな禁欲したら死ぬよ。ちんこ爆発する。

「若い時はまあな。だけどミケーレがいなくなってからは、そんな気持ちもなくなった」

 静かな語り口で、本当にもうどうでもいいように聞こえた。

「そんなもんですか。僕はそんなもんと思えない人ばかり見てきましたからね。不思議に感じます」

 仕事の出来るヤツは、夜も強い者が多いのは確かだよ。でもなって。

「俺は夜伽も愛妾も欲しいとは思わん。これは昔からだ。好きな人だからしたいだけ」

 うわっこの人やっぱり愛情深いタイプだね。こんな人は物語の中だけかと思ってたよ。ほえぇ珍獣発見だね。

「今は僕もそうですが、以前は……」
「あはは!盛ってる時はそんなもんだ。俺はフィデルがいたからな。あれと早くから番になっていたんだよ。あれが成人後すぐに抱いた。だからだ」

 ほほう。セックスには興味津々ではあったと。そりゃそうか。健全なノルンならね。

「手は早かったんですね」
「ああ、フィデルが成人するの今か今かと待ってたくらいだ。アンだと信じてな。その少し前に手ほどきで夜伽といたしたのみだ」
「ああ」

 成人後貴族のノルンは指導がある。相手を傷つけないようにね。講義と実地練習だ。それで兄様はおかしくなったんだ。自分がはっきりアンと分かってね。僕はもちろんしてない。きちんとしたのは娼館でだ。
 だけど、僕は年上の人を食ってたから教えて貰ってた。ちんこの使い方、相手のお尻の解し方とか、気持ちいいとことか教わってね。

「父上」
「うん?」
「撤回します。最後までいさせて下さい……」

 ああって。感情が高まっての言葉だけど叱りもしない。僕の気持ちを理解してくれたのかな。分からないけど。

「たくさん話して遊ぼうな」
「はい」

 ほれ、腕枕してやるって。え……いらない。

「幼い子みたいにしてくれよ。今日だけでいいからさ」

 え~傍から見たら僕は夜伽みたいだよ?いいのかそれでさ。早くしろよって急かすし。

「はあ。なら」

 腕に頭を乗せると反対の腕が回った。いやいやなんか変な気分。

「寝るぞ」
「はい」

 目を閉じると図太い僕はスーッと意識が遠のいた。人の体温好きですぐ眠くなるんだ。
 お店では意識して頑張ってたけど、カミーユとはいたしてない時はすぐ寝ちゃう。彼を胸に入れてると幸せなんだよね。なんて思ってた。ら、すぐに起こされた。

「おはようございます。ナムリス様、キャル様」
「お、おはよ……う」

 寝た気がしない。目を擦り……ねむ。隣では寝こけている父上。起きる気配はない。ガウンの胸がはだけてもう。
 あれ……これヤバいな、すごく鍛えてる。体触るのは流石にあれなんで、腕を掴んでモミモミ。何だこの筋肉は。極太だよ。これはぶん投げられるし、腕が解けない訳だ。

「あふっ何してるんだキャル」
「いやあ、鍛えてるなって思って」

 うぅ……って眠そうに唸りながら鍛えるのは趣味だって。

「俺ね、くわ~っふう」

 腕を上に上げて大きなあくびをした。

「剣術好きでさ。護衛と訓練してるんだ。だからだな。一応自分の身は自分で守るれるようにでもあるがな」
「へえ」

 体を起こして見るかって上を脱いでくれて、ベッドにもたれた。マジで胸の筋肉も腹筋も惚れ惚れする。

「知らない国に乗り込んだりもするだろ。だからな」
「ああ、危険ですね」

 安全とは限らないものね。知らない国なんて文化も人も、考え方すら違うはずたもの。

「調べてはいてもどこにでも悪い者はいる。護衛だけではなく、自分でも出来たほうがいい」
「ええ」

 なら僕も鍛えるか。剣術は僕も好きだ。今も護衛騎士と手合わせはしているし、更に増やすか。うーんと考えていると、肩からガバッとガウンを脱がされた。

「何すんの!」
「おお……お前いい体だな。鍛えてるのか」

 ったくもう。

「ええ。護衛騎士と手合わせはしてます。店の頃も体術と共にしてました」
「あはは、好きなものまで似ているか」
「そうですね」

 なんかなあ。一緒に過ごしてないのに似てんだよね。環境で好きなものが出来るんじゃないんだろう。親子とはこんなものなのかな。
 あれ?でも僕、兄様とも母様とも趣味も好みも似てない。何でだろう。つい、ブツブツ。

「あれらはアンだからだろ」
「そうなのかな」

 アンの人は体を動かすのを好まない人が多い。おしゃべりとかお茶会とか好きだし。

「アンは昔いた女性と似てるんだよ。ふわふわした物やきれいな物が好きだ。宝石なんかもノルンよりも好きな人多いだろ?」
「確かに」

 ぬいぐるみとか、子供が好きそうなのを大人になっても好む。うん、カミーユも寝室にいくつか置いているね。
 宝石やきれいな小物とかも、アンの属性の人がそういった店に押し寄せてるのを見たことがある。
 そんな話しをしていると、ちょうどカミーユがおどおど入って来た。

「おはよキャル」
「おはようカミーユ」

 上半身裸の二人を見て不審げ。そりゃそうだ。

「あの……なんで二人して脱いでるの?まさか!」

 おかしな事考えるな!流石にない!と、ふたりで否定した。

「筋肉の確認だよ。父上がいい体だからなぜなのって聞いてたの」
「なにそれ。脱ぐ必要ある……のかな?」

 疑ってるカミーユに先程の話しを聞かせた。誤解は解けたようだが、怖い事言わないで!

「へえ。お父様の子なんだね。僕は母様に似ているよ。好きなものとかもね」

 ほらなって父上。僕はみんな男は男だから似たもんかと思ってたけど、僕が見てなかったというか、気にしてなかったんだな。

「アンはアンらしさがあるんだよ。因みにカミーユはなぜ騎士になったんだ?」
「それしか仕事を選べなかったからです」

 説明をすると、そっか。そんな制限もあるのかあの国はと、顎を擦った。

「なあ。もし仕事が選べたなら何がしたかった?」
「え?えーっと……」

 うーんとカミーユ考えこんだ。考えたこともないって感じで唸っている。少しすると、

「僕は教育とか教会とか管轄する省に行きたいです。子供の教育とか、孤児をきちんと働けるようにしてあげるんです。夫婦神のお祭りとか司祭と仕切ったり。ぼく子供が好きなんですよ」

 その言葉に父上は自信満々である。

「な?キャル。アンは愛情深く、人を慈しむ心を持つ人が多いんだよ。受け身の考えの人が多いんだ」
「うん。いや、はい」

 モヤモヤしていると、お前はどうだって言われた。いい国だったとしたら何になりたかったのかって。
 あ~僕は二男だから兄様の補佐しか考えてなかったよ。うーん。ふたりでメイドに着替えさせて貰いながら僕はうーん。

「近衛騎士になりたかったかな。やっぱり剣術好きだし、乗馬も好きだ」
「ああいいな。きっと向いてただろう。他も出来そうだがな」

 他愛もない話し。ただの世間話みたいなもんだ。だけど、こんな感じが懐かしい。

「俺は一度自分の部屋に帰る。朝食でな」
「はい」

 父上は寝不足で目の下クマ作りながらも、楽しそうに出て行った。僕も眠いけど昨日言いたい事をある程度言えたからスッキリはしている。父上の気持ちも分かったし。

「キャル様、ご自分のお部屋に行きますか?」
「ああ、戻る」

 二人で手を繋いで隣に戻った。温かなカミーユの手を握ってね。






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