男娼からの成り上がり 〜溺愛されて流されて それでも僕は前を向く〜

琴音

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六章 そして行き着いた

7 錯乱

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 母の死からひと月。ナムリス変化なし。食事も睡眠も薬湯効果で出来るようになったけど、以前の半分も食べられない。そして僕は夜中に仕事するからいつでも眠い。

「キャル…どこ…」
「ここですナムリス」

 ベッドで日中は一緒に寝てることが増えた。そして外には全く出ていないひと月。側近たちは刺激しないようにと、僕をナムリスとふたりきりにしてくれるから静か。
 今はナムリスの仕事をフェルナンが全部しているんだ。彼が代行となり仕切る。

「すまないフェルナン」
「いいえ、お気になさらず。長い期間する訳でもなし。ですよ」

 それよりキャル様の方が辛くありませんかと心配してくれた。

「いや……僕は以前助けてもらったから」
「そうでしたな。旦那様はそれはそれは甲斐甲斐しくあなたを連れ回してね」
「うん。あれはありがたかったよ」

 フィデル様の拒絶を、あなたがそれを補うとは思いませんでしたけどと、ニヤニヤ。

「いや……儀式の延長?で気がついたというか」
「この王族の人には多いので、珍しくもないのですけどね」
「僕がアンでなくてよかったよ。子に業がね」
「それは……まあ仕方ありませんね」

 古いお家は結構あって、公にしてない貴族もいますし、民もだそうだ。

「民も?」
「ええ、あんまり表には出ませんが、結構いるんですよ。女性がいなくなった当時、人口は激減。アンは少なく、見つけ次第城に連れ込んだ。王族は連れてこられたアンとしまくって、彼らが死ぬまで産ませたそうです」
「なんという……浅ましい時代が……」
「動物の本能でしょうね。私はそう思っております」

 そうしていなければ我らは存在していない。この国は今も盛大にその時代のアンたちのために追悼式をやってるんだって。話を戻して、

 今の人々は自分がその流れと知らずに結婚して、不幸なことが起きるのも多い。自分が生き残りの子どもの子孫か、その時代の王族の血が流れているアンからかなど分からない。ただ、特別多い魔力の人は疑わしいから注意してるようだ。

「多いのが死産ですね。次がお腹の中で死んでしまうかな。これは妻側が多大な犠牲が出ます。お腹切りますから」
「うお!マジか!」

 ええと苦笑いでフェルナンは続けた。

「子どもは産まれてくる時に多少の魔力が必要なのはご存知でしょうが、これは母と子の魔力が合わさって出てくるんです。ですから片方がないとお腹にそのままに。死んでますからお腹で腐敗しますね。そして死を知らずに継続してるとその毒で妻が死にます」
「ゔっ……妊娠命がけ……」

 これは通常の妊娠でも起きますから、カミーユ様を大切にねって凄みのあるにっこり。

「はい……肝に銘じます」
「そろそろ旦那様が目覚めたりしませんか?」
「おう!みんな頼むな!」
「はい!」

 いい返事の文官たちの声をあとに、部屋の扉の前に来た。中から怒鳴り声が……ごめん。

「ナムリス!ここにいる!」
「ハァハァ……キャル…俺が寝てる間に外に出ないでくれ……怖いんだ」
「ごめんね。今度からやめるね」
「そうしてくれ」

 ぼんの少しも無理か。ナムリスはフィデルの夢を見る。冷たくなってベッドに横たわる姿が頭から離れないんだ。恐怖で目が覚めるとお前もいない。怖くてなにも分からなくなるんだと震えている。

「ごめんなさい」
「抱いてくれ……」
「うん」

 背中に手を回しゆっくりと魔力を流す。僕はこれに慣れて手を握らなくても出来るようになったんだ。

「ああ……キャルが俺の中にいる……気持ちいい」
「うん」

 僕はキスをする。色んなところにチュッと軽く唇を触れる。そうしてるうちにナムリスは落ち着いてくるんだ。

「ふふっこうしててくれ」
「うん」

 冷たい手が暖かくなり、呼吸も落ち着く。

「お腹すいた」
「え?誰かいるか!」
「はい!」

 と、控えの小部屋から側仕えが出てきたから、食べ物をお願いした。

「ナムリスすぐ来るからね」
「うん…」

 食事が来てスープを口にする。

「飲めるな。気持ち悪くない」
「よかった。でも焦らないでね」
「うん」

 薬湯を飲まなくても吐き戻しはしなくなった。よかった……一歩前進だな。と、思ったが波があって食べれたり食べれなかったり。

 そして二ヶ月目には薬湯はいらなくなり、庭くらいなら出られるようになった。でも手を繋いでないと不安で怖いって。

「久しぶりの外だな」
「ええ」

 体力も落ちて歩くのも大変なんだ。ヒールは無意味と言われたけど、何度か唱えてみた。

「楽にはなるよ。でもすぐ消費するようでな」
「そっか。なら外に出る時は掛けてあげる」
「うん」

 言葉使いはまだ戻らない。ところどころかわいいまんま。手はしっかり指を絡めて繋いでいるけど、震えてるんだよね。本人なりに回復しようと度力してるのが分かって哀しくなるし、クソババァと悪態も付きたくなる。

「ベンチに座ろう」
「うん」

 噴水近くのベンチ座り、小鳥のさえずりや風の音を聞く。最近陽の光を見てなかったから目が少し痛い。

「キャルすまない」
「なにが?」
「こんなでさ」
「僕の時もしてくれたでしょ?お互い様だよ」

 いいやと。親と子は違うと。

「僕は恋人であるんだよ。甘えてよ」
「ふふっそうだったな」

 母に気持ちが行き過ぎて、僕を息子としか認識出来てないのかもしれない。これ……ちょっと寂しい。

「ナムリス」
「なんだ?」
「こっち向いて」

 ゆっくりこちらを向いたから、チュッと唇にしてみた。

「ふふっキャルどういうつもりだ?」
「愛しい人にキスしちゃダメ?」
「ああ……キャル……俺の愛しい……」

 僕に抱きついて愛してるよって。息子としても恋人としても愛してると、嬉しい。でもすぐ忘れるのも分かってる。

「外疲れたな。眠い」
「ヒール!じゃあ部屋に帰ろう」
「うん」

 部屋に戻ると疲れ果てたと言わんばかりにすぐに寝息を立てる。このところ眠ってばかりなんだ。起きる時間もまばらで、無理やり起こして食事させてるんだ。

「先生これはなに?」
「治りかけに入ってるんです。体が寝てなかった時の時間を取り戻そうとしてると思われます」
「ふーん。これいつまで?」
「さあ、人によりですな」

 そんなこんなで三ヶ月目。相当元気にはなった。食事も取れるし、散歩は軽々。だけど、ライリーにも会いたくない、執務室にも行きたがらない。

「人と会うのイヤ?」
「ああ、なんか気が進まない」
「そう……」

 食堂にも行けるけど、かなり人を減らせっていうし、仕事はフェルナンに持ってこさせてサインの必要なものだけにする。そうそう!お風呂にも入れるようになったんだ。ずっとウォッシルですませてたからね。

「気持ちいい……はあ…」
「そろそろ体を流そう」
「ああ」

 メイトも側仕えも嫌だというから僕が全部している。まあ、昔取った杵柄で特に問題はない。

「流しますよ」
「ああ」

 体を石けんで洗いシャンプーして、香油をつける。おお!やはり美しいなナムリス。痩せてもいい男だ。

「ごめんな。まだ勃たないんだ」
「ご、ごめんなさい!僕が悪いんだよ」

 いい男だと思ったら勃起してしまって……

「性欲が戻らないんだ」
「気にしないで!」

 僕は何もなかったことにして、サクサクと洗ってお風呂を出て、体を拭く。髪も魔法で乾かして寝巻きを着せる。彼のちんこは萎えたまんま……これ治るの?僕が不安になってきた。お酒は厳禁と言われてるから、お水を飲んでベッドに入る。このところの手順だ。

「キャル」
「なに?」
「だいぶいいんだが、ふと……この時間になるとフィデルの声がするんだ。呼ばれてるような」
「気のせいだよ」
「分かってるんだ。だけど……」

 やべえ。これを侍医が言ってたんだ。

「明かりを消すね」
「うん」

 ナムリスの寝息が聞こえてから全ての扉、窓に防壁を張った。外に待機してもらっている魔法使いにお願いしたんだ。僕のじゃ破られる可能性があるからね。これならナムリスは突破出来ない強力なものだ。食事の時間まで解除しないように毎晩ね。

 そして朝。隣にいねえ!

 僕は飛び起きて居間に行くと窓を叩き割ろうとし椅子を持ち上げ頭上注意に。

「ナムリスやめて!」

そのまま窓に打ち付ける。何度も何度も。

「ハァハァ……あ…フィデル……いま…」

 そのまま続行!聞こえてないな!僕はナムリスを羽交い締めにしたが、こんなに痩せたのにどこからと思う力で吹き飛ばされた。

「ナムリスやめて!ナムリス!!お願いだよ!」

 音に気がついた護衛騎士が入口から入って来てナムリスを止めた。ヘナヘナと座り込んだ。

「キャル様お怪我は?」
「僕は大丈夫だ。ナムリスは?」
「意識が曖昧ですね……」

 騎士に押さえつけられているナムリスに駆け寄った。

「フィデル……どこだ……」

 これは不味い!僕は抱きついて魔力を流した。いつもより少し多めに。

「フィデル……今行く…フィデル……」
「クソッ……っ」

 ゆっくり一割増で流し続けた。

「フィデル……あっどこへ行くんだよ………ん?キャルなにしてんの?」
「なにしてんのじゃない!!うわーん!」

 僕は大きく振りかぶって引っ叩いてしまった。

「痛い……」

 騎士はナムリスが落ち着いたのを確認すると部屋を出て行った。入れ違いに侍医が。

「よかった……旦那様……」

 ナムリスを見ると床にへたり込んだ。

「俺なにしてたの?」
「窓に椅子ぶつけて割ろうとしてたの!」
「え……マジで?」
「マジで!!死んじゃうかと思った!わーん」

 記憶にないな……でもごめんって。

「クソババァはどうでもいいだろ!僕を見てくれよ!僕を見てえええ!!うわーん!」
「ごめんキャル……ごめんね」

 僕をずっと撫でてくれていた。よかった……本当によかった。クソババァ、僕がそっちに行ったら二度殺してやる!覚悟しろ!
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