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前編 ユルバスカル王国編
22 タヌキの家は今日だけはイヤ
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今日はすでに城に戻るには遅く、麓の宿屋に宿泊になった。別荘は遠くあいつのいるタヌキの屋敷はイヤとわがまま言ったら許してくれてね。
「ティナ。あのな……」
「申し訳ありません」
「ふう……」
何か言われそうなのを被せて謝罪した。するとみんな叱るなよくやったのだから。俺たちが動く暇なく全部やったし、最後がまあ……あれだが。でも俺たちがいつも思ってることを口にしただけ。悪くないよってセフィロト様たち。
「いいや。妃殿下になるのにこれではダメだ。感情のコントロールが出来ないのは不味いんだよ」
「はい……」
いやいや殿下?ティナは頑張ってたんだ。それを俺たちはよく知ってる。彼らは彼女を最初は嫌ってた。それを姫様と慕うくらい頑張ったんだよ?少しくらい大目に見てあげてよと、ふたりは庇ってくれた。俺たちは叱るつもりなどないよって。
「それではティナのためにならない」
「でも……」
「でもじゃない。この先気に入らない貴族を殴るのか?感情が昂ぶったと殴るのか?嫌いなら殴ってもいいのか?」
「それは……」
サイラスの言う通り過ぎてなにも言えない。命を軽んじたあの術者の言葉に切れたのは私。自分の領地でも、似たようなことはやらかしてたから言い訳などない。その時もおじいちゃん家臣に叱られてたから。
「みんなありがとう。私が悪かったのです」
「理解しているのか?」
「はい」
ティナはもう子爵家の領主ではないのだ。俺の妻になる。王族は些細なことには感情を大きく動かしてはならない。嫌味を言われようが、ムカつこうが笑顔で耐えるのが王族だ。君は自分の領地でもあんなだったのか?と問われたけど、そんなことはしてません。うちの民は我が一族を慕ってましたから。嘘です。たまに切れて殴ってました。でも反省して以後してませんと話した。
「反省してやらなくなってたんだろ?なんでまた同じことを?」
「……彼らの命を軽んじた発言だったからです」
はあってため息が聞こえた。私は誰の顔も見れず下を向いていた。サイラスの隣にも座る気になれず、向かいに座ったくらい不味いことをしたと思っている。でも間違ってはいないとも思っている。
「君は彼らに肩入れし過ぎている。俺も気持ち的にはそうだが、感情を爆発させて通る法案などない。怒りに喚く者の言葉など誰も聞いてはくれないんだよ」
「はい……」
「君にここを任せたのは俺の仕事を見てもらうため。彼らの不遇を知り解放する法案を通すこと。今は君の領地でもあるから正しく運営するために続けさせてた」
「はい……」
民が好きなのは分かるが、君はフランシス様になりたいのか?と問われた。それは違う。英雄になりたい訳じゃない。彼らを平民と同じように賃金を手にし、職業の自由と子どもたちを奴隷身分にしたくなかっただけ。自由に生活することを差し出したかっただけなの。
「ならば一歩引いて付き合え。君の接し方は近すぎるんだ。彼らは待つと言ってくれるが、本当に解放が実現できる日がいつになるかも不明。期待が大きすぎればいつか君に敵意を持つ可能性もある。そこを考えろ」
「すみませんでした」
やったことは悪いことばかりではないが、彼らのためにも君のためにも近すぎることはよくない。平民とは違い人によっては奴隷商を恨み、いつかこの国を恨むようになる。ことが起きた時真っ先に敵になることもある。そういった影の部分にも目をやりなさいと。
「おっしゃる通りです。私は……いえ、言い訳はやめます。奴隷のみんなや民との付き合いを再考いたします」
「そうしてくれ」
ならめしーっとカール様が声をあげる。俺腹減ったよって。私は食欲ない。
「みなさんで行ってきて。私は少し部屋で反省します」
「食べないと持たんぞ」
「ありがとうセフィロト様。一食くらい抜いても死にません」
ならばいい。サイラスは行くぞと三人を連れて出て行った。私も自分部屋に行こう。は~あ。立ち上がり部屋を出ると、下に降りる階段の手前に腕組みのサイラス。柵に寄りかかり睨んでいる。いや、自分の失敗でそう見えるだけかも。
「殿下また明日。お疲れ様でした」
「来ないのか?」
「はい。食欲ないですから」
階下からはにぎやかな人々の声がする。楽しそうに笑う人や、給仕の女性の男性を煽る甘い声。そして食べ物やお酒の匂い。今はそんな環境にいたくない。
「すみません。失礼します」
私は一礼して取ってもらった部屋のカギを開ける。カチリと音がしてノブに手を掛けると、左の腕を掴まれた。
「ティナ」
「はい?」
見上げたけど暗くて表情は分からない。
「君は……なんでもない。また明日な」
「はい」
ノブを回し中に入る。何の変哲もない部屋。ベッドと机と椅子。応接セットすらない安宿。急だったから空いてなくてね。でもこのくらいで十分かな。お風呂はあるのかな?とあちこち開けたけど……トイレと人ひとり立てるだけのシャワー室っての?それしかない。浴槽はなかった。
「いや、明日帰ったら入ろ」
机には小さな鏡があって髪をほどいた。クシは置いてあったけど一部おれてるか。まあいいそれで梳く。土埃か髪がギシギシする。イタッ引っかかる。
「もういい。ガウンくらいあるかな?」
クローゼットを開けるとタオルとうっすいタオル生地のガウン。寒そうな……まあいい。それに着替えてドレスをハンガーにかけた。そこに吊るされていた毛の抜けたブラシでドレスを撫でる。
「ゲホッ地面に座り込んだからなあ」
丁寧に撫でて吊るした。殿下の作ってくれた私のお気に入りのグリーンのドレス。着てくるんじゃなかった。そして洗面台で……石けんしかないか。それで顔を洗い流し、タオルでフキフキ。顔から血がでそう。硬くて顔が痛いぞ?使い古しててお日様でバリバリになってるのかな。
「ふふっ普段どれだけ贅沢をさせてもらってるか気がつくわね」
「だろ?」
え?と振り返るとサイラス。カギ掛けてなかった?
「うん開いてた。物騒なことすんな」
「すみません。ていうか、あなた入ってきましたよね?」
「食事が要らないと言うから果物はどうかなと思ってさ。ほら」
こんなところ……どこまで優しいんだか。叱った時は離れるものです。それも今は婚約者ではなく、側近としてここにいる。公私は別けましょうねサイラス様とニッコリ。
「君のクソ真面目発動か?俺は聞かない。風呂は?」
「シャワーだけでしたので明日帰ったらにします。タオルが痛いし」
「ならこっちの部屋で風呂に入ればいい」
「いやです」
殿下は机に果物を置いて座れってベッドの縁にふたりで座った。大人ふたりいるだけで狭く感じる部屋。薄暗い魔石の明かりが天井から差している。
「なんですか?私もう寝るのですが?」
「拗ねてるのか?」
「拗ねてません。反省してるんです」
「ふーん」
やはりさっき言いかけたことを伝えるつもりで来たんだと微笑んだ。君は伝えないとあらぬ疑いや、なかったことにするからさって。
「ティナのしたことは……いや、そうじゃない」
「なに?」
「君の正義感の強さを甘く見てた。俺以上に民に寄り添い、奴隷にすら同じ感情を持つ」
「はあ。同じ人ですし、奴隷制度なんてなくなればいいと思ってましたから」
「うん……」
ごめんなって。なにが?ふわっと首に腕が回り一言。あん?
「君が姫様と慕われてたのが……その……」
「その?」
「もやもやした」
「へ?」
「だから過剰に叱責したんだ。ちっさくてごめん」
でも間違ったことは言ってない。不遇な人に過剰な期待は毒になる。それだけは忘れないでって。それは私が見落としていた一面で、これから気をつけようと思ってます。
「サイラス様……サイラスは悪くない。全部私のミスです。これまで上手くいってたのも殿下の地盤故ですから」
「うん……」
「愛されて嬉しいですよ。でも民への気持ちとあなたへの気持ちは違う。民は家族に近い気持ち。彼らには……その…情欲は持ちませんから」
「うん」
疲れてるけど抱きたいと言う。アハハッいや。
「お風呂入ってないから」
「俺は気にしない」
「私がするわ!」
「なにがいや?臭くないし。俺が臭いか?」
「殿下はデリカシーを城に置いてきましたか?」
君ねえって。ふふっならキスだけって。
「軽くですよ。したくなるようにキスしないで」
「うん」
チュッチュッとしてねろんと舌を差し込む。言ってるこことやってることが違うぞ。
「殿下…はふっ私……キス好きで……すぐエッチな気ぶ……ンンッ……」
「なれよ。シャワーはあるんだから」
「イヤだ……あぁ……」
これ以上は不味いと押し退けた。ハァハァやばい。頭が蕩けそうでこれ以上されてたらこちらが押し倒しかねない。
「俺の開発の賜物だな」
「ええそうですね。エロい体になりましたよホント」
「いやか?」
「……いいえ」
せっかく持ってきてくれたからと果物を食べた。この季節だからりんごやみかんだけど、疲れてる体には美味しく感じた。
「食べたろ?抱かせて」
「イヤです。週末なら考えます……あ、無理か」
「なんで?」
「月のものですよ」
「なら今。お詫びも兼ねて」
「お詫びになりません!それに……私声大きいかも……だし、ここ壁薄そうだもん」
あーでもないこーでもないと理由をつけて抱こうとするから全て却下。
「女は気分もあるのです。ステキなシチュエーションも大切。ここは?」
「リングヴァの安宿」
「でしょう?別に安宿が悪い訳ではありませんが、お風呂も入ってないし気分が乗りません」
頑固だなあって笑う。俺はここまで誰かに拒否されたこといのにって。
「それは遊びの相手だからです。私はこれから妻になりますからね」
「確かに。初めが肝心と言う理由か?」
「はい」
ふふっと小さく微笑みアハハッと声を上げて笑った。君はどれだけの引き出しを持ってるんだ?面白すぎだ。俺はなんていい人を見つけたんだ。嬉しいよって。
「君となら人生は退屈しなさそうだ。気も合って楽しませてくれる。神はいたんだな」
「そう思っていただけるのは嬉しいですよ」
「ああ。ティナは俺だけの姫だ。それは忘れるな」
「はい」
なら俺は食堂に戻るが、部屋のカギは閉めろって。締めますよあなたが出たらきちんとね。またなと出ていってカチリとつまみを捻る。ノブを握ってガチャガチャよし。さて寝よ。
「ティナ。あのな……」
「申し訳ありません」
「ふう……」
何か言われそうなのを被せて謝罪した。するとみんな叱るなよくやったのだから。俺たちが動く暇なく全部やったし、最後がまあ……あれだが。でも俺たちがいつも思ってることを口にしただけ。悪くないよってセフィロト様たち。
「いいや。妃殿下になるのにこれではダメだ。感情のコントロールが出来ないのは不味いんだよ」
「はい……」
いやいや殿下?ティナは頑張ってたんだ。それを俺たちはよく知ってる。彼らは彼女を最初は嫌ってた。それを姫様と慕うくらい頑張ったんだよ?少しくらい大目に見てあげてよと、ふたりは庇ってくれた。俺たちは叱るつもりなどないよって。
「それではティナのためにならない」
「でも……」
「でもじゃない。この先気に入らない貴族を殴るのか?感情が昂ぶったと殴るのか?嫌いなら殴ってもいいのか?」
「それは……」
サイラスの言う通り過ぎてなにも言えない。命を軽んじたあの術者の言葉に切れたのは私。自分の領地でも、似たようなことはやらかしてたから言い訳などない。その時もおじいちゃん家臣に叱られてたから。
「みんなありがとう。私が悪かったのです」
「理解しているのか?」
「はい」
ティナはもう子爵家の領主ではないのだ。俺の妻になる。王族は些細なことには感情を大きく動かしてはならない。嫌味を言われようが、ムカつこうが笑顔で耐えるのが王族だ。君は自分の領地でもあんなだったのか?と問われたけど、そんなことはしてません。うちの民は我が一族を慕ってましたから。嘘です。たまに切れて殴ってました。でも反省して以後してませんと話した。
「反省してやらなくなってたんだろ?なんでまた同じことを?」
「……彼らの命を軽んじた発言だったからです」
はあってため息が聞こえた。私は誰の顔も見れず下を向いていた。サイラスの隣にも座る気になれず、向かいに座ったくらい不味いことをしたと思っている。でも間違ってはいないとも思っている。
「君は彼らに肩入れし過ぎている。俺も気持ち的にはそうだが、感情を爆発させて通る法案などない。怒りに喚く者の言葉など誰も聞いてはくれないんだよ」
「はい……」
「君にここを任せたのは俺の仕事を見てもらうため。彼らの不遇を知り解放する法案を通すこと。今は君の領地でもあるから正しく運営するために続けさせてた」
「はい……」
民が好きなのは分かるが、君はフランシス様になりたいのか?と問われた。それは違う。英雄になりたい訳じゃない。彼らを平民と同じように賃金を手にし、職業の自由と子どもたちを奴隷身分にしたくなかっただけ。自由に生活することを差し出したかっただけなの。
「ならば一歩引いて付き合え。君の接し方は近すぎるんだ。彼らは待つと言ってくれるが、本当に解放が実現できる日がいつになるかも不明。期待が大きすぎればいつか君に敵意を持つ可能性もある。そこを考えろ」
「すみませんでした」
やったことは悪いことばかりではないが、彼らのためにも君のためにも近すぎることはよくない。平民とは違い人によっては奴隷商を恨み、いつかこの国を恨むようになる。ことが起きた時真っ先に敵になることもある。そういった影の部分にも目をやりなさいと。
「おっしゃる通りです。私は……いえ、言い訳はやめます。奴隷のみんなや民との付き合いを再考いたします」
「そうしてくれ」
ならめしーっとカール様が声をあげる。俺腹減ったよって。私は食欲ない。
「みなさんで行ってきて。私は少し部屋で反省します」
「食べないと持たんぞ」
「ありがとうセフィロト様。一食くらい抜いても死にません」
ならばいい。サイラスは行くぞと三人を連れて出て行った。私も自分部屋に行こう。は~あ。立ち上がり部屋を出ると、下に降りる階段の手前に腕組みのサイラス。柵に寄りかかり睨んでいる。いや、自分の失敗でそう見えるだけかも。
「殿下また明日。お疲れ様でした」
「来ないのか?」
「はい。食欲ないですから」
階下からはにぎやかな人々の声がする。楽しそうに笑う人や、給仕の女性の男性を煽る甘い声。そして食べ物やお酒の匂い。今はそんな環境にいたくない。
「すみません。失礼します」
私は一礼して取ってもらった部屋のカギを開ける。カチリと音がしてノブに手を掛けると、左の腕を掴まれた。
「ティナ」
「はい?」
見上げたけど暗くて表情は分からない。
「君は……なんでもない。また明日な」
「はい」
ノブを回し中に入る。何の変哲もない部屋。ベッドと机と椅子。応接セットすらない安宿。急だったから空いてなくてね。でもこのくらいで十分かな。お風呂はあるのかな?とあちこち開けたけど……トイレと人ひとり立てるだけのシャワー室っての?それしかない。浴槽はなかった。
「いや、明日帰ったら入ろ」
机には小さな鏡があって髪をほどいた。クシは置いてあったけど一部おれてるか。まあいいそれで梳く。土埃か髪がギシギシする。イタッ引っかかる。
「もういい。ガウンくらいあるかな?」
クローゼットを開けるとタオルとうっすいタオル生地のガウン。寒そうな……まあいい。それに着替えてドレスをハンガーにかけた。そこに吊るされていた毛の抜けたブラシでドレスを撫でる。
「ゲホッ地面に座り込んだからなあ」
丁寧に撫でて吊るした。殿下の作ってくれた私のお気に入りのグリーンのドレス。着てくるんじゃなかった。そして洗面台で……石けんしかないか。それで顔を洗い流し、タオルでフキフキ。顔から血がでそう。硬くて顔が痛いぞ?使い古しててお日様でバリバリになってるのかな。
「ふふっ普段どれだけ贅沢をさせてもらってるか気がつくわね」
「だろ?」
え?と振り返るとサイラス。カギ掛けてなかった?
「うん開いてた。物騒なことすんな」
「すみません。ていうか、あなた入ってきましたよね?」
「食事が要らないと言うから果物はどうかなと思ってさ。ほら」
こんなところ……どこまで優しいんだか。叱った時は離れるものです。それも今は婚約者ではなく、側近としてここにいる。公私は別けましょうねサイラス様とニッコリ。
「君のクソ真面目発動か?俺は聞かない。風呂は?」
「シャワーだけでしたので明日帰ったらにします。タオルが痛いし」
「ならこっちの部屋で風呂に入ればいい」
「いやです」
殿下は机に果物を置いて座れってベッドの縁にふたりで座った。大人ふたりいるだけで狭く感じる部屋。薄暗い魔石の明かりが天井から差している。
「なんですか?私もう寝るのですが?」
「拗ねてるのか?」
「拗ねてません。反省してるんです」
「ふーん」
やはりさっき言いかけたことを伝えるつもりで来たんだと微笑んだ。君は伝えないとあらぬ疑いや、なかったことにするからさって。
「ティナのしたことは……いや、そうじゃない」
「なに?」
「君の正義感の強さを甘く見てた。俺以上に民に寄り添い、奴隷にすら同じ感情を持つ」
「はあ。同じ人ですし、奴隷制度なんてなくなればいいと思ってましたから」
「うん……」
ごめんなって。なにが?ふわっと首に腕が回り一言。あん?
「君が姫様と慕われてたのが……その……」
「その?」
「もやもやした」
「へ?」
「だから過剰に叱責したんだ。ちっさくてごめん」
でも間違ったことは言ってない。不遇な人に過剰な期待は毒になる。それだけは忘れないでって。それは私が見落としていた一面で、これから気をつけようと思ってます。
「サイラス様……サイラスは悪くない。全部私のミスです。これまで上手くいってたのも殿下の地盤故ですから」
「うん……」
「愛されて嬉しいですよ。でも民への気持ちとあなたへの気持ちは違う。民は家族に近い気持ち。彼らには……その…情欲は持ちませんから」
「うん」
疲れてるけど抱きたいと言う。アハハッいや。
「お風呂入ってないから」
「俺は気にしない」
「私がするわ!」
「なにがいや?臭くないし。俺が臭いか?」
「殿下はデリカシーを城に置いてきましたか?」
君ねえって。ふふっならキスだけって。
「軽くですよ。したくなるようにキスしないで」
「うん」
チュッチュッとしてねろんと舌を差し込む。言ってるこことやってることが違うぞ。
「殿下…はふっ私……キス好きで……すぐエッチな気ぶ……ンンッ……」
「なれよ。シャワーはあるんだから」
「イヤだ……あぁ……」
これ以上は不味いと押し退けた。ハァハァやばい。頭が蕩けそうでこれ以上されてたらこちらが押し倒しかねない。
「俺の開発の賜物だな」
「ええそうですね。エロい体になりましたよホント」
「いやか?」
「……いいえ」
せっかく持ってきてくれたからと果物を食べた。この季節だからりんごやみかんだけど、疲れてる体には美味しく感じた。
「食べたろ?抱かせて」
「イヤです。週末なら考えます……あ、無理か」
「なんで?」
「月のものですよ」
「なら今。お詫びも兼ねて」
「お詫びになりません!それに……私声大きいかも……だし、ここ壁薄そうだもん」
あーでもないこーでもないと理由をつけて抱こうとするから全て却下。
「女は気分もあるのです。ステキなシチュエーションも大切。ここは?」
「リングヴァの安宿」
「でしょう?別に安宿が悪い訳ではありませんが、お風呂も入ってないし気分が乗りません」
頑固だなあって笑う。俺はここまで誰かに拒否されたこといのにって。
「それは遊びの相手だからです。私はこれから妻になりますからね」
「確かに。初めが肝心と言う理由か?」
「はい」
ふふっと小さく微笑みアハハッと声を上げて笑った。君はどれだけの引き出しを持ってるんだ?面白すぎだ。俺はなんていい人を見つけたんだ。嬉しいよって。
「君となら人生は退屈しなさそうだ。気も合って楽しませてくれる。神はいたんだな」
「そう思っていただけるのは嬉しいですよ」
「ああ。ティナは俺だけの姫だ。それは忘れるな」
「はい」
なら俺は食堂に戻るが、部屋のカギは閉めろって。締めますよあなたが出たらきちんとね。またなと出ていってカチリとつまみを捻る。ノブを握ってガチャガチャよし。さて寝よ。
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