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前編 ユルバスカル王国編
37 会えたけど
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焦りと心配で暇を見つけてはウロウロ。アイリーン様のところに行ったりもした。なにか知ってるかと思って。
「わたくしも会えてないの」
「やはり」
「ティナの気持ちも分かりますが、わたくしたちも会えないからなにも知らないのです」
「はい……」
でもそのうちは以外と早く来た。
「うふふっ母様が心配性なだけですわ。それと何年もこの城を離れてましたから、お部屋を整えたり、衣装を誂えたりですのよ」
「よかったです」
他国に嫁いだからドレスのデザインも流行りが違うし文化も違う。嫁入り前のは使えないし(流行りが去ったり色々)だからだそう。はあ……と肩が落ちた。なら会わせてくれても……
「嫌ですわティナ。わたくしは強いのですよ。こんなところはね」
「そうですか。私はかなり心配してました。失礼ですが、夜這いされたりもあるかと不安で不安で」
おほほとパンっと扇子を開き口元を隠しながら大笑い。
「させるはずないでしょう?父様がわたくしの周りを全部を変えて、不寝番と常にメイドと寝てましたから」
危険かもとメイドさんは簡易のベッドを持ち込み、一日中側にいたそうだ。それはよかった。ライラ様はやれることは全部実行してたんだって。
「わたくしあの辛かった初夜の恨みは忘れません。どれだけの衝撃と哀しみがあったか。最後にみんなの前でぶちまけて来ましたの。そしたらもうね」
「おほほ……それはまた」
王子は見る影もないそうだ。いい気味。あちらは側室を実家に返し、妻とは離縁させられ宮中は騒然としているそう。文官や他の貴族はこんなことになっているとはつゆ知らず、話題の中心人物となった。噂はどこから漏れるかは分からないもんね。
「それにね。噂が広がった後は姫様辛かったですねって気遣ってくれる人までいたのよ」
「そうでしょうとも」
そして無駄遣いで買ったものは全部現金化。そしてそのお金は置いてきたそうだ。嫌がらせでしてただけで欲しかったものではないから。
「本当に欲しいものは自分で買ってましたからね。それは持ち帰りました」
「そのネックレスとか?」
ペンダントトップに変に触れてるから聞いてみた。そしたらそうでしょうと幸せそうに微笑む。
「これステキでしょう?あちらにお気に入りの職人がおりましたの。彼女の繊細なデザインが好きでした」
私とふたりだけのお茶会だからと、遊び心のあるネコのモチーフの宝石を付けていた。どこか華やかなフリルたっぷりの貴婦人のドレスと不釣り合いな感じがしてたのは、そういうことか。
「ティナに見せたかったのです。わたくしかわいい物が好きですのよ。でもこれに合うドレスは年齢的に着るのは憚られる。でもたまに付けたくなるの」
「分かります。似合わなくなってもしまいっぱなしはモヤモヤしますもの」
「ええ」
そんな楽しいお茶会で再会を祝った。笑顔が眩しく美しかったけど、彼女の話は暗い部分を話さなかっただけと思っている。この会えなかった時間は気持ちを立て直すためだったと想像した。強いお方なのは本当と思うけど尊敬しかない。私ならあの結婚生活は耐えられないもん。私の感想は含めないで夕食の時にサイラスに報告した。
「それはよかった。ライラに関して言いたいことを言うやつが出るだろう。支えになってやってくれ」
「うん」
俺は君がお茶会してる間に王たちと話していたと言う。まあ、あちらの不手際のくせにこちらを責める発言多数。調整してくれたあちらの国に駐留している大使はぐったりしたそうだ。
「そちらがその条件でもいいと言ったくせにって始終したそうだ。言ってねえのに」
「だまし討ちでしょう?よくそんなこと言えましたね」
「本当にな」
容姿のことを言うのは憚られるけど、あの見た目でこの所業、なおかつ性格も悪いときたら取り柄がないでしょう。ねえサイラス?と見つめるとうーんと唸る。え……その反応なに?
「まあなあ。男から見れば見た目はそれほどか?とも思うが、そうかなと思うところはある」
「はい?」
そこからは私はムカついたので食事の手を止めて反撃。
「サイラス様?女性はね、自分だけの王子を待っている夢見がちなところがあるの。見た目は自分がステキと思える美醜であれば確かに問わない。なのに中身も悪いとはこれいかに」
「それは……好きな人がいればそうなるだろ」
「ああ?」
好きな人がいれば対応は雑でも構わない?雑どころか放置しても構わないと?なにをおっしゃると私はさらにヒートアップ。確かにそうだろうけども。だがッ行為をしなくとも他もだけどそれなりの対応があるでしょう?仮にも他国からお嫁に来てくれたんですよ?悪かったと言う態度も必要でしょ?君も愛人なり作って表面だけ仲良くしようとか、最悪そんな提案もあっていいはず。せめて普段も友だちくらいの付き合いっていうのかな、気遣いはあって当然でしょう?それすら禁じられ、私的エリアから出ることもままならないなど、あってはならないと強く訴えた。
「そうだな。王子をかばう訳ではないが薬学の研究バカで、それを尊重してくれる側室だったそうだ。彼女も才能があり街の大店の娘でな。仲はよかったそうだよ」
だったらなおのことだ。私はプリプリしながら、
「初めからその方と結婚すればよかったのです。貴族の養女にしてまで側室にしたのですから」
そうなんだがと頭を掻く。あちらには今期姫がいない。王子ばかりで政略的に使える駒がない。わが国との今後を見据えた結婚であったのは事実で、このことで良い感じにぶっ壊れたと。知らん!そんなのは知らん!ライラ様のほうが大事だもんと強く言ったけど、サイラスの反応は悪い。
「そう言えないのも国だ。だから難航したんだろう。君も大臣の側近だったのなら分かるだろ」
「そ、それは……」
近い割にあまり王族同士の付き合いがなかったのは確か。戦後の混乱を多少助けてくれ、安い小麦やもろもろ入れてくれた。民の口を拭えたのも本当で……でもね。でもなの。
「貴族や王族の姫に、王様や夫に異を唱えることなんて出来ないのは分かってるの。それでも……それでも少しの気遣いをして欲しいと願うのはいけないこと?」
う~んと唸る。いつもなら「姫の言うとおりだな」と共感してくれるのに、今日は歯切れが悪い。なんでだろう。
「あー……俺も王子が悪いと思ってる。だが、どちらの王から見ても姫とは政治の駒でしかないんだ。それに愛しい人がいると男はなあ」
「ふーん」
壊れた関係は個人的なことと処理にはなったけど、ゆるゆるとただ近くにある国に戻るのだろう。民の交流は続いても国としてはもう。サイラスも簡単に修復は難しかろうって。
それはそうかな。あちらは農業が主産業でそれを売って生活する国。小麦が取れない国に売るのが仕事とする国。でもね。
「あーあ。世は女性の進出で活気づいてるなんて言ってもベースは殿方ほ社会のまま。民も貴族も王族すら娘を大切にはしてくれないのね」
「それはここ数十年の流れでまだ発展途中だから仕方ないだろ。そういった文化は簡単には変わらないんだよ」
我が国も戦後のゴタゴタで社会進出してる女性は増えた。でもね、職業も偏ってるし赤ちゃん出来ると辞めさせられる。そして復帰の壁が高くて高くて登ることすら出来ない人も多い。昔の考え方が親世代にあって、赤ちゃん出来たのに働くの?なんで?お金あるしなんてね。妻が働く意味などどこにあると家から出してもらえなくなるの。あるの!世界を知った女性に家に引きこもれは辛いの!(当然その方がいい人は別)
食事が済み部屋に戻った。お風呂入ったり寝間着に着替えても、先ほどの話しが頭から離れなかった。
「姫様。私もそれは考えます。この戦の後お嫁に行った姫やお嬢様たちが全員幸せではないのですよ。身分やお金と引き換えなんて、足元見られたおうちもあるのです」
「それは知ってます」
姫様に言えないようなことを私はたくさん耳にします。考え方を切り替えられる女性はいいのですが、蝶よ花よと育てられたお嬢様たちにはそんな強さはない。泣き暮らしている女性も多いのですよって。それは……
「今この時、ライラ様と同じお嬢様はたくさんいるのです。家のためと耐えています」
「うん……」
民はもっとですよ。子を産めとおじいさんに近い方と結婚させられた人もいる。好きならいいですが、三十も四十も離れた殿方を愛せるか。私は無理ですねって。うん。私もサイラスと出会わなければそうなっていた可能性は否定出来ない。
「綺麗ごとで世の中回らないのです。女は今でも苦しい立場ですから。ライラ様は王族だったから救い出せたのですよ」
「うん」
そのとおり過ぎて言葉はない。しょせん私も貴族なんだ、甘っちょろい考え方をするだけの……ため息しか出ない。
「でもね姫様。王族は性善説も大切かなと私は思います。どの国も王様の考え方が国民に広まりますから。世代が代わる頃、この女を虐げることがなくなるように気持ちを持ち続けましょう」
「うん」
王族の姫が諦めたらこのままになる。これが当たり前と意識は変わらないのですよと。ライラ様はいいきっかけになるはず。姫様たちの活躍にかかっていますからねって。え……それは重たい。
「まあまあゆっくりですね。殿下お待ちですよ」
「ああはい」
私は悶々とした気持ちで内扉に手を掛けた。
「わたくしも会えてないの」
「やはり」
「ティナの気持ちも分かりますが、わたくしたちも会えないからなにも知らないのです」
「はい……」
でもそのうちは以外と早く来た。
「うふふっ母様が心配性なだけですわ。それと何年もこの城を離れてましたから、お部屋を整えたり、衣装を誂えたりですのよ」
「よかったです」
他国に嫁いだからドレスのデザインも流行りが違うし文化も違う。嫁入り前のは使えないし(流行りが去ったり色々)だからだそう。はあ……と肩が落ちた。なら会わせてくれても……
「嫌ですわティナ。わたくしは強いのですよ。こんなところはね」
「そうですか。私はかなり心配してました。失礼ですが、夜這いされたりもあるかと不安で不安で」
おほほとパンっと扇子を開き口元を隠しながら大笑い。
「させるはずないでしょう?父様がわたくしの周りを全部を変えて、不寝番と常にメイドと寝てましたから」
危険かもとメイドさんは簡易のベッドを持ち込み、一日中側にいたそうだ。それはよかった。ライラ様はやれることは全部実行してたんだって。
「わたくしあの辛かった初夜の恨みは忘れません。どれだけの衝撃と哀しみがあったか。最後にみんなの前でぶちまけて来ましたの。そしたらもうね」
「おほほ……それはまた」
王子は見る影もないそうだ。いい気味。あちらは側室を実家に返し、妻とは離縁させられ宮中は騒然としているそう。文官や他の貴族はこんなことになっているとはつゆ知らず、話題の中心人物となった。噂はどこから漏れるかは分からないもんね。
「それにね。噂が広がった後は姫様辛かったですねって気遣ってくれる人までいたのよ」
「そうでしょうとも」
そして無駄遣いで買ったものは全部現金化。そしてそのお金は置いてきたそうだ。嫌がらせでしてただけで欲しかったものではないから。
「本当に欲しいものは自分で買ってましたからね。それは持ち帰りました」
「そのネックレスとか?」
ペンダントトップに変に触れてるから聞いてみた。そしたらそうでしょうと幸せそうに微笑む。
「これステキでしょう?あちらにお気に入りの職人がおりましたの。彼女の繊細なデザインが好きでした」
私とふたりだけのお茶会だからと、遊び心のあるネコのモチーフの宝石を付けていた。どこか華やかなフリルたっぷりの貴婦人のドレスと不釣り合いな感じがしてたのは、そういうことか。
「ティナに見せたかったのです。わたくしかわいい物が好きですのよ。でもこれに合うドレスは年齢的に着るのは憚られる。でもたまに付けたくなるの」
「分かります。似合わなくなってもしまいっぱなしはモヤモヤしますもの」
「ええ」
そんな楽しいお茶会で再会を祝った。笑顔が眩しく美しかったけど、彼女の話は暗い部分を話さなかっただけと思っている。この会えなかった時間は気持ちを立て直すためだったと想像した。強いお方なのは本当と思うけど尊敬しかない。私ならあの結婚生活は耐えられないもん。私の感想は含めないで夕食の時にサイラスに報告した。
「それはよかった。ライラに関して言いたいことを言うやつが出るだろう。支えになってやってくれ」
「うん」
俺は君がお茶会してる間に王たちと話していたと言う。まあ、あちらの不手際のくせにこちらを責める発言多数。調整してくれたあちらの国に駐留している大使はぐったりしたそうだ。
「そちらがその条件でもいいと言ったくせにって始終したそうだ。言ってねえのに」
「だまし討ちでしょう?よくそんなこと言えましたね」
「本当にな」
容姿のことを言うのは憚られるけど、あの見た目でこの所業、なおかつ性格も悪いときたら取り柄がないでしょう。ねえサイラス?と見つめるとうーんと唸る。え……その反応なに?
「まあなあ。男から見れば見た目はそれほどか?とも思うが、そうかなと思うところはある」
「はい?」
そこからは私はムカついたので食事の手を止めて反撃。
「サイラス様?女性はね、自分だけの王子を待っている夢見がちなところがあるの。見た目は自分がステキと思える美醜であれば確かに問わない。なのに中身も悪いとはこれいかに」
「それは……好きな人がいればそうなるだろ」
「ああ?」
好きな人がいれば対応は雑でも構わない?雑どころか放置しても構わないと?なにをおっしゃると私はさらにヒートアップ。確かにそうだろうけども。だがッ行為をしなくとも他もだけどそれなりの対応があるでしょう?仮にも他国からお嫁に来てくれたんですよ?悪かったと言う態度も必要でしょ?君も愛人なり作って表面だけ仲良くしようとか、最悪そんな提案もあっていいはず。せめて普段も友だちくらいの付き合いっていうのかな、気遣いはあって当然でしょう?それすら禁じられ、私的エリアから出ることもままならないなど、あってはならないと強く訴えた。
「そうだな。王子をかばう訳ではないが薬学の研究バカで、それを尊重してくれる側室だったそうだ。彼女も才能があり街の大店の娘でな。仲はよかったそうだよ」
だったらなおのことだ。私はプリプリしながら、
「初めからその方と結婚すればよかったのです。貴族の養女にしてまで側室にしたのですから」
そうなんだがと頭を掻く。あちらには今期姫がいない。王子ばかりで政略的に使える駒がない。わが国との今後を見据えた結婚であったのは事実で、このことで良い感じにぶっ壊れたと。知らん!そんなのは知らん!ライラ様のほうが大事だもんと強く言ったけど、サイラスの反応は悪い。
「そう言えないのも国だ。だから難航したんだろう。君も大臣の側近だったのなら分かるだろ」
「そ、それは……」
近い割にあまり王族同士の付き合いがなかったのは確か。戦後の混乱を多少助けてくれ、安い小麦やもろもろ入れてくれた。民の口を拭えたのも本当で……でもね。でもなの。
「貴族や王族の姫に、王様や夫に異を唱えることなんて出来ないのは分かってるの。それでも……それでも少しの気遣いをして欲しいと願うのはいけないこと?」
う~んと唸る。いつもなら「姫の言うとおりだな」と共感してくれるのに、今日は歯切れが悪い。なんでだろう。
「あー……俺も王子が悪いと思ってる。だが、どちらの王から見ても姫とは政治の駒でしかないんだ。それに愛しい人がいると男はなあ」
「ふーん」
壊れた関係は個人的なことと処理にはなったけど、ゆるゆるとただ近くにある国に戻るのだろう。民の交流は続いても国としてはもう。サイラスも簡単に修復は難しかろうって。
それはそうかな。あちらは農業が主産業でそれを売って生活する国。小麦が取れない国に売るのが仕事とする国。でもね。
「あーあ。世は女性の進出で活気づいてるなんて言ってもベースは殿方ほ社会のまま。民も貴族も王族すら娘を大切にはしてくれないのね」
「それはここ数十年の流れでまだ発展途中だから仕方ないだろ。そういった文化は簡単には変わらないんだよ」
我が国も戦後のゴタゴタで社会進出してる女性は増えた。でもね、職業も偏ってるし赤ちゃん出来ると辞めさせられる。そして復帰の壁が高くて高くて登ることすら出来ない人も多い。昔の考え方が親世代にあって、赤ちゃん出来たのに働くの?なんで?お金あるしなんてね。妻が働く意味などどこにあると家から出してもらえなくなるの。あるの!世界を知った女性に家に引きこもれは辛いの!(当然その方がいい人は別)
食事が済み部屋に戻った。お風呂入ったり寝間着に着替えても、先ほどの話しが頭から離れなかった。
「姫様。私もそれは考えます。この戦の後お嫁に行った姫やお嬢様たちが全員幸せではないのですよ。身分やお金と引き換えなんて、足元見られたおうちもあるのです」
「それは知ってます」
姫様に言えないようなことを私はたくさん耳にします。考え方を切り替えられる女性はいいのですが、蝶よ花よと育てられたお嬢様たちにはそんな強さはない。泣き暮らしている女性も多いのですよって。それは……
「今この時、ライラ様と同じお嬢様はたくさんいるのです。家のためと耐えています」
「うん……」
民はもっとですよ。子を産めとおじいさんに近い方と結婚させられた人もいる。好きならいいですが、三十も四十も離れた殿方を愛せるか。私は無理ですねって。うん。私もサイラスと出会わなければそうなっていた可能性は否定出来ない。
「綺麗ごとで世の中回らないのです。女は今でも苦しい立場ですから。ライラ様は王族だったから救い出せたのですよ」
「うん」
そのとおり過ぎて言葉はない。しょせん私も貴族なんだ、甘っちょろい考え方をするだけの……ため息しか出ない。
「でもね姫様。王族は性善説も大切かなと私は思います。どの国も王様の考え方が国民に広まりますから。世代が代わる頃、この女を虐げることがなくなるように気持ちを持ち続けましょう」
「うん」
王族の姫が諦めたらこのままになる。これが当たり前と意識は変わらないのですよと。ライラ様はいいきっかけになるはず。姫様たちの活躍にかかっていますからねって。え……それは重たい。
「まあまあゆっくりですね。殿下お待ちですよ」
「ああはい」
私は悶々とした気持ちで内扉に手を掛けた。
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