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前編 ユルバスカル王国編
66 産まれた
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出産は痛いばかりではなく疲れると知った。産婆さんに寝てなさいと言われ、爆睡した翌日の昼過ぎ。部屋で食事をして落ち着いた頃、なぜかサイラス帰宅。私が不思議そうに見上げると気まずそうな顔をした。
「どうしたの?お仕事は?」
「うん……母上が」
「ああはい」
言わなくても分かる。赤ちゃん見たくて来たのね。サイラスはうんって。隣の子供部屋からきゃあって楽しそうな声がする。ついでに赤ちゃん泣いてる。
「君に負担は掛けないから」
「はーい」
乳母はお母様のお知り合いの方にお願いしてたらしく、とても良い方が来てくれた。優しげな子育てがちょうど終わって、働きたいなあって奥様でね。さすが妃殿下のお友だちとしかいいようのない上品な奥様で……うん。自分の下品さにちょっと涙。
「少しだけ話せるか?」
「うん」
ベッドに寝てていいのかな?移動した方が?と聞けば、ロッティがこのままでいいと。ひと月はベッドが定位置。私の許可が出るまでベッドから出るのはトイレと食事のみ。他は寝てなさいって。
「ティナ少しよろしい?」
「はいお母様」
そんな話をしていると、ごめんなさいねとお母様が入って来た。そしてベッドの横にロッティが用意した椅子に座る。腕には眠っている赤ちゃん。へえ。お母様が抱くと泣かないのか。私は先ほどギャン泣きでしたが。
「ふふっそれは慣れですよ。それとティナおめでとう」
「ありがとうございます。王子でした」
「ええ。サイラスそっくりですね。銀髪で目の色はあなたかしら。オレンジ色でキレイです」
「はい」
とても気持ちよさそうに眠っててかわいい。我ながらかわいい赤ちゃんが産まれたと思っている。本当にかわいいの。
「そうそう。無理させたらいけないから、お祝いはリーノに渡してあります。それとこれをあなたに」
「なんでしょう?」
お母様のメイドがどうぞと小さな箱をくれた。リボンが掛けてある物。紐を解き中を確認。
「ステキ……」
「でしょう?サイラスの瞳の青い石をはめた指輪です。使ってね」
「はい。ありがとうございます。なにからなにまで」
あなたの瞳の色の指輪はサイラスに渡してあります。おそろいの台座とカットも同じ。確かに女性向けとは言えないシンプルなものだった。え?そんな習慣はわが国にはないよね?夫婦お揃いのデザインで揃えるなんて聞いたこともない。驚いているとお母様は優しい笑みで赤ちゃんを揺すりながら、
「わたくし思ったの。あなたたちはふたりでひとりみたいって。お互い足りないところを補い合ってるように感じました。敵を味方とまでは言わなくても、普通に議論出来る関係を構築してね。サイラスだけでは出来なかったことをあなたが補ったのでしょう?素晴らしいわ」
「ありがとうございます。でも特別なにかではないのですけど」
特別なことはしていない。農林省の側近のころからなにも。自分なりにやってきたことをしてるだけ。でもお母様はそれでいいって。やり方など人それぞれ。上手くいくならやり方など問題はないって。そう言われると肩の荷も降りるしちょっと嬉しい。
だからわたくしからのお祝いとして、ふたりが仲良くと願いを込めての指輪よと楽しそうにする。
「ありがとうございます。とても嬉しいです」
「ええ。普段使えるようにシンプルにしてます。仲良くね」
お揃いだって。ふふっ指輪を見つめて笑みが溢れた。くすぐったい幸せが胸にふわふわ。とても嬉しい。シンプルと言ってもそれなりのデザインで、優雅さもある。緩やかな葉っぱのモチーフがステキなの。
「疲れてるでしょうからこれでね」
「はい。ありがとうございました」
幸せにうっとりと指輪を見つめていると、赤ちゃんは手放さずそのまま去った……たぶん子ども部屋にはいるつもりだろう。まあいっか。私は寝る。うとうととしだした頃、誰かに触られた気がして目を開けた。目の前にはサイラス。
「え……なんでいるの?」
「俺も休んだ」
「はい?」
遅く出勤したのだけれど、今日くらい妻についてろって追い返されたそう。その帰り道になぜか変な場所の廊下を歩いてたお母様に捕まったそうだ。彼女はショルツ様の報告で出産を知ってて、彼の執務室に向かう途中だったそう。
「ティナ大変だったろ?改めてお疲れさま。ありがとう」
「うん」
「でも俺そっくりだったな」
「本当にね。私成分はないと分かる赤ちゃんでした」
「育てば分からん」
「そっかな?」
傍にいたいから隣入っていい?って。まあ構いませんが。そっとベッドに入り抱かれる。
「体は平気?」
「平気ではありませんし、ボロボロと言って差し支えないとシュルツ先生が言ってました。ゆっくり回復していくからねって」
「うん。俺分かんないからなんでも言って」
「はい」
その日はサイラスとお昼寝したり、おしゃべりしたり。でもお胸が痛くて辛くて。初めての授乳の時、乳母のタニア様はこうして自分で揉むの。痛いけどしないと困るのよって教えてくれた。まずはしてあげるからって。そんで我慢してと乳首も強く揉まれて涙が溢れた。耐えてねって。自分でやると痛くて加減するから我慢って。くうっと涙目で耐えているとふき出した。
「ううっ……やっと出たぁ」
「はい。これ痛いのよねぇ。わたくしも辛かっですもの」
「本当に辛いですね」
乳母は向き不向きがある。私は確実に向かないのは感じる。タニア様は、医師は術者なんだからなんでも出来そうでしょ?でもそうはいかないのが世の常。貧弱な胸を大きくとか、筋肉隆々になりたいとかの肉体改造はなにひとつ効果なし。病やケガなどに効果の術はある。それを駆使しお薬を作ったりはそのとおり。そしてこういった出産関係はある意味内臓のケガでしょ?なのに治癒の術は効果が薄いそう。やる意味なしと教えてくれた。なんでよと本気で思った。
「ならティナ様が探してみるのはいかが?光属性の本にあるかもしれません」
それシュルツ先生に聞いたけど、あるにはあるらしい。でも呪文は長く読めない単語が混じってるそう。今はもう使わない言葉で術は出来ないと手を広げられたのよね。チッ
「あら、うちの侍医と同じことを。やはりそうなのですね。使えれば女は楽なのに」
本当にねえと見合って笑った。使えれば女は出産で死ぬことはないのにとふたりで憂いた。今ある術書は、隣の初代王の白鬼と呼ばれた彼の残したものと以前聞いた。大昔の物で、それが脈々と使われているの。でも言葉とはうつろうもの。仕方ないのよね。など思い出していた。
「サイラス赤ちゃんところに行ってくる。お胸痛い」
「うん。俺も行く」
ベッドから降りてふたりで隣の部屋に。赤ちゃんがちょうど泣き始めたところですぐにあげる。
「うぅっ痛い」
「慣れですよ。吸い付きが強いから血が出たりしますが慣れますから」
「はい。でもかわいい」
腕の中でンクンクと飲んでる姿はとてもかわいい。痛みなど我慢できるもんと思えるほどかわいかった。サイラスは指で赤ちゃんの頬をつつく。ぷくぷくでかわいいねって。
「なんだろう。赤ちゃんってこんなにかわいいんですね」
「当然です。自分の子ならば余計ね」
「俺は君が産んだ子だからかわいい」
「はあ?」
乳母のタニア様はクスクスと笑う。女と違い殿方は簡単に父親にはなりませんから。だんだん子供の成長と共にですよと。そっか。お腹にいなかったんだからそうよね。
「我が夫も同じでしたから」
「ふーん。俺ちゃんとした父親になれるか不安」
「殿下もなれますよ。ティナ様と一緒なら」
「ああ」
そんな日々を過ごした。サイラスは午前中は仕事に行かず私に付きっきり。部屋での食事も付き合い、午後に少し仕事して明るいうちに帰ってくる。いやいや、そこまで心配しなくても。
「タニア様もいるし、ショルツ様が侍医の派遣もしてくれました」
そしたらすごく嫌そうにした。あのなあって呆れたように。君の方が楽観視しすぎって。
「お産の後突然死んじゃう人もいるって王太子に嫌なこと言われたんだよ」
「はあ。さすが意地悪王子」
「あの人俺をおもちゃと思ってるんだよ。三番目の弟くらいに今は思ってると親切にはしてくれるけど、ちょいちょい嫌がらせしてくる」
それで不安になったんだとベッドで抱いてくれる。出産から二週間経ち体はだいぶ落ち着き、お乳もよく出る。食事もおいしくいただいてる。後一週間もすれば寝てなくてもいいとは言われているし。
「それ初期の頃でしょ?私も聞いたけど」
「分かんないだろ」
「そうだけど……お仕事大丈夫?」
「大丈夫だ。セフィロトたちが死ぬほど頑張ればいい。俺も彼らの時そうしてたんだから」
「はあ」
みんなお子さんがいて、一番小さい子どもさんがいるのがカール様。みんな同じようにしてあげたって。そうですか。
「でもセフィロト以外は早く復帰したな。まとわりつくなと奥様に叱られたらしくて」
「ふーん」
フレッド様の奥様は肝っ玉の据わった逞しい方。たまに会うと言動も強くお母様って方。丁寧な言葉使いのアリスのような方で、話してるととても楽しい奥様。最近仲良くなりつつある。カール様の奥様は言い方悪いけど普通の奥様。貴族の奥様らしい方なの。だーが、セフィロト様の奥様には近づけない。くんな!と言われて近づけない。お茶会の時も隣でセフィロト様が睨んでて、私だけあいさつするとあっち行けって。いない時に話しかけたくても、そんなお茶会には出席されないのよね。
「アハハッセフィロトはふわふわの小鳥みたいな妻が好き。俺たちの妻はヒグマだと言うからな」
「ヒ、ヒグマ?ひどくない?」
「セフィロトは俺以上にかわいいもの好きでなあ。たぶんだが、ねちっこさも俺以上のはずで、見た目どおり女性は守るものと考えている。奥様のふわふわ見れば分かるだろ」
「まあ」
怖いイケメンとわたあめみたいな奥様だもんね。乳母のタニア様もふわふわ。我らがヒグマと言われても仕方なしと思わないでもない。フレッド様の奥様もお城で文官されてるからなあ。うん。
「いいんだヒグマで。俺は知ってるんだ。君がわたあめみたいにかわいいの。俺が知ってればいい」
「んふふっありがと」
などと過ごし三週間が過ぎた頃、サイラスは普通に仕事をするようになった。私が復帰できるのは後二ヶ月先。それまでは赤ちゃんと楽しむの。
「どうしたの?お仕事は?」
「うん……母上が」
「ああはい」
言わなくても分かる。赤ちゃん見たくて来たのね。サイラスはうんって。隣の子供部屋からきゃあって楽しそうな声がする。ついでに赤ちゃん泣いてる。
「君に負担は掛けないから」
「はーい」
乳母はお母様のお知り合いの方にお願いしてたらしく、とても良い方が来てくれた。優しげな子育てがちょうど終わって、働きたいなあって奥様でね。さすが妃殿下のお友だちとしかいいようのない上品な奥様で……うん。自分の下品さにちょっと涙。
「少しだけ話せるか?」
「うん」
ベッドに寝てていいのかな?移動した方が?と聞けば、ロッティがこのままでいいと。ひと月はベッドが定位置。私の許可が出るまでベッドから出るのはトイレと食事のみ。他は寝てなさいって。
「ティナ少しよろしい?」
「はいお母様」
そんな話をしていると、ごめんなさいねとお母様が入って来た。そしてベッドの横にロッティが用意した椅子に座る。腕には眠っている赤ちゃん。へえ。お母様が抱くと泣かないのか。私は先ほどギャン泣きでしたが。
「ふふっそれは慣れですよ。それとティナおめでとう」
「ありがとうございます。王子でした」
「ええ。サイラスそっくりですね。銀髪で目の色はあなたかしら。オレンジ色でキレイです」
「はい」
とても気持ちよさそうに眠っててかわいい。我ながらかわいい赤ちゃんが産まれたと思っている。本当にかわいいの。
「そうそう。無理させたらいけないから、お祝いはリーノに渡してあります。それとこれをあなたに」
「なんでしょう?」
お母様のメイドがどうぞと小さな箱をくれた。リボンが掛けてある物。紐を解き中を確認。
「ステキ……」
「でしょう?サイラスの瞳の青い石をはめた指輪です。使ってね」
「はい。ありがとうございます。なにからなにまで」
あなたの瞳の色の指輪はサイラスに渡してあります。おそろいの台座とカットも同じ。確かに女性向けとは言えないシンプルなものだった。え?そんな習慣はわが国にはないよね?夫婦お揃いのデザインで揃えるなんて聞いたこともない。驚いているとお母様は優しい笑みで赤ちゃんを揺すりながら、
「わたくし思ったの。あなたたちはふたりでひとりみたいって。お互い足りないところを補い合ってるように感じました。敵を味方とまでは言わなくても、普通に議論出来る関係を構築してね。サイラスだけでは出来なかったことをあなたが補ったのでしょう?素晴らしいわ」
「ありがとうございます。でも特別なにかではないのですけど」
特別なことはしていない。農林省の側近のころからなにも。自分なりにやってきたことをしてるだけ。でもお母様はそれでいいって。やり方など人それぞれ。上手くいくならやり方など問題はないって。そう言われると肩の荷も降りるしちょっと嬉しい。
だからわたくしからのお祝いとして、ふたりが仲良くと願いを込めての指輪よと楽しそうにする。
「ありがとうございます。とても嬉しいです」
「ええ。普段使えるようにシンプルにしてます。仲良くね」
お揃いだって。ふふっ指輪を見つめて笑みが溢れた。くすぐったい幸せが胸にふわふわ。とても嬉しい。シンプルと言ってもそれなりのデザインで、優雅さもある。緩やかな葉っぱのモチーフがステキなの。
「疲れてるでしょうからこれでね」
「はい。ありがとうございました」
幸せにうっとりと指輪を見つめていると、赤ちゃんは手放さずそのまま去った……たぶん子ども部屋にはいるつもりだろう。まあいっか。私は寝る。うとうととしだした頃、誰かに触られた気がして目を開けた。目の前にはサイラス。
「え……なんでいるの?」
「俺も休んだ」
「はい?」
遅く出勤したのだけれど、今日くらい妻についてろって追い返されたそう。その帰り道になぜか変な場所の廊下を歩いてたお母様に捕まったそうだ。彼女はショルツ様の報告で出産を知ってて、彼の執務室に向かう途中だったそう。
「ティナ大変だったろ?改めてお疲れさま。ありがとう」
「うん」
「でも俺そっくりだったな」
「本当にね。私成分はないと分かる赤ちゃんでした」
「育てば分からん」
「そっかな?」
傍にいたいから隣入っていい?って。まあ構いませんが。そっとベッドに入り抱かれる。
「体は平気?」
「平気ではありませんし、ボロボロと言って差し支えないとシュルツ先生が言ってました。ゆっくり回復していくからねって」
「うん。俺分かんないからなんでも言って」
「はい」
その日はサイラスとお昼寝したり、おしゃべりしたり。でもお胸が痛くて辛くて。初めての授乳の時、乳母のタニア様はこうして自分で揉むの。痛いけどしないと困るのよって教えてくれた。まずはしてあげるからって。そんで我慢してと乳首も強く揉まれて涙が溢れた。耐えてねって。自分でやると痛くて加減するから我慢って。くうっと涙目で耐えているとふき出した。
「ううっ……やっと出たぁ」
「はい。これ痛いのよねぇ。わたくしも辛かっですもの」
「本当に辛いですね」
乳母は向き不向きがある。私は確実に向かないのは感じる。タニア様は、医師は術者なんだからなんでも出来そうでしょ?でもそうはいかないのが世の常。貧弱な胸を大きくとか、筋肉隆々になりたいとかの肉体改造はなにひとつ効果なし。病やケガなどに効果の術はある。それを駆使しお薬を作ったりはそのとおり。そしてこういった出産関係はある意味内臓のケガでしょ?なのに治癒の術は効果が薄いそう。やる意味なしと教えてくれた。なんでよと本気で思った。
「ならティナ様が探してみるのはいかが?光属性の本にあるかもしれません」
それシュルツ先生に聞いたけど、あるにはあるらしい。でも呪文は長く読めない単語が混じってるそう。今はもう使わない言葉で術は出来ないと手を広げられたのよね。チッ
「あら、うちの侍医と同じことを。やはりそうなのですね。使えれば女は楽なのに」
本当にねえと見合って笑った。使えれば女は出産で死ぬことはないのにとふたりで憂いた。今ある術書は、隣の初代王の白鬼と呼ばれた彼の残したものと以前聞いた。大昔の物で、それが脈々と使われているの。でも言葉とはうつろうもの。仕方ないのよね。など思い出していた。
「サイラス赤ちゃんところに行ってくる。お胸痛い」
「うん。俺も行く」
ベッドから降りてふたりで隣の部屋に。赤ちゃんがちょうど泣き始めたところですぐにあげる。
「うぅっ痛い」
「慣れですよ。吸い付きが強いから血が出たりしますが慣れますから」
「はい。でもかわいい」
腕の中でンクンクと飲んでる姿はとてもかわいい。痛みなど我慢できるもんと思えるほどかわいかった。サイラスは指で赤ちゃんの頬をつつく。ぷくぷくでかわいいねって。
「なんだろう。赤ちゃんってこんなにかわいいんですね」
「当然です。自分の子ならば余計ね」
「俺は君が産んだ子だからかわいい」
「はあ?」
乳母のタニア様はクスクスと笑う。女と違い殿方は簡単に父親にはなりませんから。だんだん子供の成長と共にですよと。そっか。お腹にいなかったんだからそうよね。
「我が夫も同じでしたから」
「ふーん。俺ちゃんとした父親になれるか不安」
「殿下もなれますよ。ティナ様と一緒なら」
「ああ」
そんな日々を過ごした。サイラスは午前中は仕事に行かず私に付きっきり。部屋での食事も付き合い、午後に少し仕事して明るいうちに帰ってくる。いやいや、そこまで心配しなくても。
「タニア様もいるし、ショルツ様が侍医の派遣もしてくれました」
そしたらすごく嫌そうにした。あのなあって呆れたように。君の方が楽観視しすぎって。
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「はあ。さすが意地悪王子」
「あの人俺をおもちゃと思ってるんだよ。三番目の弟くらいに今は思ってると親切にはしてくれるけど、ちょいちょい嫌がらせしてくる」
それで不安になったんだとベッドで抱いてくれる。出産から二週間経ち体はだいぶ落ち着き、お乳もよく出る。食事もおいしくいただいてる。後一週間もすれば寝てなくてもいいとは言われているし。
「それ初期の頃でしょ?私も聞いたけど」
「分かんないだろ」
「そうだけど……お仕事大丈夫?」
「大丈夫だ。セフィロトたちが死ぬほど頑張ればいい。俺も彼らの時そうしてたんだから」
「はあ」
みんなお子さんがいて、一番小さい子どもさんがいるのがカール様。みんな同じようにしてあげたって。そうですか。
「でもセフィロト以外は早く復帰したな。まとわりつくなと奥様に叱られたらしくて」
「ふーん」
フレッド様の奥様は肝っ玉の据わった逞しい方。たまに会うと言動も強くお母様って方。丁寧な言葉使いのアリスのような方で、話してるととても楽しい奥様。最近仲良くなりつつある。カール様の奥様は言い方悪いけど普通の奥様。貴族の奥様らしい方なの。だーが、セフィロト様の奥様には近づけない。くんな!と言われて近づけない。お茶会の時も隣でセフィロト様が睨んでて、私だけあいさつするとあっち行けって。いない時に話しかけたくても、そんなお茶会には出席されないのよね。
「アハハッセフィロトはふわふわの小鳥みたいな妻が好き。俺たちの妻はヒグマだと言うからな」
「ヒ、ヒグマ?ひどくない?」
「セフィロトは俺以上にかわいいもの好きでなあ。たぶんだが、ねちっこさも俺以上のはずで、見た目どおり女性は守るものと考えている。奥様のふわふわ見れば分かるだろ」
「まあ」
怖いイケメンとわたあめみたいな奥様だもんね。乳母のタニア様もふわふわ。我らがヒグマと言われても仕方なしと思わないでもない。フレッド様の奥様もお城で文官されてるからなあ。うん。
「いいんだヒグマで。俺は知ってるんだ。君がわたあめみたいにかわいいの。俺が知ってればいい」
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