妖怪課題

仲牧そらん

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第1話 記憶喪失?

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「お前 大丈夫か?」

彼女はその声に導かれて、顔上げた。
彼女の名前は藤野綾。
都内の名の知れた進学校に通う女子高生である。
そして綾に声をかけたのが、綾と同じ高校に通う矢吹龍。

二人はあるものを眺めていた。
それは席次である。
綾は今、あの世にでも行ったかと思う顔をしている。
俗にいう、放心状態である。
なにしろ綾は十六年間生きてきた中で、自分に順位をつけられるものならば、すべて同じ数字しか見てこなかった。
それは高校生になってからも通用していた。
だが、今綾の手にある紙切れには、三桁にもなる数字が記されている。
綾は何度も自分の名前かどうか確認した。
だが、何度見ても変わらなかった。
しかし綾自身、このテストがどんなものだったか、記憶していない。
今まで席次が出されるものならば、自分の名前のそばに記されているのは、縦線一本だけであった。
そんな綾が“144位”
周りが綾のことを気にしないわけがない。

「藤野さん、後で職員室に来てくれない?」
そう声をかけたのは、担任の佐々木である。
三十代前半であろう佐々木は、イケメンで爽やかな感じである事からも、生徒からの人気も高い。
そんな佐々木先生に呼び出された綾はただ
「わかりました。後で伺います」
綾は素っ気なく返答した。
だが内心、これはいったいどうしたものかと冷静ではない。
そんな綾に矢吹が口を開いた。
「藤野、これ本当はお前のじゃないだろ」

いや、そんなはずはない。
だからと言ってテストを受けた記憶がないとでも言ってみろ、誰が信じるものか。
綾自身、そんなことを言われたら信じるわけがない。
でも今の綾にはその時の記憶がないのだ。
パニックになった綾に、親友である関口奈央が声をかけた。

「綾、これ親になんていうの?」
そうだ、父になんて言えばいいのだろう。
綾の両親と祖父は医者である。
だから個人経営にしては少し大きい病院を、一家で経営している。
ようするに藤野家は、代々医者になるのが当たり前という家庭である。
もちろん、医者になるには、それなりの学力がなくてはいけない。
だから綾は今まで優等生だった。
そんな綾が人生で初めて、トップではなくなったのだ。
綾は人生が終わったかと思った。
だが、ここで考え込んではいけない事を鐘の音によって知らされる。
今から担任である佐々木先生の所に向かわなければならない。
綾は矢吹と奈央に声をかけ、職員室へと颯爽と去っていった。
そして綾は、職員室までの道のりで頭を整理させた。
まず私はテストを受け、その結果が悪く、144位であった。
だが、私にはそんな記憶をとった記憶がない。
綾の頭の中は時間が経つにつれて、そんなおかしなことがあっていいのか、と思い始めていた。
だがそこで綾の頭は一旦ストップした。
コンコン、という音ともに職員室に入り、用件である佐々木先生を呼んでもらった。
すると佐々木先生は、綾の姿を見るなり、第三多目的教室の鍵をとった。
しかし放課後の第三多目的教室は異常現象研究同好会の部室もなっている。
綾は疑問になった。
でもそんなことを考えているうちに到着した。
佐々木先生は鍵をさして教室を開けようとしたが、

「あいつ、また合鍵で開けたな」
そう言って、佐々木先生はスタスタと教室に入っていった。
綾もそれに続いた。
綾が初めて入った第三多目的教室は白を基調とした、なんだか落ち着ける空間であった。
だが残念なことにカーテンを全て閉めており、少し陰湿な空気をまとっている。
そして、その雰囲気に見合った人物がいることに綾は気づいた。
それは、さっきまで綾の隣で話しかけてきた矢吹龍である。
なぜ彼がいるのか不思議に思った綾だったが、さっさと用件を終わらそうとした。

「先生、なんでわざわざこんなところに?」
「藤野、今日の席次見ただろ。あれ、記憶にないだろ?」

一瞬、綾は首をかしげた。
なぜこの人はあの成績を見ただけで私にこんなことを言ってくるのだろうか。
今まで成績優秀だった生徒の成績が悪くなったからといって、記憶がなかったことにしようとしてもいいのか、教師とあろう立場で。
確かに記憶はないのだが、それを佐々木先生に言われるのはおかしい。
佐々木の質問に対して、ぎもんというよりも少し怒りが出てきた綾を見かけた矢吹が口を開いた。

「でもな、あのテストを受けたのは、藤野じゃなくてレミグレスだからな。記憶がなくて当たり前だろ」
「レミグレス?」
「おい、龍。いきなりその話をするなよ」
「そんなこと言われても、藤野の顔をみてよ、親父」
「ちょっと待って下さい。レミグレスの方も気になりますが、それよりも矢吹くん、今、佐々木先生に向かって親父って言った?」

綾はさらなる疑問を解決しようと、二人に対して質問した。
確かに、綾からしてはレミグレスという単語も謎だが、矢吹君が佐々木先生に向かって「親父」と呼んだ方が驚きだ。
「龍、おまえ……」
「二人は本当に親子ですか?」

綾は戸惑っている二人に容赦なく疑問を投げかける。
親子と思って見てみると確かに、目鼻立ちが一緒な気がする。
「あぁ~~、もういいでしょ!親父」
「うわー、まぁいいか……。俺と龍は親子です、今年再会できた」
「今年再会?」
「うーんとね。親父さ、俺が3歳の時に行方不明になったんよ」
「その時の俺は、事故に遭って記憶喪失になってしまいまして」
「その時の、ってことは……」
頑張って頭を整理しながら、佐々木先生が話した言葉に違和感を持った。
「そう、今は記憶がちょっとはあるのよ。今年、龍の担任になってからだけど」
「で、俺はというと、写真の親父に似ているなって思って、母さんに言ったら、まさかの本当の親父だったんだだったんだ」
「で、本題」

驚きと疑問が連続して浮かんでいた綾に対して、また話を始める、龍親子。

「記憶喪失になってから、俺は今まで見えなかったものが見えるようになった」

綾はその場から逃げ出そうとした。


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