聖女と魔女

蘭爾由

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資質

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資質

僕が物心ついて気付いたのは、この家族はいびつだということ。

自分を守ることに必死な皇帝、自分の価値を決めることしか頭にない皇后、自分が無いのに箱庭だけ欲しがっている第一皇太子。

いびつな家族の中で、兄と年が一回り離れているせいか、さして皇位継承順位争いが起こることもなく、ゆるゆると兄の補佐枠に甘んじる僕は第二皇太子。

別に努力しなくても一度見た顔は忘れないし、覚えた知識を組み合わせて新しい発想を生み出すことも難なく出来たが、これがバレると何かと厄介であることも予想出来た。

なので僕は、後宮に篭ってお姉様方の膝で寝転び本を読んで過ごしていた。

そうもいかなくなってきたなと気付いたのは、後宮のお姉様の中に間諜が増えたから。つまりスパイね。

それでちょっと兄が通う学院を散歩してみたら、ソフィア姉様そっくりの別人が、ソフィア姉様のフリをしていることに誰も気付いていないことに驚いた。

驚いている僕を見つけたソフィア姉様のそっくりさんは、とても怖い顔でこんな所に来てはだめだと言って僕は馬車に放り込まれて送り返された。

後日、僕の後宮のたまり場に現れた、ルフィーリアという名前のそっくりさんは、僕の立場がとても危ういと教えてくれた。

僕を操りやすい手駒にしようとしている悪い奴がいて、兄は既に陥落されているらしく、助ける方法はもう一つしかないらしい。

それには奴等のしっぽをガッチリ掴むまで、僕が後宮で遊ぶウブな坊ちゃんを続けている方が、仕事が早いらしい。

後宮に増えたスパイもルフィアの手の内らしく、それならそれで僕も、知らない大人に利用されるより、こんな優秀で美しいお姉様の手駒になる方が楽しい。

何より、それで兄が助かるなら。

どんなに歪な形をした家族でも、僕は家族を愛している。

僕に力があったなら迷わず今すぐ助けに向かったけれど、僕には何の力もない。

力が欲しいと悔しくて涙が出た僕に、ルフィアは言ったんだ。

「大事なものを守る時に必要なのは、強固な意志を持ってやり通す自分自身。

大事なものはたったひとつだけ。

それだけを守ると決めれば人は自分に正しく何でも出来る。

でもね、大事なものを悲しませたくなければ、自分自身も大事にしなければならない。

自分を守る力があってこそ、人を守る力を持てる。

自分だけでもだめ、大事なものを守るだけでもだめ。

自分と、自分の周りの大事なものを守りたいと思っているのは自分だけじゃない。

けれど人の上に立つ者はその全ての人々の思いを叶える力を持つことが出来る権力を、生まれながらに持っている。

それは悪い奴等も同じ。

奴等に負けない為に、努力せずに努力出来る?」

努力しない努力か。例えば整理整頓。整理整頓を意識しなくても片付けられる人とそうでない人がいるように、僕に皇族としての資質があるのかと聞かれているのだろう。

ルフィア、僕の答えはもう決まっている。

僕は兄の補佐枠で満足しているんだ。
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