2 / 5
1.いつかお前らハーレルイにバレてめっちゃくちゃに怒られろ
しおりを挟む
と。魔法のダイニングテーブルは前世の記憶に残る、魔女の記録の残滓を思い返していたが。
ふと、ハーレルイを見ていて思った。
ハーレルイは大量のアイスクリームを作っている。一人で食べる分にしては量が多すぎる。ダイニングテーブルが保存しておくにしても一回でそれだけの量をわざわざ何回も何回も作る必要があるだろうか。いや無い、自分が食べるなら。
これは同居人の分だ。しかもただの人間の。
魔女は一人の時間を最も大切にする。アレクサンドラが魔女だった頃もそうだった。ダイニングテーブルが今まで見守ってきた歴代の魔女達もそうだ。
なのにハーレルイは鏡の国の王子や大精霊、なんの力も無い人間まで側に置いている。
解せぬ。
そうしてダイニングテーブルは思った。ハーレルイならばこの世界をどう見るのか、と。
世界一強い歴代の魔女の記録を持つハーレルイはこの世界に希望しか無いと気付いているはず。
けれどもし、もしもこの世界に失われたギフトを取り戻す方法があるとすれば、それに思い至る事が出来る希望はハーレルイにしか無い。
ハーレルイの行動に意味があるなら、アレらと生活をともにする事にも意味があるのか。
それにしても解せぬ。
ハーレルイは真実の愛でしか死ねない魔女だ。
あの男が生まれ変わって来るのを待つしかない真実の愛に囚われた魔女。
あの男が生まれ変わって来たとてハーレルイが男と出会えるかも怪しい、途方もない時間繰り返される生滅に希望だけがある。
現に、ハーレルイは何億年と時間を旅しているが男と出会えていない。出会える確証もない。
悲しいかな、この世界に希望だけはあることを知っているからか、ハーレルイは希望を捨てない。
側で見ているだけのダイニングテーブルとしては何ともイライラもやもや、はらはらムズムズ。
なぜこうもハーレルイは何回も何回も初恋のもやもやと真っ向勝負して砕け散り、美しくよみがえって戻ってくることが出来るのか。解せぬ。
いや。それは私がダイニングテーブルだからなのか。
私にはハーレルイの心の中は読めない。だからこそ私はハーレルイの側でハーレルイを見守っている。今までも、これからも。
見守ることしか出来ないが、見届けることが私の宿命のように感じることもある。もやもやしながら。
「はーい出来た、これも閉まっといてー。」
ハーレルイは笑顔でアイスクリームをダイニングテーブルに置く。あの子がアイスクリームを嬉しそうに食べているところを想像しているのだろう。
また旅に出るハーレルイの手にコンパクトが握られている。世界各地から届く、世界一強い魔女に助けを求める手紙を回収する。
世界一強い魔女様、助けてください。そう真摯に願えば、願いは紙飛行機となって魔女の元に飛んでいく。
だから魔女は年に一度まとめてその願いを叶える旅をする。
そして旅の途中、ハーレルイは恋をする。真実の愛を求めて。ハーレルイに死を与える愛を。
扉を開けて。魔女は旅に出る。ダイニングテーブルに留守を頼むよと告げて。
いつ戻るかも知れないハーレルイの帰りを待つ、王子と精霊と女の子は、かじりつく。
「もたもたするな、早くチャンネルを合わせろ」
「は? 誰に命令しているつもりだ? なぜ私が大豆の命令に従わねばならぬ」
「また始まった、そういうのいいから」
鏡の中に閉じ込められた王子と、浮遊する大豆の大精霊はとても仲が良い。
「昨日の続きを早く、托卵した義母と息子のその後はどうなったのだ」
「急かすな。大体お前達、過去の映像を鏡に写すのがどんなに緻密な魔力を練っているかちゃんと理解」
「そういうのいいから」
ハーレルイが出掛けるとこうして決まって彼等は鏡にかじりついている。
「巻き戻り過ぎてハーレルイが溺れる隣国の国王を助けた崖っぷちに来てしまった。もう少し待て」
「なにそれ! すごい気になる!」
「良し。それを見せろ。托卵親子などどうでも良いわ。」
「そういうのが良いから」
また今日も山小屋で、暇を持て余した者達が、世界の希望を見守っている……。
いつかお前らハーレルイにバレてめっちゃくちゃに怒られろ。
ふと、ハーレルイを見ていて思った。
ハーレルイは大量のアイスクリームを作っている。一人で食べる分にしては量が多すぎる。ダイニングテーブルが保存しておくにしても一回でそれだけの量をわざわざ何回も何回も作る必要があるだろうか。いや無い、自分が食べるなら。
これは同居人の分だ。しかもただの人間の。
魔女は一人の時間を最も大切にする。アレクサンドラが魔女だった頃もそうだった。ダイニングテーブルが今まで見守ってきた歴代の魔女達もそうだ。
なのにハーレルイは鏡の国の王子や大精霊、なんの力も無い人間まで側に置いている。
解せぬ。
そうしてダイニングテーブルは思った。ハーレルイならばこの世界をどう見るのか、と。
世界一強い歴代の魔女の記録を持つハーレルイはこの世界に希望しか無いと気付いているはず。
けれどもし、もしもこの世界に失われたギフトを取り戻す方法があるとすれば、それに思い至る事が出来る希望はハーレルイにしか無い。
ハーレルイの行動に意味があるなら、アレらと生活をともにする事にも意味があるのか。
それにしても解せぬ。
ハーレルイは真実の愛でしか死ねない魔女だ。
あの男が生まれ変わって来るのを待つしかない真実の愛に囚われた魔女。
あの男が生まれ変わって来たとてハーレルイが男と出会えるかも怪しい、途方もない時間繰り返される生滅に希望だけがある。
現に、ハーレルイは何億年と時間を旅しているが男と出会えていない。出会える確証もない。
悲しいかな、この世界に希望だけはあることを知っているからか、ハーレルイは希望を捨てない。
側で見ているだけのダイニングテーブルとしては何ともイライラもやもや、はらはらムズムズ。
なぜこうもハーレルイは何回も何回も初恋のもやもやと真っ向勝負して砕け散り、美しくよみがえって戻ってくることが出来るのか。解せぬ。
いや。それは私がダイニングテーブルだからなのか。
私にはハーレルイの心の中は読めない。だからこそ私はハーレルイの側でハーレルイを見守っている。今までも、これからも。
見守ることしか出来ないが、見届けることが私の宿命のように感じることもある。もやもやしながら。
「はーい出来た、これも閉まっといてー。」
ハーレルイは笑顔でアイスクリームをダイニングテーブルに置く。あの子がアイスクリームを嬉しそうに食べているところを想像しているのだろう。
また旅に出るハーレルイの手にコンパクトが握られている。世界各地から届く、世界一強い魔女に助けを求める手紙を回収する。
世界一強い魔女様、助けてください。そう真摯に願えば、願いは紙飛行機となって魔女の元に飛んでいく。
だから魔女は年に一度まとめてその願いを叶える旅をする。
そして旅の途中、ハーレルイは恋をする。真実の愛を求めて。ハーレルイに死を与える愛を。
扉を開けて。魔女は旅に出る。ダイニングテーブルに留守を頼むよと告げて。
いつ戻るかも知れないハーレルイの帰りを待つ、王子と精霊と女の子は、かじりつく。
「もたもたするな、早くチャンネルを合わせろ」
「は? 誰に命令しているつもりだ? なぜ私が大豆の命令に従わねばならぬ」
「また始まった、そういうのいいから」
鏡の中に閉じ込められた王子と、浮遊する大豆の大精霊はとても仲が良い。
「昨日の続きを早く、托卵した義母と息子のその後はどうなったのだ」
「急かすな。大体お前達、過去の映像を鏡に写すのがどんなに緻密な魔力を練っているかちゃんと理解」
「そういうのいいから」
ハーレルイが出掛けるとこうして決まって彼等は鏡にかじりついている。
「巻き戻り過ぎてハーレルイが溺れる隣国の国王を助けた崖っぷちに来てしまった。もう少し待て」
「なにそれ! すごい気になる!」
「良し。それを見せろ。托卵親子などどうでも良いわ。」
「そういうのが良いから」
また今日も山小屋で、暇を持て余した者達が、世界の希望を見守っている……。
いつかお前らハーレルイにバレてめっちゃくちゃに怒られろ。
0
あなたにおすすめの小説
寡黙な貴方は今も彼女を想う
MOMO-tank
恋愛
婚約者以外の女性に夢中になり、婚約者を蔑ろにしたうえ婚約破棄した。
ーーそんな過去を持つ私の旦那様は、今もなお後悔し続け、元婚約者を想っている。
シドニーは王宮で側妃付きの侍女として働く18歳の子爵令嬢。見た目が色っぽいシドニーは文官にしつこくされているところを眼光鋭い年上の騎士に助けられる。その男性とは辺境で騎士として12年、数々の武勲をあげ一代限りの男爵位を授かったクライブ・ノックスだった。二人はこの時を境に会えば挨拶を交わすようになり、いつしか婚約話が持ち上がり結婚する。
言葉少ないながらも彼の優しさに幸せを感じていたある日、クライブの元婚約者で現在は未亡人となった美しく儚げなステラ・コンウォール前伯爵夫人と夜会で再会する。
※設定はゆるいです。
※溺愛タグ追加しました。
【完結】ドアマットに気付かない系夫の謝罪は死んだ妻には届かない
堀 和三盆
恋愛
一年にわたる長期出張から戻ると、愛する妻のシェルタが帰らぬ人になっていた。流行病に罹ったらしく、感染を避けるためにと火葬をされて骨になった妻は墓の下。
信じられなかった。
母を責め使用人を責めて暴れ回って、僕は自らの身に降りかかった突然の不幸を嘆いた。まだ、結婚して3年もたっていないというのに……。
そんな中。僕は遺品の整理中に隠すようにして仕舞われていた妻の日記帳を見つけてしまう。愛する妻が最後に何を考えていたのかを知る手段になるかもしれない。そんな軽い気持ちで日記を開いて戦慄した。
日記には妻がこの家に嫁いでから病に倒れるまでの――母や使用人からの壮絶な嫌がらせの数々が綴られていたのだ。
妻が通う邸の中に
月山 歩
恋愛
最近妻の様子がおかしい。昼間一人で出掛けているようだ。二人に子供はできなかったけれども、妻と愛し合っていると思っている。僕は妻を誰にも奪われたくない。だから僕は、妻の向かう先を調べることににした。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
【完結】どうか私を思い出さないで
miniko
恋愛
コーデリアとアルバートは相思相愛の婚約者同士だった。
一年後には学園を卒業し、正式に婚姻を結ぶはずだったのだが……。
ある事件が原因で、二人を取り巻く状況が大きく変化してしまう。
コーデリアはアルバートの足手まといになりたくなくて、身を切る思いで別れを決意した。
「貴方に触れるのは、きっとこれが最後になるのね」
それなのに、運命は二人を再び引き寄せる。
「たとえ記憶を失ったとしても、きっと僕は、何度でも君に恋をする」
王妃そっちのけの王様は二人目の側室を娶る
家紋武範
恋愛
王妃は自分の人生を憂いていた。国王が王子の時代、彼が六歳、自分は五歳で婚約したものの、顔合わせする度に喧嘩。
しかし王妃はひそかに彼を愛していたのだ。
仲が最悪のまま二人は結婚し、結婚生活が始まるが当然国王は王妃の部屋に来ることはない。
そればかりか国王は側室を持ち、さらに二人目の側室を王宮に迎え入れたのだった。
【完結】おしどり夫婦と呼ばれる二人
通木遼平
恋愛
アルディモア王国国王の孫娘、隣国の王女でもあるアルティナはアルディモアの騎士で公爵子息であるギディオンと結婚した。政略結婚の多いアルディモアで、二人は仲睦まじく、おしどり夫婦と呼ばれている。
が、二人の心の内はそうでもなく……。
※他サイトでも掲載しています
愛する義兄に憎まれています
ミカン♬
恋愛
自分と婚約予定の義兄が子爵令嬢の恋人を両親に紹介すると聞いたフィーナは、悲しくて辛くて、やがて心は闇に染まっていった。
義兄はフィーナと結婚して侯爵家を継ぐはずだった、なのにフィーナも両親も裏切って真実の愛を貫くと言う。
許せない!そんなフィーナがとった行動は愛する義兄に憎まれるものだった。
2023/12/27 ミモザと義兄の閑話を投稿しました。
ふわっと設定でサクっと終わります。
他サイトにも投稿。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる