1 / 2
偽りの断罪
しおりを挟む
「アメリア・ガーネイド侯爵令嬢、この場をもって君との婚約を破棄する!」
第一王子アルベルトの宣言に、会場は凍りついた。流れていた音楽も、賑やかな声も、ぴたりと止む。視線は一斉に、王子とその婚約者・アメリアに注がれた。
一瞬、アメリアは目を見開く。だがすぐに平静を取り戻し、毅然とした眼差しでアルベルトを見上げた。
「理由を、お聞かせ願えますか」
「理由? 君が一番よく知っているはずだ」
王家の証である青い瞳を冷淡に向けるアルベルト。その彼の背後から姿を現したのは、アメリアの実妹・カルミア。
そして彼女の隣には、まるで守護するかのように光の上位精霊が寄り添っていた。
「君は実の妹を虐げ、彼女の精霊を消そうと企んだ」
「私は、そのようなことはしておりません」
「虚言を吐くとは……見損なったよ」
ざわつき始める会場。あちこちから、ささやき声が聞こえてくる。
「やっぱり噂は本当だったのね」
「妹の才能と美貌を妬んだのかしら」
「カルミア嬢が可哀想……」
それらの言葉に、周囲の視線は同情と軽蔑をないまぜにしてアメリアに注がれる。誰一人として彼女を庇おうとする者はいなかった。まるで最初から、真実も事情も関係なく、彼女が悪者であることが決まっていたかのように。
アルベルトはそんな空気を後押しするように言葉を重ねる。
「そんな君を、もはや婚約者としては認められない。だから、君との婚約は破棄し、代わりにカルミアと婚約する!」
「アルベルト様!」
アルベルトは隣のカルミアを抱き寄せる。カルミアは涙ぐみながら王子の名を呼んだ。
金髪碧眼の王子と、亜麻色の髪に翠の瞳を持つ妹。精霊に愛されし姫と称される彼女との組み合わせは、まるで物語の中の王子と姫のようだった。
アメリアの胸に、濁った感情が込み上げる。思わず拳を強く握りしめたが、アルベルトはそれにも気づかない。
「精霊姫の再来とまで言われる彼女であれば、僕の伴侶として相応しい。国王として歩む道を、共に支えてくれるだろう」
「そんな勝手な……!」
「それに――」
アルベルトの声が鋭くなる。
「未だに精霊の一体も召喚できないハズレ姫が、僕の婚約者にふさわしいとでも?」
その言葉に、アメリアは目を伏せた。
アルベルトに好かれていないことは、昔からわかっていた。
それでも、針のようなその言葉は胸に深く刺さる。
――アルベルトの言うことは、正しい。
ハズレ姫。
そう呼ばれていることを、私は知っていた。
第一王子アルベルトの宣言に、会場は凍りついた。流れていた音楽も、賑やかな声も、ぴたりと止む。視線は一斉に、王子とその婚約者・アメリアに注がれた。
一瞬、アメリアは目を見開く。だがすぐに平静を取り戻し、毅然とした眼差しでアルベルトを見上げた。
「理由を、お聞かせ願えますか」
「理由? 君が一番よく知っているはずだ」
王家の証である青い瞳を冷淡に向けるアルベルト。その彼の背後から姿を現したのは、アメリアの実妹・カルミア。
そして彼女の隣には、まるで守護するかのように光の上位精霊が寄り添っていた。
「君は実の妹を虐げ、彼女の精霊を消そうと企んだ」
「私は、そのようなことはしておりません」
「虚言を吐くとは……見損なったよ」
ざわつき始める会場。あちこちから、ささやき声が聞こえてくる。
「やっぱり噂は本当だったのね」
「妹の才能と美貌を妬んだのかしら」
「カルミア嬢が可哀想……」
それらの言葉に、周囲の視線は同情と軽蔑をないまぜにしてアメリアに注がれる。誰一人として彼女を庇おうとする者はいなかった。まるで最初から、真実も事情も関係なく、彼女が悪者であることが決まっていたかのように。
アルベルトはそんな空気を後押しするように言葉を重ねる。
「そんな君を、もはや婚約者としては認められない。だから、君との婚約は破棄し、代わりにカルミアと婚約する!」
「アルベルト様!」
アルベルトは隣のカルミアを抱き寄せる。カルミアは涙ぐみながら王子の名を呼んだ。
金髪碧眼の王子と、亜麻色の髪に翠の瞳を持つ妹。精霊に愛されし姫と称される彼女との組み合わせは、まるで物語の中の王子と姫のようだった。
アメリアの胸に、濁った感情が込み上げる。思わず拳を強く握りしめたが、アルベルトはそれにも気づかない。
「精霊姫の再来とまで言われる彼女であれば、僕の伴侶として相応しい。国王として歩む道を、共に支えてくれるだろう」
「そんな勝手な……!」
「それに――」
アルベルトの声が鋭くなる。
「未だに精霊の一体も召喚できないハズレ姫が、僕の婚約者にふさわしいとでも?」
その言葉に、アメリアは目を伏せた。
アルベルトに好かれていないことは、昔からわかっていた。
それでも、針のようなその言葉は胸に深く刺さる。
――アルベルトの言うことは、正しい。
ハズレ姫。
そう呼ばれていることを、私は知っていた。
0
あなたにおすすめの小説
「お前みたいな卑しい闇属性の魔女など側室でもごめんだ」と言われましたが、私も殿下に嫁ぐ気はありません!
野生のイエネコ
恋愛
闇の精霊の加護を受けている私は、闇属性を差別する国で迫害されていた。いつか私を受け入れてくれる人を探そうと夢に見ていたデビュタントの舞踏会で、闇属性を差別する王太子に罵倒されて心が折れてしまう。
私が国を出奔すると、闇精霊の森という場所に住まう、不思議な男性と出会った。なぜかその男性が私の事情を聞くと、国に与えられた闇精霊の加護が消滅して、国は大混乱に。
そんな中、闇精霊の森での生活は穏やかに進んでいく。
断罪現場に遭遇したので悪役令嬢を擁護してみました
ララ
恋愛
3話完結です。
大好きなゲーム世界のモブですらない人に転生した主人公。
それでも直接この目でゲームの世界を見たくてゲームの舞台に留学する。
そこで見たのはまさにゲームの世界。
主人公も攻略対象も悪役令嬢も揃っている。
そしてゲームは終盤へ。
最後のイベントといえば断罪。
悪役令嬢が断罪されてハッピーエンド。
でもおかしいじゃない?
このゲームは悪役令嬢が大したこともしていないのに断罪されてしまう。
ゲームとしてなら多少無理のある設定でも楽しめたけど現実でもこうなるとねぇ。
納得いかない。
それなら私が悪役令嬢を擁護してもいいかしら?
地味な薬草師だった俺が、実は村の生命線でした
阿里
ファンタジー
恋人に裏切られ、村を追い出された青年エド。彼の地味な仕事は誰にも評価されず、ただの「役立たず」として切り捨てられた。だが、それは間違いだった。旅の魔術師エリーゼと出会った彼は、自分の能力が秘めていた真の価値を知る。魔術と薬草を組み合わせた彼の秘薬は、やがて王国を救うほどの力となり、エドは英雄として名を馳せていく。そして、彼が去った村は、彼がいた頃には気づかなかった「地味な薬」の恩恵を失い、静かに破滅へと向かっていくのだった。
裏庭係の私、いつの間にか偉い人に気に入られていたようです
ルーシャオ
恋愛
宮廷メイドのエイダは、先輩メイドに頼まれ王城裏庭を掃除した——のだが、それが悪かった。「一体全体何をしているのだ! お前はクビだ!」「すみません、すみません!」なんと貴重な薬草や香木があることを知らず、草むしりや剪定をしてしまったのだ。そこへ、薬師のデ・ヴァレスの取りなしのおかげで何とか「裏庭の管理人」として首が繋がった。そこからエイダは学び始め、薬草の知識を増やしていく。その真面目さを買われて、薬師のデ・ヴァレスを通じてリュドミラ王太后に面会することに。そして、お見合いを勧められるのである。一方で、エイダを嵌めた先輩メイドたちは——?
母が病気で亡くなり父と継母と義姉に虐げられる。幼馴染の王子に溺愛され結婚相手に選ばれたら家族の態度が変わった。
佐藤 美奈
恋愛
最愛の母モニカかが病気で生涯を終える。娘の公爵令嬢アイシャは母との約束を守り、あたたかい思いやりの心を持つ子に育った。
そんな中、父ジェラールが再婚する。継母のバーバラは美しい顔をしていますが性格は悪く、娘のルージュも見た目は可愛いですが性格はひどいものでした。
バーバラと義姉は意地のわるそうな薄笑いを浮かべて、アイシャを虐げるようになる。肉親の父も助けてくれなくて実子のアイシャに冷たい視線を向け始める。
逆に継母の連れ子には甘い顔を見せて溺愛ぶりは常軌を逸していた。
妹に傷物と言いふらされ、父に勘当された伯爵令嬢は男子寮の寮母となる~そしたら上位貴族のイケメンに囲まれた!?~
サイコちゃん
恋愛
伯爵令嬢ヴィオレットは魔女の剣によって下腹部に傷を受けた。すると妹ルージュが“姉は子供を産めない体になった”と嘘を言いふらす。その所為でヴィオレットは婚約者から婚約破棄され、父からは娼館行きを言い渡される。あまりの仕打ちに父と妹の秘密を暴露すると、彼女は勘当されてしまう。そしてヴィオレットは母から託された古い屋敷へ行くのだが、そこで出会った美貌の双子からここを男子寮とするように頼まれる。寮母となったヴィオレットが上位貴族の令息達と暮らしていると、ルージュが現れてこう言った。「私のために家柄の良い美青年を集めて下さいましたのね、お姉様?」しかし令息達が性悪妹を歓迎するはずがなかった――
初対面の婚約者に『ブス』と言われた令嬢です。
甘寧
恋愛
「お前は抱けるブスだな」
「はぁぁぁぁ!!??」
親の決めた婚約者と初めての顔合わせで第一声で言われた言葉。
そうですかそうですか、私は抱けるブスなんですね……
って!!こんな奴が婚約者なんて冗談じゃない!!
お父様!!こいつと結婚しろと言うならば私は家を出ます!!
え?結納金貰っちゃった?
それじゃあ、仕方ありません。あちらから婚約を破棄したいと言わせましょう。
※4時間ほどで書き上げたものなので、頭空っぽにして読んでください。
【完結】 メイドをお手つきにした夫に、「お前妻として、クビな」で実の子供と追い出され、婚約破棄です。
BBやっこ
恋愛
侯爵家で、当時の当主様から見出され婚約。結婚したメイヤー・クルール。子爵令嬢次女にしては、玉の輿だろう。まあ、肝心のお相手とは心が通ったことはなかったけど。
父親に決められた婚約者が気に入らない。その奔放な性格と評された男は、私と子供を追い出した!
メイドに手を出す当主なんて、要らないですよ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる