スイート・スパイシースイート

first taste １－２

人を殴る鈍い音と一緒に、もはや言葉を紡がなくなった口から、呻き声だけが蹴られた腹から出る空気と一緒に漏れ出ている。
ただ、顔はあまり腫れて無い所を見ると頭を蹴られて脳に障害をきたすという最悪の状態は免れてるみたいだ。
少し胸を撫で下ろす。
一人のヤンキーがペッとツバを吐き出しサラリーマンを罵った。
「メガネの癖に意外に粘りやがって、どの位金もってるのかと思ったら。三万ぽっちかよっ」
もう一人が後をつづける。
「マジヤバい。シケてんじゃねぇよ」
こっちのヤンキーはバカすぎて言葉が文章の体を成してない。
こいつら本当に人類か？。新種の猿の間違いだろ。
トラブルを収める時、こういうタイプが一番面倒くさいんだよなぁ…。
基本的にバカとはまともな会話が出来ない。
話して解決しようとすると大概以降の様な展開になる。
説得しようとする→因縁をつけられる→口論で負かす→逆ギレされる→暴力沙汰になる→さらに負かす→顔を覚えられてるので後で店に仕返しに来られる。→警察沙汰になる→店の評判に傷が着く→経営がヤバくなる。
他展開にはいくつかのレパートリーは有るものの、警察沙汰や裁判沙汰になって結局は店の経営に支障を来す事受け合いだ。
…うぜぇ。
しかも俺は疲れてるんだ早く帰りたい。
諸々の事情により、
おもむろに持っていたキャップをキュっとかぶり、マフラーで覆面した俺は
ヤンキー４人を速やかにのした。
「流石高校デビュー…」
ヤンキー共はメチャメチャ弱かった。
つーか弱過ぎ…弱過ぎて逆に驚いた。
マジ、ビックリ。
いや、まぁ俺も元ヤン（元はヤンキー）だからよ。
今や大人しく暮らしているとは云え、そこは昔取った杵柄、それなりにケンカ慣れしてるぜ？
それにしたって弱過ぎだろ…オイ。
覆面の必要無かったな…。
とても身長１８０は軽く越えてる大の大人が負けっぱなしになる様な強さは無えと思うんだけどなー。
それとも、普通のサラリーマンっていうのはこんなに弱っちいモンなんかねぇ～。
ため息一つ、後頭部をガリガリかきながらうずくまってるサラリーマン（未来の俺の客）に声を掛けた。