壊れた玩具と伝説の狼

すずひも屋 小説:恋川春撒 その他:せつ

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悪夢2-1

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だらしない寝方をしたせいか、酷い夢を見た。

『君と一緒に歩いている所を同僚に見られたく無いんだ。恥ずかしいから』

夢の中の元恋人はそう言ってセイラに背中を向けた。
別れた恋人が一年前セイラに言った言葉だ。
頭の良い人だった。優しくて、紳士で。出会った頃は。
仕事が変わってモテる様になって人が変わってしまった。
その人は、きっと同僚に見られても恥しくない人の所に行ったのだろう。
寝起きのセイラの顔は隈と吹き出物で酷い事になっていた。
「職場に恋愛対象になる人が居ないのが救いだな」
気にせず行ける。工場の作業なんて基本的に流れ作業だし、部品に唾が飛ばない様に鼻から下は布で覆うので顔色の悪さも目立たない、仕事の時間が始まってしまえば心は楽な物だった。
よく気が着くハンナだけがセイラの変化に気が着いてくれた。
「どうしたの?酷い顔。泣きはらしたみたい!彼氏と喧嘩でもしたの?」
セイラは上司のお気に入りであるハンナと、万が一にも間違いや勘違いが起きない様に、少し親しくなった時点でハンナには自分の恋愛対象や好みのタイプがどんな人であるのか言っていた。
もちろん、恋人が出来た事も。
だから、その時つい本当の事を言ってしまった。
「振られちゃって」
この時、何か適当に誤魔化しておけば良かったのだ。
心配したハンナはセイラを慰めて、ある情報を教えてくれた。
もちろん、ハンナに悪気は無かった。
だって、その情報は、本来上司のお気に入りであるハンナを煙たがったヤシダが恋人の居ないハンナに教えた情報なんだから。
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