壊れた玩具と伝説の狼

すずひも屋 小説:恋川春撒 その他:せつ

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春のススキと白い息5ー1

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酔っぱらいセイラは、つまるところその初めて出会った犬と、アヤと名付けた犬と思い込んでいた狼と、大いに戯れた。深い意味で。
アヤはそれは上手にセイラの物を舐めてしゃぶって、セイラを気持ちよくさせた。
セイラは真っ白な息を吐きながら、何度も笑い、喘ぎ、腰を揺らした。
揺れる狼の尻尾の、黒鉄色の毛が闇に溶けて、アンダーファーのクリーム色だけが目立ち、まるでススキの様だと思った。
そうして楽しむだけ楽しんだ後、キュンキュン哭いて纏わりつくアヤを置いて、山を出て行った。
適当に『またね』とか『今度合ったらまた楽しもうね』とか言って、帰って、そして綺麗に忘れた。
それはもうサッパリと、今の今まで一度たりとも思い出さなかった。
「思い出した」
セイラは目の前の大きな大きな狼、アヤを見た。
そして、遠くで自分達を見つめるアヤの群れの狼を見て、再びアヤを見つめた。
大きなため息を一つついた。
「アヤ」
セイラが名を呼ぶと
「何だい?」
アヤはしっぽを揺らしながら優しく答えた。
セイラは、生まれてこの方こんな馬鹿げた大きさの狼なんて、目の前のアヤしか見たことが無い。
セイラは両手で両目を覆いながら頭を抱えた。
「アヤは僕を探すために、山の王になったと言ったね、ひょっとして僕と出会った時は、普通の狼だったのかい?」
しかし、二人を囲む狼達の様な、大型犬よりも少し大きい位の犬なら、一匹山で見た事が有る。有った。有った事を今思い出した。
見たどころでは無い、酒に酔っぱらってとんでもない事をした。させた。
いや、されたのか?しかし狼のルールではセイラが最初に誘った事になるのか。
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