ブルースプリングファイヤーモンキー

すずひも屋 小説:恋川春撒 その他:せつ

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ナイトメア

ナイトメア33

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血は繋がっているのに、籍も入れていない内縁の父親だった。
名前は、父親のお気に入りの件のエロビデオ『ゴムひも屋ケンちゃん』からとったと言われた。
『目の前にあったからさ』自分の名前の由来を聞いた時、ベロベロに酔っぱらっていた父親は、10歳の実の息子にそう言ってだらしなくよだれを垂らして笑っていた。
あいにくな事に、中学校の同級生のからかいのネタは、本当のことだったのだ。
漢字の当て字すら付けてもらえなかった。
父親は、中学校もまともに通っていなかった人だった。
ケンの名前がカタカナなのは、親が漢字が書けなかったからだ。
出生届が出せただけでも奇跡だと思っている。
日本は識字率が高いとはよく聞く話だけれど、日本語のできない日本人はニュースの届かない所で確かに存在する。
ケンは小学校の発表会では、悩んだ末『世界に通用する様に簡単で覚えやすい字にしたそうです!』と自分で理由をつけて発表した。
案外、あっさり皆信じた。
現実なんてそんなものだ。
「・・・ふふふ、特殊清掃で世界も何もないよなぁ
 今じゃむしろ冥土で通用しそうなくらいだ」
六畳もあるけれど、夜になると電子レンジも使えないボロアパート。
それが今のケンが手に入れられているすべてだった。
「高卒で一人暮らしができているだけでも、今時上出来ではあるけれど・・・」
でも、やはり、少しだけ思ってしまう。
あと、数年我慢して、せめて手に職だけでもつけておいたら良かった。
「・・・仕方ないさ、調べなかった俺がアホだったんだ。
 スマホも持っていたのに。
 メシに寒さをしのげる住処、上出来、上出来」
今日は久しぶりに、名前の事でからかわれてナーバスになっているだけだ。
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